1.経営承継円滑化法による総合的支援
後継者に事業を承継する場合などに、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律 (経営承継円滑化法)」に基づき、事業承継の円滑化に向けた支援を受けることができます。
(1)対象となる方
【遺留分特例】
相続による自社株式等の散逸を防止したい中小企業の後継者
【金融支援】
事業承継に伴い多額の資金ニーズが発生している中小企業とその後継者
【事業承継税制】
相続税・贈与税の納税猶予・免除の適用を受けようとする中小企業の後継者
(2)支援内容
【遺留分に関する民法の特例】
一定の要件を満たす後継者 (親族外も対象)が、遺留分権利者全員との合意及び所要の手続 (経済産業大臣の確認、家庭裁判所の許可 )を経ることにより、以下の民法の特例の適用を受けることができます。
遺留分とは、配偶者や子など(遺留分権利者)に民法上保障される最低限の資産承継の権利です。
後継者への生前贈与により、相続時に他の遺留分権利者が実際に得られた相続財産が「遺留分」に足りない場合に、後継者が、他の遺留分権利者から「遺留分」を取り戻すための請求 (遺留分減殺請求)を受けるおそれがあります。
①生前贈与株式を遺留分の対象から除外
贈与株式を遺留分減殺請求の対象外とすることで、相続に伴う株式分散を未然に防止できます。
②生前贈与株式の評価額を予め固定
後継者の貢献による株式価値上昇分を遺留分減殺請求の対象外とすることで、企業価値の向上を心配することなく経営に集中できます。
【金融支援】
事業承継に伴う多額の資金ニーズ(自社株式や事業用資産の買取資金、相続税の納税資金等 )や信用力の低下による取引・資金調達等への支障が生じている場合に、都道府県知事の認定を受けることを前提として、
①信用保険の別枠化による信用保証枠の実質的な拡大、
②株式会社日本政策金融公庫等による代表者個人に対する融資制度を利用することができます。
【事業承継税制】
事業承継税制は、都道府県知事から経営承継円滑化法の認定を受けた場合、相続税・贈与 税の納税が猶予・免除される制度です。
法人版事業承継税制は、事業継続要件等の一定の要件を満たす場合に、後継者が取得した 自社株式等に係る相続税・贈与税の納税が猶予・免除されます。
2018年度の税制改正により、2027年までの10年間に限った特例措置が設けられています。(2023年3月末までに特例承継計画を提出した事業者に限ります。)
また、2019年度税制改正において、2028年までの時限措置として個人版事業承継税制が創設されました。
個人事業者が事業用資産を承継した際に課される相続税・贈与税の納税が猶予・免除されます。(2014年3月末までに特例計画を提出した者に限ります。)
2.事業承継補助金
事業再編、事業統合を含む経営者の交代を契機として経営革新等を行う事業者に対して、その取組に要する経費の一部が補助されます。
(1)対象となる方
【後継者承継支援型】
事業承継(事業再生を伴うものを含む)を行う個人及び中小企業・小規模事業者等であり、 以下の①~③の要件を満たすこと。
後継者承継支援型には事業譲渡や株式譲渡等による承継は含みません。
①事業承継を契機として、経営革新等に取り組む、または、事業転換に挑戦する者であること。
②産業競争力強化法に基づく認定市区町村又は認定連携創業支援事業者により特定創業 支援事業を受ける者など、一定の実績や知識などを有している者であること。
③地域の需要や雇用を支える者であり、地域の需要や雇用を支えることに寄与する事業を行う者であること。
【事業再編・事業統合支援型】
事業再編・事業統合等を行う個人及び中小企業・小規模事業者等であり、その後に以下の 例のような新しい取組を行うこと
対象となる取組例:
合併/会社分割/事業譲渡/株式交換・株式移転/株式譲渡など
(2)支援内容
【後継者承継支援型】
①事業転換なし
補助率:
個人事業主を含む小規模企業者 2/3 (補助上限200万円)
上記以外 1/2 (補助上限150万円)
②事業転換あり
補助率:
個人事業主を含む小規模企業者 2/3 (補助上限500万円)
上記以外 1/2 (補助上限375万円)
小規模企業者とは、中小企業基本法第2条第5項に規定する従業員20人以下(商業・サービス業は5人以下)に事業者を指します。
【事業再編・事業統合支援型】
①事業転換なし
補助率:
採択上位 2/3 (補助上限600万円)
上記以外 1/2 (補助上限450万円)
②事業転換あり
補助率:
採択上位 2/3 (補助上限1,200万円)
上記以外 1/2 (補助上限900万円)