指名委員会、監査委員会、報酬委員会についての分析~「コーポレート・ガバナンス白書2019」より | 社外財務部長 原 一浩
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指名委員会、監査委員会、報酬委員会についての分析~「コーポレート・ガバナンス白書2019」より

指名委員会、監査委員会、報酬委員会についての分析~「コーポレート・ガバナンス白書2019」より

「コーポレート・ガバナンス白書2019」(以下、本白書)が東京証券取引所から2019年5月に公表されました。本白書は、我が国企業を巡る近年のコーポレート・ガバナンス改革の進展も踏まえ、分析を行っています。本白書は、関係者が、変貌している我が国の上場会社のコーポレート・ガバナンスの取組状況を概観するための助けとなることを意図して作成されています。

 

統治機構である委員会等についての分析結果を見てみましょう。

 

1.委員会等の制度の概要

 

指名委員会等設置会社は、指名委員会、監査委員会及び報酬委員会の三つの委員会を置く 株式会社とされており、いずれの委員会も取締役3名以上で組織し、その構成員の過半数を社外取締役としなければなりません。

 

また、指名委員会等設置会社では、業務執行の決定を、取締役会は自らが選任した執行役に対して大幅に委任できる仕組みとなっています。

 

コーポレート・ガバナンス・コードの原則4-10において、任意の仕組みの活用による統治機構の充実を定めており、更に、補充原則4-10①においては、独立社外取締役を主な構成員とする任意の指名委員会・報酬委員会等の設置を求めています。

 

コーポレート・ガバナンス報告書では、監査役会設置会社においては、監査役関係の記載に加え、指名委員会又は報酬委員会に相当する任意の委員会を設置している場合には、その委員構成、委員長(議長)の属性を記載することを要請しています。

 

監査等委員会設置会社においても、会社法上設置することとされている監査等委員会の他に指名委員会又は報酬委員会に相当する任意の委員会を設置している場合には、その委員構成、委員長(議長)の属性を記載することを要請しています。

 

2.記載事項の分析

 

要請されている委員会の記載事項を、「指名」、「報酬」、「監査」という機能別に、その現状を分析しています。

なお、監査役会設置会社の監査役関係は「監査」の事項で分析しています。

 

⑴ 指 名

 ① 指名委員会の設置状況

指名委員会等設置会社では、指名委員会の設置は必須ですが、監査等委員会設置会社及び監査役会設置会社においては、設置するかどうかは会社の任意です。

 

法定又は任意の指名委員会の設置状況について、市場区分別にみてみると、市場第一部において、法定又は任意の指名委員会を設置している会社の比率が、他の市場に比べ高くなっています。

 

JPX日経400構成会社をみると、法定の指名委員会を設置している会社は8.5%(34社)、任意の指名委員会を設置している会社は61.9%(247社)、設置していない会社は29.6%(118社)であり、市場第一部と比べ、更に高い水準となっています。

 

指名・報酬等の検討において、独立社外取締役を主要な構成員とする任意の指名委員会・報酬委員会の設置を求める補充原則4-10①の実施率は48.3%でした。

 

2017年7月時点のコーポレート・ガバナンス・コード実施率が76.7%であり、今回のコーポレート・ガバナンス・コード改訂により大幅に実施率が低下しています。

 

改訂前コーポレート・ガバナンス・コードでは、任意の指名委員会・報酬委員会の設置は「例示」であったものの、今回のコーポレート・ガバナンス・コード改訂により「例示」が消え、補充原則4-10①を実施するに際しては、任意の指名委員会・報酬委員会等を設置することが必要となったことから、大幅に実施率が低下したものと考えられます。

 

② 指名委員会の人数

指名委員会等設置会社では、 指名委員会の人数が他の組織形態に比べ少ないといえます。

 

指名委員会等設置会社における法定の指名委員会は平均人数が4.24人で、委員会の人数が3人の会社が38.0%と最も高い割合を占めています。

 

監査等委員会設置会社の任意の指名委員会は平均人数が4.49人で、委員会の人数が5人の会社が31.3%で最も高い割合を占めています。

 

監査役会設置会社における任意の指名委員会は人数が平均4.61人で、委員会の人数が4人の会社が28.9%と最も高い割合を占めています。

 

③ 指名委員会における社内取締役と社外取締役の比率・人数

指名委員会等設置会社の指名委員会は、社内取締役が25.9%、社外取締役が74.1%です。

 

監査等委員会設置会社の任意の指名委員会は、社内取締役が37.0%、社外取締役が61.9%、ます外有識者が0.5%、その他が0.7%となっています。

 

監査役会設置会社の任意の指名委員会は、社内取締役が36.0%、社外取締役が49.7%、社外有識者が1.9%、その他が12.3%となっています。「その他」には、監査役が含まれています。

 

監査役会設置会社と監査等委員会設置会社の任意の指名委員会は、指名委員会等設置会社の指名委員会に比べて、社内取締役の人数が多くなっています。

 

指名委員会等設置会社の指名委員会においては、社内取締役は1人のみという会社が67.6%と大半を占める一方、監査等委員会設置会社及び監査役会設置会社における任意の指名委員会では、社内取締役は2名以上という会社が過半数を占めています。

 

指名委員会等設置会社の指名委員会では法律上、委員会を構成する取締役の過半数は社外取締役でなければならないため、少なくとも2人の社外取締役が委員会の構成員となっています。

