無形資産の評価~M&Aにおける評価と取得原価の配分 | 社外財務部長 原 一浩
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無形資産の評価~M&Aにおける評価と取得原価の配分

無形資産の評価~M&Aにおける評価と取得原価の配分

1.無形資産の価値評価の流れ

 

無形資産の価値評価は、以下の流れで行われます。

 

(1)まず、企業価値を算定します。

 

株式価値+有利子負債(時価)=企業価値

 

(2)つぎに、広義の「のれん」を算定します。

 

企業価値±運転資本(時価)-有形資産(時価)=のれん(広義)

 

(3)広義の「のれん」から、無形資産(時価)を控除し「のれん」(狭義)を算定します。

 

2.無形資産評価の手続き

 

無形資産を評価する手続きは、「識別」と「測定」に分けられます。

 

識別とは、対象会社がどのような無形資産を保有しているかを把握する手続きです。

 

測定とは、把握された無形資産の金額を算定する手続きです。

 

(1)一般的なスケジュール

 

①情報収集

M&Aの目的・背景、対象会社の事業内容・財務内容・業界等を把握します。

 

②無形資産の識別

買い手側の目的を明確化し、分離して譲渡可能な無形資産があるかどうかを識別します。

 

③無形資産の測定

識別した無形資産について、適切な評価方法を選択します。

 

④会計監査人によるレビュー

無形資産およびのれんの評価は、会計処理を行うために必要なものなので、無形資産の評価結果は、会計監査人のレビューを受けることになります。

 

(2)無形資産の識別

受け入れた資産に法律上の権利など分離して譲渡可能な無形資産が含まれている場合には、

当該資産は識別可能なものとして取り扱うことになります。

評価は、企業結合日時点の時価を基礎とすることになっています。

 

識別可能な無形資産として、以下の例があります。

 

①マーケティング関連

商標、商号、役務標章、団体標章、トレードドレス(独自の色・形、パッケージデザイン等)

 

②顧客関連

顧客リスト、顧客との契約、受注残

 

③芸術関連

演劇、書籍等の著作権、楽曲、絵画、写真、動画

 

④契約に基づくもの

ライセンス、ロイヤルティ、リース契約、建設許認可、フランチャイズ契約、営業許可、利用権

 

(3)無形資産の測定

無形資産の測定には、以下の三つの評価方法があります。

 

①ネット・アセット・アプローチ(コスト・アプローチ)

a)概要

同一の効用または機能を有する無形資産を代替取得する場合のコストに基づいて評価する方法です。

一般的に、人的資産や社内マニュアル等の評価に適しており、商標権や特許権の評価には適していないとされています。

 

b)具体的な評価方法

・複製原価法

評価対象である無形資産と全く同じ複製を現時点で製作する場合のコストに基づいて評価する方法です。

 

評価対象の無形資産は、下記の計算式で算定されます。

 

無形資産の価値=新規複製コスト-修復不能な機能的陳腐化及び技術的陳腐化

 

・再調達原価法

評価対象の無形資産と全く同じ効用を有する無形資産を現時点で製作するコストに基づいて評価する方法です。

 

評価対象の無形資産は、下記の計算式で算定されます。

 

無形資産の価値=新規再調達コスト-物理的陳腐化-経済的陳腐化-修復可能な機能的陳腐化及び技術的陳腐化

 

②マーケット・アプローチ

a)概要

無形資産の売買が活発に行われており、合理的な市場価格が形成されている場合に、効果的な評価方法です。

 

b)具体的な評価方法

・売買取引比較法

評価対象の無形資産と類似の無形資産の実際の売買取引に基づいて評価する方法です。

 

・ロイヤルティ免除法

評価対象である無形資産の所有者が、その使用を第三者から許可されたと仮定して、第三者に支払う無形資産のライセンス料によって算出されるロイヤルティコストの現在価値により評価する方法です。

 

・利益差分比較法

無形資産を使用して事業を行っている企業と無形資産を使用しないで事業を行っている企業を選定し、無形資産を使用して事業を行っている企業が達成した利益と無形資産を使用しないで事業を行っている企業が達成した利益の差額に資本還元率を適用して無形資産を評価する方法です。

 

・概算法

ある業界において無形資産の売買にあたりよく使用される一定の経営指標がある場合、当該経営指標と類似する無形資産の取引金額を用いて評価する方法です。

 

・市場取替原価法

無形資産に関する外部の専門家によって、一般市場での無形資産の再調達原価から無形資産を評価する方法です。

 

③インカム・アプローチ

a)概要

将来における収益獲得能力を無形資産の評価額に反映する方法です。

無形資産評価の多くの場合に、適用することが可能です。

 

b)具体的な評価方法

・利益差分法

評価対象である無形資産がある場合の収益、費用、利益と評価対象である無形資産がない場合の収益、費用、利益とを比較して、その利益差額の割引現在価値によって評価する方法です。

 

・利益分割法

評価対象である無形資産が使用されている事業部門全体の利益、キャッシュ・フロー等に対して当該無形資産の寄与割合を見積もり、評価する方法です。

 

・企業価値残存法

評価対象である無形資産が使用されている事業の価値を算定し、評価額から当該事業のために使用されている有形資産およびその他の無形資産の時価を控除して評価する方法です。

 

無形資産の価値=無形資産を使用している事業部門の事業価値-運転資本の時価-事業用有形資産の時価-他の無形資産の時価

 

・超過収益法

企業または事業全体の利益から無形資産に寄与する利益を抽出して、それを資本還元する方法です。

 

評価対象の無形資産が寄与する利益=企業または事業部門の利益-運転資本の時価×当該運転資本に対する期待収益率-事業用の有形固定資産の時価×当該有形固定資産に対する期待収益率-評価対象以外の無形資産時価×当該無形資産に対する期待収益率

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