会計・税務」カテゴリーアーカイブ

会社合併の税務の概要と課税関係

. 合併の課税の概要

 

法人が合併により資産及び負債の移転をしたときは、原則として被合併法人が時価により資産及び負債を合併法人に譲渡したものとして取扱われます。

当該合併が税制適格要件を充足する合併(以下、適格合併)に該当する場合には、特例として資産及び負債の移転にかかる譲渡損益が繰延べられます。

また、適格合併の場合、被合併法人で生じた未処理欠損金額は合併法人で生じた欠損金額とみなして、合併法人に引き継がれます(一定の制限があります)。

 

. 被合併法人の課税関係

 

(1)原則的取扱い(非適格合併)

法人が合併により合併法人にその有する資産及び負債の移転をしたときは、合併法人に移転をした資産及び負債の合併の時の価額による譲渡をしたものとして、被合併法人の各事業年度の所得の金額を計算します。

 

(2)特例的取扱い(適格合併)

法人が適格合併により合併法人にその有する資産及び負債の移転をしたときは、原則的取扱いにかかわらず、合併法人に移転をした資産及び負債の適格合併に係る最後事業年度終了の時の帳簿価額による引継ぎをしたものとして、被合併法人の各事業年度の所得の金額を計算します。

 

. 合併法人の課税関係

 

(1)原則的取扱い(非適格合併)

合併法人は、合併により移転を受けた資産及び負債を、合併の時の価額により受け入れます。
また、税務上の時価純資産と交付株式等の時価とに乖離があるなど一定の場合には、合併法人において資産(差額負債)調整勘定が認識されます。

 

(2)特例的取扱い(適格合併)

合併法人は、適格合併により移転を受けた資産及び負債を、適格合併に係る最後事業年度終了の時の帳簿価額により引継ぎます。

また、一定の要件を充足する場合には、適格合併に係る被合併法人の当該合併の日前9年以内に開始した各事業年度において生じた未処理欠損金額は、合併法人の当該合併前の各事業年度において生じた欠損金額とみなされます。

 

なお、一定の要件を充足しない場合には、合併法人及び被合併法人の欠損金額並びに含み損資産につき損金算入制限を受ける可能性があります。

 

. 被合併法人の株主の課税関係

 

(1)みなし配当及び株式の譲渡損益

被合併法人の株主においては、合併対価のうち利益積立金額から成る部分をみなし配当として認識し、合併対価のうち資本金等の額から成る部分(合併対価からみなし配当の額を除いた残りの部分)と被合併法人株式の帳簿価額との差額を株式の譲渡損益として認識することとなります。

なお、適格合併の場合には、みなし配当は発生しません。

 

みなし配当の金額=合併対価-被合併法人の資本金等の額×株主の株式保有割合

譲渡損益=譲渡対価(合併対価-みなし配当)-譲渡原価(被合併法人株式の帳簿価額)

 

(2)株式の譲渡損益の繰り延べ(合併法人株式等のみが交付される場合)

被合併法人の株主においては、合併の対価として合併法人株式等のみが交付される場合、被合併法人株式を帳簿価額により譲渡したものとして、被合併法人株式の譲渡損益を繰り延べることとなります。

 

. 税制適格要件

 

合併の税制適格要件は、パターンごとにそれぞれ下表の「〇」の要件を全て充足する必要があります。

 

 

(1)合併対価要件

被合併法人の株主に合併法人株式等以外の資産が交付されないこと(合併の直前において合併法人が被合併法人の発行済株式の総数の3分の2以上に相当する数の株式を有する場合において、株主に交付される金銭等を除く)

 

(2)事業関連要件

被合併法人の被合併事業と合併法人の合併事業とが相互に関連するものであること

 

(3)事業規模要件

被合併法人の被合併事業と合併法人の合併事業のそれぞれの売上金額、従業者の数、被合併法人と合併法人の資本金の額若しくはこれらに準ずるものの規模の割合がおおむね5倍を超えないこと

 

(4)経営参画要件

合併前の被合併法人の特定役員のいずれかと合併法人の特定役員のいずれかが合併後に合併法人の特定役員となることが見込まれていること

 

(5)従業者引継要件

被合併法人の合併直前の従業者のうち、その総数のおおむね80%以上に相当する数の者が合併後に合併法人の業務に従事することが見込まれていること

 

(6)移転事業継続要件

被合併法人の合併前に行う主要な事業が合併後に合併法人において引き続き行われることが見込まれていること

 

(7)株式継続保有要件(共同事業)

合併により交付される合併法人株式等のうち支配株主(合併の直前に被合併法人と他の者との間に当該他の者による支配関係がある場合における当該他の者及び当該他の者による支配関係があるもの)に交付されるものの全部が支配株主により継続して保有されることが見込まれていること

 

. 合併の課税関係のまとめ

 

合併の課税関係をまとめると下表のようになります。

 

 

会社分割の税務の概要と課税関係

. 会社分割の課税の概要

 

法人が分割により資産及び負債の移転をしたときは、原則として分割法人が時価により資産及び負債を分割承継法人に譲渡したものとして取扱われます。

当該分割が税制適格要件を充足する分割(以下、適格分割)に該当する場合には、特例として資産及び負債の移転にかかる譲渡損益が繰延べられます。

 

また、分割には分割型分割と分社型分割があります

(1)分割型分割

分割対価が最終的に分割法人株主に交付されるもの

 

(2)分社型分割

分割対価が分割法人に交付されるもの

 

分割対価が交付される法人が異なることから、分割の形態に応じて課税関係も異なることとなります。

 

 

(EY新日本有限責任監査法人HPより)

 

2. 分割法人の課税関係

 

(1)原則的取扱い(非適格分割)

 

法人が分割により分割承継法人にその有する資産又は負債の移転をしたときは、分割承継法人に移転をした資産及び負債の分割の時の価額による譲渡をしたものとして、分割法人の各事業年度の所得の金額を計算します。

 

(2)特例的取扱い(適格分割)

 

法人が適格分割により分割承継法人にその有する資産又は負債の移転をしたときは、原則的取扱いにかかわらず、分割承継法人に移転をした資産及び負債の適格分割の直前の帳簿価額による引継ぎをしたものとして、分割法人の各事業年度の所得の金額を計算します。

 

3. 分割承継法人の課税関係

 

(1)原則的取扱い(非適格分割)

 

