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企業情報開示の信頼性を高める監査・保証

2020年8月21日に日本公認会計士協会「企業情報開示・ガバナンス検討特別委員会」は、「企業情報開示に関する有用性と信頼性の向上に向けた論点の検討~開示とガバナンスの連動による持続的価値創造サイクルの実現に向けて~(中間報告)」を公表しました。

「論点4 信頼性を高める監査・保証 4-1 企業情報開示の質向上と監査・保証」では、以下のように述べています。

 

1.現状と課題

 

(1)重要な虚偽表示リスクの識別・評価

 

・財務諸表監査にあたっては、前提として、企業の外部環境や事業活動等、企業目的及び戦略の理解が求められている。

 

(2)見積りの妥当性の評価

 

・監査上、会計上の見積もりの妥当性を評価するにあたって、上記の理解が重要となっている。

 

(3)財務情報と非財務情報の一体的理解

 

・財務報告の利用者である投資家側では、非財務情報について理解を深め、財務情報と合わせて投資先の評価や投資先との対話に反映する動きが強まっている。

 

・財務情報だけでなく、非財務情報も含む企業情報開示全体の質を高めるうえで、監査人がどのような役割を果たすべきかが問われている。

 

(4)非財務情報の信頼性を確保することを主眼とした施策

 

・財務諸表と「その他の記載内容」の整合性だけでなく、監査の過程で得た知識と重要な相違がないか検討する等の注意を払う必要がある。

 

・財務諸表や監査の過程で得た知識に関連しない内容についても、重要な誤りがあると思われる兆候に注意を払うことが求められる。

 

2.方向性

 

(1)コーポレート・ガバナンス改革と監査

 

・取締役会の役割と監督責任の明確化、独立役員の増加、監査当委員会設置会社採用の広がりといったガバナンス構造が変化している。

 

・このことが、企業の統制環境に影響を及ぼしている。

 

・統制環境の視点から、企業のガバナンス設計と運用状況への理解が重要となる。

 

・コーポレート・ガバナンスに関する開示情報や企業側の実効性評価の状況、取締役及び監査役との対話をどのように活用していくかについて、検討を深める必要がある。

 

(2)リスク評価

 

・監査人が、経営者や取締役との対話等を通じて、企業独自の持続的な価値創造モデルについての理解を深めることが重要である。

 

・これまで以上に、企業開示が全体として企業価値を適切に表すものとなっているかという観点での視座を高めることが必要である。

 

・リスク評価に関しても、短期の事業リスクだけでなく、中長期的な企業価値に重要な影響をもたらす経営上のリスクについても監査人は、理解を深めることが必要である。

 

・必要に応じて、中長期的な影響を検討する必要性が高まっている。

 

・監査対象の財務諸表が含まれる開示書類におけるその他の記載内容の通読及び検討、重要な相違や重要な誤りへの対応が求められる。

 

(3)非財務情報の信頼性

 

・非財務情報の重要性が高まる中、その信頼性を確保することの要請も高まっている。

 

・第三者による保証のニーズと実現可能性を整理する必要がある。

 

・持続的価値創造サイクルを支える企業情報開示を実現する観点から、監査・保証に求められるニーズについて、作成者である企業及び利用者である投資家との対話を深める必要がある。

 

・監査及び保証のあるべき姿、監査人の新たな役割や社会への貢献の在り方について踏み込んだ議論を行う必要がある。

 

企業情報開示における非財務情報の信頼性~現状の課題と方向性

2020年8月21日に日本公認会計士協会「企業情報開示・ガバナンス検討特別委員会」は、「企業情報開示に関する有用性と信頼性の向上に向けた論点の検討~開示とガバナンスの連動による持続的価値創造サイクルの実現に向けて~(中間報告)」を公表しました。

「論点4 信頼性を高める監査・保証 4-3 非財務情報の信頼性」では、以下のように述べています。

 

1.現状と課題

 

(1)非財務情報の信頼性

 

・企業情報開示における記述情報の重要性が高まるにつれ、その信頼性が問われるようになってきている。

 

・非財務情報の信頼性を担保するものとして、以下の項目を挙げている。

 

①一定の規範性を有する開示書類の潜在

 

②報告フレームワーク・基準の確立

 

③開示にかかわるガバナンスとプロセスの整備と運用

 

④独立した第三者による監査・保証

 

(2)法定監査の枠組み

 

・現行の法定監査の枠組みでは、その他の記載内容に対する監査人の責任は定められているが、保証対象となっていない。

 

・任意の統合報告書では、国際保証業務基準に基づき、特定の指標等を対象とした保証業務が実施される。

 

(3)自主開示

 

・自主的開示の統合報告書に財務諸表が含まれる場合であっても、監査人による監査報告書が付されるケースは非常にまれである。

 

・一つの年次報告書において、財務諸表監査と非財務情報の保証の両方が含まれる実務が一般的なものとなっていない。

 

・こうした状況は、利用者のニーズにこたえていない。

 

・年次報告書に含まれる情報の信頼性に関して、利用者の混乱を招く恐れがある。

 

2.方向性

 

(1)「その他の記載内容に関連する監査人の責任」

 

・財務諸表監査における「その他の記載内容に関連する監査人の責任」と「独立した第三者による非財務情報に対する保証」の違いを明確にする必要がある。

 

(2)制度開示の中で開示される非財務情報

 

・制度開示の中で開示される非財務情報について、任意の保証業務を提供することが可能かどうかなどを検討する必要がある。

 

(3)非財務情報の保証

 

・非財務情報には、過去情報と将来情報、記述的情報と数値情報がある。

 

