保証債務の整理にあたって~保証人の資力に関する情報における公認会計士による実務 | 社外財務部長 原 一浩
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保証債務の整理にあたって~保証人の資力に関する情報における公認会計士による実務

保証債務の整理にあたって~保証人の資力に関する情報における公認会計士による実務

1.研究報告策定の背景

日本公認会計士協会は、2018年12月11日に、中小企業施策調査会研究報告第4号『「保証人の資力に関する情報」における公認会計士による実務』(以下、「本研究報告」)を公表しました。

「経営者保証に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)は、2013年12月に制定され、中小企業・小規模事業者等(以下「中小企業」という。)の経営者による個人保証(以下「経営者保証」という。)の契約時及び履行時等における様々な課題に関して、中小企業、経営者及び金融機関による対応についての自主的自律的な準則として活用されています。

 

ガイドラインは、経営者保証について、保証契約時と主たる債務の整理局面における保証債務の整理(履行等)時とに区分して、それぞれの課題と具体的な解決策について整理しています。

 

本研究報告は、このうち、債務の整理局面における実務を示しています。

ガイドラインでは、保証債務の整理時には、主たる債務者について事業再生等が開始された場合、経営者の帰責性や経営資質等を勘案して一律に経営者の交代を求めないことや、経営者の事業再生等の着手の決断が早く、事業再生の実効性の向上に資するものとして、債権者としても一定の経済合理性が認められる場合には、保証債務の履行・減免に当たって経営者(保証人)に一定の資産を残すことを検討するとしています。

 

 

2.適用範囲

本研究報告は、主たる債務の整理の局面における保証債務の整理に当たって、保証人が自らの資力に関する情報を誠実に開示し、開示した情報の正確性について保証人自ら表明保証を行う場面を前提としています。

そのような場面で、公認会計士等が、専門業務実務指針4400「合意された手続業務に関する実務指針」に基づき、ガイドラインに関連して保証人が表明保証することとされている保証人の資力に関する情報の信頼性の向上に資するために、合意された手続の業務を行う際の手続等を例示するものです。

 

3.公認会計士等が実施する手続き

ガイドラインの「7.保証債務の整理」の中の「(3) 保証債務の整理を図る場合の対応」 の「③保証債務の履行基準(残存資産の範囲)」 においては、 対象債権者は、保証債務の履 行に当たり、保証人の手元に残すことのできる残存資産の範囲について、必要に応じ支援専 門家(注)とも連携しつつ、以下のような点を総合的に勘案して決定することとされています。

この際、保証人は、全ての対象債権者に対して、保証人の資力に関する情報を誠実に開示し、 開示した情報の内容の正確性について表明保証を行うとともに、支援専門家は、対象債権者からの求めに応じて、当該表明保証の情報の信頼性の向上に資するため、対象債権者に報告することが前提とされています。

 

ア)保証人の保証履行能力や保証債務の従前の履行状況

イ)主たる債務が不履行に至った経緯等に対する経営者たる保証人の帰責性

ウ)経営者たる保証人の経営資質、信頼性

エ)経営者たる保証人が主たる債務者の事業再生、事業清算に着手した時期等が事業の再 生計画等に与える影響

オ)破産手続における自由財産(破産法第 34 条第3項及び第4項その他の法令により破産 財団に属しないとされる財産をいう。)の考え方や、民事執行法に定める標準的な世帯の必要生計費の考え方との整合性

 

本研究報告においては、ガイドラインの上記項目及びQ&Aの関連項目に基づいて、保証人の資力に関する情報について、公認会計士等により合意された手続の業務を行う際の手続を例示しています。

 

(注)支援専門家とは、弁護士、公認会計士、税理士等の専門家であって、全ての対象債権者 がその適格性を認めるものをいいます。

支援専門家の適格性については、当該専門家の経験、実績等を踏まえて、対象債権者によって総合的に判断されます。

ただし、当該専門家が弁護士でない場合には、支援内容が非弁行為とならないように留意する必要があります。

 

4.手続例を利用する際の留意点

 

本研究報告の手続例において示されている手続は、具体的には、公認会計士等は、本研究報告に例示される合意された手続業務契約書及び報告書利用に係る合意書を保証人(又は支援専門家)と締結し、その契約の中で「別紙1 合意された手続」として規定され、また、実施結果報告書(Ⅱ6.(5) 合意された手続実施結果報告書の作成例参照)に「別紙 2 合意された手続及び合意された手続の実施結果」として記載される手続となることを想定しています。

示されている手続はあくまでも一例を示したものにすぎず、業務依頼者及びその他の実施結果の利用者との間で合意された手続について業務実施者が実施することになります。

 

実際の業務実施に当たっては、保証人(業務依頼者)又は支援専門家の状況及び債権者(その他の実施結果の利用者)の求める手続の内容が反映され、事案に応じて適宜柔軟に必要な手続が契約締結時に決定されることとなります。

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