分割承継法人は、分割により移転を受けた資産及び負債を、分割の時の価額により受け入れます。
また、税務上の時価純資産と交付株式等の時価とに乖離があるなど一定の場合には、分割承継法人において資産(差額負債)調整勘定が認識されます。

 

(2)特例的取扱い(適格分割)

 

分割承継法人は、適格分割により移転を受けた資産及び負債を、適格分割の直前の帳簿簿価額により引継ぎます。
また、一定の要件を充足しない場合には、分割承継法人の欠損金額及び含み損資産につき損金算入制限を受ける可能性があります。

 

4. 分割法人株主の課税関係

 

(1)分割型分割

 

(ア)みなし配当及び株式の譲渡損益

分割型分割における分割法人の株主は、分割対価のうち利益積立金額から成る部分をみなし配当として認識し、分割資本金等の額から成る部分と分割法人株式の分割純資産対応帳簿価額との差額を株式の譲渡損益として認識することとなります。

なお、適格分割の場合には、みなし配当は発生しません。

 

(イ)株式の譲渡損益の繰り延べ(分割承継法人株式等のみが交付される場合)

 

分割型分割における分割法人の株主は、分割の対価として分割承継法人株式のみが交付される場合、分割法人株式を分割純資産対応帳簿価額(譲渡対価=譲渡原価)により譲渡したものとして、分割法人株式の譲渡損益を繰り延べることとなります。

 

(2)分社型分割

 

分社型分割においては、分割法人の株主に課税関係は生じません。

 

5. 税制適格要件

 

分割の税制適格要件は、パターンごとにそれぞれ下表の「〇」の要件を全て充足する必要があります。

 

(EY新日本有限責任監査法人HPより)

 

(1)分割対価要件

分割の対価として分割承継法人株式等以外の資産が交付されないこと(分割型分割にあっては、分割法人の株主の分割法人株式保有割合に応じて交付されるものに限る)

 

(2)主要資産等引継要件

分割法人の分割直前の分割事業に係る主要な資産及び負債が分割承継法人に移転するものであること

 

(3)事業関連要件

分割法人の分割事業と分割承継法人の分割前のいずれかの事業とが相互に関連するものであること

 

(4)事業規模要件

分割法人の分割事業と分割事業に関連する分割承継法人の事業のそれぞれの売上金額、従業者の数若しくはこれらに準ずるものの規模の割合がおおむね5倍を超えないこと

 

(5)経営参画要件

分割前の分割法人の役員等(スピンオフの場合には、重要な使用人を含む)のいずれかと分割承継法人の特定役員(スピンオフの場合を除く)のいずれかが分割後に分割承継法人の特定役員となることが見込まれていること

 

(6)従業者引継要件

分割法人の分割直前の分割事業に係る従業者のうち、その総数のおおむね80%以上に相当する数の者が分割後に分割承継法人の業務に従事することが見込まれていること

 

(7)移転事業継続要件

分割法人の分割直前の分割事業が分割後に分割承継法人において引き続き行われることが見込まれていること

 

(8)株式継続保有要件(共同事業)

分割型分割により交付される分割承継法人株式等のうち支配株主(分割直前に分割法人との間に支配関係がある株主)に交付されるものの全部が支配株主により継続して保有されることが見込まれていること、

又は、

分社型分割により交付される分割承継法人株式等の全部が分割法人により継続して保有されることが見込まれていること

 

(9)非支配関係継続要件

分割直前に分割法人と株主との間に支配関係がなく、分割後に継続して分割承継法人と株主との間に支配関係がないことが見込まれていること

 

. 分割の課税関係のまとめ

 

分割の課税関係をまとめると下表のとおりとなります。

 

(EY新日本有限責任監査法人HPより)

記述情報の開示の充実の必要性とその目的

1.企業情報開示の充実に向けた動き

 

2018年6月のディスクロージャーワーキンググループ報告の提言を踏まえて有価証券報告書の記載内容の充実に向けた取り組みが行われています。

2019年1月には、有価証券報告書の記述情報の見直しを目的とした開示府令の改正が行われており、2019年3月期の有価証券報告書から、コーポレート・ガバナンス情報(役員報酬、政策保有株式等)の記載が拡充され、2020年3月期の有価証券報告書から、経営戦略、リスク情報等に関する記載及び監査関係の情報に関する記載の充実が求められます。

また、金融庁より2019年3月に「記述情報の開示に関する原則」が公表されました。

当原則は、開示ルールへの形式的な対応にとどまらない開示の充実に向けた企業の取組みを促し、開示の充実を図ることを目的として作成されたものです。

2020年3月期の有価証券報告書における記述情報の作成の際には、同時に公表されている「記述情報の開示の好事例集」も参考にして、当原則に即した開示を行うことになります。

 

2. 記述情報の開示の充実の必要性

 

わが国企業の企業価値の向上を目的として、機関投資家の行動原則を定めたスチュワードシップ・コード、上場企業の行動原則を定めたコーポレートガバンナンス・コードが策定されていますが、投資家による適切な投資判断が行われ、中長期的な視点に立った投資家と企業との建設的な対話が促進されるためには、企業情報の開示を充実することが重要となります。

こうした取組みにより、わが国企業の企業価値が中長期的に向上し、企業収益向上の果実が家計に及び、資本市場に再投資されるという好循環が実現することが期待されています。

 

3.記述情報開示の目的

 

記述情報には、以下の役割や目的があります。

 

(1)投資家が経営者の視点から企業の状況を理解するための情報を提供すること

 

(2)主に過去情報から作成される財務情報全体を分析・理解するための文脈を提供すること

 

(3)企業収益やキャッシュ・フローの性質やそれらを生み出す基盤についての情報を提供すること

 

財務情報だけでなく、それを補完する役割を担う記述情報が充実することにより、投資家による適正な投資判断を可能とするだけでなく、投資家と企業との建設的な対話の促進が図られることにより、企業価値の向上に寄与していくことが求められています。

 

4.「記述情報の開示に関する原則」について

 

「記述情報の開示に関する原則」は、企業情報の開示について、開示の考え方、望ましい開示の内容や取組み方を示すものであり、新たな開示事項を加えるものではないとされています。

経営者や開示書類の作成に関与する、作成事務担当者、IR担当者等においては、本原則に即した開示が行われているか自主的な点検を実施し、継続することが求められています。

