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上場子会社のガバナンスの在り方~独立社外取締役の役割、子会社の指名委員会・報酬委員会について

経済産業省は、「コーポレート・ガバナンス・システム研究会(CGS研究会)(第2期)」における議論に基づき、「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」(グループガイドライン)を策定し、2019年6月28日に公表しました。

 

1.「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」(以下、本ガイドライン)の構成

 

本ガイドラインの構成は以下のとおりです。

 

1.はじめに(本ガイドラインの目的、位置付け、対象等)(第1章)

2.グループ設計の在り方(第2章)

3.事業ポートフォリオマネジメントの在り方(第3章)

4.内部統制システムの在り方(第4章)

5.子会社経営陣の指名・報酬の在り方(第5章)

6.上場子会社に関するガバナンスの在り方(第6章)

 

本稿では、「5.子会社経営陣の指名・報酬の在り方」及び「6.上場子会社に関するガバナンスの在り方」を解説します。

 

 

2.子会社経営陣の指名・報酬の在り方

 

本章は、完全子会社を前提としています。

 

(1)子会社経営陣の指名・報酬に関する親会社の関与の在り方

 

グループとしての一体的運営や企業価値向上の観点から、主要な完全子会社の経営トップを親会社の取締役会及び指名委員会・報酬委員会において審議対象とすることを検討すべきとしています。

 

(2)グループとしての経営陣の指名・育成の在り方

 

①グループとしての社長・CEO等の後継者計画の在り方

グループの社長・CEO等の後継者計画の一環として、子会社の経営陣ポストを積極的に活用することも有効であるとしています。

 

②グループとしての経営陣の人材育成・人事管理の在り方

グループ内の人的資源を最大限活用するため、グループ全体として一定レベル以上のポスト・人材を選定し、評価・選抜を行う仕組みを構築し、将来の経営人材の計画的育成を行うことを検討すべきとしています。

このため、人事情報の一元化による統合的な人事管理も有効であるとしています。

 

(3)グループとしての経営陣の報酬の在り方

 

①グループ全体での報酬政策の策定

グループとしての企業価値向上に向けて、グループ各社の経営陣の適切なインセンティブを付与するため、統一的な報酬政策の構築をすることが重要であるとしています。

 

②グループにおける報酬水準の在り方

中長期的には、グローバルな報酬水準及びその考え方の統一を目指すことが期待されますが、当面の対応として、客観的かつ統一的な基準を導入し、これに基づいて各地域における具体的な水準を決定することが検討されるべきとしています。

 

③グループ企業におけるインセンティブ報酬の設計

グループ全体の企業価値向上に向けた統一的な考え方の下で、報酬の種類ごとに成果指標(KPI)を設定し、情報開示を通じて、透明性・客観性を確保することが検討されるべきとしています。

 

④グループ企業における報酬に関する情報開示の在り方

グループとしての報酬政策に関する基本項目やKPI選定の理由等を開示することが検討されるべきとしています。

 

3.上場子会社に関するガバナンスの在り方

 

(1)適用対象

 

親子上場における子会社を対象としています。

 

(2)上場子会社の利益相反構造

 

上場子会社においては、支配株主である親会社と上場子会社の一般株主との間には、構造的な利益相反リスクが存在しています。

 

具体的には、親会社との直接取引、事業部門の譲渡・関連事業間の調整、完全子会社化が実施される場合などが挙げられます。

 

(3)親会社における対応の在り方

 

①グループの事業ポートフォリオ戦略の視点

親会社はグループ全体としての企業価値向上や資本効率性の観点から、上場子会社として維持することが最適か定期的に点検するとともに、その合理的理由や子会社のガバナンス体制の実効性確保について、取締役会で審議し、投資家に対して情報開示を通じて説明責任を果たすべきとしています。

 

②グループのリスク管理の視点

親会社は、グループのリスク管理上必要な事項等については、上場子会社による独立した意思決定が担保されることを前提に、事前の協議を求めることも合理的であるとしています。

 

(4)上場子会社におけるガバナンス体制の在り方

 

①基本的な考え方

上場子会社においては、親会社と一般株主との間に利益相反リスクがあることを踏まえて、上場子会社としての独立した意思決定を担保するための実効的なガバナンス体制が構築されるべきであるとしています。

 

②上場子会社における独立社外取締役の役割

上場子会社の独立社外取締役には、業務執行を監督する役割を果たすための執行人からの独立性に加えて、一般株主の利益を確保する役割も期待されているため、親会社からの独立性も求められています。

 

③上場子会社における独立社外取締役の独立性に関する考え方

a)上場子会社における独立性基準

上場子会社の独立社外取締役には、10年以内に親会社に所属していた者を選任しないこととすべきであるとしています。

 

b)上場子会社における独立社外取締役の選任

上場子会社の独立社外取締役については、特に一般株主の利益を保護するという重要な役割を担える人物であるかを確認して、その指名・選任が行われるべきであるとしています。

 

c)上場子会社における適切な独立社外取締役を確保するための担保措置

親会社は、上場子会社の独立社外取締役の選解任権限を行使するにあたり、上場子会社のガバナンス確保に十分配慮すべきであるとしています。

 

④上場子会社における実効的なガバナンスの仕組みの在り方

取締役会における独立社外取締役に比率を高めることを基本として、重要な利益相反取引については、独立社外取締役を中心とした委員会で審議・検討を行う仕組みを導入することを検討すべきとしています。

 

⑤上場子会社による情報開示の在り方

上場子会社は、そのガバナンスの方策について、積極的に開示すべきとしています。

 

(5)上場子会社経営陣の指名の在り方

 

①上場子会社に求められる対応

乗除子会社の経営陣については、上場子会社の価値向上に貢献するかという観点から、上場子会社が独立した立場で後継者計画を策定し、候補者の指名を行うべきとしています。

親会社から提案された候補者についても、その適格性について客観的に判断すべきであるとしています。

 

②上場子会社の指名委員会と親会社との関係

上場子会社の指名委員会は、上場子会社の企業価値向上にとって最適な経営陣の指名が行われるよう、親会社からの独立性が実質的に担保されるべきであるとしています。

 

(6)上場子会社経営陣の報酬の在り方

 

①上場子会社に求められる対応

上場会社の経営陣の報酬政策については、上場子会社の企業価値向上への適切なインセンティブとなるように、上場子会社において独立した立場で検討されるべきとしています。

 

②上場子会社の報酬委員会と親会社との関係

上場子会社の報酬委員会は、上場子会社にとって最適な報酬設計が行われるよう、親会社からの独立性が実質的に担保されるべきであるとしています。

 

「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」~内部統制システムの在り方

経済産業省は、「コーポレート・ガバナンス・システム研究会(CGS研究会)(第2期)」における議論に基づき、「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」(グループガイドライン)を策定し、2019年6月28日に公表しました。

 

1.「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」(以下、本ガイドライン)の構成

 

本ガイドラインの構成は以下のとおりです。

 

1.はじめに(本ガイドラインの目的、位置付け、対象等)(第1章)

2.グループ設計の在り方(第2章)

3.事業ポートフォリオマネジメントの在り方(第3章)

4.内部統制システムの在り方(第4章)

5.子会社経営陣の指名・報酬の在り方(第5章)

6.上場子会社に関するガバナンスの在り方(第6章)

 

本稿では、「4.内部統制システムの在り方」を解説します。

 

2.内部統制システムの在り方

 

(1)内部統制システムの意義

 

「守りのガバナンス」であるコンプライアンスや不正防止にとどまらず、

中長期的な企業価値向上を支える適切なリスクマネジメントの一環として、

「事業戦略の確実な執行のための仕組み」とする視点も重要です。

 

(2)内部統制システムに関する現状と課題

 

組織の大規模化・グローバル化:グループとしてのリスクマネジメント体制の整備が重要となっています。

内部統制システムが実効的に運用されていない例として以下の項目が指摘されています。

・グループ本社による一元的なリスクマネジメント体制の欠如

・現場のコンプライアンス意識の希薄

・管理部門・内部監査部門のチェック機能の不全

 

