グループ法人税制~連結納税制度の見直し(案) について | 社外財務部長 原 一浩
グループ法人税制~連結納税制度の見直し(案) について | 社外財務部長 原 一浩

社外財務部長 原一浩の公式サイト

グループ法人税制~連結納税制度の見直し(案) について

グループ法人税制~連結納税制度の見直し(案) について

1.はじめに

 

連結納税制度について、制度の適用実態やグループ経営の実態を踏まえ、企業の事務負担の軽減等の観点から簡素化等の見直しを行い、損益通算の基本的な枠組みは維持しつつ、各法人が個別に法人税額等の計算及び申告を行うグループ通算制度に移行します。

 

2.連結納税制度からグループ通算制度への移行

 

(1)グループ通算制度

 

グループ通算制度は各法人が個別に法人税額等の計算及び申告を行う制度です。

企業グループ内の各法人を納税単位として、各法人が個別に法人税額の計算及び申告を行いつつ、損益通算等の調整を行う簡素な仕組みとされ、申告納付や修正・更正に係る事務負担の軽減が図られます。

 

また、連結納税制度の選択のハードルとなっている適用開始・グループ加入時の時価評価課税・欠損金の切捨て等について組織再編税制と整合性が取れた制度とすることで、その対象が縮小されます。

 

(2)現行の連結納税制度

 

現行の連結納税制度は、企業グループ全体を一つの納税単位とし、一体として計算した法人税額等を親法人が申告する制度です。

 

法人間の連絡・調整が煩雑で、申告のための事務負担や計算誤りがあった場合の修正・更正の事務負担が過重になっており、損益通算のメリットがあるにもかかわらず、制度を選択していない企業グループも多く存在していました。

 

 

3.所得金額及び法人税額の計算

 

 (1)損益通算

 

① グループ通算制度

各法人が納税主体となることから、各法人の所得金額又は欠損金額を計算した上で、欠損法人の欠損金額をグループ内の他の法人の所得金額と損益通算します。

所得法人の所得金額と通算されます。

 

研究開発税制及び外国税額控除については、企業経営の実態を踏まえ、現行制度と同様、通算グループ全体で税額控除額を計算します。

 

② 損益通算の方法

損益通算の方法はプロラタ方式で行われ、欠損法人の欠損金額の合計額(所得法人の所得の金額の合計額を限度)を所得法人の所得の金額の比で配分し、所得法人において損金算入されます。

 

この損金算入された金額の合計額は、欠損法人の欠損金額の比で配分し、欠損法人において益金算入されます。

 

(2)繰越欠損金の通算

 

① グループ通算制度における繰越欠損金の通算

通算グループ内の各法人の欠損金の繰越控除前の所得(損益通算後)の金額50%相当額(中小法人等、更生法人等及び新設法人については所得金額)の合計額が控除限度額とされます。

このため、通算グループ内の各法人の控除限度額の合計額は、連結納税制度におけるグループ全体の控除限度額と変わらないと考えられます。

 

グループ通算制度は、個別申告方式であるため、各法人の損益通算後の所得金額からそれぞれ繰越欠損金の控除が行われます。

そのため、損益通算後の自己の所得金額がゼロ又はマイナスである場合には欠損金の控除ができず、通算グループ内の他の所得法人において控除されることになります。

 

連結納税制度とグループ通算制度では、グループ全体での控除額は変わらないものの、各社での控除額は異なると考えられます。

 

② グループ通算制度の適用法人の当期の所得金額又は過年度の欠損金額について誤りがあった場合

通算グループ内の他の法人との間で授受した欠損金額を当初申告額に固定することで、その誤りがあった法人のみが欠損金の繰越控除額を再計算することとされます。

ただし、欠損金の繰越期間に対する制限を潜脱するため又は離脱法人に欠損金を持たせるためにあえて誤った当初申告を行うなど、法人税の負担を不当に減少させることとなると認められるときは、職権更正において再計算ができることとされます。

 

(3)税効果相当額の授受

 

通算グループ内の法人間で、グループ通算制度を適用することにより減少する法人税及び地方法人税の額に相当する金額( 「通算税効果額」という)を授受する場合には、その授受する金額は、益金の額及び損金の額に算入しないこととされます。

 

(4)親法人の適用開始前の繰越欠損金の取扱い

 

親法人も子法人と同様、グループ通算制度の適用開始前の繰越欠損金を自己の所得の範囲内でのみ控除できます。

 

4.開始・加入時の時価評価

 

(1)時価評価課税

 

 

グループ通算制度では、以下の取り扱いになります。

 

① 親法人

グループ通算制度では、親法人も子法人と同様に取り扱われ、時価評価法人の範囲に含まれます。

 

② 子法人

子法人は時価評価課税の対象となる範囲が縮小されます。

 

グループ通算制度では、相対取引での株式購入により完全子会社化された子法人についても、適格組織再編成と同等の要件を満たせば時価評価の対象外となります。

 

なお、連結納税制度では、租税回避防止の観点から、原則として、子法人が適用開始又は連結グループへの加入に際して保有する時価評価資産の時価評価課税が行われ、含み損益を清算してから連結納税が適用されます。

また、時価評価の対象となる子法人の開始・加入前に発生した繰越欠損金は全額が切り捨てられます。

 

5.欠損金の持込制限及び含み損等の利用制限

 

(1)欠損金の持込制限

 

① グループ通算制度では開始前欠損金のうち持込可能なものについては、自己の所得金額の範囲内でのみ繰越控除できる欠損金として「特定欠損金」とされます。

 

なお、連結納税制度では、親法人の開始前欠損金は制限なく 連結グループ内で繰越控除が可能です。

 

② なお、既存の連結納税制度適用グループの親法人の欠損金(非特定連結欠損金)は、グループ通算制度への移行後も特定欠損金に該当しないものとして、通算グループ内の他の法人の所得金額と通算できることとされます。

 

(2)含み損等の利用制限

 

① 組織再編税制との整合性の観点から、開始・加入前の支配関係が5年超継続していない親法人と子法人について、支配関係発生前の欠損金の持込み及び含み損の通算グループ内での損金算入を一定期間において制限する措置が講じられます。

 

 ② ただし、開始・加入前に親法人との間に支配関係が5年超継続していない子法人であっても、通算グループ内のいずれかの法人との間に共同事業性がある場合には、支配関係発生前の欠損金の持込み及び含み損の通算グループ内での損金算入について制限を受けないこととされます。

 

6.適用時期  

 

令和4年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。

関連記事

無料相談

おススメの記事