また、投資家が企業との対話を行う際に利用することも有用とされています。

「記述情報の開示に関する原則 -総論-」に関する留意点

1. 企業情報開示における記述情報の役割

 

「記述情報の開示に関する原則 Ⅰ. 総論」では、記述情報は財務情報を補完し、投資家による適正な投資判断を可能とすることだけではなく、投資家と企業との建設的な対話を促進し、企業の経営の質を高めるためのツールとして利用されることが期待されるとしています。

従って、経営者は、企業情報開示ないし記述情報のこのような機能を念頭に置きながら、開示書類の作成に当たっては、主体的に関与していくことが必要と考えられます。

 

2. 経営方針・経営戦略等の適切な記載

 

有価証券報告書における記述情報のうち、特に、経営方針・経営戦略等、リスク情報、MD&Aに関しては、経営判断と密接に関する事項です。

投資家は企業の経営方針・経営戦略等の内容や企業の現状分析の理解に必要な情報を入手することができ、投資家は財務情報のみからでは判別できない経営の方向性を理解し、将来の経営成績等の予想の精度を高めることが可能となります。

このような開示を実現するためには、経営者は開示についての方針を社内に示して、開示書類作成の体制を構築する必要があります。

複数の部署が開示書類の作成に関与している企業においては、開示担当の役員が各部署を統括する体制を構築し、取締役会や経営会議での議論に基づく開示書類を作成することが期待されます。

 

3. 重要性

 

有価証券報告書においては、開示府令の定めに従って、投資家の投資判断に重要な情報が過不足なく提供される必要があります。

記述情報の開示に当たっては、経営者は開示事項について、個々の課題、事象等が自社の企業価値や業績等に与える重要性を判断し、それに応じて説明の順序や記載内容等を示すことにより、読み手が当該情報の重要性を理解できるように工夫することが期待されます。

例えば、事業等のリスクについては、リスクが顕在化した場合に経営に与える重要性の順に記載する、前年度からリスクの程度が変化した場合には、それが理解できるような開示を行うなどの検討が必要と考えられます。

 

4. セグメント情報

 

企業経営の多角化が進む中、適切な投資判断を行うためには、企業全体の情報だけでなく、経営管理の実態などに応じて区分された事業セグメントにおける情報が開示されることも重要です。

必要に応じて、財務諸表におけるセグメント情報の注記に加えて、経営方針および経営戦略等の説明に合わせた区分ごとの情報を開示することが考えられます。

 

5. 分かりやすい開示

 

記述情報の開示に当たっては、読者がその内容を容易に、より深く理解することができるよう、図表、グラフ、写真等の補足的なツールを用いることや、前年からの変化を明確に表示することなど、分かりやすさを意識した記載が行われることが期待されます。

有価証券報告書では、EDINETにおける提出書類ファイルの容量上可能な範囲で、このようなツールを用いることも可能とされており、企業が決算説明資料や統合報告書などの任意開示において使用している図表やグラフなどを有価証券報告書にも取り入れていくことも考えられます。

 

「記述情報の開示に関する原則 -各論-」に関する留意点

1. 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等

 

(1) 経営方針・経営戦略等

 

開示府令は、「経営方針・経営戦略等」の記載については、経営環境に関する経営者の認識の説明を含めて、企業の事業の内容と関連付けて記載することを求めています。

 

経営環境とは、例えば、以下のものになります。

①企業構造

②事業を行う市場の状況

③競合他社との競争優位性

④主要製品・サービスの内容

⑤顧客基盤

⑥販売網

 

この記載は、企業がその事業目的をどのように実現していくか、どのように中長期的に企業価値を向上させるかを説明するものであり、投資家がその妥当性や実現可能性を判断できるようにするため、企業活動の中長期的な方向性のほか、その遂行のために行う具体的な方策についても説明することに留意が必要です。

 

(2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 

開示府令は、「優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」の記載については、その内容、対処方針等を経営方針・経営戦略等と関連付けて具体的に記載することを求めています。

この記載は、経営成績等に重要な影響を与える可能性があると経営者が認識している事項を説明するものです。

 

例えば、以下の事項があります。

①事業を行う市場の構造的変化

②事業に与える影響が大きい法令及び制度の改変

 

投資家が経営者による課題認識の適切性や十分性、経営方針・経営戦略等の実現可能性を評価することができるように、経営方針・経営戦略等との関連性の程度や、重要性の判断等を踏まえて説明することに留意が必要です。

 

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 

開示府令は、「経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等(以下、KPI)」がある場合には、その内容を開示することを求めています。

 

KPIには、以下の情報が含まれます。

①ROE、ROICなどの財務上の指標

②契約件数や市場シェア等の非財務指標

 

KPIが開示されることにより、投資家は経営方針・経営戦略等の進捗状況や、実現可能性の評価等を行うことが可能となります。

 

KPIの内容の説明には、以下の項目が含まれます。

①目標の達成度合いを測定する指標

②算出方法

③その指標を利用する理由

④具体的な目標数値の記載

 

セグメント別のKPIを設定している場合には、その内容も開示することに留意が必要です。

 

2. 事業等のリスク

 

(1)記載内容

 

開示府令は、「事業等のリスク」の記載について、以下の記載を求めています。

 

①有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、経営成績等)の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクについて記載

②当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に企業の経営成績等の状況に与える影響の内容、当該リスクへの対応策の記載

 

また、記載に当たっては、リスクの重要性や経営方針・経営戦略等との関連性の程度を考慮して、分かりやすく記載することが求められています。

 

(2)記載する際の留意事項

 

事業等のリスクは、翌期以降の事業運営に影響を及ぼし得るリスクのうち、経営者の視点から重要と考えるものをその重要度に応じて説明するものとされています。

 

(ア)記載する事項

一般的なリスクを羅列するのではなく、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を具体的に記載することが求められます。

 

例えば、

 

①経営成績等の状況の異常な変動

②特定の取引先・製品・技術等への依存

③特有の法的規制・取引慣行・経営方針

④重要な訴訟事件等の発生

⑤役員・大株主・関係会社等に関する重要事項

 

(イ)説明内容

 

①取締役会や経営会議において、そのリスクが企業の将来の経営成績等に与える影響の程度や発生の蓋然性に応じて、それぞれのリスクの重要性をどのように判断しているかについて、投資家が理解できるような説明を行うことに留意が必要です。

