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会社が不祥事を起こした時の対応で、考えなければならないこと

『「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」の策定について』、が、2016年2月24日に日本取引所自主規制法人から公表されました。

その内容を抜粋してお届けします。

 

1.策定の背景

 

上場会社の不祥事(重大な法令違反その他の不正・ 不適切な行為等)は、その影響が多方面にわたり、当該上場会社の企業価値が毀損することはもちろんですが、場合によっては、資本市場全体の信頼性にも影響を及ぼします。

 

したがって、上場会社においては、パブリックカンパニーとしての自覚を持ち、自社(グループ会社を含む)に関わる不祥事又はその疑いを察知した場合は、速やかにその事実関係や原因を徹底して解明し、その結果に基づいて確かな再発防止を図る必要があります。また、自浄作用を発揮することで、ステークホルダーの信頼を回復するとともに、企業価値の再生を確かなものとすることが強く求められていると言えます。

 

しかし、上場会社における不祥事対応の一部には、原因究明や再発防止策が不十分であるケース、調査体制に十分な客観性や中立性が備わっていないケース、情報開示が迅速かつ的確に行われていないケースなども見受けられます。

 

日本取引所自主規制法人は、このような認識のもとに、不祥事に直面した上場会社に 強く期待される対応や行動に関する原則(プリンシプル)を策定しました。

 

このプリンシプルを用いることによって、問題に直面した上場会社の速やかな信頼回復と確かな企業価値の再生に資することを目的としています。

 

本来、不祥事への具体的な対応は各社の実情や不祥事の内容に即して行われるもので、すべての事案に関して一律の基準(ルール・ベース)によって規律することには馴染まないと言えますが、それらの対応策の根底にあるべき共通の行動原則があらかじめ明示されていることは、各上場会社がそれを個別の判断の拠り所とできるため、有益と考えられています。

 

2.上場会社における不祥事対応のプリンシプル

 

企業活動において自社(グループ会社を含む)に関わる不祥事又はその疑義が把握された場合には、当該企業は、必要十分な調査により事実関係や原因を解明し、その結果をもとに再発防止を図ることを通じて、自浄作用を発揮する必要があります。

 

その際、上場会社においては、速やかにステークホルダーからの信頼回復を図りつつ、確かな企業価値の再生に資するよう、本プリンシプルの考え方をもとに行動・対処することが期待されます。

 

(1)不祥事の根本的な原因の解明

不祥事の原因究明に当たっては、必要十分な調査範囲を設定の上、表面的な現象や因果関係の列挙にとどまることなく、その背景等を明らかにしつつ事実認定を確実に行い、根本的な原因を解明するよう努める必要があります。

 

そのために、必要十分な調査が尽くされるよう、最適な調査体制を構築するとともに、社内体制についても適切な調査環境の整備に努めなければなりません。その際、独立役員を含め適格な者が率先して自浄作用の発揮に努める必要があります。

 

(2)第三者委員会を設置する場合における独立性・中立性・専門性の確保

内部統制の有効性や経営陣の信頼性に相当の疑義が生じている場合、当該企業の企業価値の毀損度合いが大きい場合、複雑な事案あるいは社会的影響が重大な事案である場合などには、調査の客観性・中立性・専門性を確保するため、第三者委員会の設置が有力な選択肢となります。

 

そのような趣旨から、第三者委員会を設置する際には、委員の選定プロセスを含め、その独立性・中立性・専門性を確保するために、十分な配慮を行う必要があります。

 

(3)実効性の高い再発防止策の策定と迅速な実行

再発防止策は、根本的な原因に即した実効性の高い方策とし、迅速かつ着実に実行する必要があります。

 

この際、組織の変更や社内規則の改訂等にとどまらず、再発防止策の本旨が日々の業務運営等に具体的に反映されることが重要であり、その目的に沿って運用され、定着しているかを十分に検証しなければなりません。

 

(4)迅速かつ的確な情報開示

不祥事に関する情報開示は、その必要に即し、把握の段階から再発防止策実施の段階に至るまで迅速かつ的確に行う必要があります。

 

この際、経緯や事案の内容、会社の見解等を丁寧に説明するなど、透明性の確保に努めることが重要です。

決算日後に財務諸表に影響を与える事象が発生した場合の対応~後発事象とは何か

1.後発事象の意義

後発事象とは、決算日後に発生した会社の財政状態及び経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす会計事象です。

後発事象は、財務諸表を修正すべき後発事象(以下、修正後発事象)と財務諸表に注記すべき後発事象(以下、開示後発事象)の二つに分類されます。

いずれの事象に該当するかは、決算日後に発生した事象の背景や原因に着目して、その実質的な原因が決算日現在において存在しているかどうかを判断することになります。

 

2.修正後発事象

(1)意義

修正後発事象とは、決算日後に発生し、その実質的な原因が決算日現在において既に発生しており、財務諸表を修正する必要がある会計事象を言います。

決算日後に発生した会計事象ですが、その実質的な原因が決算日現在において既に存在しており、決算日現在の状況に関連する会計上の判断ないし見積りをする上で、追加的ないし、より客観的な証拠を提供するものとして考慮しなければならない会計事象です。

 

修正後発事象のうち、重要な後発事象については、当期の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼすものとして財務諸表の修正を行うことが必要となります。

(2)財務諸表における取り扱い

①会社法

計算書類が、会計監査人に提出されるまでに発生:計算書類を修正します。

提出後、会計監査人の監査報告書までに発生:計算書類を修正します。

 

②金融証券取引法

監査報告書日までに発生:財務諸表を修正します。

ただし、会社法監査の会計監査人監査報告書日後に修正後発事象が発生した場合には、開示後発事象に準じて取り扱います。

 

(3)監査報告書における取り扱い

修正後発事象が、財務諸表において修正されていない場合、監査意見の除外事項となります。

 

(4)修正後発事象の例示

  • 当該後発事象の発生により、未確定事項が確定する場合
    決算日後に、勝訴・敗訴・和解など訴訟事件に一定の結論が得られたことにより、決算日において既に債務が存在していたことが明確になった場合は、財務諸表を修正します。

 

  • 当該後発事象の発生により、会計上の見積に対して、より客観的な証拠が提供される場合
    決算日において得意先に対して売掛債権が存在し、決算日後に当該得意先が倒産した場合には、一般的に、期末日時点においてすでに得意先の財政状態の悪化という原因が存在すると考えられますので、当該得意先に対する貸倒引当金の見積額を積み増しして財務諸表を修正します。

 

3.開示後発事象

(1)意義

開示後発事象とは、決算日後に発生し、当該事業年度の財務諸表には影響しないが、翌事業年度以降の会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす会計事象です。

