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損金の額に算入することができる業績連動給与について~インセンティブ報酬

コーポレートガバナンス・コードでは、取締役会について、以下のように述べています。

 

【基本原則4】

上場会社の取締役会は、 株主に対する受託者責任 ・説明責任を踏まえ、 会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上を促し、 収益力・資本効率等の改善を図るべく、

(1)企業戦略等の大きな方向性を示すこと

(2)経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うこと

(3)独立した客観的な立場から、経営陣(執行役及びいわゆる執行役員を含む)・取

締役に対する実効性の高い監督を行うこと

をはじめとする役割・責務を適切に果たすべきである。~以下略

 

【原則4-2 取締役会の役割 ・ 責務(2)】

取締役会は、 経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うことを主要な役割・責務の一つと捉え、 経営陣からの健全な企業家精神に基づく提案を歓迎しつつ、 説明責任の確保に向けて、 そうした提案について独立した客観的な立場において多角的かつ十分な検討を行うとともに、 承認した提案が実行される際には、 経営陣幹部の迅速 ・ 果断な意思決定を支援すべきである。

また、経営陣の報酬については、 中長期的な会社の業績や潜在的リスクを反映させ、健全な企業家精神の発揮に資するようなインセンティブ付けを行うべきである。

 

補充原則

4-2① 取締役会は、 経営陣の報酬が持続的な成長に向けた健全なインセンティブとして機能するよう、客観性・透明性ある手続に従い、報酬制度を設計し、具体的な報酬額を決定すべきである。 その際、 中長期的な業績と連動する報酬の割合や、 現金報酬と自社株報酬との割合を適切に設定すべきである。

 

このように、経営陣の健全なリスクテイクを支える環境として、インセンティブ報酬を機能させることを求めています。これを受けて、税制もインセンティブ報酬(業績連動給与)について、所要の改正を行っています。

税制の中身を見てみましょう。

 

損金の額に算入することができる業績連動給与

法人が業務執行役員に対して支給する業績連動給与で、次に掲げる要件を満たすものをいいます。

同族会社にあっては、非同族会社の100%子会社に限ります。

業績連動給与を損金の額に算入するためには、その法人の業務執行役員の全てに対して支給するもので、かつ、個々の業務執行役員に支給する業績連動給与がそれぞれ法令の要件を満たすものである必要があります。

 

業績連動給与の定義

業績連動給与とは、次の給与をいいます。

1.利益の状況を示す指標、株式の市場価格の状況を示す指標その他のその法人又はその法人との間に支配関係がある法人の業績を示す指標を基礎として算定される額又は数の金銭又は株式若しくは新株予約権による給与

2.法人税法第54条第1項に規定する特定譲渡制限付株式等による給与で無償で取得される株式の数が役務の提供期間以外の事由により変動するもの

3.法人税法第54条の2第1項に規定する特定新株予約権等による給与で無償で取得され、又は消滅する新株予約権の数が役務の提供期間以外の事由により変動するもの

 

金銭以外の資産が交付されるものにあっては、適格株式又は適格新株予約権が交付されるものに限ります。

 

損金算入の要件

損金算入の要件は、以下のようになっています。

A. 交付される金銭の額又は株式若しくは新株予約権の数(新株予約権にあっては無償で取得され、又は消滅する数を含みます。)の算定方法が、次のものを基礎とした客観的なものであること。

1. 職務執行期間開始日以後に終了する事業年度の利益の状況を示す指標

2. 職務執行期間開始日の属する事業年度開始の日以後の所定の期間又は職務執行期間開始日以後の所定の日における株式の市場価格の状況を示す指標

3. 職務執行期間開始日以後に終了する事業年度の売上高の状況を示す指標

 

B. 上記Aの算定方法が、次の要件を満たすものであること。

 

1.確定した額又は確定した数を限度としているものであり、かつ、他の業務執行役員に対して支給する業績連動給与に係る算定方法と同様のものであること。

2.所定の日までに報酬委員会(当該法人の業務執行役員又は当該業務執行役員と特殊の関係のある者が委員となっているものを除きます。)の決定その他適正な手続を経ていること。

3.その内容が、上記2の手続の終了の日以後遅滞なく、有価証券報告書に記載されていることなどの方法により開示されていること。

 

開示については、業務執行役員の全てについてそれぞれ行うことになります。

具体的には、その法人の業務執行役員ごとに、

1.業績連動給与の算定の基礎となる業績連動指標

2.限度としている確定した額又は確定した数

3.客観的な算定方法の内容

を開示する必要があります。

 

ただし、個々の業務執行役員に支給する業績連動給与の算定方法の内容が結果的に明らかになるものであればよく、算定方法が同様の業績連動給与について算定方法の内容を包括的に開示することを妨げるものでありません。

また、開示の対象はあくまで業績連動給与の算定方法の内容であり、役員の個人名の開示を求めるものではなく、その肩書き別に業績連動給与の算定方法の内容が明らかにされていれば足りることになります。

 

C. 次の要件を満たすものであること。

 

1.金銭による給与

上記A1.から3.に掲げる指標(以下「業績連動指標」といいます。)の数値が確定した日の翌日から1月を経過する日までに交付され、又は交付される見込みであること。

2.株式又は新株予約権(下記3.の新株予約権を除きます。)による給与

業績連動指標の数値が確定した日の翌日から2月を経過する日までに交付され、又は交付される見込みであること。

3.法人税法第54条の2第1項に規定する特定新株予約権等による給与で、無償で取得され、又は消滅する新株予約権の数が役務の提供期間以外の事由により変動するもの

 

上記B.2.の手続の終了の日の翌日から1月を経過する日までに交付されること

 

D.損金経理をしていること

 

損金経理により引当金勘定に繰り入れた金額を取り崩す方法により経理していることを含みます。

 

ストック・オプション等のインセンティブ報酬に関する会計基準

インセンティブ報酬に関して該当する会計基準があるものインセンティブ報酬の会計処理に関する研究報告(公開草案)より

 