(3)内部統制システムの構築・運用に関する基本的な考え方

 

各社の経営方針、子会社の体制等に応じ

・監視・監督型

・一体運用型

 

の選択・組み合わせを行います。

 

ITの活用等による内部統制システムの高度化と効率性のバランスを考慮します。

 

(4)グループの内部統制システムに関する親会社の取締役会の役割

 

グループ全体の内部統制システム構築に関する基本方針の決定し、

子会社を含めたその構築と運用を監視・監督する責務を負っています。

 

(5)内部統制システムに関する監査役等の役割

 

①監査役等の役割

 

内部統制システムの有効性の監査する役割があります。

親会社監査役等と子会社の監査役等とが連携して、グループ全体の内部統制システムの監査を効率的に行うことの検討が必要です。

 

②内部監査部門との連携

 

内部監査部門から監査役等への直接のレポートラインの確保を検討する必要があります。

 

③子会社に対する監査

 

親会社の監査役等・会計監査人と子会社の監査役等や内部監査部門等との連携が重要となります。

 

(6)実効的な内部統制システムの構築・運営の在り方

 

「3線ディフェンス」の導入と適切な運用の在り方を検討する必要があります。

 

a)第1線:事業部門におけるコンプライアンス意識の醸成

 

b)第2線:管理部門の役割と独立性確保・機能強化

 

c)第3線:内部監査部門の役割と独立性確保・機能強化

 

(7)監査役等や第2線・第3線における人材育成の在り方

 

監査役等の人材育成や指名・選任にあたっては、役割認識・意欲や専門的知見に配慮すべきです。

経営トップは管理部門や内部監査部門の重要性を認識し、専門性やプロフェッショナル意識の向上を図るべきです。

 

(8)ITを活用した内部監査の効率化と精度向上

 

ITやデータアナリティクスの活用を検討すべきです。

 

(9)サイバーセキュリティ対策の在り方

 

グループ全体やサプライチェーンも考慮に入れた対策の在り方の検討が必要です。

 

(10)有事対応の在り方

 

①基本的な考え方

 

・レピュテーションへのダメージの最小化

・ステークホルダーの信頼回復

・グループ本社中心に早期発見と被害の最小化のために迅速な対応

 

など、有事対応を適切に行なわなければなりません。

 

②有事対応の在り方

 

a)有事対応の目的

速やかに事実関係を調査し、根本原因を究明し、再発防止策の検討を行う必要があります。

十分な説明責任をはたすことにより、信頼回復と企業価値の維持・向上を図ることができます。

 

b)事案の公表等

事案の重大性の見極め、迅速な第1報、必要に応じた謝罪、正確な説明を心掛けるべきです。

 

c)独立社外役員等による対応の在り方

当該事案に利害関係のない社外役員が、第三者委員会の設置の要否を含む、調査体制の選択、調査委員会の組成・運営において主導的な役割を果たすべきです。

 

③子会社で不祥事等が発生した場合における親会社の対応の在り方

 

事案の態様や重大性、子会社における対応可能性等を勘案し、事態の原因究明や事態の収束、再発防止策の策定を主導することが期待されます。

「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」~グループ設計の在り方と事業ポートフォリオマネジメントの在り方

経済産業省は、「コーポレート・ガバナンス・システム研究会(CGS研究会)(第2期)」における議論に基づき、「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」(グループガイドライン)を策定し、2019年6月28日に公表しました。

 

1.「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」(以下、本ガイドライン)の構成

 

本ガイドラインの構成は以下のとおりです。

 

1.はじめに(本ガイドラインの目的、位置付け、対象等)(第1章)

2.グループ設計の在り方(第2章)

3.事業ポートフォリオマネジメントの在り方(第3章)

4.内部統制システムの在り方(第4章)

5.子会社経営陣の指名・報酬の在り方(第5章)

6.上場子会社に関するガバナンスの在り方(第6章)

 

本稿では、1~3を解説しています。4~6は、別稿で解説します。

 

2.目的・位置づけ・対象等

 

「本ガイドライン」は、主として単体としての企業経営を念頭に作成されたコーポレートガバナンス・コード(以下「コード」といいます。)の趣旨を敷衍し、グループガバナンスの在り方をコードと整合性を保ちつつ示すことで、コードを補完するものです。

本ガイドラインは、実効的なグループガバナンスの在り方に関し、経済産業省が実施した国内外のグループ経営を行う企業等に対するヒアリングやアンケート結果に基づき、グループガバナンスの実効性を確保するために一般的に有意義と考えらえられるベストプラクティスを示しています。

なお、グループ経営の在り方は極めて多様であるため、本ガイドラインに記載の取組を一律に要請するものではありませんが、各企業において、最適なグループガバナンスの在り方を検討する際、本ガイドラインが実務に即した指針として、その検討に資することが期待されます。

 

3.グループ設計の在り方

 

(1)グループ設計の基本的考え方を示しています。

 

各社の事業特性や多角化・グローバル化等の状況を踏まえて、グループの中長期の企業価値向上と持続的成長を実現するための合理的な在り方を検討するべきとしています。

 

(2)分権化と集権化のバランス

 

・迅速な意思決定と一体的経営、実効的な子会社管理等の必要性を勘案し、

・事業部門への権限移譲と本社によるコントロールの最適なバランスを検討する

 

としていて、グループ本社によるコントロールの確保も重要であるとしています。

 

(3)法人格の分離

 

法人格分離のメリット・デメリットを勘案して、あり方を検討するとしています。

 

(4)2つのシナジー

 

・財務的シナジーと事業的シナジーの最適な組み合わせを明確にし、

・その方針に応じたグループ設計やガバナンスの在り方を検討する

 

としています。

 

4.事業ポートフォリオマネジメントの在り方

 

(1)事業ポートフォリオマネジメントの基本的な考え方

 

①基本的な考え方

・シナジーの発揮や持続的な収益性確保の観点から

・定期的に見直し、最適化を図る

 

としており、

 

・コア事業の見極め

・M&Aとノンコア事業の整理

・コア事業に対する経営資源の集中投資

 

が戦略的に行われることが重要としています。

 

②事業ポートフォリオに関するガバナンスの重要性

グループ本社の取締役会の役割は、

 

・事業ポートフォリオマネジメントのための仕組みの構築

・その運用の監督

 

が期待される役割で、

 

社外取締役の主体的な関与が重要であるとしています。

 

(2)事業ポートフォリオマネジメントの仕組みの構築

 

グループ本社の取締役会は、

 

・投資や事業切り出し等に関する基準の設定

・検討の主体・プロセス等の明確化

 

の構築について検討すべきとしています。

 

(3)事業評価のための基盤整備

 

グループ本社は、

 

・事業セグメントごとのB/S、C/F計算書の整備をしたうえで

・資本コストの設定等の客観的な評価指標を用いた事業評価の仕組み

 

を構築することを検討すべきとしています。

 

こうした仕組みの構築・運用に際しては、CFOが主体的役割を果たすことが期待されています。

 

最近のディスクロージャー制度の動き~記述情報(有価証券報告書)の見直しと監査報告書の見直し

資本市場の機能強化や国全体の最適な資金フローの実現のため、スチュワードシップ・コードやコーポレートガバナンス・コードが導入されています。

資本市場の機能の発揮、企業価値の向上と収益向上の果実を家計にもたらすという好循環のために、投資家の適切な投資判断、投資家と企業との建設的な対話を促していくような企業情報の開示・提供が重要です。このような観点から、企業情報の開示・提供の在り方について再検討が行われました。

 

1.記述情報(有価証券報告書)の見直し

 

(1)ガバナンス情報の拡充(2019年3月期から適用)

 

①役員報酬に係る情報(2019年3月期から適用)

 

a)報酬プログラム

報酬決定・支給の方法やこれらに関する考え方を具体的にわかりやすく記載します。

 

