重要意思決定における経営モニタリング~「公認会計士社外監査役等の手引き」より | 社外財務部長 原 一浩
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重要意思決定における経営モニタリング~「公認会計士社外監査役等の手引き」より

重要意思決定における経営モニタリング~「公認会計士社外監査役等の手引き」より

2020年7月に日本公認会計士協会社外役員会計士協議会から「公認会計士社外監査役等の手引き」が公表されました。

その中から「重要意思決定における経営モニタリング」を見てみましょう。

 

重要意思決定をモニタリングする視点として、財務・会計の知見に関連する重要意思決定項目を中心に記載されています。

経営方針や戦略に沿ったものであるかどうかを念頭におく必要があり、その前提として経営方針や戦略自体の合理性にも留意が必要です。

 

1.経営計画の策定

 

(1)経営計画

 

計画が合理的かつ現実的な根拠により策定されており、資本コストも意識されていることを確認します。

 

(2)事業の方向性

 

方向性が企業のミッション、ビジョン及びコアバリューに整合したものであるのかどうかも、チェックポイントとしています。

 

2.新規事業への参入、既存事業からの撤退

 

(1)新規事業への参入

 

黒字化する見込みや投下資金の回収年数に加えて、NPV や IRR といった指標により投資の成果を全体で評価していく観点が重要です。

 

(2)既存事業からの撤退

 

撤退については、参入のケースよりも社外役員が果たせる役割は大きいと考えられます。

社内のメンバーでは特定の不採算事業についての撤退の判断がなかなか言い出せない場合に、社外役員(特に社外取締役)が撤退を話題にすることは企業価値向上につながる可能性があります。

 

3.デット・ファイナンス

 

借入資金の使途、金利、借入先、返済計画、保証や担保について合理的な説明がされているかについてモニタリングするほか、借入後の資本構成についても留意します。

 

4.エクイティ・ファイナンス

 

調達資金の使途、割当先、ファイナンスの必要性等について合理的な説明がなされているかをモニタリングするのは、デット・ファイナンスの場合と同様です。

新株式発行の場合には、有利発行や希薄化、持株比率の変動といった形で既存株主に影響を与えることがありますので、留意が必要です。

 

5.M&A

 

M&Aをモニタリングする視点について例示しています。

 

(1)M&Aの目的

 

「そのM&Aが本当に必要であるのかどうか」について下記事項を検討します。

 

①コア事業や戦略との関連性はどう考えられているのか

 

②M&Aの目的(例えば技術、ブランド、顧客データ、販路の獲得など)は明確になっているか

 

目的によっては、M&A以外の方法が適合することもあります。

 

(2)M&A後の統合過程や経営体制

 

①PMI

 

M&A後の PMI(Post Merger Integration)や経営について、あらかじめ議論されている必要があります。

100%の買収でない場合には、株主間契約の要否を含め他の株主との関係も重要です。

 

②人材

 

人材面では、キーとなる経営幹部や従業員を引き留めるためのリテンションプランの一環として、リテンション契約を締結して金銭的インセンティブを付与することなどが検討されます。

また、被買収会社や被買収事業を適切にグリップできる人材を内外からどれだけ得られ、どのように配置するかも、M&Aの成否を大きく左右します。

 

(3)M&Aを進める環境

 

担当取締役と経営トップのみでなく、早い段階からCFO が深く関与することや、取締役会で議題にされることが重要と考えられます。

また、信頼のおけるアドバイザーや専門家を起用することも検討すべきです。

 

(4)M&Aの手法

 

M&Aには、現金による株式買収や事業譲受けのほかに、合併や株式移転による統合など様々な手法があります。

M&Aのための資金調達の方法と合わせて、採用しようとしている手法が合理的なものであるかに留意します。

会計上・税務上のインパクトについても、十分に検討されていることが必要です。

 

(5)デューディリジェンスを含めた専門家の活用

 

デューディリジェンスの主眼をあらかじめ設定することが重要です。

外部専門家を起用する前に、公開情報や有料企業情報などを活用して持ち込まれた案件をスクリーニングすることができます。

M&A案件を先に進めることになった場合には、適切な専門家(ビジネス、会計・財務、法務など)からサポートを受けつつデューディリジェンスを行い、そこで認識された問題点に対応されていることが必要です。

 

(6)価格の妥当性

 

DCF 法(Discounted Cash Flow Method)は、理論的に説明しやすいという長所があり、価格に算定において広く普及しています。

しかし、前提となるキャッシュフロー予測や割引率の設定次第で大きく数字が変わってしまう、という問題もあります。

 

買収するかどうかを検討する際には、EBITDA の何倍で EV(企業価値)を見るか、という指標(EV/EBITDA 倍率、EBITDA マルチプルなどという)が重視されることも多いようです。

 

(7)シナジーの見込み

 

株式や事業を買収する場合には、支配権の対価として買収プレミアムが上乗せされるので、その買収プレミアムを上回るシナジーを得る見込みがなければ、M&Aを成功させることは困難です。

M&Aの目的やメリットが示されていて、現実的かつ合理的な数字で裏付けられているかに留意します。

 

(8)内部統制への視点

 

被買収会社のガバナンスや内部統制にも注意を払います。

会計監査人を統一するかどうかの検討も大変重要です。

 

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