日本公認会計士協会(会計制度委員会)は平成30年12月14日付で会計制度委員会研究報告「インセンティブ報酬の会計処理に関する研究報告」(公開草案)(以下「本公開草案」という。)を公表しました。

本公開草案は、このインセンティブ報酬の会計上の取扱いに関する現時点における考え方を取りまとめたもので、会計上の論点と会社法の関係、インセンティブ報酬に関する会計上の論点、スキーム別の会計処理上の論点等について考察がされています。

インセンティブ報酬に関する現行の会計基準について解説します。

 

ストック・オプション等に係る会計処理

 

ストック・オプション等の会計処理に係る定めに関しては、2005 年(平成 17 年)12 月 27 日(終修正 2013 年(平成 25 年)9月 13 日)に、ASBJ よりストック・オプション会計基準及び企業会計基準適用指針第 11 号「ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針」(以下「ストック・オプション適用指針」という。)が公表されています。ストック・オプションとは、自社株式オプションのうち、特に企業がその従業員等(企業の使用人の他、企業の役員が含まれるものとされます。なお、以下「役員等」といいます。)に労働等の対価としての報酬として付与するものをいいます。

 

ストック・オプション会計基準は、上述のストック・オプションの他、以下の取引を対象として適用されます。

 

1.企業が財貨又はサービスの取得において、対価として自社株式オプションを付与する取引であって、ストック・オプション以外のもの

2.企業が財貨又はサービスの取得において、対価として自社の株式を交付する取引

 

ストック・オプション会計基準の主眼であるストック・オプションは、オプション本来の権利を行使することが可能となる「権利の確定」について条件が付されていることが多く、 当該条件(「権利確定条件」)には、「勤務条件」や「業績条件」があります。

 

ストック・オプションに係る会計処理の概要は以下のとおりです。

1.権利確定日以前の会計処理

ストック・オプションを付与し、これに応じて企業が役員等から取得する労働や業務 執行等のサービス(以下「労働等サービス」 といいます。)は、その取得に応じて「株式報酬費用」として計上されます。

また、対応する金額については、ストック・オプションの権利が確定するまでの間、貸借対照表の純資産の部に「新株予約権」として計上します。

 

2.費用計上額の算定

ストック・オプションの公正な評価単価にストック・オプション数(失効すると見積もられる数を除く。)を乗じて「ストック・オプションの公正な評価額」を算出し、当該公正な評価額(すなわち、 費用計上総額)を、対象勤務期間を基礎とする方法など、合理的な方法で各期において認識します。

費用計上額の基礎となる公正な評価単価は、ストック・オプションの付与時点で確定し、原則として、事後的な見直しは行われません。

 

3.権利確定日後の会計処理

ストック・オプションが権利行使された場合、対応する部分を払込資本へと振り替えます。

一方、権利不行使により失効した新株予約権は、「新株予約権戻入益」等の科目で利 益に計上されます。

 

従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引(株式交付信託)に係る会計処理

 

従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引(株式交付信託)に関しては、2013 年(平成 25 年)12 月 25 日(終改正 2015 年(平成 27 年)3月 26 日)に、ASBJ より実務対応報告第 30 号「従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の 取扱い」(以下「実務対応報告第 30 号」という。)が公表されています。 実務対応報告第 30 号は、従業員等(従業員又は従業員持株会。なお、「従業員等」の定義がストック・オプション会計基準と異なっているため、留意する必要があります。)に対する以下の取引に適用することとされています。

 

1.従業員への福利厚生を目的として、自社の株式を受け取ることができる権利(受給権)を付与された従業員に対し、信託を通じて自社の株式を交付する取引(いわゆる 株式給付型。)

 

2.従業員への福利厚生を目的として、従業員持株会に信託を通じて自社の株式を交付 する取引(いわゆる従業員持株会型。)

 

このうち、報酬としての株式交付信託は、前者の株式給付型であり、具体的におおむね以下の取引から構成されるとしています。

 

1.企業を委託者、信託銀行を受託者、一定の要件を満たす従業員を受益者として信託契約を締結し、企業は金銭の信託を行います。

 

2.受託者(信託銀行)は信託された金銭で自社(委託者)の株式を取得する。自社の株式の取得は、企業からの金庫株の譲渡や市場からの購入等といった方法で行われます。

 

3.企業は、あらかじめ制定した株式給付規程に基づき、対象となる従業員にポイントを付与します。ポイントから換算される株式数は、信託が購入した株式数に限定されます。

 

4.付与されたポイントは、一定の要件を満たすことで受給権として確定します。受託者(信託銀行)は、信託契約に基づいて、従業員に対して自社の株式を交付します。

 

5.信託終了時に資金に余剰が生じた場合、当該余剰金は従業員に分配され、企業には帰属しません。

 

従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引(株式交付信託)のうち、株式給付型と呼ばれるスキームに係る会計処理は、以下のようになります。

1.総額法の適用

一定の要件を満たす場合、信託の決算は総額法と呼ばれる方法によって企業の決算 に取り込まれます。

 

2.自己株式処分差額の認識時点

企業の金庫株を信託に対して譲渡する場合、自己株式処分差額は、信託から従業員への交付時ではなく、自社から信託への処分時に認識されます。

 

3.従業員へのポイントの割当て等に関する会計処理

従業員にポイントが割り当てられたときには、ポイントに対応する株式数に、信託が自社の株式を取得したときの株価を乗じた金額を基礎として、費用及び対応する引当金を計上します。 また、事後的に株価が変動したとしても、引当金の見直しは行われません。

 

この実務対応報告第 30 号の適用範囲には、ストック・オプション会計基準と異なり、役員向けの株式給付型株式交付信託は含まれません。

ただし、役員向けの制度であったとしても、そのスキームの内容に応じて、実務対応報告第 30 号の定めを参考にすることが考えられるとされています。

 