 

実質的な原因が決算日時点で存在せず、決算日後の事象の発生により、初めて明らかになった場合は、当期の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼすものではありませんが、翌期以降の会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する的確な判断に資するため財務諸表への注記が必要となります。

 

(2)決算日後に発生した事象における「発生」の時点

①会社の意思決定により進めることができる事象:当該意思決定のあったとき

②会社が他の会社との合意に基づいて進めることができる事象:当該合意の成立または事実の公表があったとき

③会社の意思に関係のない事象:当該事象の発生日または当該事象を知ったとき

 

(3)開示後発事象の事例

開示後発事象の例示として以下のような事象が考えられます。(監査・保証実務委員会報告76号「後発事象に関する監査上の取扱い」参照)

これらはあくまで例示のため、会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に与える影響等を考慮した上で開示の要否を検討する必要があります。

 

<開示後発事象の例示>からの抜粋

①会社が営む事業に関する事象

重要な事業の譲受、譲渡

重要な合併、会社分割

重要な事業からの撤退

 

②資本の増減等に関する事象

重要な新株の発行

重要な株式交換、株式移転

重要な自己株式の取得、処分、消却.

 

③資金の調達又は返済等に関する事象

多額な社債の発行、資金の借入

多額な社債の買入償還又は繰上償還

借換え又は借入条件の変更による多額な負担の増減

 

④会社の意思にかかわりなく蒙ることになった損失に関する事象

火災、震災、出水等による重大な損害の発生

不祥事等を起因とする信用失墜に伴う重大な損失の発生

 

4.継続企業の前提に関する事項を重要な後発事象として開示する場合

決算日後に、継続企業の前提に重要な疑義そ生じさせる事象または状況が発生し、

当該事象等を解消または改善するための対応をしても、なお、継続企業の前提に重要な不確実性が認められ、翌事業年度以降の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに重要な影響を及ぼすとき、財務諸表に注記が必要となります。

 

夫婦の間で居住用不動産の贈与を行った場合の取り扱い~配偶者控除の適用要件と手続き

1.特例の概要

 

婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できるというものです。

 

2.特例を受けるための適用要件

 

(1) 夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと

配偶者控除は同じ配偶者からの贈与については、一生に一度しか適用を受けることができません。

 

(2) 配偶者から贈与された財産が居住用不動産であること、または居住用不動産を取得するための金銭であること

 

(3) 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与を受けた配偶者が取得した居住用不動産に現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること

 

3.居住用家屋のみあるいは居住用家屋の敷地のみ贈与を受けた場合の配偶者控除の適用

この居住用家屋の敷地のみの贈与について配偶者控除を適用する場合には、次のいずれかに当てはまることが必要です。

 

(1) 夫又は妻が居住用家屋を所有していること。

 

(2) 贈与を受けた配偶者と同居する親族が居住用家屋を所有していること。
居住用家屋の敷地の一部の贈与であっても、配偶者控除を適用できます。

居住用家屋の敷地が借地権のときに金銭の贈与を受けて、地主から底地を購入した場合も、居住用不動産を取得したことになり、配偶者控除を適用できます。

 

4.適用を受けるための手続き

次の書類を添付して、贈与税の申告をすることが必要です。

 

(1) 財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍謄本又は抄本

(2) 財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍の附票の写し

(3) 居住用不動産の登記事項証明書その他の書類で贈与を受けた人がその居住用不動産を取得したことを証するもの

 

金銭ではなく居住用不動産の贈与を受けた場合は、上記の書類のほかに、その居住用不動産を評価するための書類(固定資産評価証明書など)が必要となります。

5.相続や贈与などにより取得した土地や家屋の評価方法~相続税・贈与税での評価

(1) 土地

 

土地は、原則として宅地、田、畑、山林などの地目ごとに評価します。
土地の評価方法には、路線価方式と倍率方式があります。

 

イ 路線価方式
路線価方式は、路線価が定められている地域の評価方法です。路線価とは、路線(道路)に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額のことで、千円単位で表示しています。
路線価方式における土地の価額は、路線価をその土地の形状等に応じた奥行価格補正率などの各種補正率で補正した後に、その土地の面積を乗じて計算します。

 

ロ 倍率方式
倍率方式は、路線価が定められていない地域の評価方法です。倍率方式における土地の価額は、その土地の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて計算します。

 

 (2) 家屋

 

固定資産税評価額に1.0倍して評価します。

 

(3) その他

 

イ 賃貸されている土地や家屋については、権利関係に応じて評価額が調整されます。

 

ロ 相続した宅地等が事業の用や居住の用として使われている場合には、一定の限度面積までの部分についてその評価額の一定割合を減額する相続税の特例があります。

 

ハ 負担付贈与あるいは個人の間の対価を伴う取引により取得した土地や家屋等について贈与税を計算するときは、通常の取引価額によって評価します。

 

住宅取得のための資金を父母・祖父母からもらった時の税務~贈与税非課税の特例

1.制度の概要

平成27年1月1日から平成33年(2021年)12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得又は増改築等(以下「新築等」といいます。)の対価に充てるための金銭(以下「住宅取得等資金」といいます。)を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、次の非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税となります(以下、「非課税の特例」といいます。)。

 

2.非課税限度額

受贈者ごとの非課税限度額は、次のイ又はロの表のようになっています。

新築等をする住宅用の家屋が省エネ等住宅とそれ以外で、非課税限度額は異なります。また、受贈者が最初に非課税の特例の適用を受けようとする住宅用の家屋の新築等に係る契約の締結日によっても非課税限度額は異なります。

 

平成31年(2019年)4月1日以後に住宅用の家屋の新築等に係る契約を締結して非課税の特例の適用を受ける場合の受贈者ごとの非課税限度額は、下記イ及びロの表の金額のうちいずれか多い金額となります。

既に非課税の特例の適用を受けて贈与税が非課税となった金額がある場合には、その金額を控除した残額が非課税限度額となります。

ただし、ロの表における非課税限度額は、平成31年(2019年)3月31日までに住宅用の家屋の新築等に係る契約を締結し、既に非課税の特例の適用を受けて贈与税が非課税となった金額がある場合でも、その金額を控除する必要はありません。

 

(国税庁ホームページより)

 

「省エネ等住宅」とは、省エネ等の基準に適合する住宅用の家屋であることについて、一定の書類により証明されたものをいいます。

 

