1.キャッシュ・フロー分析の目的
財務デュー・デリジェンスにおけるキャッシュ・フロー分析の目的は、対象会社の資金収支の状況や運転資本の状況を把握することです。
2.キャッシュ・フロー分析の対象
対象会社が、「キャッシュ・フロー計算書」を作成していれば、それを利用します。
作成していない場合には、資金繰り表を用いたり、簡便な方法でキャッシュ・フロー計算書を作成したりします。
3.キャッシュ・フロー分析の方法
(1)上場会社の場合
公表されている「キャッシュ・フロー計算書」を利用することができます。
メリットは、データの収取が容易であること、データの信頼性があげられます。
(2)将来のフリー・キャッシュ・フローの獲得能力を見込んで分析する方法
過去のフリー・キャッシュ・フローを分析し、将来のフリー・キャッシュ・フローの予測を行うことにより、買収後の獲得フリー・キャッシュ・フローを評価するものです。
4.キャッシュ・フロー分析の内容
(1)年次及び月次のキャッシュ・フロー分析
年次分析では、「キャッシュ・フロー計算書」や資金繰り表などを使用して、年度ごとの推移を把握します。
月次分析は、月次の資金繰り表や資金計画表を用いて行います。
(2)資本的支出分析
資本的支出分析とは、設備投資支出の分析です。
新規投資と取替投資に分けて分析します。
大規模修繕が予想される場合には、留意が必要です。
(3)運転資本分析
①運転資本の意義
運転資本とは、事業に関連した短期的な投下資本の純額を指します。
「売上債権+棚卸資産-仕入債務±その他の流動資産・負債」として計算されます。
ただし、運転資本の範囲は、対象会社により異なりますので、対象会社の業種や事業活動を勘案して、その範囲を決定する必要があります。
キャッシュ・インとキャッシュ・アウトの時間的ずれは、会社にとってのリスクであり、運転資本分析は重要なものです。
②運転資本の分析
財務数値をもとにした分析において、臨時的・非経常的な項目を除外して正常運転資本分析を行うことは、本質的なトレンドを理解するうえで有益です。
正常運転資本分析では、正常収益力分析における調整項目や、収益計画・キャッシュ・フローケ計画の影響も考慮しなければなりません。
運転資本分析の主なアプローチは、回転期間分析と月次運転資本分析になります。
a)回転期間分析
各運転資本項目の回転期間分析を実施することで売り上げや収益力の傾向との整合性を分析します。
異常が生じている場合には、その原因を把握し、必要に応じて正常化調整を行います。
b)月次運転資本分析
期末時点でなく、月次運転資本分析を行うことにより、運転資本の季節性を把握し、資金需要の傾向と変動幅を検証します。買収後の資金需要や資金調達の必要性を検討することができます。