権利確定条件付き有償新株予約権に係る会計処理

従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関しては、2018 年 (平成 30 年)1月 12 日に、ASBJ より実務対応報告第 36 号「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い」(以下「実務対応報告第 36 号」という。)が公表されています。

実務対応報告第 36 号の公表によって、おおむね以下のような内容で発行される有償新株予約権につき、ストック・オプション会計基準が適用となることが明確化されました。

1.企業は、役員等を引受先として、新株予約権(市場価格がないもの)の募集要項を決議します。

2.募集新株予約権には、勤務条件及び業績条件が付されるか、又は業績条件のみが付 されています。

3.募集新株予約権を引き受ける役員等は、申込期日までに申し込みます。

4.企業は、申込者の中から募集新株予約権を割り当てる者及び数を決定します。割当てにより新株予約権者となった役員等は、払込期日までに一定の額の金銭を企業に払い込みます。

5.権利確定条件が充足された場合には、新株予約権は行使可能となり、一方、充足されなかった場合には、当該新株予約権は失効します。

6.権利確定した新株予約権の行使により、役員等は行使価格に基づく額を企業に払い 込み、この払込みを受けた企業は新株を発行するか、自己株式を処分します。

7.新株予約権が行使されずに権利行使期間が満了した場合、当該新株予約権は失効します。

 

当該有償新株予約権については、原則として、ストック・オプション会計基準の適用を受けることとなるため、業績条件を考慮しないストック・オプションの公正な評価単価に、業績条件の達成可能性を反映したストック・オプション数を乗じて、ストック・オプショ ンの付与時点のストック・オプションの公正な評価額が算定されます。

事後的に業績条件の達成可能性が高まった場合、見積ストック・オプション数が増加するため、総費用計上額は増加することになります。

この実務対応報告第 36 号の適用範囲には、従業員(使用人)のみならず、役員が含まれます。

 

民法改正による配偶者居住権の新設と税務における配偶者居住権の評価

「民法」と「家事事件手続法」の相続法分野の改正があり、2018年7月13日に公布されました。

社会情勢の変化に対応し、残された配偶者の生活に配慮する等の観点から、配偶者の居住の権利を保護するための方策として配偶者居住権が盛り込まれました。

これに伴い、相続税における配偶者居住権等の評価方法等が規定されます。

 

民法の施行日は、原則として、2019年7月1日ですが、 配偶者居住権は2020年4月1日の施行となります。

 

1 民法における配偶者居住権

 

配偶者が、相続開始時に被相続人所有の建物に住んでいた場合、配偶者は遺産分割において配偶者居住権を取得することにより、終身または一定期間、その建物に無償で住めるようになります。被相続人が遺贈等によって配偶者に配偶者居住権を取得させることもできます。

 

配偶者は配偶者居住権を取得することで、自宅での居住を継続しながら、その他の財産も取得できるようになります。

 

また、配偶者短期居住権も新設されました。

配偶者短期居住権とは、配偶者が、相続開始の時点で、遺産に属する建物に住んでいた場合、一定期間は無償でその建物を使用できるというという権利です。

 

  • 配偶者が居住建物の遺産分割に関与する場合

遺産分割によって居住建物の帰属が確定する日までの間(居住建物の帰属が6か月以内に確定した場合には6か月)、居住建物に住み続けることができます。

 

  • 居住建物が第三者に遺贈された場合や、配偶者が相続放棄をした場合

居住建物の所有権を取得した者が、配偶者短期居住権の消滅請求をした時から6か月間、居住建物に住み続けることができます。

 

民法の改正に伴う税制上の規定の整備

民法改正に伴い相続税における配偶者居住権の評価方法等が規定されます。

(1)配偶者居住権の評価

建物の相続税評価額 - 建物の 相続税 評価額×(残存耐用年数 - 存続年数)÷ 残存耐用年数 × 存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率

 

(2)配偶者居住権が設定された建物(以下、「居住建物」)の所有権の評価

建物の相続税評価額 - 配偶者居住権の価額

 

(3)配偶者居住権に基づく居住建物の敷地の利用に関する権利の評価

土地等の相続税評価額 - 土地等の相続税評価額 × 存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率

 

(4)居住建物の敷地の所有権等の評価

土地等の相続税評価額 - 敷地の利用に関する権利の価額

 

相続税評価額

配偶者居住権が設定されていない場合の相続税評価額

 

残存耐用年数

居住建物の所得税法に基づいて定められている耐用年数(住宅用)× 1.5 - 居住建物の築後経過年数

 

存続年数

次に掲げる場合の区分に応じて定める年数

 

イ. 配偶者居住権の存続期間が配偶者の終身の間である場合 配偶者の平均 余命年数

 

ロ.  イ以外の場合 遺産分割協議等により定められた配偶者居住権の存続期間の年数(配偶者の平均余命年数を上限とする)

残存耐用年数又は残存耐用年数から存続年数を控除した年数が零以下となる場合には零とする

 

2.持戻しの免除

婚姻期間が20年以上である夫婦間で、居住用不動産(居住用建物又はその敷地)の遺贈または贈与がされた場合については、「特別受益の持戻しの免除」の意思表示があったと推定されるとする制度です。

 

持戻しとは、「生前贈与や遺贈をうけた相続人がいる場合に、その贈与額を相続財産全体に加えて(=持戻して)相続財産全体を把握し、贈与を受けた相続人の具体的な相続分を計算するときに、その贈与額が控除されること」です。

持戻しの免除を適用すると、贈与額を相続財産に加える必要がなくなります。

 

特別受益の持ち戻し免除の意思表示を推定する規定を設けることにより、原則として遺産の先渡しを受けたものとして取り扱う必要がなくなり、配偶者は、より多くの財産を取得することができるようになります。

 

株主が取締役を訴えた時に監査役がすべきこと~株主代表訴訟

株主代表訴訟における監査役の役割

株主代表訴訟とは、ある株主が全株主を代表する形で、会社に代わって取締役の責任追及を行う制度です。株主が、会社が被った(あるいは被ったであろう)損害に対して、不祥事に関係する取締役に対して損害賠償の支払いを求めて訴訟を提起する制度です。株主を代表するといっても、手続的に他の一般株主の同意を必要としているわけではありません。

