監査役が代表取締役と定期的に会合を持つ場合の実施要領を日本監査役協会では定めています。
1 代表取締役と監査役が定期的に会合を持つことの意義
(1) 監査役の責務
監査役は、健全で持続的な成長と中長期的な企業価値の創出を実現し、社会的信頼に応える良質な企業統治体制を確立する責務を負っている。
(2) 定期的会合の目的
監査役が、その職責を果たすためには、 会社業務執行の最高責任者としての権限を有する代表取締役との間で十分な意思疎通を図り、相互認識と信頼関係を深めることが最も重要な基盤となる。
(3) 定期的会合の内容
監査役は、 代表取締役の経営方針を確かめるとともに、会社が対処すべき課題、会社を取り巻くリスクのほか、補助使用人の確保及び監査役への報告体制その他の監査役監査の環境整備の状況、 監査上の重要課題等について意見を交換する。
社長及び経営管理の中心となる取締役との会合は、次の①~③に掲げる有効性発揮のために、 毎期必ず行う行事としてルール化するよう努める。
① 監査役が企業集団のリスクを把握して監査の重点事項と監査の方法を選択する。
② 経営トップに監査役の役割や会社に対する監査役監査の有用性の理解を得ることにより、 有効な監査を円滑に遂行する環境を整備する。
③ 経営トップの交代や監査役の交代に際しての監査環境・意思疎通のレベルダウンを防ぐ。
2 会合のメンバー
(1)監査役側の出席者
非常勤監査役を含め全員が望ましいが、常勤監査役のみとすることもある。
(2)取締役側の出席者
社長1人のみ、あるいは社長のほかに経営管理の中心となる数名の取締役との共同会合 (自由な議論がなされるためには監査役を含めても出席者は少数が良い) 等、 目的、 議題等に応じて社長と意見交換して決定する。
3 開催時期と主要議題
(1) 株主総会終了後の会合における主要議題
① 監査方針、 監査計画の説明及び円滑な監査活動の保障の要請
監査役会の監査計画等の概要を説明し、 円滑に監査活動を遂行できるよう、社長に対し監査役監査の環境整備を要請する。
② 経営方針の確認
③ 社長をはじめ経営トップは、社会的通念に即した行動をとり、ダブルスタンダードを黙認しない、聖域を容認しないことの確認
④ 経営トップに「不正をしてでも」という心理的圧力要因、動機、画策がないことの確認 (面と向かって確認しなくても、 話し合いの中で心証を得ることでもよい)
⑤ 会社が対処すべき課題、 リスク等についての意見交換
⑥ 代表取締役社長をはじめ経営トップが自らの職責として内部統制システムの整備に努めることの要請並びに内部統制システムに係る取締役会決議の内容及び決議に基づく内部統制システムの構築・運用状況についての意見交換
②~⑥については、 取締役の職務執行、 善管注意義務及び取締役会の監督義務の状況を監視するため必須のものとして把握する。
⑦ 取締役からの監査役(会)への報告事項についての協議
取締役又は取締役会が会社の業務の適正を確保するために整備する体制の中に、取締役及び使用人が監査役(監査役会設置会社においては監査役会又は監査役)に報告をするための体制その他監査役への報告に関する体制が含まれる。
(2) 期中の会合における主要議題
① 社長から経営課題その他監査役(会)への報告事項の報告
② 役員人事の方針・考え方
③ 監査役監査実施状況とその結果についての社長への報告
④ 社長に対する助言・勧告(必要あると認めたときの)
⑤ 内部統制システムの整備状況についての意見交換
⑥ 監査職務の円滑な遂行、監査の実効性確保のための監査体制(監査役の員数、構成員の専門性、監査役スタッフの体制等)についての意見交換、及び監査役の候補者、 監査役選任議案を決定する手続、 補欠監査役の予選の要否等についての協議(株主総会議案の原案策定前の適時に)
⑦ 監査役監査の環境整備事項に関する社長への要請及び意見交換 (必要に応じ)
(3)期末決算準備時の会合における主要議題
① 年度決算見通しの確認
② 年間監査役監査実施状況についての取締役への説明
③ 内部統制システムの構築・運用の年間推進状況についての意見交換、基本方針見直しの要否に関する業務執行部門の検討状況確認
④ 次期経営課題の確認
(4)期末監査以降、監査役会監査報告作成時から株主総会前の会合における主要議題
① 社長から監査役選任に関する提案受領
② 監査役監査の環境整備事項に関する取締役への要請及び意見交換
③ 会社が対処すべき課題についての取締役の見解聴取
④ 会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事実や後発事象の有無等について、 取締役から報告受領
⑤ 監査役及び監査役会監査報告の内容と留意点についての監査役からの報告
⑥ 株主総会における対応についての留意点等の意見交換