「デジタルトランスフォーメーション レポート2 中間取りまとめ」 | 社外財務部長 原 一浩
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「デジタルトランスフォーメーション レポート2 中間取りまとめ」

「デジタルトランスフォーメーション レポート2 中間取りまとめ」

2020年12月28日に、経済産業省「デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会」が「DXレポート2 中間取りまとめ」を公表しました。

企業のDXを加速するための課題やその対応策を中心に議論されています。

 

Ⅰ 「DXレポート2」の「目次」は以下のようになっています。

 

1.検討の背景と議論のスコープ

2.DXの現状認識とコロナ禍によって表出したDXの本質

2.1DX堆進指標の分析結果

2.2企業のDXに対する危機感の現状

2.3コロナ禍で起きたこととDXの本質

2.4企業の目指すべき方向性

2.5ベンダー企業の目指すべき方向性

3.企業の経営・戦略の変革の方向性

3.1 DX加速シナリオ

3.2コロナ禍を契機に企集が直ちに取り組むべきアクション

3.3DX推進に向けた短期的対応

3.4DX推進に向けた中長期的対応

4.政府の政策の方向性

4.1共通理解の形成のためのポイント集の策定

4.2CIO/CDXOの役割再定義

4.3DX成功パターンの策定

4.4デジタルプラットフォームの形成

4.5ユーザー企業とベンダー企業の共創の推進

4.6 DX人材の確保

5.今後の検討の方向性

 

Ⅱ DXの現状認識とコロナ禍によって表出したDXの本質

 

1.コロナ禍で起きたこととDXの本質

 

・テレワークをはじめ社内のITインフラや就業規則等を迅速に変更してコロナ禍の環境変化に対応できた企業とできなかった企業との間で差が生じています。

 

・押印、客先常駐、対面販売など、これまでは疑問を持たなかった企業文化の変革に踏み込むことができたかが、その分かれ目となっています。

 

・事業環境の変化に迅速に適応すること、その中ではITシステムのみならず企業文化(固定観念)を変革することの重要性が明らかになりました。

 

2.企業の目指すべき方向性

 

・ 変化に迅速に適応し続けること、その中ではITシステムのみならず企業文化(固定観念)を変革することがDXの本質であり、企業の目指すべき方向性です。

 

・ コロナ禍によって人々の固定観念が変化した今こそ企業文化を変革する機会です。

 

・ビジネスにおける価値創出の中心は急速にデジタルに移行しており、今すぐ企業文化を変革しビジネスを変革できない企業は、デジタル競争の敗者になって行きます。

 

(1) DXの定義:「DX推進指標とそのガイダンス」より

 

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、

データとデジタル技術を活用して、

顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、

業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、

競争上の優位性を確立すること

 

(2) コロナ禍により表出したこと

 

コロナ禍は一過性の特殊事象ではなく常に起こりうる事業環境の変化です。

これまでは疑問を持たなかった企業文化の変革に踏み込むことができたかどうかが対応の成否を分けています。

 

(3) 企業の目指すべき方向性

 

企業が競争上の優位性を確立するには、常に変化する顧客・社会の課題をとらえ、「素早く」変革「し続ける」能力を身に付けること、その中ではITシステムのみならず企業文化(固定観念)を変革することが重要です。

 

Ⅲ 企業の経営・戦略の変革の方向性

 

1.DX加速シナリオ

 

(1) これまでのDX政策とその結果

 

企業のDX推進状況に大きな差がでています。

 

(2) コロナ禍で明らかになったDXの本質

 

① 「素早く」変革「し続ける」能力を身に付けること、その中ではITシステムのみならず企業文化(固定観念)を変革することの必要性が明らかになりました。

 

② DXは、ITシステム更新の問題から企業文化刷新の問題へとなっています。

 

(3) コロナ禍により高まるDXの緊急性

 

① デジタルの浸透

・デジタルサービスが提案する新たな価値を享受することが当たり前になっています。

 

・コロナ禍を通じて人々の固定観念が変化しています。テレワークなどをはじめとしたデジタルによる社会活動の変化は元には戻りません。

 

・ビジネスにおける価値創出の中心がデジタルの領域に移行しています。

 

② DXの緊急性

・顧客の変化に対応するにはデジタルは必須です。ビジネスを今変化させなければ、デジタル競争の敗者となります。

 

・企業の変革を推進するパートナーとなるため、これまで企業のITシステム構築を担ってきたベンター企業も変革が必要です。

 

「DXレポート2 中間取りまとめ」より抜粋。

 

(4) 加速シナリオへの対応

 

企業が取り組むべきアクションを、「直ちに」、「短期」、「中長期」に分けて説明しています。

「DXレポート2 中間取りまとめ」より抜粋。

 

2.コロナ禍を契機に企集が直ちに取り組むべきアクション

 

(1) コロナ禍でも従業員・顧客の安全を守りながら事業継続を可能とするにあたり、以下のようなカテゴリの市販製品・サービスの活用による対応を検討すべきです。

 

・業務環境のオンライン化

・業務プロセスのデジタル化

・従業員の安全・健康管理のデジタル化

・顧客接点のデジタル化

 

(2) こうしたツールの迅速かつ全社的な導入には経営トップのリーダーシップが重要です。

企業が経営者のリーダーシップの下、企業文化を変革していくうえでのファーストステップとなります。

 

3.DX推進に向けた短期的対応

 