・KPI等の実績等の過去数値情報については、保証ニーズが高い。

 

・重要性の決定を含む企業情報開示書類の作成プロセスや取締役会の開催状況、アジェンダ等を含むガバナンスの運用状況に対する投資家の関心は高い。

 

(4)第三者による保証

 

・第三者による保証を受けることによって、利用者にどのような好影響をもたらすかについての十分な検討が必要である。

 

・特定の基準に照らした客観的な判断が可能かどうかも課題となる。

 

・非財務情報の信頼性に関しては、ポジティブな情報とネガティブな情報のバランスが取れた開示であることをどのように確認するか、恣意性が介在するリスクにどのように対処するかという問題がある。

 

(5)保証のニーズ

 

・以下の三つの情報については、保証によって信頼性を高めることへのニーズが高い可能性がある。

 

①KPIに代表される過去数値実績

 

②コーポレート・ガバナンスの運用状況

 

③重要性の決定を含む開示プロセス

 

・これらの情報に対する保証のニーズ及び実施可能性、更には、適切な保証業務が提供可能となるための開示の枠組みの在り方について検討を深めていく必要がある。

企業情報開示における取締役会の役割~企業情報開示とコーポレート・ガバナンスの連動~

2020年8月21日に日本公認会計士協会「企業情報開示・ガバナンス検討特別委員会」は、「企業情報開示に関する有用性と信頼性の向上に向けた論点の検討~開示とガバナンスの連動による持続的価値創造サイクルの実現に向けて~(中間報告)」を公表しました。

「論点3 企業情報開示とコーポレート・ガバナンスの連動 3-1 企業情報開示に対する取締役会の役割」では、以下のように述べています。

 

1.現状と課題

 

(1)日本企業のガバナンスに大きな変化

 

①取締役会の役割

 

・企業の方向付け、リスクテイク環境の整備、経営陣の監督といった取締役会の役割が重視されるようになってきている。

 

・経営と監督の分離が意識されるようになってきている。

 

②社外取締役

 

・人数が増加している。

 

・経営監督における社外取締役の位置付けが高まっている。

 

③形式から実質へ

 

・コーポレート・ガバナンス、特に、取締役会による企業の方向付けと監督の実効性が問われている。

 

(2)年次報告書

 

・企業の方向性やリスク認識、業績についての見解を示す文書としての位置づけが高まっている。

 

・取締役会が主体となる企業報告が求められるようになっている。

 

・企業情報開示は、コーポレート・ガバナンスの確立において極めて重要な役割を果たしている。

 

(3)我が国の有価証券報告書と取締役会

 

①経営者・取締役の主体的関与

 

・有価証券報告書を取締役会の決議事項としている会社は、上場企業の約6割となっている。

 

・制度開示書類に取締役会の見解を反映すべきとの認識が経営者や取締役との間で十分に共有されていない。

 

・企業情報開示において、取締役会が果たすべき基本的役割が明確になっていない。

 

・取締役会の役割を担保するための社内体制やプロセスが確立していない。

 

②企業情報開示に関する取締役会の関与についての制度上の要請

 

ア)会社法

 

事業報告及び計算書類:取締役会の承認

 

イ)金融商品取引法

 

有価証券報告書:作成主体は、代表取締役及び財務責任者

 

③社内体制・プロセス

 

・経営者に加えて取締役会の見解を有価証券報告書に反映することの重要性が高まっている。

 

・取締役会が主体的に関与する枠組みをどのように担保するかが課題である。

 

2.方向性(提言)

 

(1)情報開示が適切なものになるように体制・プロセスを取締役会が監督することが重要である。

 

・「OECDコーポレート・ガバナンス原則」では、報告体制の廉潔性を確保する最終的な責任は、取締役会が負うべきとしている。

 

(2)企業の価値創造の方向性や業績及びリスクに対する認識に取締役会の見解が十分に反映されることが重要との認識も強まっている。

 

・「記述情報原則」では、経営者の見解だけでなく取締役会における議論が有価証券報告書の記述情報に適切に反映されることを求めている。

 

・「国際コーポレート・ガバナンス・ネットワーク:グローバルガバナンス原則」は、取締役会による企業情報開示の監督において重視すべき観点を示している。

 

(3)企業情報開示における取締役会の監督機能

 

・毎期の年次報告における重要な事項が取締役会において議論され、その内容が年次報告書に反映されることが重要となる。

 

・取締役会の見解が反映されえることを体制担保するための情報開示に関する体制、プロセス及び取締役会による監督の在り方を明確化していく必要性が高まっている。

 

(4)監査役会との連携

 

・監督機能を担う監査役会との連携も重要となる。

 

・監査役会設置会社では、非業務執行取締役と監査役との対話及び連携を通じて取締役会における見解が実質的に企業情報開示に反映されるための体制及びプロセスを整備することが期待される。

企業情報開示における経営・監督プロセスと情報開示プロセス

2020年8月21日に日本公認会計士協会「企業情報開示・ガバナンス検討特別委員会」は、「企業情報開示に関する有用性と信頼性の向上に向けた論点の検討~開示とガバナンスの連動による持続的価値創造サイクルの実現に向けて~(中間報告)」を公表しました。

「論点3 企業情報開示とコーポレート・ガバナンスの連動 3-2 経営・監督プロセスと情報開示プロセス」では、以下のように述べています。

 

1.現状と課題

 

(1)経営・監督プロセスと情報開示プロセス

 

・企業内の経営・監督プロセスと外部に対する情報開示プロセスのつながりを構築していくことが求められている。

 

(2)記述情報

 

・記述情報を作成するための期間が短いとの指摘がある。

 

