日本公認会計士協会は、収益認識の基本論点(Q&A)を公表しています。
その中から、「追加の財又はサービスを取得するオプションの付与(ポイント制度)」についてみてみましょう。
1.会計基準等の定め
(1)はじめに
顧客の囲い込みや販売促進策として、商品の販売やサービスの提供の際に、将来新たな商品やサービスの購入時に値引きを受けられるポイントを付与することがあります。
このようなポイント付与がある場合、ポイントに関して企業が負う義務の性質に応じて会計処理を行うことになります。
(2)収益基準
収益基準では、顧客との契約において、既存の契約に加えて追加の財又はサービスを取得できるオプションが付与された場合の取扱いを図表1(適用指針第48項から第51項を基に作成)のように定めています。
「Q&A収益認識の基本論点」日本公認会計士協会より抜粋
(3)自社ポイントの会計処理
自社ポイントの付与が、契約を締結しなければ顧客が受け取れない重要な権利に該当する場合、当該ポイントを別個の履行義務として会計処理します。
「追加の財又はサービスを無料又は値引き価格で取得するオプションとしての履行義務」となります。
この場合、取引価格の一部がポイントに配分され、このようなポイントに配分された取引価格は、ポイント利用時において将来の財又はサービスが移転する時、又は当該ポイントが失効する時に、収益を認識します。
(4)他社ポイント
他社が運営するポイント制度に参加し、商品の販売時に顧客に他社ポイントを付与するとともに、他社に所定の金額を支払う場合があります。
他社ポイントの付与に伴う企業の義務が当該支払義務のみである場合、別個の履行義務とはならず、他社への支払額を第三者のために回収した金額として取引価格から除外します。
2.事例:ポイント制度 (自社ポイント)
(1)前提条件
①ポイント制度
- A社は、A社の商品を顧客が100円購入するごとに1ポイントを顧客に付与するポイント制度を採用しています。
- 顧客は、ポイントを使用して、A社の商品を購入する際に1ポイント当たり1円の値引きを受けることができます。
②商品販売時
- X1年度中に、顧客はA社の商品10,000円を購入し、将来のA社の商品購入に利用できる100ポイント(=10,000円÷100円×1ポイント)を獲得しました。
- 対価は固定であり、顧客が購入したA社の商品の独立販売価格は10,000 円でした。
③ポイント使用見込みと独立販売価格
- A社は商品の販売時点で、将来95ポイントが使用されると見込みました。
- A社は、顧客により使用される可能性を考慮して、1ポイント当たりの独立販売価格を95円(合計額は95円 (=0.95円×100ポイント))と見積りました。
④履行義務
- 当該ポイントは、契約を締結しなければ顧客が受け取ることのできない重要な権利を顧客に提供するものであるため、A社は、顧客へのポイントの付与により履行義務が生じると結論付けました。
⑤X2年度末
- A社はX2年度末において、使用されると見込むポイント総数の見積りを97ポイントに更新しました。
- 各年度に使用されたポイント、決算日までに使用されたポイント累計及び使用されると見込むポイント総数は次のとおりです。
X1年度 | X2年度 | |
各年度に使用されたポイント | 45 | 40 |
各決算日までに使用されたポイント累計 | 45 | 85 |
使用されると見込むポイント総数 | 95 | 97 |
(2)会計処理
①商品販売時
現金預金 10,000円 / 売上高 9,906円
契約負債 94円
商品販売:10,000×独立販売価格10,000÷10,095=9,906円
ポイント:10,000×独立販売価格95÷1,095=94円
②X1年度末
契約負債 45円 / 売上高 45円
X1年度末までに使用されたポイント45ポイント÷使用されると見込むポイント総数95ポイント×94円=45円
③X2年度末
契約負債 37円 / 売上高 37円
(X2年度末までに使用されたポイント累計85ポイント÷使用されると見込むポイント総数97ポイント×94円)-X1年度末に収益を認識した45円=37円