2020年3月31日に企業会計審議会より改正企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(以下、本会計基準)が公表されました。
1.本会計基準の公表の経緯
本会計基準は、関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続に係る注記情報の充実のために、所要の改正を行ったものです。
我が国の会計基準等では、取引その他の事象または状況に具体的に当てはまる会計基準が存在しない場合の開示に関する会計基準上の定めが明らかではなく、開示の実態も様々であるとの違いが、ディスクロージャー専門委員会の検討で明らかになりました。
ディスクロージャー専門委員会は、「会計処理の対象となる会計事象等に関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続の開示上の取り扱いを明らかにして、財務諸表利用者にとって不可欠な情報が提供されるようにすることは、有用であると考えられる」とした報告を基準諮問委員会に行い、企業会計審議会は、審議の結果、会計基準として公表されることになりました。
2.開示目的
(1)重要な会計方針に関する注記の開示目的
「財務諸表を作成するための基礎となる事項を財務諸表利用者が理解するために、採用した会計処理の原則及び手続の概要を示すこと」です。
この開示目的は、関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に、会計処理の原則及び手続を採用するときも同じであるとしています。
本会計基準は、重要な会計方針の開示における従来の考え方を変更するものではなく、関連する会計基準等の定めが明らかでない場合いにおける取り扱いに関するこれまでの実務を変更することを意図するものではないとしています。
(2)会計基準等の定義
会計基準等とは、以下に掲げるもの及びその他の一般に公正妥当と認められる会計処理の原則及び手続を明文化して定めたものをいいます。
① 企業会計基準委員会が公表した企業会計基準
② 企業会計審議会が公表した会計基準(企業会計原則等を含む)
③ 企業会計基準委員会が公表した企業会計基準適用指針
④ 企業会計基準委員会が公表した実務対応報告
⑤ 日本公認会計士協会が公表した会計制度委員会報告、監査・保証実務委員会報告及び業種別監査委員会報告のうち会計処理の原則及び手続を定めたもの
3.関連する会計基準等の定めが明らかでない場合
(1)「関連する会計基準等の定めが明らかでない場合」の定義
「特定の会計事象等に対して適用し得る具体的な会計基準等の定めが存在しない場合」と定義しています。
(2)「関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続」の例として以下のものを挙げています。
① 関連する会計基準等が存在しない新たな取引や経済事象が出現した場合に適用する会計処理の原則及び手続で重要性のあるもの
②適用される会計基準等については明らかでないが、参考となる既存の会計基準等がある場合に当該既存の会計基準等で定める会計処理の原則及び手続きを採用したとき
4.重要な会計方針に関する注記
重要な会計方針に関する注記については、企業会計原則の定めを引き継いで、以下のように取り扱うとしています。
(1)財務諸表には、重要な会計方針を注記します。
(2)会計方針の例として、以下のものがあります。ただし、重要性の乏しいものについては注記を省略できます。
① 有価証券の評価基準及び評価方法
② 棚卸資産の評価基準及び評価方法
③ 固定資産の減価償却の方法
④ 繰延資産の処理方法
⑤ 外貨建資産及び負債の本邦通貨への換算基準
⑥ 引当金の計上基準
⑦ 収益及び費用の計上基準
(3)会計基準等の定めが明らかであり、当該会計基準等において代替的な会計処理の原則及び手続が認められていない場合には、会計方針に関する注記を省略することができます。
5.未適用の会計基準等に関する注記
未適用の会計基準等に関する注記に関する定めの記載箇所が変更になることにより、未だに適用されていない新しい会計基準等全般に当該注記が適用されることが明確化されました。
6.適用時期及び経過措置
(1)適用時期
2021年3月31日以後終了する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用されます。
ただし、公表日以後終了する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用することができます。
(2)経過措置
本会計基準を適用したことにより新たに注記する会計方針は、表示方法の変更には該当しません。
本会計基準を新たに適用したことにより、関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続を新たに開示するときには、追加情報としてその旨を注記します。