日本公認会計士協会は、収益認識の基本論点(Q&A)を公表しています。
その中から、知的財産のライセンス・フランチャイズ料の取扱を見てみましょう。
1.会計基準等の定め
(1)ライセンスの対象となる知的財産
以下の知的財産が例示されています。
①ソフトウェアや技術
②動画、音楽等
③フランチャイズ
④特許権、 商標権、著作権
(2)会計処理
収益基準では、上記の知的財産のライセンスに関する会計処理を図表1(適用指針第61項から第64項を基に作成)のように定めています。
「Q&A収益認識の基本論点」日本公認会計士協会より抜粋
(3)「知的財産にアクセスする権利」に該当するための要件
①知的財産に著しく影響を与える活動であること
「知的財産に著しく影響を与える活動」とは、次のいずれかに該当する活動を言います。
(ⅰ)知的財産の形態又は機能性を著しく変化させる活動
例:デザイン、コンテンツ、機能を実行する能力を著しく変化させる活動
(ⅱ)顧客が知的財産からの便益を享受する能力に影響を与える活動
例:ブランドからの便益は、知的財産の価値を補強する、
又は維持する企業の継続的活動から得られるかあるいは当該活動に依存していることが多い。
②顧客により合理的に期待されていること
「顧客により合理的に期待されていること」を示す可能性のある要因としては、次が挙げられます。
(ⅰ)企業の取引慣行や公表した方針等
(ⅱ)顧客が権利を有している知的財産についての企業と顧客との間での経済的利益の共有の存在
例えば、売上高に基づくロイヤルティ
2.事例:フランチャイズ料
【一般的なフランチャイズ契約】
フランチャイズ運営者は、フランチャイズ契約に基づき、フランチャイズ加盟者(以下「加盟者」)から毎月の売上高の一定割合等のロイヤルティを受領します。
フランチャイズ運営者は、取引慣行として、フランチャイズの評判を高めるため、一般顧客の嗜好の分析や、製品の改善、価格戦略、販促キャンペーン及び運営面の効率化の実施などの活動を行います。
(1)会計処理
フランチャイズ運営会社は、フランチャイズのライセンス供与により加盟者が有する権利が、「企業の知的財産にアクセスする権利」に該当するために満たす必要のある要件の全てを満たすかどうかを検討し、「企業の知的財産にアクセスする権利」なのか「企業の知的財産を使用する権利」なのかを判断することになります。
「企業の知的財産にアクセスする権利」を提供する場合は、「一定の期間にわたって収益を認識する」ことになります。
(2)「企業の知的財産にアクセスする権利」の要件に該当するかどうかの検討
①要件1:著しく影響を与える活動が顧客に期待されているか。
次の点を考慮し、加盟者が権利を有している知的財産であるフランチャイズに著しく影響を与える活動をフランチャイズ運営会社が行うことを、加盟者は合理的に期待しています。
ア)フランチャイズの評判を高めるために、一般顧客の嗜好の分析などの活動をフランチャイズ運営会社が行う取引慣行があるため、加盟者が権利を有している知的財産であるフランチャイズから便益を享受する能力は、実質的に運営者の活動により得られるか、又は当該活動に依存します。
イ)フランチャイズ運営会社が得られる報酬が加盟者の売上高に基づくロイヤルティである場合、当該報酬は加盟者の売上高等に左右されるため、自らの利益を最大化するように活動することを加盟者は期待し、加盟者と共通の経済的な利害があります。
②要件2:願客は直接的に影響を受けるか。
フランチャイズ加盟者は、製品の改善、価格戦略、販促キャンペーン及び運営面の効率化などフランチャイズ運営会社が行う活動から生じる変化に対応することとなるため、当該活動の影響を受けます。
③要件3:財又はサービスが顧客に移転しないか。
フランチャイズ加盟者は、一般顧客の嗜好の分析などのフランチャイズ運営会社の活動からの便益を享受する可能性はあるが、当該活動が生じたとしても、財又はサービスはフランチャイズ加盟者に移転しません。
(3)検討結果
要件1、2、3ともに該当するので、「企業の知的財産にアクセスする権利」の提供として、 一定の期間にわたって収益を認識することになります。