» 取締役の多様性の分析~「コーポレート・ガバナンス白書2019」より
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社外財務部長 原一浩の公式サイト

取締役の多様性の分析~「コーポレート・ガバナンス白書2019」より

取締役の多様性の分析~「コーポレート・ガバナンス白書2019」より

「コーポレート・ガバナンス白書2019」(以下、本白書)が東京証券取引所から2019年5月に公表されました。本白書は、我が国企業を巡る近年のコーポレート・ガバナンス改革の進展も踏まえ、分析を行っています。本白書は、関係者が、変貌している我が国の上場会社のコーポレート・ガバナンスの取組状況を概観するための助けとなることを意図して作成されています。

 

取締役の多様性に関する分析結果を見てみましょう。

 

1.取締役会の多様性等に関する考え方(補充原則4-11①)

 

コーポレート・ガバナンス・コード原則4-11では、「取締役会は、その役割・責務を実効的に果たすための知識・経験・能力を 全体としてバランス良く備え、ジェンダーや国際性の面を含む多様性と適正規模を両立させる形で構成されるべきである。」とされており、補充原則4-11①においては、取締役会における知識・経験・能力のバランス、多様性及び規模に関する考え方の開示が求められています。

 

コーポレート・ガバナンス・コード改訂において、原則4-11は、ジェンダーや国際性の要素が「多様性」という言葉に含まれることを明確にしたうえで、そうした多様性と適正規模を両立させる形で取締役会を構成することを求めるものとしています。

 

こうした改訂を踏まえ、原則4-11の実施率は、68.9%(1,806 社)と、2017年7月時点の96.5%(2,451社)から、27.6ポイント減少しています。

 

補充原則4-11①については、取締役会の現状を述べることが求められている原則であり、その実施率は、96.1%(2,519社)と、2017年7月時点の98.7%(2,506社)と比較して大きな変動はありません。

 

 

2.多様性に関するキーワード

 

①専門

取締役の知識・経験・能力のバランス、多様性に関する主なキーワードとしては「専門(専 門性・専門的等)」が40.4%(1,018社)の会社において記載されています。

 

具体的な専門性として、「財務・会計」が20.2%(509社)、「経営者・会社経営・経営経験」が12.3%(311社)、「グロー バル・国際・海外」が11.5%(289社)、「法律」が3.3%(82社)の会社においてみられました。

 

また、「事業」が36.6%(921社)、「管理」が14.4%(363社)、「営業・販売」が9.5%(239社)、「生産・ 製造」が6.4%(162社)など、出身部門への言及もみられました。

 

②ダイバーシティ

デモグラフィック(人口統計学的属性)なダイバーシティについて、コーポレート・ガバナンス・コード改訂により明確化された「ジェンダー」や「国際性」と関連するキーワードである「女性」や「外国人(国 籍)」について記載している会社は、それぞれ7.8%(196 社)、8.2%(207社)と前回調査の4.1% (92社)、1.0%(23社)から増加しているものの、少数にとどまっています。

 

ただし、原則4-11を説明している市場第一部の会社の開示を分析すると、女性取締役の選任を検討中としている会社は、約半分となっており、今後、ジェンダーや国際性の面での多様性はより進んでいくものと考えられます。

 

③取締役会の規模

取締役会の規模に関する主なキーワードとしては「員数(定款)」があります。

「員数もしくは 定款」のキーワードを記載している会社は実施会社の36.5%(920社)で、定款上の取締役人数 の上限(員数)に言及している会社が多くなっています。

 

また、「意思決定」が28.2%(710社)、「監督」が 25.0%(629社)、「議論」が12.3%(309社)で記載がみられ、現在の取締役会の規模が「意思決定」や「監督」といった役割を果たすために適切であると述べています。

 

 

3.個別事例

 

<事例1>は自社の事業内容を踏まえつつ、社内取締役、社外取締役、常勤監査役、社外監査役について、それぞれに求める資質等を記載しています。

 

<事例2>は、自社の経営課題を意識した取締役会にしている旨を明記しています。経営戦略とコーポレート・ガバナンスの一体化という観点で取締役会の構成を考えています。

 

<事例3>、<事例4>及び<事例5>は、多様性に関する記載事例です。

 

<事例3> は既に女性取締役を選任している会社であり、自社の事業にとって女性の視点が重要と考えている旨を記載しています。

 

<事例4>は女性の登用について、候補者の育成についても言及し、前向きに検討している事例です。

 

<事例5>はグローバル展開していることを踏まえ、外国人の取締役を選任している事例です。

 