・有価証券報告書の作成方針や構成要素について、経営会議や取締役の参加する合議体におけるレビューに付されることも少ないという意見もある。

 

(3)統合報告書

 

・統合報告書の作成に取締役会が関与し、承認を受けている事例もみられる。

 

・経営・監督プロセスとして実施された事業リスクに関する評価結果や経営課題等に関する重要性の評価結果を統合報告書に反映する実務も広がりつつある。

 

2.方向性(提言)

 

(1)企業情報開示と経営者及び取締役会の見解

 

・情報開示プロセスを経営・監督プロセスと連動させていくことが重要である。

 

・年次報告書の相当程度早いタイミングから提出・公開日までのプロセス。

 

①開示方針の決定

 

②情報構成の決定

 

③データ収集

 

④評価結果の反映

 

⑤レビュー

 

⑥最終承認

 

・プロセスの早期の段階から、開示方針の取締役からの承認を取り付ける。

 

・データ収集において、取締役会等のモニタリングを受ける。

 

(2)リスク評価や経営課題等に関する重要性の評価

 

・これらの評価や判断の結果を、企業情報開示の中に反映していくことが重要となる。

 

・経営・監督プロセスと情報開示プロセスとの連動を図る中で、経営方針、対処すべき課題、リスク情報などの多くの非財務情報は、期末日前の比較的早い段階で暫定的な取りまとめが可能となる。

 

・暫定的な内容で決算日前に取締役会、監査役会等さらには監査人を交えた議論を実施することで、非財務情報の早期の取りまとめを実現できる。

 

・このことにより、経営・監督プロセスと情報開示プロセスの効果的な連動を図ることができる。

 

(3)透明性の向上

 

・重要性に関する方針や評価結果等を含む企業情報開示書類の作成プロセスについて、透明性の向上が期待できる。

 

・自主開示においては、重要性や企業情報開示書類の作成プロセスに関する開示実務が増えている。

 

(4)情報の信頼性向上

 

・経営・監督プロセスと情報開示プロセスの連動を図ることにより、企業情報開示に取締役会の見解が反映される。

 

・企業情報開示の統制環境を高度化することを通じて情報の信頼性向上につながることが期待される。

 

・取締役会による戦略の立案から業績のモニタリングに至る一連のプロセスの実効性を高めることも期待できる。

 

収益認識に関する会計基準及び適用指針~財務諸表における表示と注記

2020年3月31日に企業会計基準委員会(以下、ASBJ)から改正企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」(以下、本改正会計基準)及び改正企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」(以下、本改正適用指針)等が公表されました。

 

1.表示

 

(1)損益計算書の表示

 

①顧客との契約から生じる収益の表示科目

 

次のいずれかの方法により、損益計算書に表示します。

 

ア) 顧客との契約から生じる収益とそれ以外の収益と区分して損益計算書に表示する方法

 

イ) 顧客との契約から生じる収益とそれ以外に収益を合算して損益計算書に表示したうえで、顧客との契約から生じる収益の額を注記する方法

 

②顧客との契約から生じる収益の適切な科目例

 

売上高、売上収益、営業収益など

 

③顧客との契約に重要な金融要素が含まれる場合の取扱い

 

顧客との契約に重要な金融要素が含まれる場合、顧客との契約から生じる収益と金融要素の影響(受取利息又は支払利息)を損益計算書において区分して表示します。

 

(2)貸借対照表の表示

 

①契約資産及び顧客との契約から生じた債権

 

適切な科目をもって、次のいずれかの方法により貸借対照表に表示します。

 

ア)契約資産と顧客との契約から生じた債権のそれぞれについて、貸借対照表について区分表示する方法

 

イ)上記以外の場合、契約資産と顧客との契約から生じた債権のそれぞれの残高を注記する方法

 

②契約資産の適切な科目例

 

契約資産、工事未収入金など

 

③顧客との契約から生じた債権の適切な科目例

 

売掛金、営業債権など

 

④契約負債

 

適切な科目をもって次のいずれかの方法により、貸借対照表に表示します。

 

ア)貸借対照表において他の負債と区分して表示する方法

 

イ)上記以外の場合、契約負債の残高を注記する方法

 

⑤契約負債の適切な科目例

 

契約負債、前受金など

 

2. 注記事項の概要

 

(1) 重要な会計方針

 

顧客との契約から生じる収益に関する重要な会計方針として、次の項目を注記します。

 

①企業の主要な事業における主な履行義務の内容

 

②企業が当該履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)

 

③上記の項目以外に重要な会計方針に含まれると判断した内容については、重要な会計方針として注記

 

(2) 収益認識に関する注記

 

開示目的及び重要性の定め

 

ア)開示目的

 

顧客との契約から生じる収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性を財務諸表利用者が理解できるようにするための十分な情報を企業が開示することとしています。

 

イ)重要性の定め

 

どの注記事項にどの程度の重点を置くべきか、また、どの程度詳細に記載するのかを開示目的に照らして判断します。

 

②注記の分類

 

開示目的を達成するため、収益認識に関する注記として、次の3区分に分類しています。

 

ア)収益の分解情報

 

イ)収益を理解するための基礎となる情報

 

ウ)当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報

 

③重要性

 

各注記事項のうち、開示目的に照らして重要性に乏しいと認められる注記事項については、記載しないことができます。

 

④他の注記事項の参照

 

収益認識に関する注記として記載する内容について、例えばセグメント情報の注記に含めて収益の分解情報を示す等、財務諸表上の他の注記事項に含めて記載している場合には、当該他の注記事項を参照することができます。

 

3.注記事項の詳細

 

(1)収益の分解情報

 