・固定報酬・短期業績連動報酬・中長期業績連動報酬のそれぞれの算定方法

・固定報酬と短期・中小期業績連動報酬の支給割合

・役職ごとの支給についての考え方

・役員報酬の算定方法にKPI等の指標が関連付けられている場合、その指標と指標の選定理由、業績連動報酬への反映方法

・報酬総額等を決議した株主総会の年月日及び決議内容

 

b)報酬実績

実績と報酬プログラムが整合的か等を確認できるように記載します。

 

・登記の報酬額に決定した理由、当期のKPIの目標と実績の達成度

・固定報酬と業績連動報酬の支給割合の実績、支給された報酬の状況

 

c)報酬決定の枠組み

報酬決定プロセスの客観性・透明性のチェックを可能とするために記載します。

 

・算定方法の決定権者、その権限や裁量の範囲

・報酬委員会がある場合には、その位置づけ・構成メンバー

・取締役会・報酬委員会の報酬決定に関する具体的活動内容

 

②政策保有株式に係る記載事項(2019年3月期から適用)

 

・純投資と政策保有株式の区分の基準や考え方

・政策保有に関する方針、目的、効果

・売却・買い増しした政策保有株式のそれぞれの理由等

・個別の政策保有株式の保有目的・効果

・個別銘柄の開示(60銘柄)

・提出会社が政策保有株式として株式を保有している相手方が、当該提出会社の株主となっている場合、当該相手方が保有している株式

 

 

(2)記述情報の充実(2020年3月期から適用)

 

①記述情報が提供するもの

 

・投資家が経営者の視点から企業を理解するための情報を提供

・財務情報全体を分析するための文脈を提供

・企業収益やキャッシュ・フローの性質や、それらを生み出す基盤についての情報を通じ、将来の業績の確度を判断するうえで重要な情報を提供

 

②記述情報に充実に係る開示のポイント

 

・経営方針・経営戦略等

経営環境(企業構造、市場状況、競争優位性、主要製品・サービス等)についての経営者の認識を含め事業の内容と関連付けした記載

 

・事業等のリスク

顕在化する可能性の程度や時期、事業への影響、リスク対応策等の説明

 

・会計上の見積もり及び当該見積もりに用いた仮定

不確実性の内容やその変動により経営成績に生じる影響等に関する経営者の認識等の記載

 

③「記述情報の開示に関する原則」の概要

 

2019年3月19日にプリンシプルベースのガイダンスが公表されました。

 

a)目的

記述情報の中でも、経営方針・経営戦略等、経営成績等の分析、リスク情報を中心に、有価証券報告書における開示の考え方を整理することにより、ルールへの形式的な対応にとどまらない開示の充実に向けた企業の取り組みを促し、開示の充実を図る

 

b)位置づけ

・本原則は新たな開示事項を加えるものではないが、企業において本原則に沿った望ましい開示に向けた取り組みが進められることが期待される

・本原則に対応した開示例の公表により、好事例を全体に広げるとともに、好事例を本原則に反映することも検討する

 

 

④「記述情報の開示に関する原則」総論の概要

 

・経営方針、業績評価、経営リスク等の議論の適切な反映やディスクロージャーに関する基本方針の提示

・情報の重要性のディスクロージャーへの適切な反映

・成長投資、資本コスト等に関する議論並びに今後の方向性の反映

・震度あるセグメント情報の開示

・よりわかりやすい開示

 

 

(3)監査関係の情報の拡充(2020年3月期から適用、一部2019年3月期から適用)

 

①監査役会等の活動状況(2020年3月期から適用)

 

・監査役会等の開催頻度、主な検討事項

・個々の監査役等の出席状況

・常勤監査役の活動

 

②会計監査に関する情報

 

(2019年3月期から適用)

・企業が適正な監査の確保に向けて監査人と行っている取り組み

・監査役会等による監査人の選任・再任の方針及び理由

・監査人監査の評価

 

(2020年3月期から適用)

・監査人の継続監査期間

・監査業務と被監査業務に区分したネットワークベースの報酬額・業務内容

 

③総覧性の向上

 

(2019年3月期から適用)

・監査人の解任・不再任の方針

・監査役会等が監査報酬額に同意した理由

・監査人の業務停止処分に係る事項

 

2.監査報告書の見直し(KAMの導入)

 

(1)監査報告書の透明化

 

①監査人は、監査の過程で監査役等と協議した事項の中から

・特別な検討を必要とするリスクまたは重要な虚偽表示のリスク

・経営者の判断を伴う事項に対する監査人の判断の程度

・当年度において発生した重要な事象または取引が監査に与える影響

等について考慮したうえで、特に注意を払った事項を決定する。

 

②当該事項からさらに当年度の財務諸表監査において職業的専門家として特に重要であると判断した事項を絞り込み、「監査上の主要な検討事項」を決定する。

 

(2)監査人の交代に関する説明

 

企業及び監査人は、監査人の交代理由について実質的な内容を記載します。

例として、監査報酬や会計処理に関する見解の相違が挙げられています。

 

 

 

 

取締役会の役割と権限~会社法とコーポレート・ガバナンス・コード

Ⅰ.会社法における取締役会の権限

 

会社法は、取締役会の権限についての基本的な定めを第362条で行い、指名委員会等設置会社及び監査等委員会設置会社に関しては別途規程を設けています。

会社法第362条の規定を見てみましょう。

 

1.取締役会の構成

 

取締役会は、すべての取締役で組織します。

 

2.取締役会の権限

 

取締役会には、以下の権限があります。

 

・取締役会設置会社の業務執行の決定

 

・取締役の職務の執行の監督

 

・代表取締役の選定及び解職

 

3.業務執行の決定

 

取締役会は、次に掲げる事項を含む重要な業務執行の決定を取締役に委任することはできません。つまり、取締役会が決定しなければならない事項です。

 

・重要な財産の処分及び譲受け

 

・多額の借財

 

・支配人その他の重要な使用人の選任及び解任

 

・支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止

 

・社債に関する事項

 

・取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制と株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備

 

・取締役等の責任の免除

 

なお、大会社である取締役会設置会社においては、取締役会は、(6)に掲げる事項を決定しなければなりません。

 

 

Ⅱ.コーポレート・ガバナンス・コード

 

コーポレート・ガバナンス・コードでは、取締役会の主要な役割・責務を以下のように規定しています。

 

1.会社の目指すところ(経営理念等)を確立し、戦略的な方向付けを行うこと

 

2.経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うこと

 

3.独立した客観的な立場から、経営陣・取締役に対する実効性の高い監督を行うこと

 

 

(1)会社の目指すところ(経営理念等)を確立し、戦略的な方向付けを行うこと

 

・具体的な経営戦略や経営計画等について建設的な議論を行う

 

・重要な業務執行の決定を行う場合には、戦略的な方向付けを踏まえる

 

・取締役会自身として何を判断・決定し、何を経営陣に委ねるのかに関連して、経営陣に対する委任の範囲を明確に定め、その概要を開示する

 

・取締役会・経営陣幹部は、中期経営計画も株主に対するコミットメントの一つであるとの認識に立ち、その実現に向けて最善の努力を行う

 

・中期経営計画が目標未達に終わった場合には、その原因や自社が行った対応の内容を十分に分析し、株主に説明を行うとともに、その分析を次期以降の計画に反映させる

 

・会社の目指すところ(経営理念等)や具体的な経営戦略を踏まえ、最高経営責任者(CEO)等の後継者計画(プランニング)の策定・運用に主体的に関与する

 

・後継者候補の育成が十分な時間と資源をかけて計画的に行われていくよう、適切に監督を行う

 

(2)経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うこと

 

・経営陣からの健全な企業家精神に基づく提案を歓迎しつつ、説明責任の確保に向けて、そうした提案について独立した客観的な立場において多角的かつ十分な検討を行う

 

・承認した提案が実行される際には、経営陣幹部の迅速・果断な意思決定を支援する

 

・経営陣の報酬については、中長期的な会社の業績や潜在的リスクを反映させ、健全な企業家精神の発揮に資するようなインセンティブ付けを行う

 

