「税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組について」が 国税庁調査課から平成28年7月に公表されました。
取組の趣旨
大企業の税務コンプライアンスの維持・向上には、トップマネジメントの積極的な関与・指導の下、大企業が自ら税務に関するコーポレートガバナンスを充実させていくことが重要、かつ、効果的であることから、その充実を促進するものです。
税務に関するコーポレートガバナンス:税務についてトップマネジメントが自ら適正申告の確保に積極的に関与し、必要な内部統制を整備すること
税務コンプライアンス:納税者が納税義務を自発的かつ適正に履行すること
トップマネジメント:法人の代表取締役、代表執行役のほか、法人の業務に関する意思決定を行う経営責任者等
取組の概要
① 税務コーポレートガバナンスの確認
② 税務コーポレートガバナンスの判定
③ トップマネジメントとの面談
④ 判定結果の活用、調査の機会を利用した働きかけ
上記、各事項を説明会等により会社に働きかけを行います。
① 税務に関するコーポレートガバナンスの確認
対象法人: 国税局特別国税調査官所掌法人
確認方法: 調査の機会を利用して、対象法人に「税務に関するコーポレートガバナンス確認表」の記載を依頼し、確認する。
② 税務に関するコーポレートガバナンスの判定
- トップマネジメントの関与・指導
- 経理・監査部門の体制・機能の整備・運用
- 内部牽制の働く税務・会計処理手続の整備・運用
- 税務に関する情報及び再発防止策の社内への周知
- 不適切な行為の抑制策の整備・運用
- 確認項目の評価・判定 ※ 税務調査への適切な対応・帳簿書類等の保存状況を勘案
③ トップマネジメントとの面談
面談の相手方: 調査法人のトップマネジメント
面談担当者:調査(査察)部長又は次長が担当、担当特官が同席
実施方法: トップマネジメントがリーダーシップを発揮して税務に関するコーポレートガバナンスの充実に取り組んでいくことを促すため、調査結果の概要を説明し、その是正事項の再発防止に向けた取組を含め、税務に関するコーポレートガバナンスについて、改善が必要な箇所に関して、効果的な取組事例を紹介しつつ、トップマネジメントとの意見交換を実施する
④ 税務に関するコーポレートガバナンスの判定結果の活用
調査必要度の判断材料への活用
税務に関するコーポレートガバナンスの判定結果は、特別国税調査官所掌法人の調査必要度の重要な判断材料の一つとして活用
税務コーポレートガバナンスの状況が良好な法人への対応
税務に関するコーポレートガバナンスの状況が良好であり、調査結果に大口・悪質な是正事項がなく調査必要度が低いと判断される法人については、調査省略時に一般に国税当局と見解の相違が生じやすい取引を自主的に開示し、当局がその適正処理を確認することを条件に、次回調査までの調査間隔を1年延長
○ 自主開示事項の確認
調査間隔を延長した結果、一回の調査の事務負担が法人及び国税当局双方にとって過重にならないために実施
調査省略対象とする事業年度の申告書審理を行う過程において、一般に国税当局と見解の相違が生じやすい取引等を自主開示し、当局がその適正処理を確認
自主開示事項は、申告済の事業年度における以下に掲げる取引等の処理で、取引金額が多額のもの
・ 組織再編における適格組織再編か否かの判定
・ 特別損失計上取引の処理
・ 仮受金又は仮払金計上取引の処理 など
取組の効果等
大きな組織を有する大企業の税務コンプライアンスの維持・向上のためには、税務に関するコーポレートガバナンスの充実が重要です。
税務に関するコーポレートガバナンスが不十分であれば、事業部や支店、工場などの組織の第一線で不適切な経理処理が生じるリスクが高まります。
税務に関するコーポレートガバナンスの充実による税務コンプライアンスの向上は、企業・国税当局の双方にメリットがあります。
企業のメリット:税務リスクの軽減、税務調査対応の負担軽減
国税当局のメリット:調査必要度の高い法人への税務調査の重点化