取締役等に対する株式報酬等~会社法改正と会計処理 | 社外財務部長 原 一浩
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取締役等に対する株式報酬等~制度の概要と会計処理

取締役等に対する株式報酬等~制度の概要と会計処理

令和元年12月4日に「会社法の一部を改正する法律」(以下、改正法)が成立し、同月11日に公布されています。

今回の改正の中から、取締役等に対する株式報酬等を取り上げます。

 

1.改正の目的

 

取締役等の報酬等の内容の決定手続き等に関する透明性を向上させるとともに、株式会社が業績等に連動した報酬等を適正かつ円滑に取締役に付与することができるようにするための改正です。

 

2.改正の概要

 

(1)報酬等の内容

 

上場会社等において取締役個人別の報酬等の内容が定款等の定めや株主総会の決議により具体的に定められていない場合、取締役会は、その決定方針を定め、その概要等を開示しなければなりません。

 

(2)報酬としての株式等の付与

 

取締役の報酬等として当該株式会社の株式または新株予約権を付与しようとする場合、定款又は株主総会の決議により当該株式または新株予約権の数の上限等を定めなければなりません。

 

(3)金銭の払い込み

 

上場会社が取締役の報酬等として株式の発行等をする場合、金銭の払い込みを要しません。

 

(4)開示

 

事業報告による開示が充実します。

 

3. 取締役等に株式報酬等を付与する場合の手続の明確化

 

取締役等の報酬等として、募集株式の発行又は自己株式の処分、新株予約権の発行をするときは、定款又は株主総会の決議により、当該株式又は新株予約権の数の上限等を定めなければならないことが明確化されています。

 

4.取締役等の報酬等としての株式の無償発行等

 

(1)改正点

 

株式会社が業績等に連動した報酬等を適正かつ円滑に取締役に付与することができるようにするため、改正法では、主に以下の内容の改正が行われました。

 

①上場会社において、取締役等の報酬等として募集株式の発行又は自己株式の処分をするときは、金銭の払込み等を要しない

 

②上場会社において、取締役等の報酬等として新株予約権を発行するときは、新株予約権の行使に際して金銭の払込み等を要しない

 

③取締役等に対する報酬等としての株式の発行により資本金又は準備金として計上すべき額については、法務省令で定める

 

(2)対象者

 

上場会社の取締役等への報酬等のみについて、株式の無償発行等が可能となりました。

 

対象者は、取締役(取締役であった者を含む)、指名委員会等設置会社においては執行役(執行役であった者を含む)に限られており、それ以外の者(上場会社の監査役・執行役員・使用人、非上場会社の役員等)による利用は認められていない点に留意が必要となります。

 

(3)適用日

 

公布日(令和元年12月11日)から1年6カ月を超えない範囲内において政令で定める日から施行されるため、令和3年3月期以降の決算に影響を与える可能性があります。

 

5.株式報酬の会計処理

 

2020年9月11日に、企業会計基準委員会より「業務対応報告公開草案第60号 取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い(案)」が公表されました。

 

(1)範囲

 

・上場されている株式を発行している株式会社が

・取締役等の報酬等として金銭の払い込みを要しないで

・株式の発行等をする場合

・その会計処理及び開示

 

(2)事前交付型の会計処理

 

①定義

 

・対象勤務期間の開始後速やかに

・契約上の譲渡制限を付した株式の発行を行い

・権利確定条件が達成された場合に、譲渡制限が解除され

・権利確定条件が達成されない場合には、企業が無償で株式を取得する取引

 

②取締役等の報酬等として新株の発行を行う場合

 

ア)会計処理

 

・取締役等に対して新株を発行し

・これに応じて企業が取締役から取得するサービスは

・その取得に応じて費用として計上する

・費用に対応する金額は、資本金または資本準備金に計上する

 

イ)費用計上額

 

・株式の公正な評価額のうち

・対象勤務期間を基礎とする方法その他合理的な方法に基づき

・当期に発生したと認められる金額

 

③取締役等の報酬等として自己株式を処分する場合

 

ア)会計処理

 

・割当日において、処分した自己株式の帳簿価額を減額

・同額の資本準備金を減額する

・企業が取締役等から取得するサービスは

・サービスの取得に応じて費用計上する

 

(3)事後交付型の会計処理

 

①定義

 

・契約上、株式の発行等について

・権利確定条件が付されており

・権利確定条件が達成された場合

・株式等の発行が行われる取引

 

②取締役等の報酬等として新株の発行を行う場合

 

・企業が取締役等から取得するサービスは

・サービスの取得に応じて費用計上する

・対応する金額は

・株式の発行等が行われるまでの間

・株主資本以外の項目に株式引受権として計上する

 

③取締役等の報酬等として自己株式を処分する場合

 

・前項と同様の処理を行う

 

6.開示

 

年度の財務諸表において、取引の内容、規模及びその変動状況の注記を行います。

 

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