・経営陣の報酬が持続的な成長に向けた健全なインセンティブとして機能するよう、客観性・透明性ある手続に従い、報酬制度を設計し、具体的な報酬額を決定する

 

・中長期的な業績と連動する報酬の割合や、現金報酬と自社株報酬との割合を適切に設定する

 

(3)独立した客観的な立場から、経営陣・取締役に対する実効性の高い監督を行うこと

 

・適切に会社の業績等の評価を行い、その評価を経営陣幹部の人事に適切に反映する

 

・適時かつ正確な情報開示が行われるよう監督を行う

 

・内部統制やリスク管理体制を適切に整備する

 

・経営陣・支配株主等の関連当事者と会社との間に生じ得る利益相反を適切に管理する

 

・経営陣幹部の選任や解任について、会社の業績等の評価を踏まえ、公正かつ透明性の高い手続に従い、適切に実行する

 

・CEOの選解任は、会社における最も重要な戦略的意思決定であることを踏まえ、客観性・適時性・透明性ある手続に従い、十分な時間と資源をかけて、資質を備えたCEOを選任する

 

・会社の業績等の適切な評価を踏まえ、CEOがその機能を十分発揮していないと認められる場合に、CEOを解任するための客観性・適時性・透明性ある手続を確立する

 

・コンプライアンスや財務報告に係る内部統制や先を見越したリスク管理体制の適切な構築や、その運用が有効に行われているか否かの監督に重点を置く

 

・個別の業務執行に係るコンプライアンスの審査に終始すべきではない

 

 

Ⅲ.会社法とコーポレート・ガバナンス・コードとの関係

 

会社法に規定されている取締役会の権限を行使する際の具体的な行動の指針としてコーポレート・ガバナンス・コードを考慮すべきと考えることができます。

記載内容の関係は、以下のようになっています。

 

 

1.重要な業務執行の決定(会社法)

 

(対応するコーポレート・ガバナンス・コード)

・具体的な経営戦略や経営計画等について建設的な議論を行う

 

・重要な業務執行の決定を行う場合には、戦略的な方向付けを踏まえる

 

・取締役会自身として何を判断・決定し、何を経営陣に委ねるのかに関連して、経営陣に対する委任の範囲を明確に定め、その概要を開示する

 

・経営陣からの健全な企業家精神に基づく提案を歓迎しつつ、説明責任の確保に向けて、そうした提案について独立した客観的な立場において多角的かつ十分な検討を行う

 

・承認した提案が実行される際には、経営陣幹部の迅速・果断な意思決定を支援する

 

2.取締役の職務の執行の監督(会社法)

 

(対応するコーポレート・ガバナンス・コード)

・適切に会社の業績等の評価を行い、その評価を経営陣幹部の人事に適切に反映する

 

・適時かつ正確な情報開示が行われるよう監督を行う

 

・経営陣の報酬が持続的な成長に向けた健全なインセンティブとして機能するよう、客観性・透明性ある手続に従い、報酬制度を設計し、具体的な報酬額を決定する

 

・中長期的な業績と連動する報酬の割合や、現金報酬と自社株報酬との割合を適切に設定する

 

 

3.代表取締役の選定及び解職(会社法)

 

(対応するコーポレート・ガバナンス・コード)

・CEOの選解任は、会社における最も重要な戦略的意思決定であることを踏まえ、客観性・適時性・透明性ある手続に従い、十分な時間と資源をかけて、資質を備えたCEOを選任する

 

・会社の業績等の適切な評価を踏まえ、CEOがその機能を十分発揮していないと認められる場合に、CEOを解任するための客観性・適時性・透明性ある手続を確立する

 

会社機関の3形態と取締役の職務~監査役会設置会社、指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社

会社法における機関設計の類型は、多数ありますが、そのうち代表的と思われる3つの形態と取締役の職務について解説します。

3つの形態は、監査役会設置会社、指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社です。

 

1.機関設計に関する会社法の規程

 

会社法では、次に掲げる株式会社は、取締役会を置かなければならないとしています。

 

  • 公開会社

 

  • 監査役会設置会社

 

  • 監査等委員会設置会社

 

  • 指名委員会等設置会社

 

 

また、監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く取締役会設置会社は、監査役を置かなければなりません。

 

2.取締役会の権限

 

会社法は、取締役会の権限についての基本的な定めを第362条で行い、指名委員会等設置会社及び監査等委員会設置会社に関しては別途規程を設けています。

 

(1)取締役会の構成

 

取締役会は、すべての取締役で組織します。

 

(2)取締役会の権限

 

取締役会には、以下の権限があります。

 

  • 取締役会設置会社の業務執行の決定

 

  • 取締役の職務の執行の監督

 

  • 代表取締役の選定及び解職

 

取締役会は、次に掲げる事項を含む重要な業務執行の決定を取締役に委任することはできません。

 

  • 重要な財産の処分及び譲受け
  • 多額の借財
  • 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
  • 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
  • 社債に関する事項
  • 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制と株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
  • 取締役等の責任の免除

 

なお、大会社である取締役会設置会社においては、取締役会は、ヘ)に掲げる事項を決定しなければなりません。

 

3.指名委員会等設置会社

(1)委員の選定等

 

① 構 成

 

指名委員会等設置会社とは、指名委員会、監査委員会、報酬委員会を持つ会社です。

指名委員会、監査委員会、報酬委員会の各委員会(以下、「各委員会」)は、委員三人以上で組織します。各委員会の委員の過半数は、社外取締役でなければなりません。

 

② 選 定

 

各委員会の委員は、取締役の中から、取締役会の決議によって選定します。

監査委員会の委員(以下、「監査委員」)は、指名委員会等設置会社若しくはその子会社の執行役若しくは業務執行取締役又は指名委員会等設置会社の子会社の会計参与若しくは支配人その他の使用人を兼ねることはできません。

 

(2)執行役の選任等

指名委員会等設置会社には、一人又は二人以上の執行役を置かなければなりません。

 

執行役は、取締役会の決議によって選任します。

 

執行役は、取締役を兼ねることができます。

 

(3)指名委員会の職務

 

指名委員会は、株主総会に提出する取締役の選任及び解任に関する議案の内容を決定します。

 

(4)監査委員会の職務

 

① 執行役等の職務の執行の監査及び監査報告の作成

 

② 株主総会に提出する会計監査人の選任及び解任並びに会計監査人を再任しないことに関する議案の内容の決定

 

(5)報酬委員会の職務

 

① 執行役等の個人別の報酬等の内容を決定します。

執行役が指名委員会等設置会社の支配人その他の使用人を兼ねているときは、当該支配人その他の使用人の報酬等の内容についても、同様に決定します。

 

② 報酬委員会は、執行役等の個人別の報酬等の内容に係る決定に関する方針を定めなければなりません。

 

③ 報酬委員会は、次の各号に掲げるものを執行役等の個人別の報酬等とする場合には、その内容として、以下の事項を決定しなければなりません。

 

額が確定しているもの:個人別の額

 

額が確定していないもの:個人別の具体的な算定方法

 

金銭でないもの:個人別の具体的な内容

 

(6)指名委員会等設置会社の取締役の権限

 

指名委員会等設置会社の取締役は、会社法又は会社法に基づく命令に別段の定めがある場合を除き、指名委員会等設置会社の業務を執行することができません。

 

(7)指名委員会等設置会社の取締役会の権限

 

① 指名委員会等設置会社の取締役会は、次に掲げる職務を行います。

 

a)次に掲げる事項並びに指名委員会等設置会社の業務執行の決定

イ経営の基本方針

ロ監査委員会の職務の執行のため必要なものとして法務省令で定める事項

ハ執行役が二人以上ある場合における執行役の職務の分掌及び指揮命令の関係その他の執行役相互の関係に関する事項

ニ取締役会の招集の請求を受ける取締役

ホ執行役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備

 

b)執行役等の職務の執行の監督

 

②指名委員会等設置会社の取締役会は、①に掲げた職務の執行を取締役に委任することができません。

 