当期に認識した顧客との契約から生じる収益は、収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性に影響を及ぼす主要な要因に基づく区分に分解した情報を注記します。

 

【区分例】

 

・財またはサービスの種類(主要な生産ライン)

 

・地理的区分(国または地域)

 

・市場または顧客の種類(政府と政府以外)

 

・契約の種類(固定価格と実費精算契約)

 

・契約期間(短期契約と長期契約)

 

・財またはサービスの移転の時期(一時点で移転と一定期間にわたり移転)

 

・販売経路(消費者への直接販売と仲介業者を通じて販売)

 

(2)収益を理解するための基礎となる情報

 

収益認識の5つのステップに合わせ、以下の事項を注記します。

 

・契約及び履行義務に関する情報(ステップ1及びステップ2)

 

・取引価格の算定に関する情報(ステップ3)

 

・履行義務への配分額の算定に関する情報(ステップ4)

 

・履行義務の充足時点に関する情報(ステップ5)

 

・本会計基準の適用における重要な判断

 

(3)当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報

 

当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報として、次の事項を注記します。

 

・契約資産および契約負債の残高等

 

・残存履行義務に配分した取引価格

 

①契約資産および契約負債の残高等

 

履行義務の充足とキャッシュ・フローの関係を理解できるよう、次の事項を注記します。

 

ア)顧客との契約から生じた債権、契約資産及び契約負債のクシュ残高及び期末残高

 

イ)当期に認識した収益の額のうち期首現在の契約負債残高に含まれていた額

 

ウ)当期中の契約資産及び契約負債の残高の重要な変動がある場合のその内容

 

エ)履行義務の充足の時期が通常の支払時期にどのように関連するのか並びにそれらの要因が契約資産及び契約負債の残高に与える影響の説明

 

②残存履行義務に配分した取引価格

 

既存の契約から容器以降に認識することが見込まれる収益の金額及び時期について理解できるよう、残存履行義務に関して次の事項を注記します。

 

ア)当期末時点で未充足の履行義務に配分した取引価格の総額

 

イ)上記の金額を、企業がいつ収益として認識すると見込んでいるのかについて、次にいずれかの方法により注記します。

 

・残存履行義務の残存期間に最も適した期間による定量的情報を使用した方法

 

・定性的情報を使用した方法

 

4. 個別財務諸表及び四半期財務諸表における取扱い

 

(1)個別財務諸表

 

連結財務諸表を作成している場合

 

ア) 表示及び関連する注記の定めを適用しないことができます

 

イ)「収益の分解情報」及び「当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報」について注記しないことができます

 

(2)四半期連結財務諸表

 

収益の分解情報を注記します。

 

5. 適用時期

 

(1)原則的な適用

 

2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用します。

 

(2)早期適用

 

①2020年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することができます。

 

②2020年4月1日に終了する連結会計年度及び事業年度から2021年3月30日に終了する連結会計年度及び事業年度までにおける年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することができます。

 

(3)2018年会計基準等の取り扱い

 

引き続き、2021年3月31日以前に開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することができます。

ただし、2020年改正会計基準等を適用している場合を除きます。

 

6.経過措置

 

(1)2018年会計基準等を適用していない場合の経過措置

 

①遡及適用に係る経過措置の定め

 

ア)適用初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱います。

原則として、新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用します。

 

イ)ただし、初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の累積的影響額を、適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用することができます。

 

②以下に条件に適合する企業は、別途経過措置が定められています。

 

・IFRSまたは米国会計基準を連結財務諸表に適用している企業が個別財務諸表に本会計基準を適用する場合

・IFRSを連結財務諸表に初めて適用する企業が個別財務諸表に本会計基準を適用する場合

 

③表示及び注記に係る経過措置の定め

 

ア)適用初年度の比較情報について、新たな表示方法に従い組替えを行わないことができます。

 

イ)適用初年度においては、本会計基準等に定める注記事項として記載した内容を適用初年度の比較情報に注記しないことができます。

 

(2)2018年会計基準等を適用している場合の経過措置

 

①遡及適用に係る経過措置の定め

 

将来にわたり新たな会計方針を適用することができます。

 

②表示及び注記に係る経過措置の定め

 

ア)表示方法に変更が生じる場合には、適用初年度の比較情報について、新たな表示方法に従い組替えを行わないことができます。

 

イ)適用初年度においては、本会計基準等に定める注記事項として記載した内容を適用初年度の比較情報に注記しないことができます。

 

改訂された監査基準~監査報告書「その他の記載内容」及びリスク・アプローチの強化

2020年11月6日に、企業会計審議会より「監査基準の改訂について」が公表されました。

 

1.「その他の記載内容」について

 

(1)監査報告書における「その他の記載内容」に係る記載の位置付け

 

①監査人は、「その他の記載内容」に対して意見を表明するものではありません

 

②「その他の記載内容」に係る記載は、監査意見と明確に区別された情報提供です

 

③監査人の「その他の記載内容」に係る役割を一層明確にしました

 

(2)「その他の記載内容」に対する手続き

 

① 手続き

 

・監査人は、「その他の記載内容」を通読することとなります

 

・「その他の記載内容」と財務諸表または監査の過程で得た知識との間に重要な相違があるかどうかについて検討することを明確にしました

 

・監査人は、新たな監査証拠の入手を求められるものではありません

 

② 監査人が、重要な相違や重要な誤りに気づいた場合

 

・経営者との協議など追加の手続きを実施します

 

・重要な誤りが解消しない場合には、その旨及びその内容を監査報告書に記載する等の適切な対応を行います

 

(3)「その他の記載内容」の記載

 