3.贈与を受けた方の条件

贈与を受けた方が次の要件の全てを満たす場合、非課税の特例の対象となります。

(1) 贈与を受けた時に贈与者の直系卑属(贈与者は受贈者の直系尊属)であること。

(2) 贈与を受けた年の1月1日において、20歳以上であること。

(3) 贈与を受けた年の年分の所得税に係る合計所得金額が2,000万円以下であること。

(4) 平成21年分から平成26年分までの贈与税の申告で「住宅取得等資金の非課税」の適用を受けたことがないこと。

(5) 自己の配偶者、親族などの一定の特別の関係がある人から住宅用の家屋の取得をしたものではないこと、又はこれらの方との請負契約等により新築若しくは増改築等をしたものではないこと。

(6) 贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を充てて住宅用の家屋の新築等をすること。

受贈者が「住宅用の家屋」を所有することが、この特例の適用要件です。共有持分を有する場合も含まれます。

(7) 贈与を受けた時に日本国内に住所を有していること。
なお、贈与を受けた時に日本国内に住所を有しない人であっても、一定の場合には、この特例の適用を受けることができます。

(8) 贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住すること又は同日後遅滞なくその家屋に居住することが確実であると見込まれること。

 

4.居住用の家屋の新築、取得または増改築等の要件

「住宅用の家屋の新築」には、その新築とともにするその敷地の用に供される土地等又は住宅の新築に先行してするその敷地の用に供されることとなる土地等の取得を含みます。

「住宅用の家屋の取得又は増改築等」には、その住宅の取得又は増改築等とともにするその敷地の用に供される土地等の取得を含みます。

対象となる住宅用の家屋は日本国内にあるものに限られます。

 

(1) 新築又は取得の場合の要件

イ 新築又は取得した住宅用の家屋の登記簿上の床面積(マンションなどの区分所有建物の場合はその専有部分の床面積)が50㎡以上240㎡以下で、かつ、その家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が受贈者の居住の用に供されるものであること。

ロ 取得した住宅が次のいずれかに該当すること。

  • 建築後使用されたことのない住宅用の家屋

② 建築後使用されたことのある住宅用の家屋で、その取得の日以前20年以内(耐火建築物の場合は25年以内)に建築されたもの

③ 建築後使用されたことのある住宅用の家屋で、地震に対する安全性に係る基準に適合するものであることにつき、一定の書類により証明されたもの

④ 上記②及び③のいずれにも該当しない建築後使用されたことのある住宅用の家屋で、その住宅用の家屋の取得の日までに同日以後その住宅用の家屋の耐震改修を行うことにつき、一定の申請書等に基づいて都道府県知事などに申請をし、かつ、贈与を受けた翌年3月15日までにその耐震改修によりその住宅用の家屋が耐震基準に適合することとなったことにつき一定の証明書等により証明がされたもの

 

(2) 増改築等の場合の要件

イ 増改築等後の住宅用の家屋の登記簿上の床面積(マンションなどの区分所有建物の場合はその専有部分の床面積)が50㎡以上240㎡以下で、かつ、その家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が受贈者の居住の用に供されるものであること。

ロ 増改築等に係る工事が、自己が所有し、かつ居住している家屋に対して行われたもので、一定の工事に該当することについて、「確認済証の写し」、「検査済証の写し」又は「増改築等工事証明書」などの書類により証明されたものであること。

ハ 増改築等に係る工事に要した費用の額が100万円以上であること。
また、増改築等の工事に要した費用の額の2分の1以上が、自己の居住の用に供される部分の工事に要したものであること。

 

5.非課税の特例を受けるための手続き

非課税の特例の適用を受けるためには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、非課税の特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書に戸籍の謄本、登記事項証明書、新築や取得の契約書の写しなど一定の書類を添付して、納税地の所轄税務署に提出する必要があります。

 

土地建物等を売却した時に税金が安くなる制度~譲渡所得の特別控除について

1.制度の概要

土地建物を売ったときの譲渡所得の金額の計算において、特例として譲渡所得から特別控除が受けられる場合があります。

譲渡の種類とその特別控除額は、次のとおりです。

(1) 公共事業などのために土地建物を売った場合の5,000万円の特別控除の特例

(2) マイホーム(居住用財産)を売った場合の3,000万円の特別控除の特例

(3) 特定土地区画整理事業などのために土地を売った場合の2,000万円の特別控除の特例

(4) 特定住宅地造成事業などのために土地を売った場合の1,500万円の特別控除の特例

(5) 平成21年及び平成22年に取得した国内にある土地を譲渡した場合の1,000万円の特別控除の特例

(6) 農地保有の合理化などのために土地を売った場合の800万円の特別控除の特例

 

2.注意事項

 

(1) それぞれの特別控除額は、特例ごとの譲渡益が限度となります。

(2) 特別控除額は、その年の譲渡益の全体を通じて、合計5,000万円が限度となります。

(3) 5,000万円に達するまでの特別控除額の控除は、上記1の(1)から(6)の特例の順に行います。

 

マイホーム(居住用財産)を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例を利用することが一番多いのではないでしょうか

1.3,000万円の特別控除の特例制度の概要

マイホーム(居住用財産)を売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例です。

 

2.特例を受けるための適用要件

(1) 自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること。

なお、以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。

住んでいた家屋又は住まなくなった家屋を取り壊した場合は、次の2つの要件全てに当てはまることが必要です。

イ その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること。

ロ 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などに使っていないこと。

 

(2) 売った年の前年及び前々年にこの特例又はマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと。

 

(3) 売った年、その前年及び前々年にマイホームの買換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていないこと。

 

(4) 売った家屋や敷地について、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。

 

(5) 災害によって滅失した家屋の場合は、その敷地を住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。

 

(6) 売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと。
特別な関係には、このほか生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。

 

3.注意事項

住宅借入金等特別控除については、入居した年、その前年又は前々年に、このマイホームを売ったときの特例の適用を受けた場合には、その適用を受けることはできません。
また、入居した年の翌年又は翌々年中に、住宅借入金等特別控除の対象となる資産以外の資産を譲渡し、この特例の適用を受ける場合にも、住宅借入金等特別控除の適用を受けることはできません。

 

4.適用除外 

このマイホームを売ったときの特例は、次のような家屋には適用されません。

(1) この特例を受けることだけを目的として入居したと認められる家屋

(2) 居住用家屋を新築する期間中だけ仮住まいとして使った家屋、その他一時的な目的で入居したと認められる家屋

(3) 別荘などのように主として趣味、娯楽又は保養のために所有する家屋

 

5.適用を受けるための手続き

この特例を受けるためには、確定申告をすることが必要です。
確定申告書には、所定の書類を添えて提出します。

棚卸資産の評価はどうするのか?低価法とは?~棚卸資産会計基準より~

棚卸資産会計基準は、他の会計基準との整合性や棚卸資産の評価基準として低価法を原則とする国際的な会計基準とのコンバージェンスの観点から、それまでの原価法と低価法の選択適用を見直し、収益性の低下による簿価引き下げという考え方に基づいた評価基準や開示方法に関して整備したものです。