②リスクの記載の順序については、時々の経営環境に応じ、経営方針・経営戦略等との関連性の程度等を踏まえ、取締役会や経営会議における重要度の判断を反映することが考えられます。

③社内の組織としてリスク管理部門が設置されている場合には、その体制や枠組みについても記載することが考えられます。

④リスクの区分については、リスク管理上用いている区分に応じた記載を行うことが考えられます。

 

3. 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(MD&A)

 

(1) MD&Aに共通する事項

 

(ア)記載内容

開示府令は、「経営者による経営成績等の状況の分析」については、以下の記載を求めています。

 

①事業全体及びセグメント情報に記載された区分ごとに

②経営者の視点による認識及び分析・検討内容(例えば、経営成績に重要な影響を与える要因についての分析)を

③経営方針・経営戦略等のほか、有価証券報告書に記載した他の項目の内容と関連付ける

 

(イ)MD&Aの意義

 

MD&Aは、経営方針・経営戦略等に従って、事業を営んだ結果である当期の経営成績等の状況について、経営者の視点による振り返りを行い、経営成績等の増減要因等についての分析・検討内容を説明するものとされています。

この開示により、投資家は、企業が策定した経営方針・経営戦略等の適切性を確認することや、経営者が認識している足許の傾向を踏まえ、将来の経営成績等の予想の確度を高めることが可能となります。

 

(ウ)開示上の留意事項

 

MD&Aの記載に当たっては、以下の点に留意が必要です。

 

①単に財務数値の前年対比の増減を説明するだけではない

②事業全体とセグメント情報のそれぞれについて、当期における主な取組み、当期の実績、増減の背景や原因についての深度ある分析を行う

③その他、当期の業績に特に影響を与えた事象について、経営者が認識している足許の傾向も含めて経営者の評価を提供する

 

記載に当たっては、企業が設定したKPIと関連付けて目標数値の達成状況を記載することも考えられます。

 

(2) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 

(ア)記載内容

 

開示府令は、「キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容、資本の財源及び資金の流動性に係る情報」について、具体的に、かつ、分かりやすく記載することを求めています。

 

①資金調達の方法及び状況並びに資金の主要な使途を含む資金需要の動向についての経営者の認識を含めて記載する

②経営方針・経営戦略等を遂行するに当たって必要な資金需要や、それを賄う資金調達方法、さらには株主還元を含めて、経営者の認識を適切に説明する

 

こうした開示により、投資家は、企業が経営方針・経営戦略等を遂行するに当たっての財源の十分性や、経営方針・経営戦略等の実現可能性を判断することが可能となり、成長投資、手許資金、株主還元のバランスや、企業の資本コストに関する経営者の考え方を理解することが可能となると考えられます。

 

(イ)開示に当たっての留意点

 

開示に当たっては、以下の点を踏まえて記載することが有用とされています。

 

・資金需要の動向
企業が得た資金をどのように成長投資、手許資金、株主還元に振り分けるかについて、経営者の考え方を記載する

 

・成長投資への支出
経営方針・経営戦略等と関連付けて、設備投資や研究開発費を含めて、説明する

 

・株主還元への支出
目標とする水準が設定されている場合には、配当政策など、他の関連する開示項目と関連付けて説明する

 

・緊急の資金需要のために保有する金額
その金額の水準とその考え方を明示し、現金及び現金同等物の保有の必要性について投資家が理解できる適切な説明をする

 

・資金調達の方法
資金需要を充たすための資金が営業活動によって得られるのか、銀行借入、社債発行や株式発行等による調達が必要なのかを具体的に記載し、資金調達についての方針を定めている場合には、併せて記載する

 

・資本コスト
企業における定義や考え方について、上記の内容とともに説明する

 

(3) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 

開示府令は、「財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定」のうち重要なものについて、以下の事項を記載することを求めています。

 

①当該見積り及び当該仮定の不確実性の内容

②その変動により経営成績等に生じる影響

③その他、会計方針を補足する情報

 

会計基準における見積り要素が増大している中、投資家の投資判断に影響を及ぼすと考えられる会計上の見積りに関する情報を提供することで、投資家が企業の財務情報を正しく理解することを容易にし、投資家が誤った投資判断を行うリスクを減少させることが可能となると考えられます。

 

カーブアウト案件~バイサイドの財務デューデリジェンスの観点より

1.カーブアウト案件とは

 

(1)カーブアウト案件の意義

 

カーブアウト案件とは、会社全体の取得(株式取得・合併等)ではなく、会社の一部を取得(会社分割・事業譲渡等)するM&A案件を指します。

バイサイドの立場において、カーブアウト案件は、買収対象を既存会社の一部に限定する方が相対的に偶発債務等のリスクは低くなるので、潜在的リスクの回避や買収対象を必要な事業に限定し、自社の経営資源と組み合わせることでシナジーを創出するといった統合効果を最大化できる利点があります。

 

(2)カーブアウト案件の留意事項

 

分離元企業グループからの独立に伴う購買・物流・間接業務部門等の共通機能の不足や分離元企業グループとのシナジー喪失等への対応が必要となるため、カーブアウト案件は、スタンドアロン項目に係る検討が必要であり、会社全体を取得するM&Aより難易度の高い手法と言えます。

そのため、カーブアウト案件の経験豊富な専門家を起用することが、案件成功に向けての重要なポイントの一つとなります。

 

2.主要な検討事項

 

(1)スタンドアロン項目

 

通常、分離元企業はカーブアウト対象事業(事業部門等)に係るスタンドアロンベースの財務諸表を作成していないため、カーブアウト対象事業に係る財務諸表(以下、カーブアウト財務諸表)および事業計画は一定の仮定に基づいて作成されています。

 

このため、カーブアウト財務諸表には、カーブアウト対象事業が独立した会社となった場合に、自前で機能を保持するために必要な一時的に発生するコストおよび計画期間において継続的な費用水準の変動として発生するスタンドアロンコストが反映されていないか、簡便的な前提によってコストを計上しているため、実態を反映していないことが多くなっています。

 

このようなことから、カーブアウト案件においては、スタンドアロン項目を把握し、カーブアウト財務諸表および事業計画を補正することが重要となります。

主なスタンドアロン項目としては、以下が挙げられます。

 

間接業務機能

人事・総務・経理などの間接業務機能が承継対象とされていない場合、自前で当該機能を保持するか、TSA(Transaction Service Agreement)に基づく売り手のサポートが必要となります。

 