監査報告書に「その他の記載内容」の区分を設け、下記を記載することになりました。

 

・「その他の記載内容」の範囲

 

・「その他の記載内容」に対する経営者及び監査役等の責任

 

・「その他の記載内容」に対して監査人は意見を表明するものではない旨

 

・「その他の記載内容」に対する監査人の責任

 

・「その他の記載内容」に対して監査人が報告すべき事項の有無、報告すべき事項がある場合はその内容

 

(4)経営者・監査役等の対応

 

経営者は、「その他の記載内容」に重要な相違又は重要な誤りがある場合には、適切に修正することが求められます。

 

監査役等においても、「その他の記載内容」に重要な相違又は重要な誤りがある場合には、経営者に対して修正するよう積極的に促していくことが求められます。

 

2.リスク・アプローチの強化について

 

(1)リスク・アプローチに基づく監査

 

①財務諸表全体レベル

 

固有リスク及び統制リスクを結合した重要な虚偽表示のリスクを評価する考え方を維持しています

 

②財務諸表項目レベル

 

固有リスクと統制リスクを分けて評価します

 

③特別な検討を要するリスク

 

固有リスクを踏まえた定義となります

 

④会計上の見積もり

 

・重要な虚偽表示のリスクの評価に当たり固有リスクと統制リスクを分けて評価することを前提としています

 

・原則として、経営者が採用した手法並びにそれに用いられた仮定及びデータを評価する手続きが必要となります

 

・また、経営者が行った見積もりと監査人の行った見積もりや実績と比較する手続きも引き続き重要です

 

・今回の改訂に係る部分を除いて、従来のリスク・アプローチの概念や考え方は踏襲されています

 

(2)財務諸表項目レベルにおける重要な虚偽表示のリスクの評価

 

・財務諸表項目レベルにおける重要な虚偽表示のリスクを構成する固有リスクについて

 

・重要な虚偽の表示がもたらされる要因を勘案して

 

・固有の虚偽表示が生じる可能性と当該虚偽表示が生じた場合の影響を組み合わせて評価することとしました

 

・この影響は、金額的影響だけでなく質的影響も含まれます

 

(3)特別な検討を必要とするリスクの定義

 

①現行の監査基準

 

・会計上の見積もりや収益認識等の重要な会計上の判断に関して

 

・下記の事項・取引等は、監査の実施過程において特別な検討を行う必要があります

 

・財務諸表に重要な虚偽の表示をもたらす可能性のある事項

 

・不正の疑いのある取引

 

・特異な取引等

 

・そのため、特別な検討を要するリスクとして

 

・それが財務諸表における重要な虚偽表示をもたらしていないかを確かめる実証手続きの実施を求めています

 

②リスク・アプローチに基づく監査の実施

 

・財務諸表項目レベルにおける重要な虚偽表示のリスクを適切に評価することがより一層重要となっています

 

・監査人は、固有リスクに着目して特別な検討を行う必要があるか検討する必要があります

 

③特別な検討を必要とするリスクの定義

 

・財務諸表項目レベルにおける評価において

 

・虚偽の表示が生じる可能性と

 

・当該虚偽の表示が生じた場合の影響の

 

・双方を考慮して

 

・固有リスクが最も高い領域に存在すると評価したリスク

 

3.実施時期等

 

(1)「その他の記載内容」

 

2022年3月決算に係る財務諸表の監査から実施となります。

 

2021年3月決算に係る財務諸表の監査から実施することができます。

 

 

(2)リスク・アプローチの強化

 

2023年3月決算に係る財務諸表の監査から実施となります。

 

それ以前の決算に係る財務諸表の監査から実施することは妨げられません。

 

取締役等に対する株式報酬等~制度の概要と会計処理

令和元年12月4日に「会社法の一部を改正する法律」(以下、改正法)が成立し、同月11日に公布されています。

今回の改正の中から、取締役等に対する株式報酬等を取り上げます。

 

1.改正の目的

 

取締役等の報酬等の内容の決定手続き等に関する透明性を向上させるとともに、株式会社が業績等に連動した報酬等を適正かつ円滑に取締役に付与することができるようにするための改正です。

 

2.改正の概要

 

(1)報酬等の内容

 

上場会社等において取締役個人別の報酬等の内容が定款等の定めや株主総会の決議により具体的に定められていない場合、取締役会は、その決定方針を定め、その概要等を開示しなければなりません。

 

(2)報酬としての株式等の付与

 

取締役の報酬等として当該株式会社の株式または新株予約権を付与しようとする場合、定款又は株主総会の決議により当該株式または新株予約権の数の上限等を定めなければなりません。

 

(3)金銭の払い込み

 

上場会社が取締役の報酬等として株式の発行等をする場合、金銭の払い込みを要しません。

 

(4)開示

 

事業報告による開示が充実します。

 

3. 取締役等に株式報酬等を付与する場合の手続の明確化

 

取締役等の報酬等として、募集株式の発行又は自己株式の処分、新株予約権の発行をするときは、定款又は株主総会の決議により、当該株式又は新株予約権の数の上限等を定めなければならないことが明確化されています。

 

4.取締役等の報酬等としての株式の無償発行等

 

(1)改正点

 

株式会社が業績等に連動した報酬等を適正かつ円滑に取締役に付与することができるようにするため、改正法では、主に以下の内容の改正が行われました。

 

①上場会社において、取締役等の報酬等として募集株式の発行又は自己株式の処分をするときは、金銭の払込み等を要しない

 

②上場会社において、取締役等の報酬等として新株予約権を発行するときは、新株予約権の行使に際して金銭の払込み等を要しない

 

