不正な財務報告防止、適切な対応、監査役等と監査人の連携 | 社外財務部長 原 一浩
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経営者が関与する不正な財務報告を防止し、適切に対応するためには監査役等と監査人との連携が重要です

経営者が関与する不正な財務報告を防止し、適切に対応するためには監査役等と監査人との連携が重要です

「監査役等と監査人との連携に関する共同研究報告」は、監査役若しくは監査役会又は監査委員会、監査等委員会(以下「監査役等」という。)と監査人がそれぞれの職責を果たす上での相互連携のあり方を示すことにより、両者の連携を強化し、コーポレート・ガバナンスの一層の向上を目的として日本監査役協会と日本公認会計士協会が共同して取りまとめたものです。平成30年1月25日が最終改訂版です。

どのような内容かを見ていきましょう。

 

監査役等と監査人との連携とその効果

経営者が関与する不正な財務報告を防止し、適切に対応するためには両者の連携が重要です。

監査人が遵守すべき監査基準においても、日本監査役協会の監査役監査基準等においても、監査役等と会計監査人とが適切な連携を図るべきことが明確にされています。

ほかにも会社法では、監査役等には会計監査人の選解任等に関する議案内容の決定権及び監査報酬の同意権が付与されていますが、この権限を適切に行使するためにも、監査役等は監査人と十分なコミュニケーションを取ることが必要です。

監査役等と監査人の連携は会計監査が中心となるものの、監査役等が業務監査から得る情報は監査人の監査にも有用です。一方、監査人から得られる情報は監査役等にとって会計監査だけでなく業務監査にも有用です。

監査役等と監査人は、監査上の必要な事項について情報提供と意見交換を行い、監査役等からは日常の業務監査等で知り得た情報を監査人に伝え、監査人からは会計監査で得た情報を監査役等に伝えることにより、それぞれの監査の有効性及び効率性を高めることができます。

 

監査役等と監査人は、コミュニケーションに際して関係者全員に適切に情報が伝わるよう努める必要があります。

コミュニケーションに当たって、監査役等と監査人は、以下の事項について協議を行い、両者の期待に相違が生じないようにする必要があります。

(協議事項)

① 監査契約の新規締結時、監査契約更新時又は業務執行社員若しくは監査役・監査委員・監査等委員の交代時における、それぞれの監査体制等に関する事項

② 監査人から監査役等への報告事項や情報提供の範囲

③ 監査役等から監査人への情報提供の範囲

④ コミュニケーションのための文書を第三者へ提示する必要が生じた場合には、その同意手続

 

連携の時期及び情報・意見交換すべき基本的事項の例示

監査役等と監査人の連携の時期と情報交換・意見交換すべき基本的事項について、以下のように例示されています。

 

1.監査契約の新規締結時

① 監査人の状況及び品質管理体制(不正リスクへの対応を含む。)

② 前任監査人との引継の状況

③ 監査役等と前任監査人との連携の状況

 

2.監査契約の更新時

① 監査人の再任に際しての監査役等の評価結果の概要と要望事項

② 監査人の状況及び品質管理体制(上記(1)①に挙げられている事項)

③ 監査契約更新前に監査人が経営者と協議した重要な事項

④ 業務執行社員又は監査役・監査委員・監査等委員が交代した場合、その経緯

 

3.監査計画の策定時

① 監査人による監査計画(四半期レビュー計画及び内部統制監査計画を含む。)

②監査役等による監査方針及び監査計画

 

4.四半期レビュー時

① 監査人による四半期レビューの実施状況

② 年度の監査計画で特定した特別な検討を必要とするリスクの状況と四半期レビュー計画に与える影響

③ 必要に応じて、未修正の虚偽表示の内容とそれが個別に又は集計して監査人の四半期財務諸表に対する結論に与える影響

④ 必要に応じて、監査人が要請した経営者確認書の草案

⑤ 監査人の会計・レビュー上の検討事項及び内部統制の重要な不備(改善状況を含む。)

⑥ 監査人の四半期レビュー報告書の記載内容

⑦ 四半期報告書に関する事項

⑧ 監査役等の企業集団を含む監査の実施状況

 

5.期末監査時

特に、会社法監査においては、会計監査人の監査方法及び結果の相当性を判断するに必要とされる十分な情報提供と説明・意見交換が必要となります。

① 監査人による監査(グループ監査を含む。)の実施状況

② 年度の監査計画で特定した特別な検討を必要とするリスクの状況とその対応

③ 監査人の会計・監査上の検討事項及び内部統制の開示すべき重要な不備又は重要な不備の内容(改善状況を含む。)

④ 監査人の状況及び品質管理体制(上記(1)①に挙げられている事項についての変更点及び留意すべき点)

⑤ 未修正の虚偽表示の内容とそれが個別に又は集計して監査人の監査意見に与える影響

⑥ 監査人が要請した経営者確認書の草案

⑦ 監査人が監査した財務諸表が含まれる開示書類におけるその他の記載内容に修正が必要であるが、経営者が修正することに同意しない事項

⑧ 監査人の監査報告書の記載内容

⑨ 会社法監査終了時点での財務報告に係る内部統制に関する監査人の監査の状況

⑩ 有価証券報告書及び内部統制報告書に関する事項

⑪ 内部統制監査報告書に関する事項

⑫ 監査役等の企業集団を含む監査の実施状況

⑬ 監査役等の監査報告書の記載内容

⑭ 監査役等の財務報告に係る内部統制の監視の状況

 

6.随時

必要に応じて、情報提供・意見交換等を行います。

① 監査人が監査の実施過程で発見した違法行為又はその疑いに関連する事項

② 監査人が会社に影響を与える不正を発見したか、疑いを抱いた事項

③ 監査人が把握する会計上の変更及び誤謬の訂正に関する事項

④ ①から③までのほか、監査上の発見事項(軽微なものは除く。)

⑤ 監査人の監査計画(グループ監査計画を含む。)の重要な修正に関する事項

⑥ 上記①から⑤への監査役等の対応

⑦ 監査役等が監査人の監査に影響を及ぼすと判断した事項

 

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