監査役は株主代表訴訟制度においては、主体的に対応する必要があります。株主代表訴訟制度の規定と株主代表訴訟制度における監査役の役割を考えてみます。

 

株主代表訴訟制度の概要

  1. 取締役の会社に対する責任

取締役は会社と委任関係にある(会社法330条)ことから、会社に対して善管注意義務を負うことになります(民法644条)。

会社に対して善管注意義務を果たすべき取締役が法令・定款違反を犯したり、独断的に業務執行を進めたことにより会社に損害を及ぼした場合には、会社は、当該取締役に任務懈怠があったとして、会社が被った損害額の支払いを直接請求したり、降格・配置転換、報酬・退職慰労金のカットや不支給等により一定の責任を果たさせることが原則となります。
しかし、会社として当該取締役の責任追及を適切に行わない場合には、株主が会社に代わって取締役の責任追及を行う必要が生じます。会社の損害が放置されたままであると、最終的に株主が損害を被ることになるからです。

 

  1. 株主代表訴訟制度について

(1) 株主代表訴訟制度とは

株主が株主代表訴訟制度を利用して訴訟を提起する権利は、株主による会社経営を監督・是正する目的である共益権に分類されます。株主代表訴訟は、一株又は一単元株式を所有していれば訴訟提起が可能な単独株主権です。公開会社の場合は、株式を6カ月継続保有していれば、訴訟提起が可能です。

訴訟提起のための手数料は、一律13,000円と低額であり、株主の経済的負担が低くなっています。

さらに、勝訴した株主は、弁護士報酬のみならず、調査費用等として支出した費用相当額を会社に請求することが可能です。

 

(2) 株主代表訴訟の手続き

株主代表訴訟は、株主が裁判所に取締役の責任追及のための訴訟提起をする前に、会社に対して提訴請求が必要です。「会社に対して」とは監査役に対してです。会社法上、会社と取締役との間の訴えの提起の際には監査役が会社を代表し、株主からの提訴請求の受領も監査役と規定されています。

 

監査役は、株主からの提訴請求書面の受領日から60日以内に取締役の責任追及の訴えの提起をするか否かを調査します。

 

監査役が調査した結果、提訴請求対象取締役に法的責任があり、会社の損害と違法行為との間に相当の因果関係が存在すると判断すれば、監査役が会社を代表して、当該取締役の責任追及の訴えの提起を裁判所に対して行います。

 

監査役が取締役の責任追及をしないと判断したときに初めて、当該株主は裁判所に対して、取締役の責任追及の訴えを提起することができます。

 

株主代表訴訟における監査役の業務

監査役は、株主からの提訴請求に対して、60日間で調査し、結論を出さなければなりません。

法務部門や内部監査部門に調査を依頼することや、結論を求めることはできません。

監査役としての業務は以下の通りです。

 

  1. 提訴請求の段階

(1) 提訴請求受領から調査の開始まで

取締役への提訴請求書面は、①監査役に対する書面又は電磁的方法であること②被告となるべき者が明示されていること③請求の趣旨及び請求を特定するのに必要な事実が記載されていることが必要であり、これらを確認する必要があります。

 

提訴請求書を受領した監査役は、監査役間で情報を共有し、以下の項目を検討して調査体制や調査方針を決定します。

 

  1. 請求株主の属性(一般株主か特殊株主か)
  2. 提訴請求書に記載された事実(新たに判明した事実か既成事実か)
  3. 調査体制(監査役による社内調査か第三者委員会の設置か)
  4. 調査の方針(既存の資料等で充足可能か、詳細な調査が必要か)

 

(2) 調査の実施

調査に当たっては、株主が提訴請求書面で記載している内容について、事実関係の確認を行います。

  1. 会社の損害の発生事実の有無
  2. 取締役の法令・定款違反行為の有無
  3. 当該行為と損害との相当の因果関係の有無

 

取締役の法令・定款違反行為とされる場合には、具体的な違法行為の確認も重要となります。

また、個別・具体的な法令違反ではなく、投融資案件の失敗に対する善管注意義務違反であると株主が主張している場合には、経営判断原則の適用の有無も調査対象となってきます。

 

  1. 調査結果のまとめ及び訴訟提起の是非の判断

一連の調査を終えた段階で、調査の方法や結果を書面で作成します。

第三者委員会が調査した場合には、委員会としての意見書を受領します。

最終的には、提訴請求対象取締役を提訴するかどうかは、監査役(会)が決定しなければなりません。意見書はあくまで最終決定のための参考という位置付けです。
取締役に法的責任があるとの結論になれば、監査役が会社を代表して、訴訟代理人弁護士を起用して当該取締役を提訴する準備に取り掛かることになります。

他方、提訴をしないと判断したならば、不提訴理由通知書の作成を行います。

 

不提訴理由通知書の記載内容は、以下の通りです。

  1. 調査の内容(判断の基礎資料を含む)
  2. 取締役の責任・義務の有無の判断及びその理由
  3. 責任等があると判断したにもかかわらず、提訴しないときの理由

また、事件・事故に対して、当該取締役の責任があるとして社内で懲戒処分を行っている場合には、その内容の概要を記載することになります。

例えば、報酬のカットや不支給により、会社の損害額相当分につき補てんする処罰を行っていれば、すでに会社の損害は回復されていることになりますから、株主にとっては提訴する法的根拠が無くなっていることになります。

 

不提訴理由通知書は、監査役の調査期間終了後、遅滞なく当事者に通知することになっています。

不提訴理由通知書を受領した株主がその内容に納得すれば訴訟提起になりませんが、不提訴理由通知書の内容にかかわらず提訴に及ぶ事例が圧倒的に多いことから、不提訴理由通知書の記載は、その後の会社としての訴訟戦略上、大きな影響を及ぼすことになります。

 