 

本会計基準は、棚卸資産を「通常の販売目的で保有する棚卸資産」と「トレーディング目的で保有する棚卸資産」に区分して、前者については、収益性の低下によって帳簿価額を切り下げること、後者については、市場価格に基づいて評価することを定めています。

 

1. 通常の販売目的で保有する棚卸資産の取扱い

(1) 通常の販売目的で保有する棚卸資産の評価

通常の販売目的で保有する棚卸資産は、取得原価をもって貸借対照表価額とし、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額とします。

 

この場合において、取得原価と当該正味売却価額との差額は当期の費用として処理します。

 

棚卸資産の収益性の低下による簿価切下げ額は、売上原価として処理しますが、棚卸資産の製造に関連し不可避的に発生すると認められるときには製造原価として処理します。

 

また、収益性の低下に基づく簿価切り下げ額が臨時の事象に起因し、かつ、多額であるときには特別損失に計上します。

 

この場合の具体的な例としては重要な事業部門の廃止、災害損失の発生などが挙げられます。

 

収益性の低下による簿価切り下げ額(前期に計上した簿価切り下げ額を戻し入れる場合には、当該戻入額相殺後の額)は、注記による方法または売上原価等の内訳項目として独立掲記する方法により開示する必要があります。

 

 (2) 正味売却価額とは

正味売却価額は以下のように算定されます。

正味売却価額=売価-(見積追加製造原価+見積販売直接経費)

見積販売直接経費は、一般的には、販売手数料、物流関連費など販売の都度、把握できる費用が考えられ企業の実態に合わせて判断することになります。

 

(3) 収益性が低下していないことが明らかである場合

①実務上の事務負担を配慮して収益性が低下していないことが明らかであり、事務負担をかけて収益性の低下の判断を行うまでもない場合には、正味売却価額を見積もる必要はないとされています。

 

ただし、これに該当するケースは、過去からの販売が好調で将来も安定的に十分な粗利率が高い棚卸資産の品目に限定されるものと考えられます。

 

②収益性が低下していることが明らかかどうかは、棚卸資産を管理する製造部門または営業部門の損益の状況や、品目別の損益管理を行っている場合における当該損益の発生状況などにより判断することになります。

 

そのため、自社で収益性が低下している事実を確認するために、どのような資料が利用できるかを把握しておく必要があります。

 

(4) 正味売却価額が観察できない場合

売却市場において市場価格が観察できないときには、合理的に算定された価額を売価とします。

 

これには、期末前後での販売実績に基づく価額を用いる場合や、契約により取り決められた一定の売価を用いる場合を含みます。

 

(5) 正味売却価額に代わる方法

営業循環過程から外れた滞留資産または処分見込等の棚卸資産について、合理的に算定された価額によることが困難な場合には、正味売却価額まで切り下げる方法に代えて、その状況に応じ以下のような方法により収益性の低下の事実を適切に反映するように処理します。

 

  • 帳簿価額を処分見込価額(ゼロまたは備忘価額を含む)まで切り下げる方法

 

  • 一定の回転期間を超える場合、規則的に帳簿価額を切り下げる方法

 

(6) 再調達原価の適用

製造業における原材料等のように再調達原価の方が把握しやすく正味売却価額が当該再調達原価に連動して動くと想定される場合には、継続して適用することを条件として再調達原価や最終仕入原価を正味売却価額の代わりとすることができます。

 

(7) 売価還元法を採用している場合の留意点

スーパー、百貨店などの小売業では、棚卸資産の評価について売価還元法を採用しているケースが多いと考えられます。

 

棚卸資産会計基準においては、売価還元法を採用している場合においても正味売却価額が帳簿価額よりも下落しているときには、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額とすることが必要であるとされています。

 

他方、値下げ額および値下げ取り消し額を除外した売価還元低価法を採用している企業は、売価還元低価法の算式により算出した帳簿価額をもって収益性の低下に基づく簿価引き下げ額を反映したものと見なすことができるとしています。

 

上場企業等では、連続意見書第四で示されている売価還元平均原価法と売価還元低価法の2つが多く採用されています。

 

売価還元低価法では値下げ額を考慮しない値入ベースの売価により原価率が算定されるため、売価還元平均原価法と比較すると原価率が低く計算されることになります。

 

売価還元平均原価法も売価還元低価法も、ともに受入金額に基づき原価率を算定するため、棚卸減耗が発生した際に、全額当期の売上原価として取り扱われます。

 

2. 収益性低下の判断および簿価切り下げの単位

(1) 原則的な方法

棚卸資産会計基準では、収益性の低下の有無に係る判断および簿価引き下げは、原則として個別品目ごとに行います。

 

棚卸資産に関する投資の成果は、通常、個別品目ごとに確定するので、収益性の低下を判断し簿価切り下げを行う単位も個別品目単位であることが原則と考えられます。

 

企業の状況によっては、収益性の低下の有無に係る判断および簿価の切り下げを、グルーピングした単位で行うことが認められています。

 

つまり、複数の棚卸資産をグルーピングした単位で行う方が投資の成果を適切に示すことができると判断されるときにはグルーピングを行った単位で収益性の低下を認識することができます。

 

(2) 複数の棚卸資産をグルーピングした単位で行う方法

この収益性の低下を認識する棚卸資産の単位は個々の企業の状況によって異なるため、十分な検討が必要です。

 

棚卸資産会計基準では、以下に示すようなものは、複数の棚卸資産をグルーピングした単位で行う方が投資の成果を適切に示すことができると判断されるため、これらを1グループとして取り扱うことが適切とされています。

 

①補完的な関係にある複数商品の売買を行っている企業においていずれか一方の売買だけでは正常な水準を超えるような収益は見込めないが双方の売買で正常な水準を超える収益が見込めるような場合

 

②同じ製品に使われる材料、仕掛品および製品を1グループとして取り扱う場合

 

3. 洗替え法と切放し法の選択適用

棚卸資産会計基準においては、継続適用を原則として、棚卸資産の種類ごとに簿価の切り下げの要因ごとに前期の簿価切り下げ額の戻し入れを行う方法(洗替え法)と行わない方法(切放し法)が選択適用できます。

 

簿価切り下げの要因としては、物理的な劣化、経済的な劣化、市場の需給変化に起因する売価の低下などが挙げられています。

 

