キャッシュ・フロー計算書は、第3の財務諸表です | 社外財務部長 原 一浩
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キャッシュとは何か?キャッシュ・フロー計算書でのキャッシュの定義と区分、作成方法について

キャッシュとは何か?キャッシュ・フロー計算書でのキャッシュの定義と区分、作成方法について

1.キャッシュ・フロー計算書とは

キャッシュ・フロー計算書とは、一会計期間の企業活動により、資金がどのように生み出され、何に使われたか、どのような資金調達がなされ、どのような投資がなされたのかということを示す財務諸表です。

 

貸借対照表、損益計算書とともに、財務諸表を構成していて、2000年3月期から金融商品取引法で開示が義務付けられています。

 

2.キャッシュ・フロー計算書の必要性

キャッシュ・フロー計算書が貸借対照表、損益計算書に続く第3の財務諸表として必要とされるのは、利益の金額が必ずしも資金の増加とイコールではないからです。

 

キャッシュ・フロー計算書では、資金の増加としてのキャッシュ・イン・フローと資金の減少としてのキャッシュ・アウト・フローが表示され、過去の一定期間の資金収支の状況が明らかになります。

 

損益計算書に計上された利益に資金的な裏付けがない場合は、利益を計上していても資金が回らずに倒産することになります。いわゆる黒字倒産です。

 

資金がショートする兆候は、営業キャッシュ・フローがマイナスになることから知ることができます。

 

また、キャッシュ・フロー計算書における資金は、損益計算書を作成する際に選択した会計処理の方法による影響を受けないことも特徴です。

 

3. キャッシュ・フロー計算書の区分

キャッシュ・フロー計算書は、キャッシュ・フローを企業活動の性格によって、営業活動、投資活動、財務活動の三つに分けて作成します。

 

①   営業活動によるキャッシュ・フロー

「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分には、商品の販売による収入や商品の仕入による支出など営業損益計算の対象となった取引のほか、投資活動および財務活動以外の取引によるキャッシュ・フローを記載します。

 

売上に関する収入

仕入に関する支出

製造活動・販売活動に係る支出

などが営業活動の例になります。

 

② 投資活動によるキャッシュ・フロー

「投資活動によるキャッシュ・フロー」の区分には、固定資産の取得および売却、現金同等物に含まれない有価証券の取得および売却等によるキャッシュ・フローを記載します。

 

有形固定資産の取得による支出・売却による収入

有価証券(現金同等物を除く)の取得による支出・売却による収入

貸付けによる支出

などが投資活動の例になります。

 

③ 財務活動によるキャッシュ・フロー

「財務活動によるキャッシュ・フロー」には、資金の調達および返済によるキャッシュ・フローを記載します。

 

株式の発行による収入

自己株式の取得による支出

配当金の支払

社債の発行および借り入れによる収入

社債の償還および借入金の返済による支出

などが財務活動の例になります。

 

4. 作成時期と作成方法

キャッシュ・フロー計算書は、原則として連結ベースで作成しますが、連結財務諸表を作成・開示していない会社は、個別ベースのキャッシュ・フロー計算書を作成します。

 

営業活動によるキャッシュ・フローの表示方法には、主要取引ごとに総額表示する直接法と、税金等調整前当期純利益をベースに非資金損益項目その他を調整する間接法の2通りがあります。

 

① 直接法

営業収入、原材料または商品の仕入支出、人件費支出、その他の営業支出という主要な取引ごとに総額で表示します。主要な取引ごとに資金の入りと出を表示しますのでキャッシュ・フローの状況が分かりやすいという長所がある反面、この方法は作成するのに大変手間がかかるという難点があります。

 

② 間接法

連結損益計算書の税金等調整前当期純利益をベースに減価償却費など非資金損益項目や営業活動に直接結びつく売掛金、買掛金などの資産、負債の増減額のほか、その他の調整をして営業活動によるキャッシュ・フローを作成します。

 

間接法は連結損益計算書の税金等調整前当期純利益をベースに非資金損益項目や連結貸借対照表の資産、負債の増減額などをプラス・マイナスして資金の流れを間接的に表示するため、直接法のように資金の実際の流れに即しておらず、分かりづらいという難点があります。一方、連結損益計算書と連結貸借対照表から容易に作成できるという大きな長所があります。

 

そのほか利益とキャッシュ・フローの結び付きを明らかにできるという直接法にない利点があります。

 

ほとんどの上場企業が間接法により開示しており、直接法は少数派です。

 

間接法が主流を占めている理由には、間接法の方が、連結損益計算書および連結貸借対照表との関連が明確となることと、財務諸表項目からの作成が容易であることなどが考えられます。

 

5. キャッシュ・フロー計算書の資金の範囲について

キャッシュ・フロー計算書では、対象とする資金の範囲を現金(手許現金および要求払い預金)および現金同等物としています。

 

資金の範囲は、毎期継続して適用し、みだりに変更してはなりません。資金の範囲を変更した場合には、会計処理の原則および手続きの変更に当たり、その旨、その理由および影響額を記載しなければなりません。

 

現金同等物

現金同等物とは、a)容易に換金可能であり、かつ、b)価値の変動について僅少(きんしょう)なリスクしか負わない短期投資をいいます。

 

現金同等物には、例えば、取得日から満期日または償還日までの期間が3カ月以内の短期投資である定期預金、譲渡性預金、コマーシャル・ペーパーなどが含まれます。

 

現金同等物は、上記のa)およびb)の両条件を満たす必要があり、市場性のある株式のようにa)換金が容易であっても、b)価値変動リスクが僅少、とはいえないものについては、現金同等物には含まれません。

 

また、担保に提供されている定期預金や、引き出しが制限されているような預金などは、取得日から満期日または償還日までの期間が3カ月以内であっても、実質的にa)換金が容易と考えられず、現金同等物には含められません。

 

6.注記事項

キャッシュ・フロー計算書の注記事項は、以下のとおりです。

 

  • 資金の範囲に含めた現金および現金同等物の内容ならびにその期末残高の連結貸借対照表科目別の内訳

 

  • 資金の範囲を変更した場合には、その旨、その理由および影響額

 

  • 株式の取得または売却により新たに連結子会社となった会社の資産・負債または連結子会社でなくなった会社の資産・負債に重要性がある場合には、当該資産・負債の主な内訳

 

  • 営業の譲受または譲渡により増減した資産・負債に重要性がある場合には、当該資産・負債の主な内訳

 

  • 重要な非資金取引

 

以下は、重要な非資金取引の例示です。

 

  1. 転換社債の転換
  2. ファイナンス・リースによる資産の取得
  3. 株式の発行による資産の取得または合併
  4. 現物出資による株式の取得または資産の交換

 

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