詳細な不提訴理由通知書の記載は、原告株主に新たな情報を提供することを意味し、その後の裁判の審理において、取締役ひいては会社にとって不利となる可能性もあります。

従って、監査役は、不提訴に係る法的判断はもとより、記載の程度についても注意を払う必要があります。案件によっては、法律の専門家に見てもらうことも必要になります。

 

  1. 株主による提訴

監査役が不提訴理由通知書を通知した後、取締役の責任追及を行う株主は、会社に対してその旨の通知をしてきますので、会社からその他の株主に公告します。

裁判所の審理開始後は、会社が当該取締役の訴訟に補助参加をするのが一般的です。補助参加の際には、各監査役の同意が必要です。

 

まとめ

監査役は、取締役の職務執行の監査が職責ですので、株主代表訴訟の提起に至らないように、日常の監査業務を通じて、違法行為やそのおそれがあるときは、適宜・適切に指摘し、取締役(会)に報告することが大切です。

不祥事が公表される前に、執行部門が社内調査や第三者委員会設置による調査を行うときには、監査役もメンバーとして参画するなど、積極的な関わりを持つことが重要となります。

 

経営者が関与する不正な財務報告を防止し、適切に対応するためには監査役等と監査人との連携が重要です

「監査役等と監査人との連携に関する共同研究報告」は、監査役若しくは監査役会又は監査委員会、監査等委員会(以下「監査役等」という。)と監査人がそれぞれの職責を果たす上での相互連携のあり方を示すことにより、両者の連携を強化し、コーポレート・ガバナンスの一層の向上を目的として日本監査役協会と日本公認会計士協会が共同して取りまとめたものです。平成30年1月25日が最終改訂版です。

どのような内容かを見ていきましょう。

 

監査役等と監査人との連携とその効果

経営者が関与する不正な財務報告を防止し、適切に対応するためには両者の連携が重要です。

監査人が遵守すべき監査基準においても、日本監査役協会の監査役監査基準等においても、監査役等と会計監査人とが適切な連携を図るべきことが明確にされています。

ほかにも会社法では、監査役等には会計監査人の選解任等に関する議案内容の決定権及び監査報酬の同意権が付与されていますが、この権限を適切に行使するためにも、監査役等は監査人と十分なコミュニケーションを取ることが必要です。

監査役等と監査人の連携は会計監査が中心となるものの、監査役等が業務監査から得る情報は監査人の監査にも有用です。一方、監査人から得られる情報は監査役等にとって会計監査だけでなく業務監査にも有用です。

監査役等と監査人は、監査上の必要な事項について情報提供と意見交換を行い、監査役等からは日常の業務監査等で知り得た情報を監査人に伝え、監査人からは会計監査で得た情報を監査役等に伝えることにより、それぞれの監査の有効性及び効率性を高めることができます。

 

監査役等と監査人は、コミュニケーションに際して関係者全員に適切に情報が伝わるよう努める必要があります。

コミュニケーションに当たって、監査役等と監査人は、以下の事項について協議を行い、両者の期待に相違が生じないようにする必要があります。

(協議事項)

① 監査契約の新規締結時、監査契約更新時又は業務執行社員若しくは監査役・監査委員・監査等委員の交代時における、それぞれの監査体制等に関する事項

② 監査人から監査役等への報告事項や情報提供の範囲

③ 監査役等から監査人への情報提供の範囲

④ コミュニケーションのための文書を第三者へ提示する必要が生じた場合には、その同意手続

 

連携の時期及び情報・意見交換すべき基本的事項の例示

監査役等と監査人の連携の時期と情報交換・意見交換すべき基本的事項について、以下のように例示されています。

 

1.監査契約の新規締結時

① 監査人の状況及び品質管理体制(不正リスクへの対応を含む。)

② 前任監査人との引継の状況

③ 監査役等と前任監査人との連携の状況

 

2.監査契約の更新時

① 監査人の再任に際しての監査役等の評価結果の概要と要望事項

② 監査人の状況及び品質管理体制(上記(1)①に挙げられている事項)

③ 監査契約更新前に監査人が経営者と協議した重要な事項

④ 業務執行社員又は監査役・監査委員・監査等委員が交代した場合、その経緯

 

3.監査計画の策定時

① 監査人による監査計画(四半期レビュー計画及び内部統制監査計画を含む。)

②監査役等による監査方針及び監査計画

 

4.四半期レビュー時

① 監査人による四半期レビューの実施状況

② 年度の監査計画で特定した特別な検討を必要とするリスクの状況と四半期レビュー計画に与える影響

③ 必要に応じて、未修正の虚偽表示の内容とそれが個別に又は集計して監査人の四半期財務諸表に対する結論に与える影響

④ 必要に応じて、監査人が要請した経営者確認書の草案

⑤ 監査人の会計・レビュー上の検討事項及び内部統制の重要な不備(改善状況を含む。)

⑥ 監査人の四半期レビュー報告書の記載内容

⑦ 四半期報告書に関する事項

⑧ 監査役等の企業集団を含む監査の実施状況

 

5.期末監査時

特に、会社法監査においては、会計監査人の監査方法及び結果の相当性を判断するに必要とされる十分な情報提供と説明・意見交換が必要となります。

① 監査人による監査(グループ監査を含む。)の実施状況

② 年度の監査計画で特定した特別な検討を必要とするリスクの状況とその対応

③ 監査人の会計・監査上の検討事項及び内部統制の開示すべき重要な不備又は重要な不備の内容(改善状況を含む。)

④ 監査人の状況及び品質管理体制(上記(1)①に挙げられている事項についての変更点及び留意すべき点)