③取締役等に対する報酬等としての株式の発行により資本金又は準備金として計上すべき額については、法務省令で定める

 

(2)対象者

 

上場会社の取締役等への報酬等のみについて、株式の無償発行等が可能となりました。

 

対象者は、取締役(取締役であった者を含む)、指名委員会等設置会社においては執行役(執行役であった者を含む)に限られており、それ以外の者(上場会社の監査役・執行役員・使用人、非上場会社の役員等)による利用は認められていない点に留意が必要となります。

 

(3)適用日

 

公布日(令和元年12月11日)から1年6カ月を超えない範囲内において政令で定める日から施行されるため、令和3年3月期以降の決算に影響を与える可能性があります。

 

5.株式報酬の会計処理

 

2020年9月11日に、企業会計基準委員会より「業務対応報告公開草案第60号 取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い(案)」が公表されました。

 

(1)範囲

 

・上場されている株式を発行している株式会社が

・取締役等の報酬等として金銭の払い込みを要しないで

・株式の発行等をする場合

・その会計処理及び開示

 

(2)事前交付型の会計処理

 

①定義

 

・対象勤務期間の開始後速やかに

・契約上の譲渡制限を付した株式の発行を行い

・権利確定条件が達成された場合に、譲渡制限が解除され

・権利確定条件が達成されない場合には、企業が無償で株式を取得する取引

 

②取締役等の報酬等として新株の発行を行う場合

 

ア)会計処理

 

・取締役等に対して新株を発行し

・これに応じて企業が取締役から取得するサービスは

・その取得に応じて費用として計上する

・費用に対応する金額は、資本金または資本準備金に計上する

 

イ)費用計上額

 

・株式の公正な評価額のうち

・対象勤務期間を基礎とする方法その他合理的な方法に基づき

・当期に発生したと認められる金額

 

③取締役等の報酬等として自己株式を処分する場合

 

ア)会計処理

 

・割当日において、処分した自己株式の帳簿価額を減額

・同額の資本準備金を減額する

・企業が取締役等から取得するサービスは

・サービスの取得に応じて費用計上する

 

(3)事後交付型の会計処理

 

①定義

 

・契約上、株式の発行等について

・権利確定条件が付されており

・権利確定条件が達成された場合

・株式等の発行が行われる取引

 

②取締役等の報酬等として新株の発行を行う場合

 

・企業が取締役等から取得するサービスは

・サービスの取得に応じて費用計上する

・対応する金額は

・株式の発行等が行われるまでの間

・株主資本以外の項目に株式引受権として計上する

 

③取締役等の報酬等として自己株式を処分する場合

 

・前項と同様の処理を行う

 

6.開示

 

年度の財務諸表において、取引の内容、規模及びその変動状況の注記を行います。

 

会社補償契約及び役員等賠償責任保険契約~制度の概要と監査役監査

令和元年12月4日に「会社法の一部を改正する法律」(以下、改正法)が成立し、同月11日に公布されています。

令和元年会社法改正により、会社補償契約制度と役員等賠償責任保険(Directors and Officers Liability Insurance、以下、D&O保険)制度が新設されました。

 

1.会社補償及び役員等のために締結される保険契約

 

(1)会社補償

 

①会社補償とは

 

役員等の責任を追及する訴えが提起された場合等に、株式会社が費用や賠償金を補償することです。

 

・役員等が

・その職の執行に関し

・法令の規定に違反したことが疑われ又は責任の追及に係る請求を受けたこと

・それに対処するために支出する費用や

・第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合における損失の全部または一部を

・株式会社が当該役員等に対して

・補償すること

 

②改正点

 

株式会社が会社補償を締結するために必要な手続規定や会社補償をすることができる費用等の範囲に関する規定が新たに設けられました。

 

(2)役員等のために締結される保険契約

 

①D&O保険とは

 

株式会社が役員等を被保険者とする会社役員賠償責任保険です。

 

②改正点

 

株式会社がD&O保険に加入するために必要な手続規定等が新たに設けられました。

 

2.監査役としての対応

 

(1)制度の理解

 

監査役・監査(等)委員(以下、監査役等)は、役員の一員ですので、自らが契約の当事者の立場から制度趣旨や内容を理解する必要があります。

 

(2)利益相反

 

両制度とも、役員の損害賠償責任との関連で、損害額や関連費用を会社が支払うものです。そのため、会社と役員との間において、利益相反的な一面を持っています。

 

監査役は、取締役の職務執行を監査することから、取締役の損害賠償の支払義務との関係で、両制度の手続きや具体的な事案で、その適用の是非を判断する場面がでてきます。

 

3.監査役監査における留意点

 

(1)契約当事者としての留意点

 

①内容の検討

 

監査役は役員であることから、補償契約及びD&O保険の直接の当事者となりますので、会社が導入しようとしている制度設計について、事前に関連部署から説明を受け、会社法で認められることになった防御費用や第三者への損害賠償の支払いによる損失関連の補償の対象となる具体的項目を検討しておくことが重要となります。

なお、補償契約制度やD&O保険契約制度は、令和元年改正会社法の施行日以降の契約締結でなければ有効ではありません。

 

②補償契約

 

補償契約はD&O保険と異なり、保険料として会社の外部への支出がある訳ではありませんので、職務を遂行する上で防御費用や損失への塡補として支出し得る項目を洗い出すことが重要です。この場合、D&O保険内容でカバーできる項目は補償の範囲から除外しても差し支えありません。

なお、補償契約の防御費用については、会社から支払いを受けるタイミングも契約内容に織り込んでおくべきです。

弁護士費用のように、それ相当の額の着手金を必要とする場合、自らが立て替えなくても、合理的な費用であれば会社が前払いできるようにしておくと利便性は高まることになります。

