不祥事対応~「公認会計士社外監査役等の手引き」より | 社外財務部長 原 一浩
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不祥事対応~「公認会計士社外監査役等の手引き」より

不祥事対応~「公認会計士社外監査役等の手引き」より

2020年7月に日本公認会計士協会社外役員会計士協議会から「公認会計士社外監査役等の手引き」が公表されました。

その中から「不祥事対応」を見てみましょう。

 

1.不祥事の発覚と対応

 

(1)不祥事について

 

企業不祥事には、法令違反だけではなく、社会から期待されている倫理に反するような不適切行為も含まれます。

 

(2)不祥事の発覚

 

不祥事が発覚する端緒については、通常の業務プロセスに組み込まれたチェック機能や内部通報のほか、内部監査、監査役等及び会計監査人による監査での発覚、マスコミによる情報感知や税務調査、捜査機関による調査などがあります。

会社で発生している不正ですから、内部者の誰かは知っていたはずの事実であり(ただし、不正であることを自覚していない場合もあります)これが様々な仕組みを通じて表面化したものと考えられます。

 

(3)不祥事対応について

 

不祥事の調査や差止請求等は、会社法で定められた監査役等の権限でもあります。

また近年では、経営陣の依頼により第三者委員会(外部調査委員会)を設置したり、内部調査委員会を組成して事実解明や再発防止策の提言を行ったりする実務が定着しています。

 

2.監査役等自らが不正の兆候を認識した場合

 

「社外役員等に就任している会員に対する倫理規則の遵守徹底について (日本公認会計士協会 会長声明)」に記載されているとおり、会員にはその権限に応じて、違法行為又はその疑いの阻止・是正を行うなど、深度ある対応が求められています。

 

(1) 適切なコミュニケーションと調査

 

監査役等がその業務の過程で、不正の兆候を認識した場合には、リスクの程度に応じて適切に対処する必要があります。

「重大な企業不祥事の疑いを感知した際の監査役等の対応に関する提言 (日本監査役協会)」に記載されているとおり、監査役等は、関係者らと効果的にコミュニケーションを行い、会計監査人とも十分に連携して、適切な調査方法の選択につなげることが重要です。

 

(2) 会計監査人からの情報共有

 

監査役等は、会計監査人から不正の兆候について通知又は報告を受けることがあります。

この場合については「法令違反等事実又は不正の行為等が発覚した場合の監査役等の対応について―監査人から通知等を受けた場合の留意点― (日本監査役協会)」が公表されており、監査役等における対応がまとめられています。

 

3.不祥事対応への理解とモニタリングの視点

 

 (1)全社的な不祥事対応

 

監査役等は、取締役の職務執行を監査する役割を担っており、調査権など独自の権限を有しています。

取締役も他の取締役の職務執行を監視する義務を負っています。

不祥事の内容と規模によっては全社的な対応をとることになります。

 

(2) 行政機関による調査

 

証券取引等監視委員会(SESC)や公正取引委員会、消費者庁など行政機関による調査がこれに該当します。

ここでは、証券取引等監視委員会による調査について記載します。

 

① 行政調査(開示検査)

 

開示書類の不提出や開示書類の「重要な事項」についての虚偽記載といった開示規制違反を対象とする調査です。

開示規制違反の事案のうち重大で悪質なものは、②に記載する犯則調査の対象になります。

 

② 犯則調査

 

開示規制違反の事案のうち重大で悪質なものについては犯則調査の対象になります。

犯則調査とは、刑事告発を目標に行われる調査であり、強制的な捜査を行うことが許されています。

証拠固めに時間はかかりますが、検察による捜査や起訴につながることもあります。

 

(3) 自主的な調査

 

通常起こり得る不祥事であれば、内部監査部門やコンプライアンス部門など既存の組織による社内調査で十分に対応できることも多いと考えられます。

しかし、不祥事の内容が複雑だったり、社会的影響が大きかったりする事案については、特別な調査チームを設置することがあります。

特別な調査チームには、大別して内部調査委員会と外部調査委員会(第三者委員会を含む。)があります。

 

  • 内部調査委員会

 

不祥事の内容が複雑であるなど、既存の部署単独による対応が困難である場合には、社内の役職員により横断的なチーム(内部調査委員会)を組成して事実解明や再発防止策の策定、責任の特定などを行います。

 

  • 外部調査委員会(第三者委員会を含む)

 

不祥事が組織全般にかかるものであったり、経営者の関与が疑われる事案であったり、社会的影響が大きな事案については、調査に中立性と客観性、場合によっては専門性を高めるために、主として会社外のメンバーにより構成される調査チーム(外部調査委員会)を組成することがあります。