⑤ 未修正の虚偽表示の内容とそれが個別に又は集計して監査人の監査意見に与える影響

⑥ 監査人が要請した経営者確認書の草案

⑦ 監査人が監査した財務諸表が含まれる開示書類におけるその他の記載内容に修正が必要であるが、経営者が修正することに同意しない事項

⑧ 監査人の監査報告書の記載内容

⑨ 会社法監査終了時点での財務報告に係る内部統制に関する監査人の監査の状況

⑩ 有価証券報告書及び内部統制報告書に関する事項

⑪ 内部統制監査報告書に関する事項

⑫ 監査役等の企業集団を含む監査の実施状況

⑬ 監査役等の監査報告書の記載内容

⑭ 監査役等の財務報告に係る内部統制の監視の状況

 

6.随時

必要に応じて、情報提供・意見交換等を行います。

① 監査人が監査の実施過程で発見した違法行為又はその疑いに関連する事項

② 監査人が会社に影響を与える不正を発見したか、疑いを抱いた事項

③ 監査人が把握する会計上の変更及び誤謬の訂正に関する事項

④ ①から③までのほか、監査上の発見事項(軽微なものは除く。)

⑤ 監査人の監査計画(グループ監査計画を含む。)の重要な修正に関する事項

⑥ 上記①から⑤への監査役等の対応

⑦ 監査役等が監査人の監査に影響を及ぼすと判断した事項

 

思わぬ課税を避けるために経営者が知っておくべき「役員給与の税務」

法人税法の考え方

 

法人がその役員に対して支給する給与(注)のうち次に掲げる給与のいずれにも該当しないものの額は、その法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しないこととされています。

(注)   次の給与を除きます。

イ  退職給与

ロ  旧法第54条の2第1項新株予約権を対価とする費用の帰属事業年度の特例等に規定する新株予約権による給与

ハ  イ及びロ以外のもので使用人としての職務を有する役員に対して支給するその職務に対する給与

ニ  法人が、事実を隠蔽し、又は仮装して経理をすることによりその役員に対して支給する給与

 

会社法で、役員報酬と役員賞与が業務執行の対価として一本化されましたので、税法でも役員賞与で一定の要件を満たすものは損金算入が認められ、また、一定の業績連動役員給与も損金算入が認められることになりました。

法人税法における役員とは、会社法上の役員である取締役、執行役、監査役等と税法独自の役員とがあります。

税法独自の役員であるかどうかを判定するには、肩書と所有割合がキーになります。

 

役員給与の体系

損金算入が認められる役員給与

定期同額給与

その支給時期が1月以下の一定期間ごとである給与(以下「定期給与」 といいます。) でその事業年度の各支給時期における支給額が同額であるものその他これに準ずる一定の給与 (以下 「定期同

額給与」 といいます。) をいいます。

 

事前確定届出給与

役員の職務につき、所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与のうち、一定期間内にその内容を記載した届出書を納税地の所轄税務署長に届出た給与をいい、定期同額給与及び利益連動給与を除きます。

なお、一定の要件を満たす法人税法に規定する特定譲渡制限付き株式または特定新株引受権による給付は、届け出不要です。

 

業績連動給与

同族会社に該当しない法人が、その業務を執行する一定の役員に対して支給する業績連動指標を基礎に算定される給与で、一定の要件を満たすものです。

 

範囲

業績連動給与は、金銭だけでなく、適格株式、適格新株予約権も対象です。

 

算定指標

利益の状況を示す指標、株式の市場価格の状況を示す指標、売上高の状況を示す指標を用いることができます。各指標は、自社の有価証券報告書に記載されるものに限られます。

法人税法施行令にその定めがあります。

 

(算定指標の例示)

利益指標:

1.営業利益、経常利益、当期純利益

2. EBITDA(利払い・税引き・減価償却前当期利益)

3.EPS、売上高営業利益率

4.当期純利益(前期比)、営業利益率(当期他社比)

5.ROCE(使用資本利益率)、ROIC(投下資本利益率)

市場価格:

1.所定の時期の市場価格またはその平均値

2.株価増減額、騰落率、TOPIX・日経平均株価等との対比

3.時価総額

4.株主総利回り

5.上記の組み合わせ

売上高:利益指標、市場価格と同時に用いることが要件。

1.セグメント売上高

2.酒税抜き売上高

3.増減額、騰落率、計画比

 

損金算入要件

1.算定方法が指標に基づく客観的なものであること

2.金銭の場合は確定額、株式または新株予約権の場合は、各定数を限度とすること

3.他の業務執行役員と同様の算定方法を用いること

4.算定方法を有価証券報告書等で開示していること

5.算定方法を適切な方法で決定していること

6.一定期間までに交付または交付される見込みであること

7.損金経理をしていること

 

使用人兼務役員の使用人分給与

使用人としての職務を有する役員に対して支給するその職務に対する給与をいいます。

 

退職給与

業績連動給与に該当しない退職給与は、損金算入可能です。

業績連動給与に該当する退職給与は、業績連動給与の損金算入の要件を満たす必要があります。

 

不相当に高額な部分の損金不算入

1.実質基準

役員に支給した給与の額がその役員の職務の内容、類似法人の支給の状況等に照らしてその役員の職務の対価として相当であると認められる金額を超える部分の金額

 

2.形式基準

役員に支給した給与の合計額が、定款等で定められた支給限度額を超えている場合の支給限度額を超えている金額

 

 

 

 

 

 

中小企業の経営を革新するための「経営革新等支援機関」認定制度

経営革新等支援機関認定制度

近年、中小企業を巡る経営課題が多様化・複雑化する中、中小企業支援を行う支援事業の担い手の多様化・活性化を図るため、平成24年8月30日に「中小企業経営力強化支援法」が施行され、 中小企業に対して専門性の高い支援事業を行う経営革新等支援機関を認定する制度が創設されました。
認定制度は、税務、金融及び企業財務に関する専門的知識や支援に係る実務経験が一定レベル以上の公認会計士・税理士・弁護士、金融機関、中小企業支援機関等を、経営革新等支援機関として認定することにより、 中小企業に対して専門性の高い支援を行うための体制を整備するものです。

 

 

認定経営革新等支援機関が提供する主な支援内容

1.経営革新等支援及びモニタリング

経営の「見える化」支援:

経営革新または異分野連携新事業分野開拓(以下、経営革新等)を行おうとする中小企業・小規模事業者(以下、中小企業等)の財務状況、事業分野の将来性、キャッシュフロー見通し、市場動向等の経営状況に関する調査・分析

 

事業計画の策定支援:

調査・分析結果に基づく中小企業等の経営革新等にかかる経営改善計画、資金計画、マーケティング戦略計画等の策定にかかる指導及び助言

 

事業計画の実行支援:

中小企業等の経営革新等にかかる事業計画を円滑に実施するための指導及び助言

 

モニタリング支援:

経営革新等を実施した案件に対する継続的モニタリングの実施

 

中小企業・小規模事業者への会計の定着支援:

中小企業等が作成する計算書類等の信頼性を確保して、資金調達能力の向上を促進させるために、「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」に拠った計算書類等の作成及び活用

 

2.その他経営改善にかかる支援全般

中小企業等の経営改善、創業、新事業展開、事業再生等の課題全般にかかる指導及び助言

 

3.中小企業支援施策と連携した支援

中小企業等支援施策の効果の向上のため、補助金、融資制度等を活用する事業計画等策定支援やフォーローアップ

 

認定経営革新等支援機関の支援の主な流れ

1.中小企業等のニーズ

業績向上、財務内容・経営状況の分析、経営の向上等

 

2.認定経営革新等支援機関を選定

経済産業局掲載のリストから選定、よろず支援拠点等の紹介

 

3.経営革新等支援機関に相談

 

4.支援の実施

(1)経営状況等の把握:財務内容等経営状況の分析、経営課題の抽出

(2)事業計画の策定:計画策定の支援・助言

(3)事業計画の実行:事業実施の支援・助言

 

認定経営革新等支援機関の効果

経営状況の明確化

目標とその達成過程の明確化

新製品の開発、新サービスの提供等の道筋の確立

経営の向上

 

これらを通じて、経営革新を実現します。

 

企業集団の内部統制と親会社監査役の役割・留意点

子会社における不祥事は、不祥事事例の中でも比較的多いのではないでしょうか。後述のように、親会社は企業集団の内部統制システムについて整備する必要がありますので、親会社監査役として留意しておくべき法律と実務について考えてみましょう。

 

  1. 業務の適正性とは

会社法では「企業集団」という言葉が使われ、「当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備」と規定されています。

「業務の適正を確保するため」とは、いわゆるリスク管理を意味する内部統制システムの整備を表すことから、会社法は、企業集団としてリスク管理を要請しています。

 

  1. 企業集団における内部統制システムの整備

企業集団の内部統制システムに関しては、平成27年改正会社法施行規則によって内容が定められました。

親会社として企業集団の内部統制システムを整備することが明示的に示されました。親会社は、子会社の業種・業容・業態等を勘案しながら、実効的な体制整備を行う必要があります。

企業集団の内部統制システムの整備すべき内容として、以下の3点が示されました。

 

①子会社取締役・執行役・使用人(以下、取締役等)から親会社への報告体制

②子会社の損失危険管理体制

③子会社の取締役等の職務執行の効率確保体制④子会社の取締役等の法令・定款遵守体制

 

この中で、①の子会社取締役等からの親会社への報告体制については、親会社自身も子会社からの報告を受け入れる体制整備が必要となります。

 

執行部門から独立している親会社監査役に報告されれば、監査役として担当取締役に報告したり、執行部門に第三者委員会の設置・調査を要請したりすることも可能になります。

 

  1. 親会社監査役と子会社との関係

親会社監査役は、子会社取締役等に対して業務報告請求権や調査権があります。

親会社監査役による子会社業務報告請求権・調査権は、あくまで親会社の取締役の職務執行を監査するという監査役としての職責を果たす一環であり、親会社監査役が子会社の不祥事を直接監査する役割が法的に求められているわけではありません。

 

  1. 親会社監査役の役割

企業集団の内部統制システムを整備するのは親会社取締役が率いる執行部門の役割ですので、親会社の監査役は、業務監査を通じて、取締役がその役割を適切に果たしているか否かについて確認し、必要に応じて指摘することが職責となります。

 

  1. 親会社監査役の監査における留意点

企業集団の内部統制システムに関する親会社監査役の留意点として、以下の4点があげられます。

 

(1) 親会社への報告体制

親会社への報告体制については、複数ルートが整備されていることを確認します。親子会社間の属人的な関係に依存せずに、何らかの問題が生じたときに、親会社に適宜・適切に報告が行われる体制に基づいていることが重要です。

突発的な事件・事故が発生した際に、子会社から親会社への緊急連絡体制が整備されているかについても確認する必要があります。

 

企業集団としての内部通報制度が整備されている場合には、内部通報制度の親会社窓口部門の業務監査の際に、子会社から通報があった件数や内容についても確認する必要があります。

 

子会社から内部通報制度を利用した情報が親会社に寄せられた場合にも、年度でまとめて報告が行われるということではなく、毎月または四半期に一度は監査役にその情報が伝達される体制になっているかを確認します。

 

(2) 子会社の損失危険管理体制

子会社の損失危険管理体制とは、子会社における損失リスクに対する予防としての平時と、リスクが発生した場合の有事の際に必要な体制整備が行われていることです。

この体制を構築するためには、親会社の子会社管掌部門は、子会社のリスクが何かを把握していなければなりません。

 

リスクについては、単にその内容のみならずリスクの大きさの程度の認識が重要となります。

執行部門が子会社のリスクを子会社と共有し、そのための注意喚起を定期的に行っていること、内部監査部門が必要に応じて子会社モニタリングを実施し、その監査結果が活用されていることの確認が親会社監査役として業務監査を行う上でのポイントとなります。

 

(3) 子会社の取締役等の職務執行の効率確保体制

子会社の取締役等の職務執行の効率確保体制とは、経営戦略の策定・経営資源の配分・経営管理体制が適切ではない場合に、過度の非効率が生じ、企業集団として著しい損害が生じるリスクを回避する体制のことです。

