監査役スタッフの役割と留意点~監査役監査の実効性確保のために | 社外財務部長 原 一浩
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監査役スタッフの役割と留意点~監査役監査の実効性確保のために

監査役スタッフの役割と留意点~監査役監査の実効性確保のために

監査役は、取締役の職務執行を監査する会社機関です(会社法381条1項)。

監査役の職責として、取締役の職務執行に関し、不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があったときは、各事業年度の監査報告においてその事実を記載する必要があります(会社法施行規則129条1項3号)。

監査役が取締役の職務執行を監査するために、執行役員以下の使用人からヒアリングを行ったり、事業の現場に往査したりする実務が定着しています。

監査役は、全ての事業部門を監査の対象とすることになりますから、一定規模以上の会社においては、監査役がその職責を十分に果たすために、それ相応の人的資源が必要となります。

監査役監査の実効性を確保する観点から、監査役スタッフを活用することが必要になります。

 

1.監査役監査を支える体制:平成27年会社法施行規則の改正

 

平成27年の会社法施行規則の改正では、内部統制システムの整備に関する規定に関して、一連の改正があり、監査役設置会社である取締役会設置会社について、監査を支える体制や監査役による使用人からの情報収集に関する体制に係る規定の充実・具体化等を図るための改正が行われました。

内部統制システムが適切に構築され、適切に運用されるためには、コーポレート・ガバナンスの一翼を担う監査役監査の実効性確保も重要であるからです。

この改正の中で、監査役スタッフに関しては、監査役からの監査役スタッフに対する指示の実効性確保に関する規定が追加されました(会社法施行規則100条3項3号)。

この追加規定に関連する検討事項例として、

①監査役スタッフを専属とするか他部署との兼務とするか

②監査役スタッフの異動についての監査役の同意の要否

③取締役の監査役スタッフに対する指揮命令権の有無

④監査役スタッフの懲戒についての監査役の関与の決定

等があげられます。

 

2.監査役スタッフの役割と留意点

 

(1)監査役スタッフの役割

 

監査役スタッフとして期待される役割として、以下の項目が挙げられます。

 

① 監査関連業務のサポート

監査に関連する業務としては、年間スケジュールの作成、監査計画の策定、業務監査スケジュール、監査役会議事録、監査報告の作成など行わなければならない業務が多数あります。

監査役が本来の職責である取締役の職務執行を監査する役割に注力できるようにするためには、監査役スタッフには上記の業務をサポートする役割が期待されます。

 

② 社内調整

特に、業務監査を行う上で、対象部門の監査受け入れ体制の確認や往査スケジュールの調整など社内調整を行わなければならない項目は多岐にわたります。

円滑に業務監査を実施するうえで、監査役スタッフのサポートは必須になります。

 

③ 情報収集

企業不祥事を未然に防止するためには、社内の事件・事故から消費者をはじめとした第三者からのクレームに至るまで、適時適切に監査役に情報が入ることが必要です。

取締役や会計監査人が監査役に対して報告義務があるのは、「著しい損害」や「重大な事実」に関してで、かなり大きな問題となってからとなります。

重大な不祥事や事件・事故が表面化する前には、その兆候があるのが通例であり、その兆候を見逃さないためには、監査役に社内の情報がタイムリーに入ることが必要です。

監査役スタッフには、情報収集のサポートの役割が期待されます。

 

(2)監査役スタッフとしての留意点

 

①監査役スタッフが専属の場合

専属の監査役スタッフが配属されている場合は、スタッフの人事は監査役も直接関わるべきですし、スタッフの評価も普段接している監査役が行うことが原則と考えられます。

また、専属の監査役スタッフとしても、執行部門と協力関係を保ちつつ、監査役は法的に執行部門から独立している点を意識した行動が求められます。

 

②監査役スタッフが兼務の場合
監査役スタッフの専属が理想であると考えたとしても、企業規模や業種・業態によっては、兼任配属とせざるを得ない会社もあると思われます。

兼任スタッフと監査役とで定期的な連絡会を行うなど、両者の間で日常的なコミュニケーションを意識的に高めることが必要であり、とりわけ、監査役としての特有な実務が集中する期初・期末時期には、監査役スタッフは監査役のサポートのために一定の業務時間の確保を予定しておくことが大切です。

また、執行部門としての業務と監査役スタッフとしての業務を分離しておくために、監査役スタッフのための職務規程を策定しておくことが望ましいといえます。

 

3.監査役スタッフの現状と課題

 

(1)監査役スタッフの配属

 

日本監査役協会が2019年に実施したアンケートによると、監査役スタッフを配属していない会社の割合は57.3%(母数3,530社)と過半数を超え、上場会社に限っても48.5%(母数1,490社)と過半数近くとなっています。

監査役スタッフを配属している会社でも、兼務スタッフのみの会社の割合は69.8%(母数1,509社)であり、上場会社でも62.4%(母数768社)となっています。

 

(2)監査役スタッフの課題

 

内部統制システムの一環として、監査役スタッフについての規定があることは、監査役監査の実効性確保のためには、監査役スタッフが重要な役割を担っているということです。

社内において、監査役スタッフの業務がキャリアパスの一環として位置付けられ、かつ監査役監査に必要とされる高い能力と意欲を持つ監査役スタッフが監査役の要請によって適切に配属されることは、監査役監査の実効性の向上にもつながることになります。

 

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