キャッシュとは何か?キャッシュ・フロー計算書でのキャッシュの定義と区分、作成方法について

1.キャッシュ・フロー計算書とは

キャッシュ・フロー計算書とは、一会計期間の企業活動により、資金がどのように生み出され、何に使われたか、どのような資金調達がなされ、どのような投資がなされたのかということを示す財務諸表です。

 

貸借対照表、損益計算書とともに、財務諸表を構成していて、2000年3月期から金融商品取引法で開示が義務付けられています。

 

2.キャッシュ・フロー計算書の必要性

キャッシュ・フロー計算書が貸借対照表、損益計算書に続く第3の財務諸表として必要とされるのは、利益の金額が必ずしも資金の増加とイコールではないからです。

 

キャッシュ・フロー計算書では、資金の増加としてのキャッシュ・イン・フローと資金の減少としてのキャッシュ・アウト・フローが表示され、過去の一定期間の資金収支の状況が明らかになります。

 

損益計算書に計上された利益に資金的な裏付けがない場合は、利益を計上していても資金が回らずに倒産することになります。いわゆる黒字倒産です。

 

資金がショートする兆候は、営業キャッシュ・フローがマイナスになることから知ることができます。

 

また、キャッシュ・フロー計算書における資金は、損益計算書を作成する際に選択した会計処理の方法による影響を受けないことも特徴です。

 

3. キャッシュ・フロー計算書の区分

キャッシュ・フロー計算書は、キャッシュ・フローを企業活動の性格によって、営業活動、投資活動、財務活動の三つに分けて作成します。

 

①   営業活動によるキャッシュ・フロー

「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分には、商品の販売による収入や商品の仕入による支出など営業損益計算の対象となった取引のほか、投資活動および財務活動以外の取引によるキャッシュ・フローを記載します。

 

売上に関する収入

仕入に関する支出

製造活動・販売活動に係る支出

などが営業活動の例になります。

 

② 投資活動によるキャッシュ・フロー

「投資活動によるキャッシュ・フロー」の区分には、固定資産の取得および売却、現金同等物に含まれない有価証券の取得および売却等によるキャッシュ・フローを記載します。

 

有形固定資産の取得による支出・売却による収入

有価証券(現金同等物を除く)の取得による支出・売却による収入

貸付けによる支出

などが投資活動の例になります。

 

③ 財務活動によるキャッシュ・フロー

「財務活動によるキャッシュ・フロー」には、資金の調達および返済によるキャッシュ・フローを記載します。

 

株式の発行による収入

自己株式の取得による支出

配当金の支払

社債の発行および借り入れによる収入

社債の償還および借入金の返済による支出

などが財務活動の例になります。

 

4. 作成時期と作成方法

キャッシュ・フロー計算書は、原則として連結ベースで作成しますが、連結財務諸表を作成・開示していない会社は、個別ベースのキャッシュ・フロー計算書を作成します。

 

営業活動によるキャッシュ・フローの表示方法には、主要取引ごとに総額表示する直接法と、税金等調整前当期純利益をベースに非資金損益項目その他を調整する間接法の2通りがあります。

 

① 直接法

営業収入、原材料または商品の仕入支出、人件費支出、その他の営業支出という主要な取引ごとに総額で表示します。主要な取引ごとに資金の入りと出を表示しますのでキャッシュ・フローの状況が分かりやすいという長所がある反面、この方法は作成するのに大変手間がかかるという難点があります。

 

② 間接法

連結損益計算書の税金等調整前当期純利益をベースに減価償却費など非資金損益項目や営業活動に直接結びつく売掛金、買掛金などの資産、負債の増減額のほか、その他の調整をして営業活動によるキャッシュ・フローを作成します。

 

間接法は連結損益計算書の税金等調整前当期純利益をベースに非資金損益項目や連結貸借対照表の資産、負債の増減額などをプラス・マイナスして資金の流れを間接的に表示するため、直接法のように資金の実際の流れに即しておらず、分かりづらいという難点があります。一方、連結損益計算書と連結貸借対照表から容易に作成できるという大きな長所があります。

 

そのほか利益とキャッシュ・フローの結び付きを明らかにできるという直接法にない利点があります。

 

ほとんどの上場企業が間接法により開示しており、直接法は少数派です。

 

間接法が主流を占めている理由には、間接法の方が、連結損益計算書および連結貸借対照表との関連が明確となることと、財務諸表項目からの作成が容易であることなどが考えられます。

 

5. キャッシュ・フロー計算書の資金の範囲について

キャッシュ・フロー計算書では、対象とする資金の範囲を現金(手許現金および要求払い預金)および現金同等物としています。

 

資金の範囲は、毎期継続して適用し、みだりに変更してはなりません。資金の範囲を変更した場合には、会計処理の原則および手続きの変更に当たり、その旨、その理由および影響額を記載しなければなりません。

 

現金同等物

現金同等物とは、a)容易に換金可能であり、かつ、b)価値の変動について僅少(きんしょう)なリスクしか負わない短期投資をいいます。

 

現金同等物には、例えば、取得日から満期日または償還日までの期間が3カ月以内の短期投資である定期預金、譲渡性預金、コマーシャル・ペーパーなどが含まれます。

 

現金同等物は、上記のa)およびb)の両条件を満たす必要があり、市場性のある株式のようにa)換金が容易であっても、b)価値変動リスクが僅少、とはいえないものについては、現金同等物には含まれません。

 

また、担保に提供されている定期預金や、引き出しが制限されているような預金などは、取得日から満期日または償還日までの期間が3カ月以内であっても、実質的にa)換金が容易と考えられず、現金同等物には含められません。

 

6.注記事項

キャッシュ・フロー計算書の注記事項は、以下のとおりです。

 

  • 資金の範囲に含めた現金および現金同等物の内容ならびにその期末残高の連結貸借対照表科目別の内訳

 

  • 資金の範囲を変更した場合には、その旨、その理由および影響額

 

  • 株式の取得または売却により新たに連結子会社となった会社の資産・負債または連結子会社でなくなった会社の資産・負債に重要性がある場合には、当該資産・負債の主な内訳

 

  • 営業の譲受または譲渡により増減した資産・負債に重要性がある場合には、当該資産・負債の主な内訳

 

  • 重要な非資金取引

 

以下は、重要な非資金取引の例示です。

 

  1. 転換社債の転換
  2. ファイナンス・リースによる資産の取得
  3. 株式の発行による資産の取得または合併
  4. 現物出資による株式の取得または資産の交換

 

「事業報告」とはどのようなものか。~会社法で規定されている記載事項について

株式会社は、各事業年度の事業報告及びその附属明細書を作成しなければなりません。

事業報告の記載事項は、会社法施行規則118条以降に定められています。

 