他方、買い手がこれらの間接業務機能をすでに保持している場合、重複するためコスト面からは当該機能等を承継しない方が望ましいケースもあります。

そのため、買い手は、これらの間接業務機能の取り扱いを検討しておく必要があります。

 

ITシステム

カーブアウト対象事業が利用しているITシステムが承継対象とされていない場合、関連するソフトウェアのライセンス契約の新規締結、買い手の保持するITシステムの利用、TSAに基づく売り手のサポート等の対応が必要となります。

 

退職給付

分離元企業の企業年金基金に加入している場合、カーブアウト対象事業が独立した会社となった時点で、企業年金基金から脱退することが想定され、その場合は独自の企業年金基金を設立する等の対応が必要となり、退職給付費用が変動する可能性があります。

また、企業年金基金からの脱退方法および企業年金基金における年金財政上の積立状況等によっては、退職給付引当金の変動や脱退時に掛金の一括拠出が発生する可能性があります。

 

不動産

工場・営業所・支店など分離元企業とカーブアウト対象事業とで共通利用しているスペースは、自前で移転先を確保するか、TSAに基づく売り手のサポートが必要となります。

なお、分離元企業が共通利用しているスペースから退去する場合でも、デッドスペースが増えるため賃料等の負担が一時的に増加するケースもあります。

 

グループ共同取引

原材料等の共同購買やグループ金融取引等、対象事業が分離元企業グループと共同して行っている取引については、ボリュームディスカウントや信用力の向上等に伴い取引条件が優遇されていることがあります。

そのため、カーブアウト対象事業が分離元企業グループから離脱した場合に、当該優遇措置を享受できなくなる可能性があります。

 

(2)事業計画へのスタンドアロン項目の反映

 

①事業計画の補正

カーブアウト案件においては、事業価値算定の観点から、通常の財務デューデリジェンス等による検出事項に加え、スタンドアロン項目を定量化し、それを事業計画モデルに整合させる形で事業計画を補正することに留意が必要となります。

 

②スタンドアロン項目の定量化

財務デューデリジェンスにおいては、例えば、人事・総務・経理などの間接業務機能やITシステム等が承継対象とされていないにもかかわらず、代替手段に係る費用や設備投資額がカーブアウト財務諸表に反映されていない場合に、分離元企業やベンチマークとなる企業における過去の類似取引に係る費用や設備投資額等に基づく試算により、スタンドアロン項目を定量化することが考えられます。

 

ただし、財務デューデリジェンスにおいては、分離元企業における情報管理や時間的な制約等からスタンドアロン項目の定量化が困難なことが多く、定性的な情報の把握に留まることも多くなっています。

 

③定量化の留意事項

スタンドアロン項目の重要性が高いと想定される場合には、各分野のアドバイザー(人事・IT・ビジネス等)を利用し、それぞれの専門分野におけるスタンドアロン項目を定量化し、事業計画を補正する場合もあります。

 

なお、スタンドアロン項目を定量化する場合、間接業務機能等に関連する費用は、簡便的に配賦計算によりすでにカーブアウト財務諸表に反映されている部分もあるため、配賦計算のロジック(配賦基準等)を把握し、その影響を考慮する必要があります。

無形資産の評価~M&Aにおける評価と取得原価の配分

1.無形資産の価値評価の流れ

 

無形資産の価値評価は、以下の流れで行われます。

 

(1)まず、企業価値を算定します。

 

株式価値+有利子負債(時価)=企業価値

 

(2)つぎに、広義の「のれん」を算定します。

 

企業価値±運転資本(時価)-有形資産(時価)=のれん(広義)

 

(3)広義の「のれん」から、無形資産(時価)を控除し「のれん」(狭義)を算定します。

 

2.無形資産評価の手続き

 

無形資産を評価する手続きは、「識別」と「測定」に分けられます。

 

識別とは、対象会社がどのような無形資産を保有しているかを把握する手続きです。

 

測定とは、把握された無形資産の金額を算定する手続きです。

 

(1)一般的なスケジュール

 

①情報収集

M&Aの目的・背景、対象会社の事業内容・財務内容・業界等を把握します。

 

②無形資産の識別

買い手側の目的を明確化し、分離して譲渡可能な無形資産があるかどうかを識別します。

 

③無形資産の測定

識別した無形資産について、適切な評価方法を選択します。

 

④会計監査人によるレビュー

無形資産およびのれんの評価は、会計処理を行うために必要なものなので、無形資産の評価結果は、会計監査人のレビューを受けることになります。

 

(2)無形資産の識別

受け入れた資産に法律上の権利など分離して譲渡可能な無形資産が含まれている場合には、

当該資産は識別可能なものとして取り扱うことになります。

評価は、企業結合日時点の時価を基礎とすることになっています。

 

識別可能な無形資産として、以下の例があります。

 

①マーケティング関連

商標、商号、役務標章、団体標章、トレードドレス(独自の色・形、パッケージデザイン等)

 

②顧客関連

顧客リスト、顧客との契約、受注残

 

③芸術関連

演劇、書籍等の著作権、楽曲、絵画、写真、動画

 

④契約に基づくもの

ライセンス、ロイヤルティ、リース契約、建設許認可、フランチャイズ契約、営業許可、利用権

 

(3)無形資産の測定

無形資産の測定には、以下の三つの評価方法があります。

 

①ネット・アセット・アプローチ(コスト・アプローチ)

a)概要

同一の効用または機能を有する無形資産を代替取得する場合のコストに基づいて評価する方法です。

一般的に、人的資産や社内マニュアル等の評価に適しており、商標権や特許権の評価には適していないとされています。

 

b)具体的な評価方法

・複製原価法

評価対象である無形資産と全く同じ複製を現時点で製作する場合のコストに基づいて評価する方法です。

 

評価対象の無形資産は、下記の計算式で算定されます。

 

無形資産の価値=新規複製コスト-修復不能な機能的陳腐化及び技術的陳腐化

 

・再調達原価法

評価対象の無形資産と全く同じ効用を有する無形資産を現時点で製作するコストに基づいて評価する方法です。

 

評価対象の無形資産は、下記の計算式で算定されます。

 

無形資産の価値=新規再調達コスト-物理的陳腐化-経済的陳腐化-修復可能な機能的陳腐化及び技術的陳腐化

 