 

監査等委員会設置会社及び監査役会設置会社における任意の指名委員会においても、社外取締役は2人以上としているところが大半ですが、社外取締役が0人という事例もみられました。

 

④ 指名委員会の委員長の属性

指名委員会等設置会社の指名委員会は、委員長が社外取締役である会社が67.6%で過半数を占めています。

 

一方、監査役会設置会社及び監査等委員会設置会社の任意の指名委員会では、法定の指名委員会と比べて、委員長が社内取締役である比率が高くなっています。

 

監査等委員会設置会社の任意の指名委員会の委員長は、社内取締役が48.9%、監査役会設置会社では社内取締役が46.1%です。

 

⑵ 報 酬

① 報酬委員会の設置状況

指名委員会等設置会社では、報酬委員会の設置は必須ですが、監査等委員会設置会社及び監査役会設置会社においては、その設置は会社の任意です。

 

市場第一部での法定及び任意の報酬委員会の設置状況は他の市場に比べ高くなっています。

 

なお、JPX日経400構成会社においては、法定の報酬委員会を設置している会社は8.5%(34社)、任意の報酬委員会を設置している会社は63.7%(254 社)、設置していない会社は27.8%(111社)であり、市場第一部と比べても、2倍弱と高い設置比率になっています。

 

② 報酬委員会の人数

指名委員会等設置会社の報酬委員会の人数は、指名委員会と同様に、他の組織形態に比べ少ないといえます。

 

指名委員会等設置会社の法定の報酬委員会は平均人数が3.89人で、委員会の人数が3人の会社が50.7%と最も高い割合を占めています。

 

監査等委員会設置会社の任意の報酬委員会は平均人数が4.45人で、委員会の人数が5人の会社が31.6%と最も高い割合を占めています。

 

監査役会設置会社の任意の報酬委員会は平均人数が4.52人で、委員会の人数が4人の会社が28.6%と最も高い割合を占めています。

 

③ 報酬委員会における社内取締役と社外取締役の比率・人数

指名委員会等設置会社の報酬委員会は、社内取締役が24.6%、社外取締役が75.4% です。

 

監査等委員会設置会社の任意の報酬委員会は、社内取締役が37.9%、社外取締役が61.0%、社外有識者が0.5%、その他が0.6%となっています。

 

監査役会設置会社の任意の報酬委員会は、社内取締役が36.0%、社外取締役が48.8%、社外有識者が2.2%、その他が12.9%となっています。

 

指名委員会等設置会社の報酬委員会の社内取締役の平均人数は0.96人で、1人の会社が57.7%と最も高い割合を占めています。

 

一方、監査等委員会設置会社及び監査役会設置会社の任意の報酬委員会においては、2 人以上の社内取締役が入っている会社が過半を占めています。

 

指名委員会と同様、指名委員会等設置会社においては2人又は3人の社外取締役が構成員となっているところが大半を占め、監査等委員会設置会社及び監査役会設置会社においては、社外取締役が0人又は1人という事例もみられました。

 

④ 報酬委員会の委員長の属性

指名委員会等設置会社の報酬委員会は、委員長が社外取締役である会社の比率が74.6%で過半数を占めています。

 

監査等委員会設置会社の任意の報酬委員会は、社外取締役が48.4%と社内取締役の46.4%と比べて高くなっています。

 

監査役会設置会社の任意の報酬委員会は、委員長の属性は社内取締役が46.3%と社外取締役45.0%と比べて高くなっています。

 

⑶ 監 査

① 監査委員会・監査等委員会・監査役会の人数

監査委員会は平 均人数が3.99人で、委員会人数が3人の会社が40.8%で最も高い割合を占めています。

 

監査等委員会は平均人数が3.41人で、委員会人数が3人の会社が69.4%で最も高い割合を占めています。

 

監査役会は平均人数が3.54人で、人数が3人の会社が56.7%で最も高い割合を占めています。

 

平均人数では指名委員会等設置会社の監査委員会が最も多くなっています。

 

② 監査委員会・監査等委員会・監査役会における社内役員と社外役員の比率・人数

 

監査委員会では社内取締役が20.5%、社外取締役が79.5%、監査等委員会では社内取締役が 22.7%、社外取締役が77.3%、監査役会は社内監査役が30.9%、社外監査役が69.1%です。

 

監査委員会においては、社内取締役が0人の会社が38.0%と高くなっています。

 

監査等委員会では、社内取締役が1人という会社が67.2%で最も高い比率を示しています。

 

監査役会においては、社内監査役が1人以上いる会社が大半です。

 

いずれの場合も2人以上の社外者が構成員となることが法定されていますが、指名委員会等設置会社の監査委員会では社外取締役が3人以上である会社が大半を占めています。

 

③ 監査委員会・監査等委員会における常勤者の人数

監査委員会の常勤者の平均人数は0.80人で、0人、1人の会社が39.4%、40.8%と最も高い割合を占めています。

 

監査等委員会の常勤者の平均人数は0.92人で、1人の会社が75.6%で最も高い割合を占めています。

 

④ 監査委員会・監査等委員会の委員長の属性

監査委員会では委員長の属性は社外取締役の割合が80.3%と多い一方、監査等委員会の委員長の属性は社内取締役が59.9%を占めています。

 

また、監査等委員会では、委員長を指名していない会社が2.6%存在します。

 

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