 

③D&O保険

 

D&O保険の場合は、会社法での規定を踏まえて保険が支払われる対象や要件、保険金が支払われる上限額、保険料等の詳細が会社と保険会社との間の交渉で決められます。

D&O保険の内容も取締役会の決議事項ですので、監査役としても、保険内容について内容を理解し、必要があれば取締役会において意見表明をすることになります。

 

(2)監査役監査における留意点

 

①取締役会等における手続き

 

監査役としては、補償契約とD&O保険が、株主総会または取締役会においてその内容が承認・決議されることなっていることを確認します。

取締役会設置会社の場合は、補償契約については、補償を受けた取締役は、補償についての重要な事実を取締役会に遅滞なく報告する必要があります。

補償契約に基づいた具体的な適用があった場合には、報告という手続上の瑕疵がないか監査役として監視し、取締役が失念している場合はその旨を指摘しなければなりません。

 

なお、この事後報告は、補償契約にのみ適用があり、D&O保険の場合には報告義務はありません。

 

②契約内容の確認

 

ア) D&O保険

 

D&O保険の場合は、保険金による塡補の範囲や金額は、あらかじめ締結された契約に基づいて支払われることになりますので、塡補される金額の多寡が恣意的に決定されることは基本的には考えられません。

 

利益相反の観点からも、会社が支払う保険料と保険金の支払いとの点において、保険料の金額の方が実際に支払われる保険金の額に比べて、相対的に低額であるため、利益相反の程度は大きくないといえます。

 

イ) 補償契約

 

補償契約の場合は、会社が取締役に補償として支出する金額は、そのまま取締役の経済的利益となりますので、利益相反の程度が強いといえます。

 

会社補償契約に基づき、実際に支払うことになったときには、防御費用であれば支払い金額が妥当であるか、第三者への支払いであれば、善意かつ無重過失の要件に合致しているかなどを、十分に監視・検証する必要があります。

 

また、監査役としては、補償契約を実際に適用する際の補償金額が大きい場合には、重要な業務執行の決定に該当するとして、取締役会付議事項とされているかを確認することが考えられます。

 

③開示

公開会社の場合、補償契約及びD&O保険は、ともに一定事項が事業報告の記載となりますので、監査役は事業報告の監査の観点からも、適正な記載となっているかを監査することになります。

 

任意の委員会への関与~「公認会計士社外監査役等の手引き」より

2020年7月に日本公認会計士協会社外役員会計士協議会から「公認会計士社外監査役等の手引き」が公表されました。

その中から「任意の委員会への関与」を見てみましょう。

 

1.任意の委員会の運営の検討

 

会社が設置する任意の委員会のうち、取締役候補を決定する指名委員会と取締役報酬額案を決定する報酬委員会は、取締役会運営の妥当性を検討する上で重要な役割を果たすことが期待されています。

監査役、監査等委員は取締役会の監督機能が発揮されているかという観点から当該委員会の運営が適切に行われているか否かについて検討する必要があります。

 

2.コーポレートガバナンス・コードにおける取扱い

 

コーポレートガバナンス・コードでは、以下の原則及び補充原則により任意の指名委員会・報酬委員会などの独立した諮問委員会の設置が求められています。

 

(1)原則4-10 任意の仕組みの活用

 

上場会社は、会社法が定める会社の機関設計のうち会社の特性に応じて最も適切な形態を採用するに当たり、必要に応じて任意の仕組みを活用することにより、統治機能の更なる充実を図るべきである。

 

(2)補充原則4-10①

 

上場会社が監査役会設置会社または監査等委員会設置会社であって、独立社外取締役が取締役会の過半数に達していない場合には、経営陣幹部・取締役の指名・報酬などに係る取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任を強化するため、取締役会の下に独立社外取締役を主要な構成員とする任意の指名委員会・報酬委員会など、独立した諮問委員会を設置することにより、指名・報酬などの特に重要な事項に関する検討に当たり独立社外取締役の適切な関与・助言を得るべきである。

 

3.指名委員会・報酬委員会が設置されている場合の検討項目

 

任意の諮問委員会として指名委員会・報酬委員会が設置されている場合、監査役、監査等委員はその運営が適切かどうか以下のような項目について検討することが考えられます。

 

(1)委員会の構成について、独立社外取締役の数は十分か

 

(2)委員長が社内取締役(社長等)となっている場合、社内取締役主導により審議が不十分なまま結論が出されていないか

 

議事録、配付資料等に基づき検討し、必要に応じて出席者に状況を確認します。

 

(3)監査役、監査等委員が委員会のメンバー(オブザーバーを含む)となる必要はないか

 

非常勤の社外監査役、社外監査等委員の場合、監査役会等において常勤の監査役、監査等委員等から調査結果の報告を受け、委員会の運営がコーポレートガバナンス・コードの趣旨に合致しているか否かについて検討することが考えられます。

 

4.指名委員会・報酬委員会が設置されていない場合の対応例

 

任意の諮問委員会として指名委員会・報酬委員会が設置されていない場合の監査役、監査等委員の対応例として以下のような項目が考えられます。

 

(1)設置されていない理由を確認し、理由に合理性があるか否かを検討

 

(2)設置することが望ましいと考えられる場合、設置を提言

 

5.その他の任意の委員会との関与

 

その他の任意の委員会のうち監査役等にとって内部統制システムに関係する委員会との関わりは、監査機能の発揮の観点から重要です。

該当する委員会の名称として、コンプライアンス委員会、内部統制委員会、リスク管理委員会(リスクマネジメント委員会)、情報セキュリティ委員会などが考えられます。

 

