収益認識基準における「商品券等(顧客により行使されない権利)」の取り扱い | 社外財務部長 原 一浩
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収益認識基準における「商品券等(顧客により行使されない権利)」の取り扱い

収益認識基準における「商品券等(顧客により行使されない権利)」の取り扱い

日本公認会計士協会は、収益認識の基本論点(Q&A)を公表しています。

その中から、顧客により行使されない権利 (非行使部分)(商品券等)の取り扱いを見てみましょう。

 

1.会計基準等の定め

 

(1)顧客から支払いを受けた時の処理

 

①対象となる履行義務

 

企業は、将来において財又はサービスを移転する(又は移転するための準備を行う)という履行義務を負います。

 

②顧客から支払を受けた時

 

支払を受けた金額で契約負債を認識します。

 

③当該履行義務を充足した時

 

契約負債の消滅を認識し、収益を認識します。

 

(2)非行使部分

 

顧客から企業に返金が不要な前払いがなされた場合、将来において財又はサービスを受け取る権利が顧客に付与されます。

 

顧客は、当該権利のすべては行使しない場合があり、顧客により行使されない権利を「非行使部分」といいます。

 

(3)非行使部分に係る会計処理

 

収益基準では非行使部分に係る会計処理を図表1のとおり定めています。

 

「Q&A収益認識の基本論点」日本公認会計士協会より抜粋

 

①商品券等を販売した時点では、将来、商品やサービスを提供する義務が残るため、契約負債を認識します。

 

②のうち、将来にわたって利用されない部分(非行使部分)について、将来、企業が権利を得ると見込む場合(すなわち、あらかじめ顧客が権利を行使しないと見込まれる場合)は、顧客が権利を行使するパターンに比例して収益を認識します。

 

③権利を得ると見込まない場合は、顧客が残りの権利を行使する可能性が極めて低くなった時に収益を認識します。

 

2.事例:非行使部分の権利を得ると見込む場合

 

(1)前提条件

 

①販売時

 

  • X1年度において小売業者A社は自社でのみ使用可能な商品券(額面100,000円)を顧客に販売し、代金100,000円を受領しました。

 

②非行使部分

 

  • A社は類似の商品券に関する過去の経験に基づき、販売金額の10%が非行使になると見込んでいますが、非行使部分に相当する金額を顧客に返金する必要はありません。

 

・10%を非行使部分と扱って権利行使と比例的に収益認識したとしても、その後に収益の著しい減額が生じない可能性が高いとしています。

 

③利用時

 

  • X1年度において、顧客はこの商品券のうち、54,000円を利用しました。

 

(2)会計処理

 

①X1年度 (商品券販売時)

 

現金預金 100,000円 /契約負債 100,000円

 

②X1年度 (商品券利用時)

 

契約負債 54,000円 /売上高 54,000円

契約負債 6,000円 /売上高  6,000円 (*1)

 

(*1)(100,000円×10%)×54,000円/(100,000円×90%)= 6,000円

 

3.事例:非行使部分の権利を得ると見込まない場合

 

(1)前提条件

 

①販売時

 

  • X1年度において小売業者A社は自社でのみ使用可能な商品券(額面100,000円)を顧客に販売し、代金100,000円を受領しました。

 

  • A社は行使されなかった商品券について、顧客に返金する必要はありません。

 

・商品券は発行日から2年後に失効しますが、A社は過去に類似の商品券の販売を行っておらず、過去の情報を有していないため、その後に収益の著しい減額が生じない可能性が高い非行使部分の金額を見積る能力を有していません。

 

②利用時

 

・X1年度において、顧客はこの商品券のうち、54,000円を利用しました。

 

(2)会計処理

 

①X1年度 (商品券販売時)

 

現金預金 100,000円 /契約負債 100,000円

 

②X1年度 (商品券利用時)

 

契約負債 54,000円  /売上高 54,000円

 

※なお、非行使部分の金額については、顧客が残りの権利を行使する可能性が極めて低くなった時点で収益を認識するため、商品券利用時には認識しません。

 

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