すべての会社に共通して記載すべき事項を規定したうえで、公開会社(株式に譲渡制限を定めていない会社)における記載事項(同119条~)、会計参与設置会社における記載事項(同125条)、会計監査人設置会社における記載事項(同126条)を規定しています。

 

すべての会社に共通して事業報告に記載すべき事項

(1)株式会社の状況に関する重要な事項のうち、計算書類およびその附属明細書ならびに連結計算書類の内容となる事項以外のもの

 

(2)業務の適正を確保するための体制の整備についての決定または決議があるときは、その決定または決議の内容の概要及び当該体制の運用状況の概要

 

(3)株式会社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針を定めているときは、その概要等

 

(4)株式会社に特定完全子会社(※)がある場合には、その名称等

 

(5)株式会社とその親会社等との間の取引であり、当該株式会社の事業年度に係る個別注記表において関連当事者注記を要する取引がある場合には、当該取引に関する事項

 

特定完全子会社とは、事業年度の末日において、当該子会社等の株式の帳簿価額が、当該株式会社の当該事業年度に係る貸借対照表の資産の部の合計額の5分の1を超え、かつ、その株式等の全部を保有する子会社等をいいます。定款で定めれば5分の1を下回る割合を定めることもできます。

 

公開会社における事業報告の記載事項

公開会社の事業報告には、追加で(1)株式会社の現況に関する事項、(2)会社役員に関する事項、(3)株式に関する事項、(4)新株予約権等に関する事項を記載します。

 

(1) 株式会社の現況に関する事項

①主要な事業内容

②主要な営業所、工場並びに使用人の状況

③主要な借入先、借入額

④当該事業年度の事業の経過及び成果

⑤重要な資金調達、設備投資の状況、及び合併、会社分割、事業譲渡等の状況

⑥直前3事業年度の財産及び損益の状況

⑦重要な親会社及び子会社の状況

⑧対処すべき課題

⑨その他会社の現況に関する重要な事項

※連結計算書類を作成している会社は、これらの事項を、当該会社及び子会社からなる企業集団ベースで記載することができます。

 

(2) 会社役員に関する事項

①役員の氏名、地位及び担当、重要な兼職の状況

②役員と責任限定契約を締結しているときは、当該契約の内容の概要

③役員の報酬に関する事項

④役員の辞任又は解任に関する事項

⑤監査役等の財務及び会計に関する知見の記載

⑥常勤の監査等委員、監査委員の選定の有無及びその理由

⑦その他役員に関する重要な事項

 

※社外役員について、次の事項を記載する必要があります。

大会社かつ有価証券報告書提出会社の監査役設置会社であり社外取締役を置いていない場合、社外取締役を置くことが相当でない理由を事業報告に記載する必要があります。なお、社外監査役が2名以上であることのみをもって、当該理由とすることはできません。

 

 (3) 株式に関する事項

①保有株式数上位10名の株主

②その他株式に関する重要な事項

 

(4) 新株予約権等に関する事項

①役員が有する職務執行の対価として交付された新株予約権等の概要

②事業年度中に使用人等に対して職務執行の対価として交付された新株予約権等の概要

③その他新株予約権等に関する重要な事項

 

会計監査人設置会社が記載すべき事項

会計監査人設置会社の事業報告には、追加で以下の事項を記載します。

 

①会計監査人の氏名または名称

②会計監査人の報酬等の額及び報酬等について監査役等の同意理由

③非監査業務の対価を支払っている場合には、非監査業務の内容

④会計監査人の解任又は不再任の決定の方針

⑤会計監査人が現に業務の停止の処分を受け、その停止期間を経過しない者であるときは、当該処分に係る事項

⑥会計監査人が過去2年間に業務の停止の処分を受けた者である場合における当該処分に係る事項のうち、当該株式会社が事業報告の内容とすることが適切であると判断した事項

⑦会計監査人と責任限定契約を締結している場合は、その概要

⑧会社が有報提出大会社である場合には、当該株式会社および子会社が支払う金銭その他財産上の利益の合計額、及び当該株式会社の会計監査人以外の公認会計士または監査法人が子会社の計算関係書類の監査を実施しているときは、その事実

⑨会計監査人が辞任又は解任された場合には、当該会計監査人の氏名又は名称、解任の理由、会計監査人の意見等

⑩剰余金の配当等を取締役会が決定する旨の定款の定めがあるときは、取締役会に与えられた権限の行使に関する方針

 

株式会社の業務の適正を確保するための体制

大会社である取締役設置会社は、取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するための体制を決定しなければなりません。

 

その決定内容及び当該体制の運用状況の概要(※)を事業報告に記載する必要があります。

 

なお、大会社以外でも当該事項について決定した会社であれば、事業報告への記載が必要となります。

 

※当該体制の運用状況の概要は、「各社の状況に応じた合理的な記載をすることで足りるが、客観的な運用状況を意味するものであり、運用状況の評価の記載を求めるものではない。ただし事業報告に運用状況の評価を記載することも妨げられない。」とされています。

 

取締役会設置会社において決定すべき体制の内容は、以下のとおりです。

1.取締役の職務の執行に係る情報の保存および管理に関する体制

 

2.損失の危険の管理に関する規程その他の体制

 

3.取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制

 

4.使用人の職務の執行が法令および定款に適合することを確保するための体制

 

5.当該株式会社ならびにその親会社および子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制

 

子会社の取締役等の業務の執行に係る事項の当該株式会社への報告に関する体制
子会社の損失の危険の管理に関する規程その他の体制
子会社の取締役等の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制
子会社の取締役等及び使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制

 

 

さらに、監査役設置会社である場合には、以下の体制が必要です。

1.監査役がその職務を補助すべき使用人を置くことを求めた場合における当該使用人に関する事項(注)

 

2.1. の使用人の取締役からの独立性に関する事項

 

3.使用人に対する指示の実効性の確保に関する事項

 

4.監査役への報告に関する体制

取締役及び会計参与並びに使用人が監査役に報告するための体制
子会社の取締役等または取締役等から報告を受けた者が監査役に報告するための体制

 

5.監査役に報告した者が不利な扱いを受けないことを確保するための体制

 

6.監査に要する費用の処理に係る方針に関する事項

 

7.その他監査役の監査が実効的に行われることを確保するための体制

 

(注)監査役による監査体制の構築についても、会社の業務の適正を確保する体制の一部である以上、あくまで当該体制の構築義務は取締役が負います。ただし、実際の監査体制は、監査役の主導で行うべきですので、補助使用人の要否は第一義的には監査役が判断することになります。

 

支配に関する基本方針

基本方針について開示すべき事項は以下のとおりです。いわゆる買収防衛策に関する開示もここに含まれます。

 