③指名委員会等設置会社の取締役会は、その決議によって、以下に掲げる事項を除いて、指名委員会等設置会社の業務執行の決定を執行役に委任することができます。

 

  1. 譲渡制限株式の指定
  2. 株主からの有償取得に関する事項の決定
  3. 新株予約権の決定
  4. 株主総会招集に関する事項の決定
  5. 株主総会に提出する議案の内容の決定
  6. 競業・利益相反取引の承認
  7. 取締役会を招集する取締役の決定
  8. 委員の選定及び解職
  9. 執行役の選任及び解任
  10. 指名委員会等設置会社を代表する者の決定
  11. 代表執行役の選定及び解職
  12. 取締役等の責任の免除
  13. 計算書類の承認
  14. 剰余金の配当に関する事項の決定
  15. 事業譲渡の内容の決定
  16. 合併契約の内容の決定
  17. 吸収分割契約の内容の決定
  18. 新設分割計画の内容の決定
  19. 株式交換契約の内容の決定
  20. 株式移転計画の内容の決定

4.監査等委員会設置会社

(1)監査等委員会設置会社の取締役会の権限

 

① 監査等委員会設置会社の取締役会は、次に掲げる職務を行います。

 

a)次に掲げる事項並びに監査等委員会設置会社の業務執行の決定

イ経営の基本方針

ロ監査等委員会の職務の執行のため必要なものとして法務省令で定める事項

ハ取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備

 

b)取締役の職務の執行の監督

 

c)代表取締役の選定及び解職

 

②監査等委員会設置会社の取締役会は、次に掲げる事項を含む重要な業務執行の決定を取締役に委任することはできません。

 

  1. 重要な財産の処分及び譲受け
  2. 多額の借財
  3. 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
  4. 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
  5. 社債に関する事項
  6. 取締役等の責任の免除

 

③前述の②にかかわらず、監査等委員会設置会社の取締役の過半数が社外取締役である場合には、監査等委員会設置会社の取締役会は、その決議によって、定められた事項以外の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができます。

 

④また、監査等委員会設置会社は、取締役会の決議によって②の事項を除く重要な業務執行の決定の全部又は一部を取締役に委任することができる旨を定款で定めることができます。

 

取締役の多様性の分析~「コーポレート・ガバナンス白書2019」より

「コーポレート・ガバナンス白書2019」(以下、本白書)が東京証券取引所から2019年5月に公表されました。本白書は、我が国企業を巡る近年のコーポレート・ガバナンス改革の進展も踏まえ、分析を行っています。本白書は、関係者が、変貌している我が国の上場会社のコーポレート・ガバナンスの取組状況を概観するための助けとなることを意図して作成されています。

 

取締役の多様性に関する分析結果を見てみましょう。

 

1.取締役会の多様性等に関する考え方(補充原則4-11①)

 

コーポレート・ガバナンス・コード原則4-11では、「取締役会は、その役割・責務を実効的に果たすための知識・経験・能力を 全体としてバランス良く備え、ジェンダーや国際性の面を含む多様性と適正規模を両立させる形で構成されるべきである。」とされており、補充原則4-11①においては、取締役会における知識・経験・能力のバランス、多様性及び規模に関する考え方の開示が求められています。

 

コーポレート・ガバナンス・コード改訂において、原則4-11は、ジェンダーや国際性の要素が「多様性」という言葉に含まれることを明確にしたうえで、そうした多様性と適正規模を両立させる形で取締役会を構成することを求めるものとしています。

 

こうした改訂を踏まえ、原則4-11の実施率は、68.9%(1,806 社)と、2017年7月時点の96.5%(2,451社)から、27.6ポイント減少しています。

 

補充原則4-11①については、取締役会の現状を述べることが求められている原則であり、その実施率は、96.1%(2,519社)と、2017年7月時点の98.7%(2,506社)と比較して大きな変動はありません。

 

 

2.多様性に関するキーワード

 

①専門

取締役の知識・経験・能力のバランス、多様性に関する主なキーワードとしては「専門(専 門性・専門的等)」が40.4%(1,018社)の会社において記載されています。

 

具体的な専門性として、「財務・会計」が20.2%(509社)、「経営者・会社経営・経営経験」が12.3%(311社)、「グロー バル・国際・海外」が11.5%(289社)、「法律」が3.3%(82社)の会社においてみられました。

 

また、「事業」が36.6%(921社)、「管理」が14.4%(363社)、「営業・販売」が9.5%(239社)、「生産・ 製造」が6.4%(162社)など、出身部門への言及もみられました。

 

②ダイバーシティ

デモグラフィック(人口統計学的属性)なダイバーシティについて、コーポレート・ガバナンス・コード改訂により明確化された「ジェンダー」や「国際性」と関連するキーワードである「女性」や「外国人(国 籍)」について記載している会社は、それぞれ7.8%(196 社)、8.2%(207社)と前回調査の4.1% (92社)、1.0%(23社)から増加しているものの、少数にとどまっています。

 

ただし、原則4-11を説明している市場第一部の会社の開示を分析すると、女性取締役の選任を検討中としている会社は、約半分となっており、今後、ジェンダーや国際性の面での多様性はより進んでいくものと考えられます。

 

③取締役会の規模

取締役会の規模に関する主なキーワードとしては「員数(定款)」があります。

「員数もしくは 定款」のキーワードを記載している会社は実施会社の36.5%(920社)で、定款上の取締役人数 の上限(員数)に言及している会社が多くなっています。

 

また、「意思決定」が28.2%(710社)、「監督」が 25.0%(629社)、「議論」が12.3%(309社)で記載がみられ、現在の取締役会の規模が「意思決定」や「監督」といった役割を果たすために適切であると述べています。

 

 

3.個別事例

 

<事例1>は自社の事業内容を踏まえつつ、社内取締役、社外取締役、常勤監査役、社外監査役について、それぞれに求める資質等を記載しています。

 

<事例2>は、自社の経営課題を意識した取締役会にしている旨を明記しています。経営戦略とコーポレート・ガバナンスの一体化という観点で取締役会の構成を考えています。

 

<事例3>、<事例4>及び<事例5>は、多様性に関する記載事例です。

 

<事例3> は既に女性取締役を選任している会社であり、自社の事業にとって女性の視点が重要と考えている旨を記載しています。

 

<事例4>は女性の登用について、候補者の育成についても言及し、前向きに検討している事例です。

 

<事例5>はグローバル展開していることを踏まえ、外国人の取締役を選任している事例です。

 

 

<事例1>

上記●記載の指名方針に従い、以下の通り取締役会全体としての知識・経験・能力のバランスと多様性を確保します。

また、取締役会の規模については、適正配置した執行役員への権限委譲を前提として、事業の拡大等に対応した意思 決定の迅速化を図るための取締役会の簡素化と適切な審議、執行の監督を行うために必要な多様な人財のバランスを勘案し、適切な規模とします。社内取締役については、適切な経営戦略等の立案、審議等に必要なグローバルな運営を含む、よきモノづくりに関わる研究開発、マーケティング、販売及び生産等の部門の運営及びこれらの部門を支援するコーポレート機能に関する部門の運営経験並びに当社を取り巻く事業環境及びこれに対応するための当社の強み・課題に対する理解を重視して指名します。

社外取締役については、経営戦略等の審議等に当たって、社内取締役だけでは得られない多様な、例えば、グローバルな経験を含む当社と異なる分野の製品・サービスを提供する会社の経営経験者及びコンサルタントや学識経験者等が有する経験並びにこれらの経験から得られる知識及び高い見識を有していることを重視し、あわせて独立性にも配慮して指名します。

また、社外取締役は、取締役会の多様性及び発言力の確保のため取締役の約半数を目途とします。

常勤監査役については、社内より、会計財務等の会社管理、事業等の運営、研究開発・生産から販売までのサプライチェーン及び海外経験等の各人のこれまでの業務経験及びこれらから得た知見等のバランス及び海外業務の経験や業務執行者からの独立性を確保できる資質を重視して指名します。