②マーケット・アプローチ

a)概要

無形資産の売買が活発に行われており、合理的な市場価格が形成されている場合に、効果的な評価方法です。

 

b)具体的な評価方法

・売買取引比較法

評価対象の無形資産と類似の無形資産の実際の売買取引に基づいて評価する方法です。

 

・ロイヤルティ免除法

評価対象である無形資産の所有者が、その使用を第三者から許可されたと仮定して、第三者に支払う無形資産のライセンス料によって算出されるロイヤルティコストの現在価値により評価する方法です。

 

・利益差分比較法

無形資産を使用して事業を行っている企業と無形資産を使用しないで事業を行っている企業を選定し、無形資産を使用して事業を行っている企業が達成した利益と無形資産を使用しないで事業を行っている企業が達成した利益の差額に資本還元率を適用して無形資産を評価する方法です。

 

・概算法

ある業界において無形資産の売買にあたりよく使用される一定の経営指標がある場合、当該経営指標と類似する無形資産の取引金額を用いて評価する方法です。

 

・市場取替原価法

無形資産に関する外部の専門家によって、一般市場での無形資産の再調達原価から無形資産を評価する方法です。

 

③インカム・アプローチ

a)概要

将来における収益獲得能力を無形資産の評価額に反映する方法です。

無形資産評価の多くの場合に、適用することが可能です。

 

b)具体的な評価方法

・利益差分法

評価対象である無形資産がある場合の収益、費用、利益と評価対象である無形資産がない場合の収益、費用、利益とを比較して、その利益差額の割引現在価値によって評価する方法です。

 

・利益分割法

評価対象である無形資産が使用されている事業部門全体の利益、キャッシュ・フロー等に対して当該無形資産の寄与割合を見積もり、評価する方法です。

 

・企業価値残存法

評価対象である無形資産が使用されている事業の価値を算定し、評価額から当該事業のために使用されている有形資産およびその他の無形資産の時価を控除して評価する方法です。

 

無形資産の価値=無形資産を使用している事業部門の事業価値-運転資本の時価-事業用有形資産の時価-他の無形資産の時価

 

・超過収益法

企業または事業全体の利益から無形資産に寄与する利益を抽出して、それを資本還元する方法です。

 

評価対象の無形資産が寄与する利益=企業または事業部門の利益-運転資本の時価×当該運転資本に対する期待収益率-事業用の有形固定資産の時価×当該有形固定資産に対する期待収益率-評価対象以外の無形資産時価×当該無形資産に対する期待収益率

 

会社の解散・清算について~法務・税務・会計の視点から

会社の解散・清算を行うためには、会社法・税務・会計の知識が必要となります。

Ⅰ 会社法の取扱

 

1.清算の開始及び流れ

 

会社法では会社の解散事由を定めています。もっとも一般的な事由は、株主総会の決議によるものでしょう。

会社が解散した場合には、清算しなければなりません。

解散決議をすると会社は清算会社となり、清算会社は、清算の目的の範囲内で、清算が結了するまでは、存続するものとみなされます。

 

解散及び清算手続きの流れは、以下のようになります。

 

(1)通常の事業年度

(2)解散の株主総会決議及び清算人の選出

(3)解散・清算人登記(登記所):解散の日から2週間以内

(4)解散の届け出(税務署)

(5)解散日の財産目録・貸借対照表の作成・承認:清算人就任後、遅滞なく

(6)債権者に対する公告等:解散日後遅滞なく、2か月間の債権申し出期間

(7)解散年度の確定申告(税務署):2か月以内

(8)会社の財産・債務の整理

(9)(清算事業年度の確定申告)

(10)残余財産の確定

(11)最終事業年度の確定申告(税務署):1か月以内

(12)残余財産の分配

(13)決算報告書の作成と株主総会の承認

(14)清算結了登記(登記所):株主総会後2週間以内

(15)清算結了の届け出(税務署)

 

 

2.清算株式会社の機関

 

清算株式会社には、一人又は二人以上の清算人を置かなければなりません。

清算株式会社は、定款の定めによって、清算人会、監査役又は監査役会を置くことができます。

 

3.清算人の就任及び解任並びに監査役の退任

 

(1)清算人の就任

清算株式会社の清算人は、定款で定める者、株主総会の決議によって選任された者が就任します。このようなものがいない場合には、取締役が清算人となります。

 

(2)清算人の解任

清算人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができます。

重要な事由があるときは、裁判所は、総株主の議決権または発行済株式の百分の三以上の議決権を六箇月前から引き続き有する株主(一定の株主を除く)の申立てにより、清算人を解任することができます。

 

(3)監査役の退任

清算株式会社の監査役は、当該清算株式会社が次に掲げる定款の変更をした場合には、当該定款の変更の効力が生じた時に退任します。

 

監査役を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更

監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めを廃止する定款の変更

 

 

4.清算人の職務等

 

(1)清算人は、次に掲げる職務を行います。

現務の結了

債権の取立て及び債務の弁済

残余財産の分配

 

 

(2)業務の執行

清算人は、清算株式会社の業務を執行し、清算株式会社を代表します。

 

(3)財産目録等の作成等

清算人は、その就任後遅滞なく、清算株式会社の財産の現況を調査し、法務省令で定めるところにより、解散日における財産目録及び貸借対照表(以下、「財産目録等」という。)を作成しなければなりません。

清算人は、財産目録等を株主総会に提出し、又は提供し、その承認を受けなければなりません。

清算株式会社は、財産目録等を作成した時からその本店の所在地における清算結了の登記の時までの間、当該財産目録等を保存しなければなりません。

 

(4)貸借対照表等の作成及び保存

清算株式会社は、法務省令で定めるところにより、各清算事務年度(解散日の翌日又はその後毎年その日に応当する日(応当する日がない場合にあっては、その前日)から始まる各一年の期間をいう。)に係る貸借対照表及び事務報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければなりません。

清算株式会社は、貸借対照表を作成した時からその本店の所在地における清算結了の登記の時までの間、当該貸借対照表及びその附属明細書を保存しなければならなりません。

 

 監査役設置会社においては、貸借対照表及び事務報告並びにこれらの附属明細書は、法務省令で定めるところにより、監査役の監査を受けなければなりません。

 

(5)貸借対照表等の備置き及び閲覧等

清算株式会社は、各清算事務年度に係る貸借対照表及び事務報告並びにこれらの附属明細書を、定時株主総会の日の一週間前の日からその本店の所在地における清算結了の登記の時までの間、その本店に備え置かなければなりません。