(1)基本方針の内容の概要

 

(2)基本方針の実現のための具体的取り組み
(ア)会社財産の有効な活用、適切な企業集団の形成その他の基本方針の実現に資する特別な取り組み
(イ)基本方針に照らして不適切なものによって会社の支配を獲得することを防止するための取り組み(いわゆる買収防衛策)

 

(3)具体的な取り組みに対する取締役等の判断およびその理由
(ア)具体的な取り組みが基本方針に沿うものであること
(イ)株主の共同利益を損なうものではないこと
(ウ)会社役員の地位の維持を目的とするものではないこと

 

特定完全子会社に関する事項

いわゆる多重代表訴訟(会847条の3第1項)において、責任追及の対象となる子会社を明確にするために、特定完全子会社がある場合には、事業報告において以下を記載します。

 

①特定完全子会社の名称及び住所

②株式会社及びその完全子会社等における当該特定完全子会社の株式の当該事業年度の末日における帳簿価額の合計額

③株式会社の当該事業年度に係る貸借対照表上の総資産額

 

株式会社とその親会社等との取引

当該株式会社とその親会社等との一定の利益相反取引のうち、当該事業年度に係る個別注記表において関連当事者取引注記を要するものについて、事業報告において以下を記載します。

 

①当該取引をするに当たり当該株式会社の利益を害さないように留意した事項(当該事項がない場合にあっては、その旨)

②当該取引が当該株式会社の利益を害さないかどうかについての当該株式会社の取締役会の判断及びその理由

③社外取締役を置く株式会社において②の取締役会の判断が社外取締役の意見と異なる場合には、その意見

 

事業報告の附属明細書

事業報告の附属明細書には、事業報告の内容を補足する重要な事項を記載するものとされています。また、公開会社においては、役員の他の会社の業務執行取締役など重要な兼職の状況を記載します。

なお、会計監査人設置会社以外の公開会社において、親会社等との一定の関連当事者取引について個別注記表での注記を省略する場合、事業報告の附属明細書において、一定事項の記載を行うことになります。

コーポレートガバナンスの観点からみた内部統制システムと監査役監査について

コーポレートガバナンスは、「企業統治」とも言われています。

企業統治とは、会社収益の向上やリスク管理体制等について、外部から強制されることなく、自社の業種・業態・規模・企業風土等を勘案して、自律的に会社経営にあたることです。

コーポレートガバナンスのうちのリスク管理について役職員の属人的能力や考え方に依拠するのではなく、組織として整備。運用することを意識したものが内部統制システムということになります。

 

内部統制システムの法定化

内部統制システムに関する世の中の関心が高まってきたこともあり、内部統制システムが法定化されています。

 

1.会社法・会社法施行規則の規定

会社法では、「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備」として定められました。

この法務省令とは、会社法施行規則のことであり、以下の内容が列挙されています。

 

1.取締役の職務執行に係る情報の保存・管理体制

 

2.会社の損失の危険管理に関する規程その他の体制

 

3.取締役の職務執行の効率確保体制

 

4.使用人の職務執行における法令・定款遵守体制

 

5.企業集団における業務の適正を確保する体制

 

会社法では、取締役会設置会社においては、内部統制システムの整備は各取締役に委任することはできずに、取締役会で決定しなければならないこととなっています。

 

取締役会で必ず内部統制システムを決定しなければならないのは、会社法上の大会社(資本金5億円以上又は負債総額200億円以上の会社)と監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社の委員会型の会社形態を採用する会社です。

内部統制システムを決定・決議したときには、その決定・決議の内容及び運用状況の概要が事業報告の記載事項となっています。

 

また、事業報告は、監査役の監査対象であり、その監査結果は監査役(会)監査報告に記載されます。

 

会社法上は、内部統制システムに係る事業報告の内容が相当でないと監査役が判断した場合にのみ、監査役(会)監査報告に記載すれば足りることになっています。

事業報告や監査役(会)監査報告は、株主に対して株主総会の前までに提出されますから、会社法上は、内部統制システムの整備状況について、最終的には株主にその評価が委ねられていることになります。

 

株主が当該会社の内部統制システムに問題があると考えれば、株主総会に出席して取締役や監査役に質問をすることができます。

 

2.金融商品取引法の規定

平成20年4月1日開始事業年度から、金融商品取引法(以下、金商法)では財務報告に係る内部統制システムが規定されました。

 

経営者が内部統制報告書に財務報告に係る内部統制システムの有効性を自己評価するとともに、内部統制報告書に対する外部監査人の監査証明が義務付けられました。

 

 

内部統制システムと監査役

1.内部統制システムの評価

監査役は取締役の職務執行を監査することがその職責であることから、取締役の善管注意義務違反の有無を判断しなければなりません。

 

取締役は、業務執行を行うとともに、他の取締役の職務執行を監督する役割があります。

内部統制システムが法定化されている今日においては、取締役の監視・監督義務には、内部統制システムが適正に構築され、かつ適切に運用されていることも善管注意義務の内容として含まれます。

 

このために、監査役は監査役(会)監査報告において、内部統制システムの基本方針及び運用状況の相当性を判断し、その結果を記載することになっています。

 

平成27年5月1日以降は、会社法施行規則の改正により、取締役会が決定した内部統制システムの基本方針に加え、内部統制システムの運用状況も事業報告の記載事項となりました。

 

この改正により、監査役の実務も変更されています。

内部統制システムとして、規程・マニュアルから会社組織・内部通報制度の設置等にいたるまでの整備状況の評価に加えて、監査役は内部統制システムの適切な運用状況の有無まで期中の監査を通じて監査しなければならなくなりました。

 

取締役会が決議した基本方針に基づいて内部統制システムが構築されており、会社経営の中で有効に機能しているかについて、業務監査を通じて評価する必要が生じていることになります。

 

2.内部統制システムに関する監査役監査のポイント

内部統制システムの整備・運用状況に関する監査役の業務監査におけるポイントとしては以下のことが挙げられます。

 

(1)執行部門からの報告・ヒアリング

監査役は、業務監査の一環として、執行部門に対して、定期的に業務報告のヒアリングを行います。

 

その際に、監査対象部門において、内部統制上問題となる事項が発生したか、あるいはその恐れがなかったかなどの事実の確認を行う必要があります。

 

何らかの事項が報告された際には、その事項が内部統制システムの問題なのかどうかを判断します。

 

内部統制上の問題であれば、規程やマニュアル等が整備されていない、あるいは、不十分なことが問題なのか、整備されていたが、適切に運用されていない運用上の問題だったのかを確認することが必要です。

 