社外監査役については、監査に必要とされる会計財務や法律に関する高い専門性と見識、それを生かすことができる豊富な経験、及びプロフェッショナルとしての高い倫理観を有していること、そして法令上の社外性、独立性に関する適格性を重視して指名します。

また、監査役会の独立性、中立性を高めるため、監査役会の過半数を独立基準を満たす社外監査役とします。

監査役についても、経営戦略等の審議等に必要な経験、資質、専門性等を有しているかを指名の際に重視します。

また、知識・経験・能力だけでなく、性別、人種、国籍等のダイバーシティから生まれる多角的な視点が事業の推進 やグローバル拡大、適切な監督や監査に資するとの認識に立ち、これらの多様な人財の役員への登用を進めます。(略) (化学)

 

<事例2>

当社定款に定める取締役の員数は7名以下、監査役は4名以下としております。

現在、取締役は6名を選任しており、少人数による議論が可能な体制を維持しつつ、当社の事業に関する深い知見を備える取締役や、独立的な立場から取締役会の適切な意思決定に対する助言・経営陣に対する実効性の高い監督など コーポレート・ガバナンスの充実に資することのできる社外取締役を選任するなど、専門知識や経験等のバックグラウンドが異なる構成としております。

取締役はそれぞれ、当社の経営課題である「既存事業の成長」「商品力強化」「海外事業展開の加速」「新規事業領域 の拡大」への対応に必要な資質と多様性を備えており、取締役会における独立社外取締役の人数比率は3分の1となっていることから、独立性と客観性をより一層確保できる体制であると考えております。

監査役は4名選任しており、うち3名が社外監査役(うち1名が女性)となっており、独立的立場から取締役の職務の執行状況を監視しております。 (食料品)

 

<事例3>

(略) 当社は、1名の海外勤務経験のある業務執行取締役を選任しています。

また、1名の女性社外取締役を選任しています。

当社のインテリア、住生活に関連する事業の特性から女性の視点で経営・事業をチェックできるよう、これからも内外から女性の登用をいっそう進めたいと考えています。 (卸売業)

 

<事例4>

(略) 女性取締役は現在選任されておりませんが、将来の取締役候補育成に向けた職場環境の改善、制度の構築等の働き方改革を実践し、女性が経営者を目指す環境を整え、ジェンダー面における多様性の改善を検討してまいります。 (化学)

 

<事例5>

取締役については、取締役会全体としての知識・経験・能力の多様性を確保するとともに、その機能が効果的・効率 的に発揮されるよう人員の最適化を図っています。

2018年度は、グローバルで展開する当社グループの安定的な事業活動の基盤をさらに強化するため、外国人取締役を1名を新たに選任し、取締役会における、国際性を含めた多様性を確保しています。

監査役については、財務・会計に関する相当程度の知見を有する人材を1名以上選任し、法務に関する知識を有する人材も1名選任しています。 (電気機器)

 

任意の委員会についての分析~「コーポレート・ガバナンス白書2019」より

「コーポレート・ガバナンス白書2019」(以下、本白書)が東京証券取引所から2019年5月に公表されました。本白書は、我が国企業を巡る近年のコーポレート・ガバナンス改革の進展も踏まえ、分析を行っています。本白書は、関係者が、変貌している我が国の上場会社のコーポレート・ガバナンスの取組状況を概観するための助けとなることを意図して作成されています。

 

1.任意の指名委員会・報酬委員会の設置

 

2015年のコーポレート・ガバナンス・コード導入以降、上場会社において任意の指名委員会及び報酬委員会(以下「任意の指名・報酬委員会」という。)の設置が進んでいます。

2018年6月のコーポレート・ガバナンス・コード改訂において、補充原則4-10①が改訂され、当該補充原則を実施とするためには任意の指名・ 報酬委員会の設置が必要となったことから、今後も、任意の指名・報酬委員会を設置する会社の数は引き続き増加していくものと思われます。

 

任意の指名・報酬委員会に対する資本市場の関心も高く、例えば、一部の株主から、上場会社に対し、対話や書簡、場合によっては株主提案等を通じて、任意の指名・報酬委員会の設置を求める動きが出てきており、また、大手機関投資家の一部でも、それら任意の指名・報 酬委員会の設置に関する株主提案に対し原則賛成するとの議決権行使方針を公表する会社が出てきています。

 

近年は、取締役の指名や報酬決定のプロセスに関連した企業不祥事も発生していることから、一般の投資者の間における関心も高まってきています。

 

一般的な任意の指名・報酬委員会の実態について整理すると、代表取締役や社外取締役、必要に応じて社外監査役等4〜5名が構成員となるケースが多いようです。

 

 

2.開催頻度

 

開催頻度ですが、経済産業省が行ったアンケートによると、年1〜3回の会社が多数派である一方で、年5回以上開催する会社も一定数存在します。

 

任意の指名・報酬委員会で何をどの程度まで審議するかによって開催頻度も大きく異なってくると考えられ、例えば、任意の指名委員会の開催回数が1回の場合は、株主総会に上程する取締役の選任議案について経営陣の策定した原案を確認するだけという会社も一定数あると推察されます。

 

一方で、社長・CEOの後継者計画や執行役員・主要子会社の経営陣等の指名を含めて指名委員会の審議範囲としている会社の場合は、自ずと開催頻度が多くなる傾向にあります。

報酬委員会についても同様で、報酬原案の確認だけでなく、他社の報酬動向等を踏まえたうえで、自社の報酬制度の見直し等を議論する場合には、年複数回の開催が必要となってきます。

 

コーポレート・ガバナンス・コード改訂により、「形」である任意の指名・報酬委員会の設置の普及が進み、その後、一段落すると、次は「中身」である具体的な活動内容に焦点があたると考えられます。

 

開催回数が1 回又は2回の会社が多いことを踏まえると、多くの上場会社で任意の指名・報酬委員会の運用実務は手探りの状況にあると推察されます。

 

 

3.活動状況の開示

 

2019年3月期以降の有価証券報告書においては、報酬決定プロセスについて有価証券報告書にてより詳細な開示が求められています。

 

また、東京証券取引所においても、2018年6月に公表された金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告書を踏まえ、コーポレート・ガバナンス報告書の記載要領を変更し、取締役会並びに指名委員会及び報酬委員会の活動状況(開催頻度、主な検討事項、個々の役員・委員の出席状況等)を記載することが望ましい旨を追加しています。

 

今後は、指名や報酬の考え方や決定プロセス等について、株主との対話を意識したより積極的な情報開示が求められると考えられます。。

 

指名委員会、監査委員会、報酬委員会についての分析~「コーポレート・ガバナンス白書2019」より

「コーポレート・ガバナンス白書2019」(以下、本白書)が東京証券取引所から2019年5月に公表されました。本白書は、我が国企業を巡る近年のコーポレート・ガバナンス改革の進展も踏まえ、分析を行っています。本白書は、関係者が、変貌している我が国の上場会社のコーポレート・ガバナンスの取組状況を概観するための助けとなることを意図して作成されています。

 

統治機構である委員会等についての分析結果を見てみましょう。

 

1.委員会等の制度の概要

 

指名委員会等設置会社は、指名委員会、監査委員会及び報酬委員会の三つの委員会を置く 株式会社とされており、いずれの委員会も取締役3名以上で組織し、その構成員の過半数を社外取締役としなければなりません。

 

また、指名委員会等設置会社では、業務執行の決定を、取締役会は自らが選任した執行役に対して大幅に委任できる仕組みとなっています。

 

コーポレート・ガバナンス・コードの原則4-10において、任意の仕組みの活用による統治機構の充実を定めており、更に、補充原則4-10①においては、独立社外取締役を主な構成員とする任意の指名委員会・報酬委員会等の設置を求めています。

 

コーポレート・ガバナンス報告書では、監査役会設置会社においては、監査役関係の記載に加え、指名委員会又は報酬委員会に相当する任意の委員会を設置している場合には、その委員構成、委員長(議長)の属性を記載することを要請しています。

 

