「違法行為への対応に関する指針」が制定されました | 社外財務部長 原 一浩
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違法行為を見つけたり疑わしい場合に監査人はどう対応すべきか~「違法行為への対応に関する指針」が制定されました

違法行為を見つけたり疑わしい場合に監査人はどう対応すべきか~「違法行為への対応に関する指針」が制定されました

日本公認会計士協会は、平成30年4月に、「違法行為への対応に関する指針」の制定及び「職業倫理に関する解釈指針」の改正を行ない、同年7月の定期総会で、「倫理規則」の改正を行いました。

 

この指針は、財務諸表監査において違法行為等に気付いた場合に、その対応を定めたものです。それでは、その内容を見てみましょう。

 

改正の主な内容

1.倫理規則

会計事務所等所属の会員が、専門業務を実施する過程で違法行為またはその疑いに気付いた場合には、「違法行為への対応に関する指針」に従って対応すべき旨の規定を行いました。

 

2.違法行為への対応に関する指針

違法行為とは、「故意もしくは過失または作為もしくは不作為を問わず、依頼人、その経営者、監査役等、従業員等又は依頼人の指示の下で働く委託先業者その他の者によっておこなわれる、法令違反となる行為」を言います。

 

下記の法令が、例示として挙げられています。

不正、汚職及ぶ贈収賄

マネー・ローンダリング、テロリストへの資金提供及び犯罪収益

証券市場及び証券取引

情報保護

税金および年金にかかる債務及び支払い

環境保護

公衆衛生及び安全

 

 

財務諸表監査に従事している会員の場合の具体的対応を見てみましょう。

1.違法行為が発生した、もしくは発生しうると認識し、またはその疑いを持った場合、適切な階層の経営者と(及び必要に応じて監査役等)と協議します。

 

2.経営者または監査役等が対応策を講じているか、法令上の責任を理解しているかを検討します。

 

3.経営者または監査役等の対応の適切性を評価し、文書化します。対応によっては、業務の事態・契約の解除を行う場合があります。

 

財務諸表監査業務に従事する会員は、このほかにも、金融商品取引法による規制当局への報告に関する法令の遵守や監査基準委員会報告等に従って、不正を含む違法行為への対応、監査役等とのコミュニケーション等が要求されます。

 

留意事項

違法行為を見つけるために、追加的な手続きの必要はありません。違法行為対応指針は、違法行為又はその疑いを積極的に見つけに行くことは求めていません。

専門業務の過程において違法行為又はその疑いに気付いた場合のみ、指針に則った対応が求められます。

 

監査基準委員会報告書250「財務諸表監査における法令の検討」との関係ですが、違法行為対応指針は、監査基準委員会報告書250に対して追加の手続きを要求するものではありません。

 

監査基準委員会報告書250では、違法行為又はその疑いが財務諸表に重要な影響を与えているかどうかという点に着目しています。

一方、違法行為対応指針は倫理規則における行動規範の観点から、倫理上の責任を明確化し、会員がどのように対処すべきかを規定したものです。公共の利益に対してより広範囲に影響をもたらすかどうかについても着目しています。

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