問題があれば、改善事項の指摘を行い、その後、内部監査部門等とも協力して、その改善が着実に行われているかをフォローアップすることになります。

 

(2)損失危険管理体制

不祥事の発生又は発生の恐れが生じた場合には、その事実が遅滞なく報告されることが内部統制システムの観点からは重要です。

 

事件・事故を未然に防止したり、すでに発生している事件・事故の拡大を防いだりするためには、全社レベル(もしくはグループ全体)の対応が必要となってきます。必要に応じて、社内や第三者委員会による調査を行います。

 

このためには、情報の遅滞・隠蔽を回避し、必要な情報が適時適切に報告される体制となっていることを確認し、運用状況の確認も行うことが重要です。

 

 

(3)内部通報制度

内部通報制度は報告体制における有効なツールの一つです。通報件数や通報内容等を確認し、適切な対応がとられていることなどのフォローアップが適切に運用されていることを確かめる必要があります。

 

(4)使用人の法令・定款遵守体制

使用人の法令・定款遵守体制とは、具体的には使用人への教育・研修です。

 

使用人への教育・研修については、各社各様に、対象者・頻度・教育内容等を決定して実施しています。

 

内部統制システムの観点からは、担当者クラスのみならず基幹管理職クラスまでを対象者として、教育・研修の実施状況(内容、頻度等)を確認する必要があります。

 

特に、重要事項(法令改正事項や世間で問題となった事項等)については、全ての役職員に漏れなく実施しているかなどを確認することが重要です。

 

企業集団の内部統制システムの観点からは、自社のみならず子会社の教育体制についても、親会社としては注意を払わなければなりません。

 

親会社の教育・研修に子会社の役職員も参加しているのかどうか、子会社に教育・研修を任せるのであれば、親会社人事部門等の教育担当部門が子会社の教育・研修実施状況を把握しているかどうかについて確認する必要があります。

偶発事象はどのように扱えばよいのでしょうか?~「偶発事象の会計処理および開示に関する研究報告(公開草案)」より

日本公認会計士協会(会計制度委員会)は、平成30年12月14日付で会計制度委員会研究報告「偶発事象の会計処理及び開示に関する研究報告」(公開草案)(以下「本公開草案」という。)を公表しています。

 

本公開草案の主な検討内容

日本公認会計士協会は、我が国のこれまでの偶発事象に関する会計上の考え方を整理するとともに、主として次のような検討を行っています。

 

1.我が国の偶発事象に関する現在の会計上の取扱いについての考察

 

2.有価証券報告書に記載されている偶発事象関連の引当金の計上の状況や貸借対照表

の注記における開示状況の調査と、偶発事象を財務諸表に開示又は引当金を認識する時点のタイミングについての考察

 

3.IFRSの概要の確認とIFRSを任意適用している我が国の企業の実務についての考察

 

検討内容

偶発事象については、時間の経過とともに、損失の発生の可能性についての判断の精度と損失金額の見積りの精度は両者ともに高まると考えられるため、監査・保証実務委員会実務指針第61号「債務保証及び保証類似行為の会計処理及び表示に関する監査上の取扱い」(最終改正:平成23年3月29日)(以下「監保実第61号」という。)の取扱いを偶発債務に広く適用すれば、時間が経過するにつれて、企業は、開示不要という状況から偶発債務の注記、その後の引当金の計上の会計処理をするという基本的な考え方が示されています。

 

しかし、今回の日本公認会計士協会の調査によれば、訴訟、違法行為及び損害補償の事象については、引当金を計上する前に、貸借対照表に偶発債務に係る注記を行う事例は少数にとどまっていることが確認されています。

 

今後の取扱いとしては、監保実第61号を、債務保証及び保証類似行為以外の偶発債務の会計処理の参考にすることが考えられる旨と、以下の留意点が示されています。

 

  1. 監保実第61号は、平成23年3月に改正を行ってはいるものの、平成11年2月に公表されたものであり、既に公表から長い時間が経っているため、当時の考え方が現在においても適切であるかを検討する必要がある旨
  2. この検討に当たっては、現在、我が国においては存在していない偶発事象全般に関する会計基準を新たに開発することを目標に検討されることが望ましい旨
  3. この検討に当たっては、①財務諸表の比較可能性 ②開示の適切性 ③開示の充実の観点についても考慮すべきである旨

 

①財務諸表の比較可能性

財務諸表の比較可能性という観点からは、どの程度の発生可能性をもって注記による開示をすべきなのか、引当金を計上すべきなのかの基準が揃っていないと、同じような事象であっても企業によって注記の有無が異なり、結果として財務諸表の比較可能性が損なわれることから、どの程度の損失の発生可能性と損失金額の見積りの可能性があれば、注記による開示や引当金の計上を要するのかについての指針(ガイダンス)を提供することが有効である旨が記載されています。

 

② 開示の適切性

仮に財務諸表利用者への迅速な情報開示という観点をより優先するのであれば、訴訟や違法行為、損害補償の事象が発生したことをもって、発生した事実については、網羅的に偶発事象の注記を求めるという取扱いが考えられる旨が記載されています。

その一方で、係争事件に係る賠償義務のような偶発債務については、訴訟を受けた時点や賠償責任の可能性が生じた初期段階では、負担となる可能性及び金額の見積りを行うには、情報が不十分であり、引当金の計上及び注記による開示のいずれであっても、財務諸表の利用者に対して不正確・不確実な情報を提供する可能性があることから、情報開示の適時性の側面と正確性・確実性の側面のバランスに留意する必要がある旨が記載されています。

 

また、有価証券報告書の【経理の状況】の「その他」や、IFRSにおける取扱いについても記載されています。

 

③ 開示の充実

財務諸表利用者の予測可能性を高めるために、注記や引当金計上を行うに当たっては、何を契機に注記や引当金計上が必要と判断したのかについての企業の判断を併せて記載することが、財務諸表を理解する上で有用である旨が記載されています。

 

一方で、訴訟関連、違法行為関連及び損害補償関連のような偶発債務については、その事実を開示することにより、企業に不利な影響をもたらす可能性があるとの指摘が記載されています。

時系列分析の結果によれば、実際に、偶発債務についての注記を開示している企業の数が極めて少数となっていることから、企業の立場が著しく不利になると予想できる場合、係争の全般的な内容と情報を開示しなかった旨及びその理由を記載した上で、開示を免除するというような配慮を定めることも有用である可能性がある旨が記載されています。

 

適用時期等

研究報告は、実務指針と異なり、規範性はないため、あくまで参考としての位置付けとなります。

また、研究報告という性格から適用時期は特に示されていませんが、公表日から適用となるものと考えられます。