監査等委員会設置会社においても、会社法上設置することとされている監査等委員会の他に指名委員会又は報酬委員会に相当する任意の委員会を設置している場合には、その委員構成、委員長(議長)の属性を記載することを要請しています。

 

2.記載事項の分析

 

要請されている委員会の記載事項を、「指名」、「報酬」、「監査」という機能別に、その現状を分析しています。

なお、監査役会設置会社の監査役関係は「監査」の事項で分析しています。

 

⑴ 指 名

 ① 指名委員会の設置状況

指名委員会等設置会社では、指名委員会の設置は必須ですが、監査等委員会設置会社及び監査役会設置会社においては、設置するかどうかは会社の任意です。

 

法定又は任意の指名委員会の設置状況について、市場区分別にみてみると、市場第一部において、法定又は任意の指名委員会を設置している会社の比率が、他の市場に比べ高くなっています。

 

JPX日経400構成会社をみると、法定の指名委員会を設置している会社は8.5%(34社)、任意の指名委員会を設置している会社は61.9%(247社)、設置していない会社は29.6%(118社)であり、市場第一部と比べ、更に高い水準となっています。

 

指名・報酬等の検討において、独立社外取締役を主要な構成員とする任意の指名委員会・報酬委員会の設置を求める補充原則4-10①の実施率は48.3%でした。

 

2017年7月時点のコーポレート・ガバナンス・コード実施率が76.7%であり、今回のコーポレート・ガバナンス・コード改訂により大幅に実施率が低下しています。

 

改訂前コーポレート・ガバナンス・コードでは、任意の指名委員会・報酬委員会の設置は「例示」であったものの、今回のコーポレート・ガバナンス・コード改訂により「例示」が消え、補充原則4-10①を実施するに際しては、任意の指名委員会・報酬委員会等を設置することが必要となったことから、大幅に実施率が低下したものと考えられます。

 

② 指名委員会の人数

指名委員会等設置会社では、 指名委員会の人数が他の組織形態に比べ少ないといえます。

 

指名委員会等設置会社における法定の指名委員会は平均人数が4.24人で、委員会の人数が3人の会社が38.0%と最も高い割合を占めています。

 

監査等委員会設置会社の任意の指名委員会は平均人数が4.49人で、委員会の人数が5人の会社が31.3%で最も高い割合を占めています。

 

監査役会設置会社における任意の指名委員会は人数が平均4.61人で、委員会の人数が4人の会社が28.9%と最も高い割合を占めています。

 

③ 指名委員会における社内取締役と社外取締役の比率・人数

指名委員会等設置会社の指名委員会は、社内取締役が25.9%、社外取締役が74.1%です。

 

監査等委員会設置会社の任意の指名委員会は、社内取締役が37.0%、社外取締役が61.9%、ます外有識者が0.5%、その他が0.7%となっています。

 

監査役会設置会社の任意の指名委員会は、社内取締役が36.0%、社外取締役が49.7%、社外有識者が1.9%、その他が12.3%となっています。「その他」には、監査役が含まれています。

 

監査役会設置会社と監査等委員会設置会社の任意の指名委員会は、指名委員会等設置会社の指名委員会に比べて、社内取締役の人数が多くなっています。

 

指名委員会等設置会社の指名委員会においては、社内取締役は1人のみという会社が67.6%と大半を占める一方、監査等委員会設置会社及び監査役会設置会社における任意の指名委員会では、社内取締役は2名以上という会社が過半数を占めています。

 

指名委員会等設置会社の指名委員会では法律上、委員会を構成する取締役の過半数は社外取締役でなければならないため、少なくとも2人の社外取締役が委員会の構成員となっています。

 

監査等委員会設置会社及び監査役会設置会社における任意の指名委員会においても、社外取締役は2人以上としているところが大半ですが、社外取締役が0人という事例もみられました。

 

④ 指名委員会の委員長の属性

指名委員会等設置会社の指名委員会は、委員長が社外取締役である会社が67.6%で過半数を占めています。

 

一方、監査役会設置会社及び監査等委員会設置会社の任意の指名委員会では、法定の指名委員会と比べて、委員長が社内取締役である比率が高くなっています。

 

監査等委員会設置会社の任意の指名委員会の委員長は、社内取締役が48.9%、監査役会設置会社では社内取締役が46.1%です。

 

⑵ 報 酬

① 報酬委員会の設置状況

指名委員会等設置会社では、報酬委員会の設置は必須ですが、監査等委員会設置会社及び監査役会設置会社においては、その設置は会社の任意です。

 

市場第一部での法定及び任意の報酬委員会の設置状況は他の市場に比べ高くなっています。

 

なお、JPX日経400構成会社においては、法定の報酬委員会を設置している会社は8.5%(34社)、任意の報酬委員会を設置している会社は63.7%(254 社)、設置していない会社は27.8%(111社)であり、市場第一部と比べても、2倍弱と高い設置比率になっています。

 

② 報酬委員会の人数

指名委員会等設置会社の報酬委員会の人数は、指名委員会と同様に、他の組織形態に比べ少ないといえます。

 

指名委員会等設置会社の法定の報酬委員会は平均人数が3.89人で、委員会の人数が3人の会社が50.7%と最も高い割合を占めています。

 

監査等委員会設置会社の任意の報酬委員会は平均人数が4.45人で、委員会の人数が5人の会社が31.6%と最も高い割合を占めています。

 

監査役会設置会社の任意の報酬委員会は平均人数が4.52人で、委員会の人数が4人の会社が28.6%と最も高い割合を占めています。

 

③ 報酬委員会における社内取締役と社外取締役の比率・人数

指名委員会等設置会社の報酬委員会は、社内取締役が24.6%、社外取締役が75.4% です。

 

監査等委員会設置会社の任意の報酬委員会は、社内取締役が37.9%、社外取締役が61.0%、社外有識者が0.5%、その他が0.6%となっています。

 

監査役会設置会社の任意の報酬委員会は、社内取締役が36.0%、社外取締役が48.8%、社外有識者が2.2%、その他が12.9%となっています。

 

指名委員会等設置会社の報酬委員会の社内取締役の平均人数は0.96人で、1人の会社が57.7%と最も高い割合を占めています。

 

一方、監査等委員会設置会社及び監査役会設置会社の任意の報酬委員会においては、2 人以上の社内取締役が入っている会社が過半を占めています。

 

指名委員会と同様、指名委員会等設置会社においては2人又は3人の社外取締役が構成員となっているところが大半を占め、監査等委員会設置会社及び監査役会設置会社においては、社外取締役が0人又は1人という事例もみられました。

 

④ 報酬委員会の委員長の属性

指名委員会等設置会社の報酬委員会は、委員長が社外取締役である会社の比率が74.6%で過半数を占めています。

 

監査等委員会設置会社の任意の報酬委員会は、社外取締役が48.4%と社内取締役の46.4%と比べて高くなっています。

 

監査役会設置会社の任意の報酬委員会は、委員長の属性は社内取締役が46.3%と社外取締役45.0%と比べて高くなっています。

 

⑶ 監 査

① 監査委員会・監査等委員会・監査役会の人数

監査委員会は平 均人数が3.99人で、委員会人数が3人の会社が40.8%で最も高い割合を占めています。

 

監査等委員会は平均人数が3.41人で、委員会人数が3人の会社が69.4%で最も高い割合を占めています。

 

監査役会は平均人数が3.54人で、人数が3人の会社が56.7%で最も高い割合を占めています。

 

平均人数では指名委員会等設置会社の監査委員会が最も多くなっています。

 

② 監査委員会・監査等委員会・監査役会における社内役員と社外役員の比率・人数

 

監査委員会では社内取締役が20.5%、社外取締役が79.5%、監査等委員会では社内取締役が 22.7%、社外取締役が77.3%、監査役会は社内監査役が30.9%、社外監査役が69.1%です。

 

監査委員会においては、社内取締役が0人の会社が38.0%と高くなっています。

 

監査等委員会では、社内取締役が1人という会社が67.2%で最も高い比率を示しています。

 

監査役会においては、社内監査役が1人以上いる会社が大半です。

 