 

<事例1>

上記●記載の指名方針に従い、以下の通り取締役会全体としての知識・経験・能力のバランスと多様性を確保します。

また、取締役会の規模については、適正配置した執行役員への権限委譲を前提として、事業の拡大等に対応した意思 決定の迅速化を図るための取締役会の簡素化と適切な審議、執行の監督を行うために必要な多様な人財のバランスを勘案し、適切な規模とします。社内取締役については、適切な経営戦略等の立案、審議等に必要なグローバルな運営を含む、よきモノづくりに関わる研究開発、マーケティング、販売及び生産等の部門の運営及びこれらの部門を支援するコーポレート機能に関する部門の運営経験並びに当社を取り巻く事業環境及びこれに対応するための当社の強み・課題に対する理解を重視して指名します。

社外取締役については、経営戦略等の審議等に当たって、社内取締役だけでは得られない多様な、例えば、グローバルな経験を含む当社と異なる分野の製品・サービスを提供する会社の経営経験者及びコンサルタントや学識経験者等が有する経験並びにこれらの経験から得られる知識及び高い見識を有していることを重視し、あわせて独立性にも配慮して指名します。

また、社外取締役は、取締役会の多様性及び発言力の確保のため取締役の約半数を目途とします。

常勤監査役については、社内より、会計財務等の会社管理、事業等の運営、研究開発・生産から販売までのサプライチェーン及び海外経験等の各人のこれまでの業務経験及びこれらから得た知見等のバランス及び海外業務の経験や業務執行者からの独立性を確保できる資質を重視して指名します。

社外監査役については、監査に必要とされる会計財務や法律に関する高い専門性と見識、それを生かすことができる豊富な経験、及びプロフェッショナルとしての高い倫理観を有していること、そして法令上の社外性、独立性に関する適格性を重視して指名します。

また、監査役会の独立性、中立性を高めるため、監査役会の過半数を独立基準を満たす社外監査役とします。

監査役についても、経営戦略等の審議等に必要な経験、資質、専門性等を有しているかを指名の際に重視します。

また、知識・経験・能力だけでなく、性別、人種、国籍等のダイバーシティから生まれる多角的な視点が事業の推進 やグローバル拡大、適切な監督や監査に資するとの認識に立ち、これらの多様な人財の役員への登用を進めます。(略) (化学)

 

<事例2>

当社定款に定める取締役の員数は7名以下、監査役は4名以下としております。

現在、取締役は6名を選任しており、少人数による議論が可能な体制を維持しつつ、当社の事業に関する深い知見を備える取締役や、独立的な立場から取締役会の適切な意思決定に対する助言・経営陣に対する実効性の高い監督など コーポレート・ガバナンスの充実に資することのできる社外取締役を選任するなど、専門知識や経験等のバックグラウンドが異なる構成としております。

取締役はそれぞれ、当社の経営課題である「既存事業の成長」「商品力強化」「海外事業展開の加速」「新規事業領域 の拡大」への対応に必要な資質と多様性を備えており、取締役会における独立社外取締役の人数比率は3分の1となっていることから、独立性と客観性をより一層確保できる体制であると考えております。

監査役は4名選任しており、うち3名が社外監査役(うち1名が女性)となっており、独立的立場から取締役の職務の執行状況を監視しております。 (食料品)

 

<事例3>

(略) 当社は、1名の海外勤務経験のある業務執行取締役を選任しています。

また、1名の女性社外取締役を選任しています。

当社のインテリア、住生活に関連する事業の特性から女性の視点で経営・事業をチェックできるよう、これからも内外から女性の登用をいっそう進めたいと考えています。 (卸売業)

 

<事例4>

(略) 女性取締役は現在選任されておりませんが、将来の取締役候補育成に向けた職場環境の改善、制度の構築等の働き方改革を実践し、女性が経営者を目指す環境を整え、ジェンダー面における多様性の改善を検討してまいります。 (化学)

 

<事例5>

取締役については、取締役会全体としての知識・経験・能力の多様性を確保するとともに、その機能が効果的・効率 的に発揮されるよう人員の最適化を図っています。

2018年度は、グローバルで展開する当社グループの安定的な事業活動の基盤をさらに強化するため、外国人取締役を1名を新たに選任し、取締役会における、国際性を含めた多様性を確保しています。

監査役については、財務・会計に関する相当程度の知見を有する人材を1名以上選任し、法務に関する知識を有する人材も1名選任しています。 (電気機器)

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