 

(6)貸借対照表等の定時株主総会への提出等

清算株式会社においては、清算人は、貸借対照表及び事務報告を定時株主総会に提出し、又は提供しなければなりません。監査役設置会社の場合には、監査を受ける必要があります。

提出され、又は提供された貸借対照表は、定時株主総会の承認を受けなければなりません。

清算人は、提出され、又は提供された事務報告の内容を定時株主総会に報告しなければなりません。

 

5.残余財産の分配

 

清算株式会社は、残余財産の分配をしようとするときは、清算人の決定によって、次に掲げる事項を定めなければなりません。

 

(1)残余財産の種類

(2)株主に対する残余財産の割当てに関する事項

 

なお、株主の有する株式の数に応じて残余財産を割り当てることを内容とするものでなければなりません。

 

6.清算事務の終了等

 

清算株式会社は、清算事務が終了したときは、遅滞なく、法務省令で定めるところにより、決算報告を作成しなければなりません。

清算人は、決算報告を株主総会に提出し、又は提供し、その承認を受けなければなりません。

 

7.帳簿資料の保存

 

清算人は、清算株式会社の本店の所在地における清算結了の登記の時から十年間、清算株式会社の帳簿並びにその事業及び清算に関する重要な資料(以下、「帳簿資料」という。)を保存しなければなりません。

 

Ⅱ 税務、会計の取扱

 

平成22年度税制改正により、清算会社の課税所得計算が改正され、平成22年10月1日以降に解散された解散法人の税務は、通常の税務とほぼ同一の取り扱いがされることになりました。

ただし、解散・清算法人特有の取り扱いがあります。

 

1.解散事業年度の法人税等

 

(1)解散事業年度の青入り欠損金の繰り戻し還付の特例

すべての法人に、「その事業年度または解散等の日前1年以内に終了したいずれかの事業年度において生じた欠損金額について、解散等の日以後1年以内に繰り戻し還付の請求をすることができる」という特例があります。これは、法人税のみの規定です。

 

 

2.清算途中事業年度の法人税等

 

(1)通常の事業年度と異なり、特別償却の一部及び特別税額控除、圧縮記帳、準備金の一部、収容の特別控除などは適用されません。

 

(2)残余財産がないと見込まれる場合の期限切れ欠損金の損金算入をすることができます。

 

 

3.清算最終事業年度の法人税等

 

清算最終事業年度には、以下の特例があります。

 

(1)最終事業年度の事業税の損金算入

 

(2)引当金の繰り入れ不適用

 

(3)一括償却資産等の全額損金算入

 

(4)残余財産がないと見込まれる場合の期限切れ欠損金の損金算入

 

我が国の一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行・基準

日本の会計制度は、公正なる会計慣行をさまざまな法律が利用することによって形成されています。

その主なものに金融商品取引法、会社法、税法があります。

例えば会社法は、株主及び債権者保護を目的として配当可能利益の算定を行うために、金融商品取引法は投資家保護を目的として投資判断に必要な経営成績や財政状態を開示するために、また税法は課税所得を算定するために、会計を利用しています。

このほか学校法人(私立学校振興助成法)、独立行政法人(独立行政法人通則法)、政治政党(政党助成法)などでもその法律の目的を達成するために、独自の規定を設けて会計を利用しています。

 

1.会計制度と法律の規定

(1)金融商品取引法の規定

金融商品取引法は、投資家保護を目的として、投資判断に必要な経営成績や財政状態の開示の方法を規定しています。

株式を公開している株式会社や一定額以上の有価証券を発行・募集する株式会社などを対象とし、会社法の計算書類とは別に「有価証券報告書」または「有価証券届出書」を作成して内閣総理大臣に提出することを定めています。

 

「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則 第一条」で、金融商品取引法の規定により提出される財務計算に関する書類(以下「財務書類」という。)のうち、財務諸表の用語、様式及び作成方法は、この規則の定めるところによるものとし、「この規則において定めのない事項については、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従うものとする。」としています。

 

(2)会社法の規定

会社法は、株主および債権者保護を目的として、配当可能利益の算定の方法を規定しています。

すべての会社を対象に営業上の財産及び損益の状況を明かにすることを求め、毎決算期において計算書類の作成を要請しています。

 

「会社法 第四百三十一条」で、「株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。」としています。

 

(3)法人税法の規定

法人税法は、課税の公平を基本理念とする税法の規定に基づき、法人の課税所得の算定の方法を規定しています。

課税所得は、会社法によって確定した決算をもとに税法特有の調整を行って算定します。

 

「法人税法 第二十二条第4項」で、「当該事業年度の収益の額及び損金の額は、別段の定めがあるものを除き、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする。」としています。

 

(4)まとめ

金融商品取引法の「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」、会社法の「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」、法人税法の「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」は、それぞれ文言は異なりますが、内容は同一のものといってよいでしょう。

 

2.一般に公正妥当と認められる企業会計の基準は、誰が決めるのか

 

それでは、一般に公正妥当と認めているのは、誰なのでしょうか。

 

「金融庁設置法 第四条」で、金融庁の役割を、以下のように定めています。

(中略)

十七 企業会計の基準の設定その他企業の財務に関すること。

(中略)

 

金融庁が、我が国の企業会計の基準を定めることになっています。

 

そして、「金融庁組織令 第二十四条」において、以下の定めがあります。

 

1 法律の規定により置かれる審議会等のほか、金融庁に、企業会計審議会を置く。

2 企業会計審議会は、企業会計の基準及び監査基準の設定、原価計算の統一その他企業会計制度の整備改善について調査審議し、その結果を内閣総理大臣、金融庁長官又は関係各行政機関に対して報告し、又は建議する。

 

 

「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」では、「金融庁組織令に規定する企業会計審議会により公表された企業会計の基準は、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に該当するものとする。」としています。

 

 

また、企業会計の基準についての調査研究及び作成を業として行う団体であって次に掲げる要件の全てを満たすものが作成及び公表を行った企業会計の基準のうち、公正かつ適正な手続の下に作成及び公表が行われたものと認められ、一般に公正妥当な企業会計の基準として認められることが見込まれるものとして金融庁長官が定めるものは、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に該当するものとしています。

 