いずれの場合も2人以上の社外者が構成員となることが法定されていますが、指名委員会等設置会社の監査委員会では社外取締役が3人以上である会社が大半を占めています。

 

③ 監査委員会・監査等委員会における常勤者の人数

監査委員会の常勤者の平均人数は0.80人で、0人、1人の会社が39.4%、40.8%と最も高い割合を占めています。

 

監査等委員会の常勤者の平均人数は0.92人で、1人の会社が75.6%で最も高い割合を占めています。

 

④ 監査委員会・監査等委員会の委員長の属性

監査委員会では委員長の属性は社外取締役の割合が80.3%と多い一方、監査等委員会の委員長の属性は社内取締役が59.9%を占めています。

 

また、監査等委員会では、委員長を指名していない会社が2.6%存在します。

 

経営陣への委任の範囲の分析~「コーポレート・ガバナンス白書2019」より

「コーポレート・ガバナンス白書2019」(以下、本白書)が東京証券取引所から2019年5月に公表されました。本白書は、我が国企業を巡る近年のコーポレート・ガバナンス改革の進展も踏まえ、分析を行っています。本白書は、関係者が、変貌している我が国の上場会社のコーポレート・ガバナンスの取組状況を概観するための助けとなることを意図して作成されています。

 

「経営陣への委任の範囲」に関する分析結果を見てみましょう。

 

1.経営陣に対する委任の範囲(補充原則4-1①)の概要

 

コーポレート・ガバナンス・コード原則4-1においては、取締役会は、「会社の目指すところ(経営理念等)を確立し、戦略的な方向付けを行うことを主要な役割・責務の一つと捉え、具体的な経営戦略や経営計画等について建設的な議論を行うべき」としています。

 

そのうえで、補充原則4-1①は、取締役会自身として何を判断・決定するのかに関連して、経営陣に対する委任の範囲を開示することを求めています。

 

(1)記載内容の分析

 

補充原則4-1①の実施率は99.6%(2,610社)となっています。

 

ほとんどの会社においては、取締役会規則や決裁権限規程等の社内規則において、取締役会自身での決議事項等を定めていて、同補充原則を実施しない会社はごく少数にとどまっています。

 

しかしながら、これまで我が国の会社の取締役会では、基本的な経営戦略や経営計画に関 する事項、監督機能に関する事項を十分に議論してこなかったとの指摘もあります。

 

同補充原則においては、会社の意思決定システムにおける取締役会の役割・責務を明確化することが求められています。

 

多くの会社が社外取締役の複数名選任を進めており、取締役会の経営陣に対する監督機能を今まで以上に強化していく中で、取締役会が果たすべき役割を明確化し、実行していくことの重要性が増しています。

 

(2)キーワード分析

 

同補充原則に基づく一般的な開示例としては、「当社は、取締役会規則を制定し、法令並び に定款に規定された事項のほか、業務執行上の重要な事項について、取締役会の決議により決定しています。」という旨のものが多くなっています。

 

実際にキーワード分析を行うと、「規則・規程等」については80.9%(2,112社)、「法令等」については66.4%(1,734社)、「定款」については51.7% (1,349社)の会社が記載しています。

 

その他にも、「職務権限」については31.9%(832社)、「決裁(決裁権限・決裁基準)」については21.4%(558社)、「付議基準」については5.9%(153社) で記載がみられました。

 

多くの会社が、法令や定款、各種規則、決定権限等に基づいて取締役会の役割・責務を明確化していることが伺えます。

 

また、執行役員制度や経営会議を設置している等として、取締役会と経営陣の役割分担を 明記している会社も一部でみられました。

 

「執行役員」というキーワードを含む会社は30.4%(793 社)、「会議(経営会議・執行役員会議等)」を含む会社は25.1%(655社)でした。

 

コーポレート・ガバナンス・コード上、取締役会において判断・決定すべき項目とされる「経営戦略」「経営計画」等をキーワードとして含めている会社数は、「戦略(経営戦略等)」が11.4%(297社)、「計画(経営計画・ 事業計画)」が18.2%(474社)でした。

 

法令や定款、各種規則等をキーワードとして含めている会社数に比べると少なく、取締役会の具体的な決定事項まで踏み込んだ記載を行っている会社は一部であることが伺えます。

 

2.個別の開示事例の分析

 

個別の開示事例をみていきますと、まず<事例1>は執行役員制度の導入による、監督と執行の分離について言及すると共に、取締役会が決定する事項について具体的に記載することで、取締役会の役割・責務が会社の全体的な考え方を含めて明確化されています。

 

<事例2>のように、経営会議について、設置の狙いや出席者の役職等について開示を行っている会社もあります。

 

<事例3>は具体的な社内規程を明記している事例です。

取締役会の決議事項、代表取締役等への委任事項について、金額基準を含めて詳細な基準を公表しています。

具体的な数字基準を明らかにすることで、株主・投資家等に対して取締役会と経営陣の役割分担を明確に示しているといえます。

 

<事例4>は取締役会において、経営戦略や長期ビジョン、あるいは経営全般に関わるテーマについて自由な意見交換を行う「戦略・ビジョン討議」を行っている旨を記載している事例です。

「ビジョン」に言及している会社は17社(0.7%)にとどまっていますが、そのなかでも、同社は積極的に経営戦略や長期ビジョン等について取締役会が関与していこうとする姿勢がみえる開示です。

 

<事例1>

当社は、執行役員制度を導入して監督と執行を分離することにより、取締役会は独立した客観的な立場から、実効性の高い監督を行います。

取締役会は、当社グループの持続的な成長と中長期の企業価値向上を達成するために、経営の基本方針、経営戦略、中期経営計画、年度経営計画、資本政策等の経営重要事項を決定し、経営陣に具体的な業務執行を委任します。

取締役会は、法令で定める事項および重要な業務執行の決定を除き、経営会議に対し、個別の業務執行についての決定を委任します。その区分については、社内規程によって明確にします。 (水産・農林業)

 

<事例2>

当社は、経営の意思決定・監督機関として株主から付託を受けた「取締役会」、取締役会の決定に基づき業務執行の意思決定を行なう「経営会議」、業務執行を行なう「執行役員制度」を設け、経営の意思決定・監督と業務執行の分離を行なっています。

当社取締役会は、取締役会の迅速かつ機動的な意思決定と企業経営の実現、取締役会による取締役等経営陣への監督強化を目的として、法令上取締役会による専決事項とされている事項以外の業務執行の決定の一部を取締役会から経営会議に委任しています。

当社経営会議は、業務執行上の機関として設置され、取締役会から委任を受けた上記事項につき、組織的かつ迅速な意思決定を行います。

経営会議は、取締役社長、在京の業務執行取締役、国際事業部長、工事統括部長、企画ユニット長、管理ユニット長により構成されます。 (建設業)

 

<事例3>

(中略)社内規程(稟議規程)においては、例えば、2億円超の建物設備の改築等、什器備品・車両の購入等、重要かつ多量の営業資産の購入・廃棄等、LPガス営業権の買収等については取締役会の決議事項、2億円以下のそれらの事項については金額に応じて代表取締役その他機関の決定事項としております。

また、3000万円以上の不良債権の償却整理・債務免除、補償及び損害賠償、債務保証・担保差入等については、取締役会の決議事項、3000万円以下のそれらの事項については、金額に応じて代表取締役その他機関の決定事項としております。 (卸売業)

 

<事例4>

取締役会は、当社の中枢的な意思決定機関として、当社グループの経営に係る基本方針と最重要案件の審議・決議を行っています。

取締役会は定例としては年10回程度適切な間隔を置き開催し、例えば、経営計画の策定や大型投資の決定、各事業年度の予算承認、四半期決算承認について決議を行っています。

また、経営戦略や長期ビジョン、あるいは経営全般に関わるテーマについて社外取締役・社外監査役を交えて自由な意見交換を行う「戦略・ビジョン討議」を行っています。

また、取締役会規程にて付議基準を定め、取締役会にて決議する範囲を定めています。(中略) (海運業)