監査役等は業務監査の一環として委員会に出席(陪席)することでコンプライアンスの実態報告、内部統制上の問題点把握、想定されるリスクへの対策などが委員会において適切に報告、審議されているかについて、把握することが必要です。

 

非常勤の社外監査役等の場合、常勤監査役等からコンプライアンス委員会などの内部統制部門における審議状況等の報告を受けることで経営の実態把握に努めることが求められます。

 

取締役会評価への対応~「公認会計士社外監査役等の手引き」より

2020年7月に日本公認会計士協会社外役員会計士協議会から「公認会計士社外監査役等の手引き」が公表されました。

その中から「取締役会評価への対応」を見てみましょう。

 

上場会社は コーポレートガバナンス・コードにおいて取締役会の実効性評価の実施が求められており、コーポレートガバナンス報告書等において実施した結果を開示する事例が増えてきています。

 

1.監査役等の対応

 

(1)取締役会の実効性評価が行われている場合

 

監査役等は評価に関する分析、検討結果が取締役会において適切に報告されていること、及びコーポレートガバナンス報告書等の記載内容が適切であるか否かについて、検討を行い、必要に応じて執行側に改善を提言することが業務監査の一環として考えられます。

 

(2)取締役会の実効性評価を実施していない場合

 

その旨がコーポレートガバナンス報告書において記載されているか、実施しない理由が合理的か、実施予定が立てられているか等について執行側と協議し、提言を行い取締役会の機能向上を求めるべきと考えられます。

 

2.コーポレートガバナンス・コードにおける取扱い

 

(1)原則4-11「取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件」

 

取締役会は、その役割・責務を実効的に果たすための知識・経験・能力を全体としてバランス良く備え、ジェンダーや国際性の面を含む多様性と適正規模を両立させる形で構成されるべきである。また、監査役には、適切な経験・能力及び必要な財務・会計・法務に関する知識を有するものが選任されるべきであり、特に、財務・会計に関する知見を有している者が1名以上選任されるべきである。

取締役会は、取締役会全体としての実効性に関する分析・評価を行うことなどにより、その機能の向上を図るべきである。

 

(2)補充原則4-11③

 

取締役会は、毎年、各取締役の自己評価などを参考にしつつ、取締役会全体の実効性について分析・評価を行い、その結果の概要を開示すべきである。

 

3.実効性評価の実施方法に関する留意点

実施方法に関して以下の観点から確認することが考えられます。

 

(1)取締役等による自己評価の方法は、アンケート方式若しくはインタビュー方式又は併用方式か。

 

アンケート方式の場合、質問項目が同じであれば年度比較することで趨勢、傾向把握することが可能となります。

 

取締役会の役割が業務執行の意思決定機関か業務執行に対する監督機関かのいずれを重視しているかによって、アンケート項目、質問項目が異なってきます。

 

監督機関重視であれば社外取締役の割合が多くなり、決議項目数、開催頻度も相対的に少なくなることが想定され、回答に対する姿勢も異なることが考えられます。

 

(2)監査役も評定者になっているか。

 

評定者になっていない場合には、その理由に合理性があるかを検討することになりますが、一般的に監査役を評定者から外す理由は考えにくいと思われます。

 

(3)質問項目の修正見直しは必要ないか。重要項目は含められているか。

 

(4)評価結果は適切に分析され、取締役会で報告され、検討が行われているか。

 

(5)評価結果はどのように開示されているか。

 

コーポレートガバナンス報告書において、「コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示」の項目で取締役会全体の実効性評価を実施した旨、実施内容を記載しているか。

 

4.実効性評価のアンケート項目例

 

実効性評価に関して、標準的な質問項目は特にありませんが、「コーポレートガバナンス・コード」や「価値協創ガイダンス」における記載内容を参考にして設定している例が見受けられます。

 

(1)取締役会の構成

 

・ 取締役の多様性確保(ジェンダー、国際性など)

・ 諮問委員会が設置されている場合の構成

 

(2)取締役会の運用

 

・ 取締役会開催の頻度、日程、時間、配布資料の分量、配布のタイミング

・ 議題設定の見直しの要否

・ 取締役会における提供資料、説明内容・方法、時間配分

 

(3)取締役会の監督

 

・ 執行側との適時、適切な経営情報の共有

・ 社外役員に対する情報提供の充実、支援強化

 

(事前説明、経営会議等の審議内容報告など)

・重要案件の取締役会への報告のスピード

・代表取締役等への重要な業務執行の決定に関する委任範囲

・内部統制システムの実効性強化・モニタリング

 

(内部監査、コンプライアンス、リスク管理に関する報告を含む)

・中長期経営計画、年度計画に対する業務執行状況のモニタリング

 

(情報の信頼性含む。)

・事業戦略の検討に当たって情報の提供、事業目標の設定

・事業リスク等を反映した資本コストを把握し、収益力、資本効率の目標設定

・ 監視・監督機能強化のために任意の諮問委員会を設置、体制の構築

・ 報酬スキームと事業戦略との整合性、短期目標と長期目標とのバランス

・ 企業倫理を重視する姿勢、企業風土

 

(4)経営戦略に関する議論

 

・ 長期的なビジョン、事業戦略

・ 人材育成方針

・ 技術戦略に対する取組

・ 全社的な事業リスクに関する正確な情報報告、適切な対処

・ CEO サクセッションプラン

 

(5)投資家・株主との対話

 

・ 株主総会、IRなどにおけるステークホルダーとの対話の促進、十分なコミュニケーション

・ 非財務情報を含むステークホルダーにとって有用な情報の開示、提供への関与