親会社監査役の業務監査としては、親会社管理部門が、子会社との間で共通の経営戦略や経営資源の配分等の意見交換をする場を持ち、かつ定期的に検証した上で評価・改善する体制となっているかを確認することになります。

 

(4) 子会社の取締役等の法令・定款遵守体制

子会社取締役等の法令・定款遵守体制とは、子会社役職員への教育・研修です。

親会社監査役は、子会社の教育体制を企画・立案する人事教育担当部門の業務監査の際に、その企画内容のみならず実施状況についても確認することになります。

 

 

 

攻めの経営を促す役員報酬~企業の持続的成長のためのインセンティブプラン

『「攻めの経営」を促す役員報酬~企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引き~(平成29年9月時点版) 経済産業省産業組織課』が出されました。

 

インセンティブ報酬導入の意義

株式報酬や業績連動報酬の導入が促進されることで経営者に中長期的な企業価値向上のインセンティブを与え、我が国企業の「稼ぐ力」向上につなげる

特に、株式報酬については、経営陣に株主目線での経営を促したり、中長期の業績向上インセンティブを与えるといった利点があり、その導入拡大は海外を含めた機関投資家の要望に応えるもの

 

役員報酬に対する政府方針

日本再興戦略(2015)日本再興戦略(2016)において、経営陣に中長期の企業価値創造を引き出すためのインセンティブとして、株式報酬・業績連動報酬の活用を進める方針や、取締役会の役割・運用方法、CEOの選解任・後継者計画やインセンティブ報酬の導入等に関する指針や具体的な事例集の策定が打ち出された

 

これまでの主な政策対応

会社法関連:役員に対する株式報酬について、法解釈を明確化し、株式報酬導入の手続きを整理した(コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会)

税法関連:平成28年度改正、平成29年度改正

実務指針:経営陣の指名・報酬の在り方を含め、実効的なガバナンス体制の構築・運用のためのガイドラインを策定した(コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針)

 

 

法人税法の取り扱い

法人税法では、役員給与に関する規定があり、役員とは、取締役、執行役、監査役等で経営に従事しているもの等を言います。

役員給与として損金算入可能なものは以下の3類型です。

1.定期同額給与:1か月以下の一定期間ごとに同額で支給するもの

2.事前確定届出給与:事前の届け出に従い、所定の時期に確定額を支給するもの

3.利益連動給与:利益に連動して支給する給与で、以下の要件を満たすもの

対象会社:同族会社に該当しない内国法人

算定指標:当該事業年度の利益の状況に関する指標を基礎としていること

算定方法:確定額を限度としているものであり、かつ、他の業務執行役員に対して支給する利益連動給与にかかる算定方法と同様のものであること

プロセス:社外者のみを構成員とする報酬諮問委員会への諮問を経た取締役会の決定や、監査役適正書面の提出等の手続きを経ていること及び算定方法が有価証券報告書により開示されていること

 

税法の取り扱いは、以下のようになっています。

 

【類 型】

①:一定の時期に確定した金額または数を交付する役員報酬。税務署への事前届け出が必要。

②:1年以上の期間の業績に連動した金銭、株式等を交付する役員報酬。報酬諮問委員会への諮問や有価証券報告書での開示等の手続きが必要。

競争に勝ち抜くための戦略~Creating Shared Value=共通価値の創造(CSV)

競争に勝ち抜くための戦略~Creating Shared Value=共通価値の創造(CSV)

 

2011年に、『競争戦略論』で有名なマイケル・ポーター教授が、ハーバード・ビジネス・レビューにCreating Shared Value=共通価値の創造(CSV)という論文を発表しました。

社会価値と経済価値の双方を追求することこそ、次世代の資本主義の目指すべき姿と論じています。

これまでの資本主義は、経済価値の創造のみを追求した結果、社会的な価値と乖離した利益至上主義を助長した。

一方、社会課題が膨らんでいく中で、税金や寄付金に頼っているNPOやNGOでは、限界がある。新しい富を創造することなくして富の再分配を論じても本質的な問題解決にはならないとしています。

社会課題を解くことによって新たな価値創造が行われ、それが経済的リターンを生むという、社会と経済の正の循環を作ることこそ資本主義の本来の役割であると主張しています。

社会課題こそが、次の経済価値のタネで、CSVは、これからの競争に打ち勝つための必要なモデルであると論じています。

 

CSRとCSVの違い

CSRとCSVについての違いを次のように整理しています。

CSR CSV
善行 ⇒経済的便益と社会的便益
シチズンシップ、フィランソロピー、持続可能性 ⇒企業と社会の共創
任意、あるいは、外圧 ⇒真の競争力の獲得
利益の最大化とは別物 ⇒利益との連動
テーマは、外部の関心や個人の嗜好 ⇒テーマは、企業ごとに異なる。内発的
企業の業績やCSR予算に制限される ⇒企業の予算全体の基盤を構築
例:フェアトレード ⇒例:調達方法を変えることで品質とボリュームを向上

 

CSRは社会的責任、CSVは共通価値の創造です。CSRは、本業周辺で行うものとの印象があり、CSVは、本業の戦略ということができます。

 

CSVを実現する3つのレバー

ポーター教授は、CSVを実現するために製品・サービス、バリューチェーン、地域生態系の3つがレバーになるとしています。

 

1.次世代の製品・サービスの創造

社会問題の解決に役立つ次世代の製品・サービスの創造。気候変動、水・食料不足、経済格差、高齢化などの解決を事業機会ととらえて、自社の強みや資産を生かしてこれを解決する。

2.バリューチェーン全体の生産性の改善

川上から川下までバリューチェーン全体の効率性を上げて、最適化・効率化することで社会価値を生み出す。

3.地域生態系の構築

事業を行う地域で、人材やサプライヤーを育成したり、インフラを整備したり、自然資源や市場の透明性を強化することなどを通じて、地域に貢献するとともに強固な競争基盤を築く