IFRS財団評議員会~サステナビリティ報告に関する協議文書を公表 | 社外財務部長 原 一浩
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IFRS財団評議員会~サステナビリティ報告に関する協議文書を公表

IFRS財団評議員会~サステナビリティ報告に関する協議文書を公表

IFRS財団評議員会(以下、評議員会)は2020年9月、「サステナビリティ報告に関する協議ペーパー(以下、協議文書)」を公表しました。

2020年12月31日を本協議文書に関するコメントの募集期限としています。

寄せられたコメントを分析し、これらのコメントをIFRS財団の潜在的な役割に関しての議論の基礎とするとしています。

協議文書の中で「サステナビリティ基準審議会(以下、SSB)」の創設が提案されています。

 

1.新しいSSB

 

(1)提案

 

報告における一体性及び比較可能性な情報は必要なものであり、それを達成するために、タスクフォースが提案し評議員会が支持したアプローチは、以下のものです。

 

「IFRS財団のガバナンス構造の下で国際的なサステナビリティ基準を開発するための新しいサステナビリティ基準審議会(SSB)を創設する」

 

(2)承認の要件

 

評議員会は、以下の成功のための要件が満たされることを条件に、SSBという選択肢をさらに展開することを暫定的に選択しました。

 

①主要な市場における、公的機関、国際的な規制機関及び市場関係者(投資者及び作成者を含む)からの十分なレベルの国際的な支持の獲得

 

②サステナビリティ報告における国際的な一貫性の達成と複雑性の低減を目的とした地域的な取組みとの協力

 

③ガバナンス構造の適切性の確保

 

④評議員会、SSB メンバー及びスタッフについての適切な技術的専門性の達成

 

⑤必要となる独立した資金調達のレベル及び財政支援を得る能力の達成

 

⑥財務報告との効果的なシナジーの構築を図るための組織及び文化の開発

 

⑦ IFRS財団の現在の使命及びリソースが損なわれないことの確保

 

(3)SSBの目的

 

SSBの目的は、最初は気候関連リスクに焦点を当てたサステナビリティ報告基準の国際的なセットを開発し維持管理するというものとなると見込まれます。

 

また、このような基準設定は、既存のサステナビリティのフレームワーク及び基準を活用することになると見込まれます。

 

IFRS財団の制度上のガバナンス構造の下でSSBを設置するという提案は、財務報告と一体性があり関連付けられたサステナビリティ報告のフレームワークを開発するという目的と、投資者及び財務諸表の他の主要な利用者に役立つというIASB自身の使命を達成することができるとしています。

 

2.SSBIFRS財団が設立するとした場合

 

(1)「気候第一」アプローチ

 

①気候関連情報

 

タスクフォースのリサーチ及び非公式の協議で、気候に関連した情報についての国際的なサステナビリティ報告基準の開発が最も切迫した懸念事項であることが示されています。

 

気候リスクは、投資者及び健全性規制当局にとって重要度が増大している財務リスクです。

これは大半が、世界中での主要な法域による公共政策上の取組みによるものです。

これらの取組みの緊急性を踏まえて、SSBが行うべき最初の作業は気候関連情報に焦点を当てることが提案されています。

 

②以後の段階

 

タスクフォースの非公式な協議の間に、多くの利害関係者が、以後の段階において、SSBがサステナビリティ報告のより幅広い範囲(環境・社会・ガバナンス要因の相互関係を含む)を採用する可能性があると主張しました。

 

例えば、現在の世界経済フォーラムの国際ビジネス評議会の取組みの任務も、ガバナンス、地球、人々及び繁栄という原則に言及しており、当初は気候に焦点を当てるがやがては範囲を拡大できるようにするという柔軟な構造を提案しています。

 

(2)重要性に対するアプローチ

 

①サステナビリティ報告の目的

 

重要性の概念を検討する際には、サステナビリティ報告の目的、当該目的を達成するためにどのような情報が必要か、及びどの利害関係者が企業の報告する情報を利用するのかを決定することが重要になります。

 

有用なサステナビリティ情報の質的特性を、既存のフレームワーク(TCFD、SASB、国際統合報告フレームワーク及び持続可能な開発目標開示の提言(SDGD))に示された原則に依拠して開発することが必要となります。

 

②重要性に関してのSSBのためのアプローチ案

 

SSBがダブル•マテリアリティ・アプローチを開始することは、作業の複雑性を大きく増大させることになり、基準の採用に影響を与えたり遅延させたりする可能性があるため、漸進主義的なアプローチを推奨しています。

 

設立することとなった場合、SSBは、最初は、投資者及び他の市場参加者にとって最も目的適合性のあるサステナビリティ情報に注力することになると見込まれます。

 

SSBは、報告企業にとってのリスク及び機会のより包括的な評価を提供するために、 他の取組みと共同で作業しつつ、作業を進めるにつれて範囲をどのように拡大すべきかを検討することができます。

 

この包括的な評価は、より多くの法域が基準の国際的な及び法域別の分断のリスクを最小限にするためにダブル•マテリアリティの概念を受け入れる場合には、特に重要となるとしています。

 

③保証の達成

 

国際的に一貫したサステナビリティ報告の実務を達成するためには、企業が報告するサステナビリティ情報は、最終的には外部の保証の対象となる必要があるとしています。

 

しかし、そのような保証を達成するには、一貫した国際的フレームワークの必要性や、サステナビリティに関連した定性的な開示要求事項を示すことの困難性などの概念上及び実務上の課題があるとしています。

 

主要な利害関係者が共通のサステナビリティ開示を開発する目的は、企業が外部から保証された情報を開示することです。

 

サステナビリティ情報についての保証の枠組みが究極的には財務諸表についての保証の枠組みと同様となることが望ましいとしています。

 

IFRS財団は、監査上の課題に関連する財務報告基準の作成における専門性を有しており、これを達成するのに役立てるために、国際監査•保証基準審議会(IAASB) 及び監査の専門家との協力関係を構築してきました。

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