 

  • 監査役等の参加について

 

「監査役監査実施要領(日本監査役協会)」では、監査役は、当該企業不祥事に関して明白な利害関係があると認められる者を除き、第三者委員会の委員に就任することが望ましいとされています。

 

4.倫理規則、違法行為への対応に関する指針

 

2019 年7月に倫理規則が改正され、企業等所属の会員が、違法行為又はその疑いに気付いた場合の対応が新設されています。

社外役員である会員は、「企業等所属の会員」に該当することになりますので、この規則の適用を受けます。

したがって、違法行為又はその疑いに気付いた場合には、「違法行為への対応に関する指針」に従って対応すべきこととなりますが、「違法行為」を発見することまで要求されているわけではありません。

 

違法行為又はその疑いに関する情報に気付いたら、まず、行為の内容・状況等に加え、適用される法令、所属する組織、投資家、債権者、従業員又は社会一般に対する潜在的な影響等を理解しなければなりません。

上記理解を前提として対応を行うことになりますが、指針には以下の「具体的な対応」が記載されています。

 

 (1)所属する組織の方針及び手続(倫理規程や内部通報制度など)に従って当該事項に対処する。

 

 (2)以下の適切な対応を行う。

 

  • 適用される法令を遵守
  • 違法行為又はその疑いを阻止・是正又は影響を軽減
  • 再発リスクを軽減
  • まだ発生していない場合には違法行為を未然に防ぐように努める
  • 監査役等とコミュニケーション

 

(3)外部監査人への報告の必要性を判断する。

 

 (4)所属する組織としての対応等の適切性を評価する。

 

 (5)組織としての対応等を踏まえ、追加的対応を行うことが必要かどうかを判断する。追加的対応のひとつとして「辞職」も例示されています。

 

5.決算の修正について

 

監査役等は下記の決算修正プロセスについてもモニタリングします。

 

(1) 決算への反映が間に合わない場合

 

会計不正の実態解明に時間がかかり、決算スケジュールが大幅に遅れることがあります。

特に期末監査の過程や期末間際に発覚した場合には、決算短信の開示、株主総会での報告、有価証券報告書の提出が期日に間に合わないことがあります。

 

① 決算短信

 

決算短信は期末日後 45 日以内に開示するのが原則ですが、その開示時期が期末日後 50 日を超えることになった場合には、決算内容の開示後遅滞なく、その理由(遅れた事情)及び翌事業年度又は翌連結会計年度以降における決算の内容の開示時期に係る見込み又は計画について開示することとされています。

 

② 計算書類

 

会社法において定時株主総会の開催日について特に規定があるわけではありませんが、定時株主総会の開催を遅らせることには困難が伴います。

このため、定時株主総会について延会・継続会を行うか、定時株主総会とは別に臨時株主総会を開催することになります。

 

ア.延会・継続会

 

株主総会は、延期又は続行することができます。

決算業務や監査終了後に、計算書類や監査報告等を株主に提供して検討の機会を確保し、延会または継続会において十分な説明を尽くします。

 

イ.臨時株主総会

 

計算書類の作成が大幅に遅延しそうな場合には、臨時株主総会の開催を検討します。

 

③ 有価証券報告書

 

有価証券報告書の法定提出期限に間に合いそうにない場合は、財務局に提出期限の延長に係る承認申請を行います。

 

(2)過去の計算書類の訂正

 

過去に確定した計算書類を遡及して修正すべきかどうかについて、法務省の考え方として、「誤謬の訂正」をした場合であっても、有効に確定した計算書類は修正する必要はないとされています。

ただし、大きく報道された会計不正について過去の計算書類を訂正した事例はありますので、何をもって「有効に確定した」と考えるかの法的判断のほか、誤謬の重要性も勘案しつつ、事案に応じて検討すべきものと考えられます。

 

(3)過去の有価証券報告書の訂正

 

過去に提出した有価証券報告書を訂正する必要があれば、訂正報告書を提出します。

過去何年分を訂正すべきかについて定めはありませんが、公衆縦覧期間(5年)も考慮して決定します。

なお、訂正の原因によっては、訂正内部統制報告書も必要です。

有価証券報告書の訂正が内部統制の不備に起因している場合には、内部統制に「開示すべき重要な不備」があったのか、又は内部統制の評価対象範囲外(例えば金額的重要性の乏しい子会社)に問題があったのかを明確にすると同時に、会社の是正措置が妥当なものかを確認する必要があります。

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