(1)利害関係を有する者から独立した民間の団体であること。

(2)特定の者に偏ることなく多数の者から継続的に資金の提供を受けていること。

(3)高い専門的見地から企業会計の基準を作成する能力を有する者による合議制の機関(次号及び第五号において「基準委員会」という。)を設けていること。

(4)基準委員会が公正かつ誠実に業務を行うものであること。

(5)基準委員会が会社等(会社、指定法人、組合その他これらに準ずる事業体(外国におけるこれらに相当するものを含む。)をいう。以下同じ。)を取り巻く経営環境及び会社等の実務の変化への適確な対応並びに国際的収れん(企業会計の基準について国際的に共通化を図ることをいう。)の観点から継続して検討を加えるものであること。

 

我が国では、財務会計基準機構の企業会計基準委員会が該当します。

 

企業会計審議会が定めた会計処理の基準及び企業会計基準委員会が定めた会計処理の基準のうち金融庁長官が認めたものが、我が国における一般に公正妥当と認められる会計処理の基準を構成することになります。

 

自社利用のソフトウェアの会計処理~研究開発費に係る会計基準より

自社利用のソフトウェアに関する会計処理は、平成10年3月13日に企業会計審議会により「研究開発費等に係る会計基準」(以下、本基準)が公表されています。

また、日本公認会計士協会は、平成11年3月31日(最終改正:平成26年11月28日)に「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」(以下、本実務指針)を公表しています。

 

1.ソフトウェアの定義

ソフトウェアとは、コンピュータを機能させるように指令を組み合わせて表現したプログラム等を言います。その範囲としては、以下になります。

(1)コンピュータに一定の仕事を行わせるためのプログラム

(2)システム仕様書、フローチャート等の関連文書

 

なお、ソフトウェアがコンピュータに一定の仕事を行わせるプログラム等であるのに対し、コンテンツはその処理対象となる情報の内容であり、それぞれ別個の経済価値を持つものであることから、コンテンツはソフトウェアに含めないこととされています。

 

コンテンツの例としては、データベースソフトウェアが処理対象とするデータや、映像・音楽ソフトウェアが処理対象とする画像・音楽データ等が挙げられています。

 

2.研究開発費に係る会計処理

研究開発費はすべて発生時に費用処理しなければならず、ソフトウェア制作費のうち、研究開発に該当する部分も研究開発費として費用処理します。

 

3.研究開発費に該当しないソフトウェア制作費にかかる会計処理

ソフトウェアの制作費は、その制作目的により、将来の収益との対応関係が異なること等から、ソフトウェア制作費に係る会計基準は、取得形態(自社製作、外部購入)別ではなく、制作目的別に設定することとしています。

 

研究開発費に該当しないソフトウェア制作費の会計基準を制作目的別に定めるにあたっては、販売目的のソフトウェアと自社利用のソフトウェアとに区分し、販売目的のソフトウェアをさらに受注制作のソフトウェアと市場販売目的のソフトウェアに区分することとしています。

 

これは制作目的に応じて、将来の収益との対応関係が異なることに着目しているためといえます。

 

4.自社利用ソフトウェアにかかる会計基準

 

(1)資産計上の要件

ソフトウェアの提供または利用により、将来の収益獲得または費用削減が確実であると認められる場合には、適正な原価を集計して当該ソフトウェアの製作費を無形固定資産として資産計上するか、または、取得に要した費用を無形固定資産として資産計上しなければならない、としています。

 

機械装置に組み込まれているソフトウェアは、当該機械装置に含めて処理します。

 

制作途中のソフトウェアは、無形固定資産の仮勘定として計上されます。

 

ソフトウェアが資産計上される場合の一般的な例示は、以下のとおりです。

 

① 通信ソフトウェア又は第三者への業務処理サービスの提供に用いるソフトウェア等を利用することにより、会社が、契約に基づいて情報等の提供を行い、受益者からその対価を得る場合

 

② 自社で利用するためにソフトウェアを制作し、当初意図した使途に継続して利用することにより、利用する前と比較して会社の業務を効率的又は効果的に遂行することができると明確に認められる場合

 

③ 市場で販売しているソフトウェアを購入し、かつ、予定した使途に継続して利用することによって、会社の業務を効率的又は効果的に遂行することができると認められる場合

 

(2)資産計上の考え方

将来の収益獲得又は費用削減が確実である自社利用のソフトウェアについては、将来の収益との対応等の観点から、その取得に要した費用を資産として計上し、その利用期間にわたり償却を行うべきと考えられます。

したがって、ソフトウェアを用いて外部に業務処理等のサービスを提供する契約が締結されている場合や完成品を購入した場合には、将来の収益獲得又は費用削減が確実と考えられるため、当該ソフトウェアの取得に要した費用を資産として計上することとしています。

 

また、独自仕様の社内利用ソフトウェアを自社で制作する場合又は委託により制作する場合には、将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められる場合を除き費用として処理することとなります。

 

ソフトウェアを用いて外部へ業務処理等のサービスを提供する契約等が締結されている場合のように、その提供により将来の収益獲得が確実であると認められる場合には、適正な原価を集計した上、当該ソフトウェアの制作費を資産として計上しなければなりません。

 

 

(3)資産計上の開始時点

 

資産計上の開始時点は、将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められる状況になった時点であり、そのことを立証できる証憑に基づいて決定します。

 

立証できる証憑の具体例としては、ソフトウェアの制作予算が承認された社内稟議書、ソフトウェアの制作原価を集計するための制作番号を記入した管理台帳等が挙げられます。

 

なお、ソフトウェアの制作開始時点においては、将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められず費用処理していたものの、その後一定時点で将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められた場合には、その一定時点以降に発生した制作費についてソフトウェアとして資産計上することとなります。

過去に費用処理された部分については資産計上しません。

 

(4)資産計上の終了時点

 

資産計上の終了時点は実質的にソフトウェアの制作作業が完了したと認められる状況になった時点であり、そのことを立証できる証憑に基づいて決定します。

 

立証できる証憑の具体例としては、ソフトウェア作業完了報告書、最終テスト報告書等が挙げられます。

 

(5)自社利用ソフトウェアの償却

 

資産計上された自社利用のソフトウェアについては、その利用の実態に応じて最も合理的な減価償却の方法を採用すべきとされています。一般的には定額法が合理的とされています。

 

耐用年数は、当該ソフトウェアの利用可能期間によるべきですが、原則として5年以内の年数としており、5年を超える場合には、合理的根拠に基づくことが必要とされます。