有価証券報告書等の情報提供項目・内容が改正されました | 社外財務部長 原 一浩
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有価証券報告書等の情報提供項目・内容が改正されました

有価証券報告書等の情報提供項目・内容が改正されました

平成31年1月31日に、内閣府令第3号「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(以下「本改正」という。)が公布されました。

平成30年6月に公表された金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告において、

 

「財務情報及び記述情報の充実」

 

「建設的な対話の促進に向けた情報の提供」

 

「情報の信頼性・適時性の確保に向けた取組」

 

に向けて、適切な制度整備を行うべきとの提言がなされました。当該提言を踏まえて、有価証券報告書等の記載事項の改正が行われました。

1.財務情報及び記述情報の充実

(1)経営方針・経営戦略等について、市場の状況、競争優位性、主要製品・サービス、顧客基盤等に関する経営者の認識の説明を含めた記載を行うことになります。

 

記載上の注意(30)より抜粋

経営方針、経営環境及び対処すべき課題等

a 最近日現在における連結会社の経営方針・経営戦略等の内容を記載すること。

記載に当たっては、連結会社の経営環境(例えば、企業構造、事業を行う市場の状況、競合他社との競争優位性、主要製品・サービスの内容、顧客基盤、販売網等)についての経営者の認識の説明を含め、(27)aの規定により記載した事業の内容と関連付けて記載すること。

また、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等がある場合には、その内容を記載すること。

 

b 最近日現在における連結会社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について、その内容、対処方針等を経営方針・経営戦略等と関連付けて具体的に記載すること。

 

(2)事業等のリスクについて、顕在化する可能性の程度や時期、リスクの事業へ与える影響の内容、リスクへの対応策の説明を行うことになります。

 

記載上の注意(31)より抜粋

事業等のリスク

a 届出書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下a及び(32)において「経営成績等」という。)の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスク(連結会社の経営成績等の状況の異常な変動、特定の取引先・製品・技術等への依存、特有の法的規制・取引慣行・経営方針、重要な訴訟事件等の発生、役員・大株主・関係会社等に関する重要事項等、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項をいう。)について、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に連結会社の経営成績等の状況に与える影響の内容、当該リスクへの対応策を記載するなど、具体的に記載すること。

記載に当たっては、リスクの重要性や経営方針・経営戦略等との関連性の程度を考慮して、分かりやすく記載すること。

 

(3)会計上の見積りや見積りに用いた仮定について、不確実性の内容やその変動により経営成績に生じる影響等に関する経営者の認識の記載を行うことになります。

 

記載上の注意(32)(g)より抜粋

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについて、当該見積り及び当該仮定の不確実性の内容やその変動により経営成績等に生じる影響など、「第5 経理の状況」に記載した会計方針を補足する情報を記載すること。

ただし、記載すべき事項の全部又は一部を「第5 経理の状況」の注記において記載した場合には、その旨を記載することによって、当該注記において記載した事項の記載を省略することができる。

 

2.建設的な対話の促進に向けた情報の提供

(1)役員の報酬について、報酬プログラムの説明(業績連動報酬に関する情報や役職ごとの方針等)、プログラムに基づく報酬実績等の記載を行うことになります。

 

記載上の注意(57)より抜粋

役員の報酬等

提出会社が上場会社等である場合には、提出会社の役員(取締役、監査役及び執行役をいい、最近事業年度の末日までに退任した者を含む。以下(57)において同じ。)の報酬等(報酬、賞与その他その職務執行の対価としてその会社から受ける財産上の利益であって、最近事業年度に係るもの及び最近事業年度において受け、又は受ける見込みの額が明らかとなったもの(最近事業年度前のいずれかの事業年度に係る有価証券報告書に記載したものを除く。)をいう。)について、次のとおり記載すること。

 

a 届出書提出日現在における提出会社の役員の報酬等の額又はその算定方法の決定に関する方針の内容 及び決定方法を記載すること。

なお、当該方針を定めていない場合には、その旨を記載すること。

提出会社の役員の報酬等に、利益の状況を示す指標、株式の市場価格の状況を示す指標その他の提出会社又は当該提出会社の関係会社の業績を示す指標を基礎として算定される報酬等において (「業績連動報酬」という。)が含まれる場合において、業績連動報酬と業績連動報酬以外の報酬等の支給割合の決定に関する方針を定めているときは、当該方針の内容を記載すること。

