経済産業省「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」は、2018年9月に「DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート」を公表しました。
DXレポートの重要と思われるところをまとめてみました。
1.DXの定義と重要性
(1)DXの定義
企業が外部エコシステム(顧客・市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデルを通して、ネットとリアルの両面で顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位を確立すること(IDC Japan株式会社)としています。
(2)DXの重要性
あらゆる産業において、新たなデジタル技術を利用してこれまでにないビジネス・モデルを展開する新規参入者が登場し、ゲームチェンジが起きつつあります。
こうした中で、各企業は、競争力維持・強化のために、デジタルトランスフォーメーションをスピーディーに進めていくことが求められています。
2.現状と課題
まず、「DXを実行するうえでの経営戦略における現状と課題」を取り上げています。
DXを実行するにあたっては、新たなデジタル技術を活用して、どのようにビジネスを変革していくかの経営戦略が不可欠です。
DXの必要性に対する認識は高まり、そのための組織を立ち上げる等の動きはあるものの、ビジネスをどのように変革していくか、そのためにどのようなデータをどのように活用するか、どのようなデジタル技術をどう活用すべきかについて、具体的な方向性を模索している企業が多いのが現状であるとしています。
以下、「既存システムの現状と課題」、「ユーザー企業における経営層・各部門・人材等の課題」、「ユーザー企業とベンダー企業との関係」、「情報サービス業の抱える課題」、「DXを推進しない場合の影響」について記載しています。
3.対応策
(1)「DX推進システムガイドライン」の策定
DXを加速していくために、DXを実現すべくITシステムを構築していくうえでのアプローチや必要なアクションあるいは失敗に陥らないために失敗の典型パターンを示した「DXを推進するための新たなデジタル技術の活用とレガシーシステム刷新に関するガイドライン(DX推進システムガイドライン)」 (以下、ガイドライン)を策定します。
①必要性
DXを実行していくにあたっては、データの利活用がカギとなります。そのため、データを蓄積・処理するITシステムが、環境変化、経営・事業の変化の対し、柔軟に、かつスピーディーに対応できることが必要です。
②対応策
ガイドラインは、以下の目的を想定しています。
ア) 経営者が、DXを実現するうえで、基盤となるITシステムに関する意思決定に関して押さえるべき事項を明確化すること
イ) 取締役会メンバーや株主がDXの仕組みをチェックするうえで活用できること
(2)「見える化」指標、診断スキームの構築
ユーザー自身がITシステムの全体像を把握できるように、「見える化」指標と診断スキームを構築します。
①必要性
ア) 老朽化・複雑化・ブラックボックス化した既存システムの刷新に多くの企業が踏み出せていない現状
イ) 自社の情報資産を正確に把握できていないため、どこに課題がありどのように構築していけばよいかの判断がつかない
ウ) 経営上の重要な問題点について、経営者が適切に認識できているとは言えない状況
エ) このため、企業のDXの足かせになっている既存システムのアセスメント(情報資産の「見える化」)は、経営者がシステム刷新を決断するうえで非常に重要である。
②対応策
評価指標を以下の方針に沿って策定・構築していきます。
ア) 評価指標の策定
・策定対象を、ITシステムの現状、ITシステム構築に係る体制・仕組みの状況、ITシステム構築に係る実行プロセスの状況とする。
・簡易な形で統一的に情報資産を「見える化」する指標とする。
・経営トップが経営上の課題として問題点を認識できる指標とする。
・項目ごとの到達度合いに応じたレベル付けを行う設計とする。
イ) 指標を用いた診断スキームの構築
ウ) 診断によるインセンティブ
(3)その他、以下の項目を検討しています。
① DX実現に向けたITシステム構築におけるコスト・リスク低減のための対応策
② ユーザー企業・ベンダー企業の目指すべき姿と双方の新たな関係
③ DX人材の育成・確保
④ ITシステム刷新の見通し明確化
4.おわりに
DXを実行できるかが、あらゆる産業において、各企業の競争力ひいては存続の可否を決する最重要課題となっています。
官民一体となって諸課題への対応を進めていき、各企業がDXを着実に進め、新たなデジタル技術を用いてデータをフルに活用できる状態になり、新たなビジネス・モデルを生み出し続けるようになることで国際的な競争力を強化し、「Connected Industries」の実現、さらには課題解決型社会である「Society 5.0」を実現していくことが期待されています。