経済産業省は、2020年7月31日に、「事業再編実務指針~事業ポートフォリオと組織の変革に向けて~」を策定しました。
その中の「2 経営陣における課題と対応の方向性」を見てみましょう。
Ⅰ.経営者の役割
1.経営者の使命
(1)企業の持続的な成長のために経営資源の最適配分を行うこと
(2)そのために、事業ポートフォリオの最適化とシナジーの創出を図ること
2.現状と課題
(1)事業の売却等の基準や検討プロセスが明確でない
(2)事業の切出しを含めた事業再編に対する経営者の意識は必ずしも積極的ではない
3.経営資源の最適配分
(1)事業ポートフォリオの不断の見直しと最適化が不可欠
(2)そのための体制整備や仕組みの構築が必要
(3)シナジー創出のための事業部横断等の「横串」を通す方向での取り組みが必要
4.従業員利益の確保
(1)自社が「ベストオーナー」でない事業は成長戦略の実現は難しい
(2)事業ポートフォリオを見直すことの意義について従業員の理解を深める
Ⅱ.事業ポートフォリオマネジメントの在り方
1.現状と課題(事業ポートフォリオの見直しが十分に行われていない要因)
(1)事業部門の権限が強い
(2)権限と責任が一元化されていない
(3)検討基準、検討プロセスが不十分
2.事業ポートフォリオマネジメントの基本的考え方
(1)経営者は事業ポートフォリオマネジメントの一義的な責任者となる
(2)経営者が事業ポートフォリオに関する基本方針の立案、執行、見直しの立案を行う
(3)事業ポートフォリオマネジメントの基本
①企業理念・価値基準に基づく
②ビジネスモデルを明確化し、経営戦略の策定
③事業ポートフォリオを定期的に見直す仕組みの構築
④適切な運用
3.事業ポートフォリオマネジメントを実施するための体制整備
(1)責任部署の明確化と推進体制の整備
(2)各事業部門の幹部等がその事業の成長戦略を主体的に検討
4.CFOの機能強化
(1)全社的視点からの財務的な規律付けが重要
(2)経営企画ラインとCFOラインの連携
(3)CTOやCIOの役割や連携強化
5.事業評価の仕組みの構築と運用
(1)重要な視点は、その事業にとって「ベストオーナー」かどうか
(2)可能な限り、具体的なデータに基づき定量評価を踏まえて検討
(3)「4現象フレームワーク」の活用が有効
①評価指標設定の在り方
・ROIC(投下資本利益率)の導入
・資本コストとの比較
・競合他社との比較
・事業セグメントごとのBSの整備
②「4現象フレームワーク」に基づく資金の流れ
・緊急を要するのが「D」
・「C」についても、中長期的な視点で評価
・「両利きの経営」(探索と深化)から、新規事業は中長期的時間軸で評価
Ⅲ.経営目標や業績評価指標の設定等の在り方
1.現状と課題
(1)経営目標や業績評価指標として、売上高、利益等の企業規模に連動するものを重視
(2)規模縮小には、負のインセンティブ
(3)経営陣の報酬の水準が低く、固定報酬の割合が高い
(4)企業価値向上への長期インセンティブが働きにくい
2.経営目標や業績評価指標の設定に関する基本的な考え方
(1)経営戦略等も踏まえて体系的で一貫したものとなるように設定
(2)「規模」から「率」へ移行
(3)株価に連動する指標や株式報酬の活用
3.経営目標等の設定の在り方
(1)各社の経営戦略等に応じて設定
(2)資本収益性の指標:ROIC(主に事業部門)、ROE(グループ本社)
(3)成長性の指標:売上高成長率等(オーガニックグロースベース)、TSR(株主総利回り)等の組み合わせ
4.経営陣の報酬設計
(1)中長期的な企業価値向上に資する事業再編に対して経営陣に適切なインセンティブを与える
(2)長期インセンティブ報酬、特に株式報酬の比率を高めていくことが課題
(3)中長期のインセンティブとしての制度設計の考え方を投資家等に説明できるよう明確化