また、当該業績連動報酬に係る指標、当該指標を選択した理由及び当該業績連動報酬の額の決定方法を記載すること。

提出会社の役員の報酬等の額又はその算定方法の決定に関する役職ごとの方針を定めている場合には、当該方針の内容を記載すること。 (以下、略)

 

b 取締役(監査等委員及び社外取締役を除く。)、監査等委員(社外取締役を除く。)、監査役(社外 監査役を除く。)、執行役及び社外役員の区分(以下「役員区分」という。)ごとに、報酬等の総額、報酬等の種類別(例えば、固定報酬、業績連動報酬及び退職慰労金等の区分をいう。)の総額及び対象となる役員の員数を記載すること。

提出会社の役員ごとに、氏名、役員区分、提出会社の役員としての報酬等(主要な連結子会社の役員としての報酬等がある場合には、当該報酬等を含む。以下「連結報酬等」という。)の総額 及び連結報酬等の種類別の額について、提出会社と各主要な連結子会社に区分して記載すること(ただし、連結報酬等の総額が1億円以上である者に限ることができる。)。(以下略)

 

c 提出会社の役員の報酬等の額又はその算定方法の決定に関する方針の決定権限を有する者の氏名又は名称、その権限の内容及び裁量の範囲を記載すること。

提出会社の役員の報酬等の額又はその算定方法の決定に関する方針の決定に関与する委員会(提出会社が任意に設置する委員会その他これに類するものをいう。以下「委員会等」という。)が存在する場合には、その手続の概要を記載すること。

また、最近事業年度の提出会社の役員の報酬等の額の決定過程における、提出会社の取締役会(指名委員会等設置会社にあっては報酬委員会)及び委員会等の活動内容を記載すること。

 

(2)政策保有株式について、保有の合理性の検証方法等について開示を求めるとともに、個別開示の対象となる銘柄数を現状の30銘柄から60銘柄に拡大されました。

 

記載上の注意(58)より抜粋

株式の保有状況

提出会社が上場会社等である場合には、提出会社の株式の保有状況について、次のとおり記載すること。

 

a 提出会社の最近事業年度に係る貸借対照表に計上されている投資有価証券に該当する株式のうち保有目的が純投資目的である投資株式と純投資目的以外の目的である投資株式の区分の基準や考え方を記載すること。

 

b 保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式について、提出会社の保有方針及び保有の合理性を検証する方法を記載すること。また、保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式について、個別銘柄の保有の適否に関する取締役会等における検証の内容を記載すること。

 

3.情報の信頼性・適時性の確保に向けた取組

監査役会等の活動状況、監査法人による継続監査期間、ネットワークファームに対する監査報酬等の開示を行うことになります。

 

記載上の注意(56)より抜粋

a 監査役監査の状況について、次のとおり記載すること。

監査役監査の組織、人員(財務及び会計に関する相当程度の知見を有する監査役、監査等委員又は監査委員が含まれる場合には、その内容を含む。)及び手続について、具体的に、かつ、分かりやすく記載すること。

最近事業年度における提出会社の監査役及び監査役会(監査等委員会設置会社にあっては提出会社の監査等委員会、指名委員会等設置会社にあっては提出会社の監査委員会をいう。)の活動状況(開催頻度、主な検討事項、個々の監査役の出席状況及び常勤の監査役の活動等) を記載すること。

 

d 会計監査の状況について、次のとおり記載すること。

(中略)

 

(f)監査報酬の内容等について、次のとおり記載すること。

(中略)

ⅱ 最近2連結会計年度において、提出会社及び提出会社の連結子会社がそれぞれ監査公認会計士等と同一のネットワーク(共通の名称を用いるなどして2以上の国においてその業務を行う公認会計士又は監査法人及び外国監査事務所等(外国の法令に準拠し、外国において、他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の監査又は証明をすることを業とする者をいう。)を含めて構成される組織をいう。)に属する者に対して支払った、又は支払うべき報酬について、監査証明業務に基づく報酬と非監査業務に基づく報酬に区分して記載すること。この場合において、非監査業務に基づく報酬を記載したときは、当該非監査業務の内容を記載すること。

 

4.公布日等

本改正に係る内閣府令は、平成31年1月31日付で公布・施行されます。

なお、改正後の規定は、以下のとおり適用されます。

(1)平成31年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等から適用(上記「建設的な対話の促進に向けた情報の提供」欄に記載の項目等)

(2)平成32年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等から適用(上記(1)以外)

※(2)については平成31年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等からの適用可。

 

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