(1) DX推進体制の整備

 

① DX推進に向けた関係者間の共通理解の形成

・DXの推進にあたっては、経営層、事業部門、IT部門が対話を通じて同じ目線を共有し、協働してビジネス変革に向けたコンセプトを描いていく必要があります。

 

・そのために、DXとはどういうもので、自社のビジネスにどのように役立つか、どのような進め方があるのか等、関係者間での対話の仕組みや中身について、共通理解を初めに形成することが必要です。

 

② CIO/CDXOの役割・権限等の明確化

・DXの推進にあたり、経営資源の配分について経営トップと対等に対話し、デジタルを戦略的に活用する提案や施策をリードする経営層がCIO/CDXOです。

 

・CIO/CDXOの果たすべき役割、権限等を明確にした上で、適切な人材が配置されるようにするべきです。

 

③ 遠隔でのコラボレーションを可能とするインフラ整備

・地理的に離れている人材や社外の人材など多様な人材の活用を可能にし、今後のイノベーション創出のインフラとなる可能性があります。

・遠隔でのコラボレーションのあり方を議論していくことが必要です。

 

(2) 業務プロセスの再設計

 

・コロナ禍前の「人が作業することを前提とした業務プロセス」を、デジタルを前提とし、かつ顧客起点で見直しを行うことにより大幅な生産性向上や新たな価値創造が期待できます。

・業務プロセスの見直しを一度実施したとしても、そこで見直しの活動を停止してしまえば業務プロセスがレガシー化してしまうため、業務プロセスは恒常的な見直しが求められます。

・業務プロセスの見直しにあたっては、顧客への価値創出に寄与するかという視点で見直しを行うべきです。

 

(3) DX推進状況の把握

 

・DX推進指標を活用することで、DXの推進状況について関係者間での認識の共有や、次の段階に進めるためのアクションを明確化することが可能となります。

・DX推進指標による診断を定期的に実施することが望まれます。

 

4.DX推進に向けた中長期的対応

 

(1) デジタルプラットフォームの形成

 

・企業は協調領域については、自前主義を排し、経営トップのリーダーシップの下、業務プロセスの標準化を進めることでSaaSやパッケージソフトウェアを活用し、貴重なIT投資の予算や従事する人材の投入を抑制すべきです。

・IT投資の効果を高めるために、業界内の他社と協調領域を形成して共通プラットフォーム化することも検討すべきです。

・共通プラットフォームによって生み出される個社を超えたつながりは、社会課題の迅速な解決と、新たな価値の提供を可能とするため、デジタル社会の重要な基盤となります。

 

(2) 産業変革のさらなる加速

 

①変化対応力の高いITシステム構築を構築するために

・迅速に仮説・検証を繰り返す必要があるSoEの領域における大規模ソフトウェア開発には、これまでの受発注形態では対応が困難な可能性が高くなります。

・競争領域を担うITシステ厶の構築においては、仮説・検証を俊敏に実施するため、アジャイルな開発体制を社内に構築し、市場の変化をとらえながら小規模な開発を繰り返すべきです。

 

②ベンダー企業の事業変革

・協調領域に関するITシステムはパッケージソフトウェアやSaaSの利用に代替されるとともに、競争領域のITシステムについては経営の迅速さを最大限に引き出すためにユーザー企業で内製化されるようになると考えられるため、今後、大規模な受託開発は減少していくものと考えられます。

・こうしたユーサー企業の変化を起点として、ベンダー企業自身も変革していくことが必要です。

 

③ユーザー企業とベンダー企業との新たな関係

・ベンダー企業はユーザー企業とアジャイルの考え方を共有しながらチームの能力を育て(共育)、内製開発を協力して実践する(共創)べきです。

・同時に、パートナーシップの中で、ユーザー企業の事業を深く理解し、新たなビジネスモデルをともに検討するビジネスパートナーへと関係を深化させていくべきです。

・ベンダー企業はデジタル技術における強みを核としながら、ビジネス展開に必要な様々なリソース(人材、技術、製品・ サービス)を提供する企業、業種・業界におけるデジタルプラットフォームを提供する企業や、さらにはベンダー企業という枠を超えた新たな製品・サービスによって直接社会へ価値提案を行う企業へと進化していくことが期待されます。

 

(3) DX人材の確保

 

① ジョブ型人事制度の拡大

・テレワーク環境下においても機能するジョブ型の雇用に移行する方向で考えるべきです。

・ジョブ型雇用の考え方は、特に、DXを進めるに際して、社外を含めた多様な人材が参画してコラボレーションするようなビジネス環境として重要なものになります。

・ジョブ(仕事の範囲、役割、責任)を明確にし、そのうえでさらに成果の評価基準を定めることから始めることが現実的です。

 

② DX人材の確保

・構想力を持ち、明確なビジョンを描き、自ら組織をけん引し、実行することができるような人材が求められます。

・DXの推進においては、企業が市場に対して提案する価値を現実のITシステムへと落とし込む技術者の役割が極めて重要です。同時に、技術者のスキルの陳腐化は、DXの足かせとなることもあります。

・常に新しい技術に敏感になり、学び続けるマインドセットを持つことができるよう、専門性を評価する仕組みや、リカレント学習の仕組みを導入すべきです。

・副業•兼業を行いやすくし、人材流動や、社員が多様な価値観と触れる環境を整えることも重要です。

 

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