1.損益計算書分析の目的
財務デューデリジェンスにおける損益計算書分析の主な目的は、調査対象期間の損益計算書から、対象会社の収益力を把握し、その情報を提供することにあります。
正常収益力を把握し、時系列分析、セグメント別分析、ポートフォリオ分析を行い、対象会社の損益構造や収益源を把握します。
2.正常収益力の把握
対象会社の損益計算書には、事業構造改革費用などの非経常的な費用や損失が計上されている場合があります。場合によっては、事業や子会社などの売却益が計上されていることもあります。
損益計算書分析においては、非経常的な損益を除外して、正常収益を算定します。
3.損益構造の把握
将来の事業計画の合理性を判断するためには、過去の業績を分析し、どの事業、どの拠点、どの顧客が収益現価を把握する必要があります。
次の、収益力分析で解説します。
4.収益力分析
(1)時系列分析
過去数期間の損益計算書の推移を作成し、売上高、売上原価、販売費および一般管理費、営業外損益、特別損益の状況を把握します。
①売上高
売上高の増減理由を把握するために、売上高を事業、地域、拠点、製商品、顧客などに分類して分析を行います。
②売上原価
製造業の場合は製造原価、小売りや卸売りの場合には商品原価となります。
製造原価は、原材料、直接労務費、製造間接費の構成要素別に分析します。
③人件費
人件費の変動状況を把握します。
従業員数の推移、年齢構成、給与水準等を把握します。また、給与制度、賞与制度、退職金制度、パート・アルバイト・派遣等の状況についても把握します。
最近では、未払い残業代の問題がありますので、注意が必要です。
④営業外損益、特別損益
経常的に発生する損益と非経常的に発生する損益が、正しく分類されているか注意が必要です。
(2)予算・実績分析
対象会社の正常収益力を把握するためには、過去の損益計算書を分析することにより把握し、その損益計算書をもとに作成された将来の事業計画の妥当性を判断することになります。
過去の予算と実績の比較を行い、その乖離額の原因分析をして、将来の事業計画が適切に作成されているかの判断をすることになります。
(3)セグメント別分析
事業別、地域別、拠点別などのセグメント別に損益を把握し、セグメント別の収益力や赤字セグメントの今後の方針等を把握します。
(4)ポートフォリオ分析
製商品別、顧客別、仕入先別等に分けて分析します。
製商品では、競合他社、競合新製商品、製商品のライフサイクルなどが業績へ影響を与えることになります。
顧客別では、主力顧客の業績悪化、事業戦略の変更などが業績へ影響を与えることになります。
特定の仕入先への依存度が高い場合には、仕入先の業績悪化、事業戦略の変更などが業績へ影響を与えることになります。