2020年8月21日に日本公認会計士協会「企業情報開示・ガバナンス検討特別委員会」は、「企業情報開示に関する有用性と信頼性の向上に向けた論点の検討~開示とガバナンスの連動による持続的価値創造サイクルの実現に向けて~(中間報告)」を公表しました。
「論点4 信頼性を高める監査・保証 4-1 企業情報開示の質向上と監査・保証」では、以下のように述べています。
1.現状と課題
(1)重要な虚偽表示リスクの識別・評価
・財務諸表監査にあたっては、前提として、企業の外部環境や事業活動等、企業目的及び戦略の理解が求められている。
(2)見積りの妥当性の評価
・監査上、会計上の見積もりの妥当性を評価するにあたって、上記の理解が重要となっている。
(3)財務情報と非財務情報の一体的理解
・財務報告の利用者である投資家側では、非財務情報について理解を深め、財務情報と合わせて投資先の評価や投資先との対話に反映する動きが強まっている。
・財務情報だけでなく、非財務情報も含む企業情報開示全体の質を高めるうえで、監査人がどのような役割を果たすべきかが問われている。
(4)非財務情報の信頼性を確保することを主眼とした施策
・財務諸表と「その他の記載内容」の整合性だけでなく、監査の過程で得た知識と重要な相違がないか検討する等の注意を払う必要がある。
・財務諸表や監査の過程で得た知識に関連しない内容についても、重要な誤りがあると思われる兆候に注意を払うことが求められる。
2.方向性
(1)コーポレート・ガバナンス改革と監査
・取締役会の役割と監督責任の明確化、独立役員の増加、監査当委員会設置会社採用の広がりといったガバナンス構造が変化している。
・このことが、企業の統制環境に影響を及ぼしている。
・統制環境の視点から、企業のガバナンス設計と運用状況への理解が重要となる。
・コーポレート・ガバナンスに関する開示情報や企業側の実効性評価の状況、取締役及び監査役との対話をどのように活用していくかについて、検討を深める必要がある。
(2)リスク評価
・監査人が、経営者や取締役との対話等を通じて、企業独自の持続的な価値創造モデルについての理解を深めることが重要である。
・これまで以上に、企業開示が全体として企業価値を適切に表すものとなっているかという観点での視座を高めることが必要である。
・リスク評価に関しても、短期の事業リスクだけでなく、中長期的な企業価値に重要な影響をもたらす経営上のリスクについても監査人は、理解を深めることが必要である。
・必要に応じて、中長期的な影響を検討する必要性が高まっている。
・監査対象の財務諸表が含まれる開示書類におけるその他の記載内容の通読及び検討、重要な相違や重要な誤りへの対応が求められる。
(3)非財務情報の信頼性
・非財務情報の重要性が高まる中、その信頼性を確保することの要請も高まっている。
・第三者による保証のニーズと実現可能性を整理する必要がある。
・持続的価値創造サイクルを支える企業情報開示を実現する観点から、監査・保証に求められるニーズについて、作成者である企業及び利用者である投資家との対話を深める必要がある。
・監査及び保証のあるべき姿、監査人の新たな役割や社会への貢献の在り方について踏み込んだ議論を行う必要がある。