「記述情報の開示に関する原則 -総論-」に関する留意点 | 社外財務部長 原 一浩
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「記述情報の開示に関する原則 -総論-」に関する留意点

「記述情報の開示に関する原則 -総論-」に関する留意点

1. 企業情報開示における記述情報の役割

 

「記述情報の開示に関する原則 Ⅰ. 総論」では、記述情報は財務情報を補完し、投資家による適正な投資判断を可能とすることだけではなく、投資家と企業との建設的な対話を促進し、企業の経営の質を高めるためのツールとして利用されることが期待されるとしています。

従って、経営者は、企業情報開示ないし記述情報のこのような機能を念頭に置きながら、開示書類の作成に当たっては、主体的に関与していくことが必要と考えられます。

 

2. 経営方針・経営戦略等の適切な記載

 

有価証券報告書における記述情報のうち、特に、経営方針・経営戦略等、リスク情報、MD&Aに関しては、経営判断と密接に関する事項です。

投資家は企業の経営方針・経営戦略等の内容や企業の現状分析の理解に必要な情報を入手することができ、投資家は財務情報のみからでは判別できない経営の方向性を理解し、将来の経営成績等の予想の精度を高めることが可能となります。

このような開示を実現するためには、経営者は開示についての方針を社内に示して、開示書類作成の体制を構築する必要があります。

複数の部署が開示書類の作成に関与している企業においては、開示担当の役員が各部署を統括する体制を構築し、取締役会や経営会議での議論に基づく開示書類を作成することが期待されます。

 

3. 重要性

 

有価証券報告書においては、開示府令の定めに従って、投資家の投資判断に重要な情報が過不足なく提供される必要があります。

記述情報の開示に当たっては、経営者は開示事項について、個々の課題、事象等が自社の企業価値や業績等に与える重要性を判断し、それに応じて説明の順序や記載内容等を示すことにより、読み手が当該情報の重要性を理解できるように工夫することが期待されます。

例えば、事業等のリスクについては、リスクが顕在化した場合に経営に与える重要性の順に記載する、前年度からリスクの程度が変化した場合には、それが理解できるような開示を行うなどの検討が必要と考えられます。

 

4. セグメント情報

 

企業経営の多角化が進む中、適切な投資判断を行うためには、企業全体の情報だけでなく、経営管理の実態などに応じて区分された事業セグメントにおける情報が開示されることも重要です。

必要に応じて、財務諸表におけるセグメント情報の注記に加えて、経営方針および経営戦略等の説明に合わせた区分ごとの情報を開示することが考えられます。

 

5. 分かりやすい開示

 

記述情報の開示に当たっては、読者がその内容を容易に、より深く理解することができるよう、図表、グラフ、写真等の補足的なツールを用いることや、前年からの変化を明確に表示することなど、分かりやすさを意識した記載が行われることが期待されます。

有価証券報告書では、EDINETにおける提出書類ファイルの容量上可能な範囲で、このようなツールを用いることも可能とされており、企業が決算説明資料や統合報告書などの任意開示において使用している図表やグラフなどを有価証券報告書にも取り入れていくことも考えられます。

 

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