経済社会のデジタル化を踏まえ、生産性の向上等を目的として電子帳簿保存法が改正されました | 社外財務部長 原 一浩
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経済社会のデジタル化を踏まえ、生産性の向上等を目的として電子帳簿保存法が改正されました

経済社会のデジタル化を踏まえ、生産性の向上等を目的として電子帳簿保存法が改正されました

1.改正の目的

 

経済社会のデジタル化を踏まえ、経理の電子化による生産性の向上、記帳水準の向上等に資するため、令和3年度の税制改正において、「電子帳簿保存法」の改正等が行われ、帳簿書類を電子的に保存する際の手続等について、抜本的な見直しがなされました。

 

具体的な改正内容 は、3.4.5.に記載しています。

令和4年1月1日施行となります。

 

2.電子帳簿保存法とは

 

(1)法律の概要

 

各税法で原則紙での保存が義務づけられている帳簿書類について一定の要件を満たした上で電磁的記録(電子データ)による保存を可能とすること及び電子的に授受した取引情報の保存義務等を定めた法律です。

 

(2)電磁的記録による保存

 

電子帳簿保存法上、電磁的記録による保存は、大きく3種類に区分されています。

 

①電子帳簿等保存

電子的に作成した帳簿・書類をデータのまま保存

 

②スキャナ保存

紙で受領・作成した書類を画像データで保存

 

③電子取引

電子的に授受した取引情報をデータで保存

 

 

3.「電子帳簿等保存」に関する改正事項

 

(1)税務署長の事前承認制度の廃止

 

①これまで、電子的に作成した国税関係帳簿を電磁的記録により保存する場合には、事前に税務署長の承認が必要でしたが、事業者の事務負担を軽減するため、事前承認は不要とされました。

電子的に作成した国税関係書類を電磁的記録により保存する場合についても同様です。

 

②令和4年1月1日以後に備え付けを開始する国税関係帳簿又は保存を行う国税関係書類について適用されます。

 

③令和4年1月1日以後も改正前の要件を満たして保存等を行おうとする方が承認を受けようとする場合には、承認申請書を令和3年9月30日までに所轄税務署長宛提出することになります。スキャナ保存も同様です。

 

(2)優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置の整備

 

①制度の概要

 

一定の国税関係帳簿について優良な電子帳簿の要件を満たして電磁的記録による備付け及び保存を行い、本措置の適用を受ける旨等を記載した届出書をあらかじめ所轄税務署長に提出している保存義務者について、その国税関係帳簿(優良な電子帳簿)に記録された事項に関し申告漏れがあった場合には、その申告漏れに課される過少申告加算税が5%軽減される措置が整備されました。申告漏れについて、隠蔽し、又は仮装された事実がある場合には、本措置の適用はありません。

 

②一定の国税関係帳簿

 

一定の国税関係帳簿とは、所得税法・法人税法に基づき青色申告者(青色申告法人)が保存しなければならないこととされる総勘定元帳、仕訳帳その他必要な帳簿(売掛帳や固定資産台帳等)又は消費税法に基づき事業者が保存しなければならないこととされている帳簿をいいます。

 

③「電子帳簿の保存要件の概要」の「優良」の要件を満たすものになります。

 

④令和4年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税について適用されます。

 

(3)最低限の要件を満たす電子帳簿についても、電磁的記録による保存等が可能となりました。

 

正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)に従って記録されるものに限られます。

「電子帳簿の保存要件の概要」の「その他」の要件を満たすものになります。

 

(4)電子帳簿の保存要件

 

国税庁作成パンフレットより転載

 

4.「スキャナ保存」に関する改正事項

 

(1)税務署長の事前承認制度の廃止

 

令和4年1月1日以後に行うスキャナ保存について適用されます。

 

(2)タイムスタンプ要件、検索要件等について、要件の緩和

 

①タイムスタンプの付与期間が、記録事項の入力期間と同様、最長約2か月と概ね7営業日以内とされました。

 

②受領者等がスキャナで読み取る際の国税関係書類への自署が不要とされました。

 

③電磁的記録について訂正又は削除を行った場合に、これらの事実及び内容を確認することができるクラウド等において、入力期間内にその電磁的記録の保存を行ったことを確認することができるときは、タイムスタンプの付与に代えることができることとされました。

 

④検索要件の記録項目について、取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先に限定されるとともに、税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じる場合には、範囲指定及び項目を組み合わせて条件を設定できる機能の確保が不要となりました。

令和4年1月1日以後に行うスキャナ保存について適用されます。

 

(3)適正事務処理要件の廃止

 

相互けん制、定期的な検査及び再発防止策の社内規程整備等が適正事務処理要件でした。

令和4年1月1日以後に行うスキャナ保存について適用されます。

 

(4)スキャナ保存された電磁的記録に関連した不正があった場合の重加算税の加重措置の整備

 

適正な保存を担保するための措置として、スキャナ保存が行われた国税関係書類に係る電磁的記録に関して、隠蔽し、又は仮装された事実があった場合には、その事実に関し生じた申告漏れ等に課される重加算税が 10%加重される措置が整備されました。

令和4年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用されます。

 

5.「電子取引」に関する改正事項

 

(1)タイムスタンプ要件及び検索要件についての要件の緩和

 

タイムスタンプ要件に係るタイムスタンプの付与期間及び検索要件に係る検索項目について「スキャナ保存に関する改正事項」と同趣旨の改正が行われたほか、基準期間の売上高が 1,000 万円以下である小規模な事業者について、税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、検索要件の全てが不要とされました。

 

「基準期間」とは、個人事業者については電子取引が行われた日の属する年の前々年の 1 月 1 日から 12 月 31 日までの期間をいい、法人については電子取引が行われた日の属する事業年度の前々事業年度をいいます。

 

(2)適正な保存を担保する措置の見直し

 

①申告所得税及び法人税における電子取引の取引情報に係る電磁的記録について、その電磁的記録の出力書面等の保存をもってその電磁的記録の保存に代えることができる措置は、廃止されました。

 

消費税における電子取引の取引情報等に係る電磁的記録については、引き続き出力書面による保存が可能です。

 

②電子取引の取引情報に係る電磁的記録に関して、隠蔽し、又は仮装された事実があった場合には、その事実に関し生じた申告漏れ等に課される重加算税が 10%加重される措置が整備されました。

 

(3)電子取引の保存要件

 

①真実性の要件

 

以下の措置のいずれかを行うこと

 

(ⅰ)タイムスタンプが付された後、取引情報の授受を行う

 

(ⅱ)取引情報の授受後、速やかに(又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに) タイ厶スタンプを付すとともに、保辩行う者又は監督者に関する倩報を確認できるようにしておく

 

(ⅲ)記録事項の訂正•削除を行った場台に、これらの事実及び内容を確認できるシステム又は記録事項の訂正•削除を行うことができないシステムで取引情報の授受及び保存を行う

 

(ⅳ)正当な理由がない訂正•削除の防止に関する事務処理規程を定め、その規程に沿った運用を行う

 

②可視性の要件

 

(ⅰ)保存場所に、電子計算機(パソコン等)、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれらの操作マニュアルを備え付け、画面•書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておくこと

 

(ⅱ)電子計算機処理システ厶の概要書を備え付けること

 

(ⅲ)検索機能を確保すること

保存義務者が小規模な事業者でダウン□ードの求めに応じることができるようにしている場合には、検索機能は不要です。

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