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修正国際基準(JMIS)とはどのようなものでしょうか。

企業会計基準委員会は、修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準によって 構成される会計基準) の適用に関する文書を2015年6月30日に公表しています。2018年12月27日版が、最終改正となっています。

 

1.目 的

本文書の目的は、修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準 によって構成される会計基準)(以下「修正国際基準」という。)に準拠した連結財務諸表を作成する場合において、準拠すべき規定を示すことであるとしています。

 

 2.構 成

修正国際基準は、以下から構成されます。

 

(1)本文書

 

(2)当委員会が採択した国際会計基準審議会(IASB)により公表された会計基準及び解釈 指針(以下、会計基準及び解釈指針を合わせて「会計基準等」という。)

 

(3)「企業会計基準委員会による修正会計基準」

 

3.適 用

 

修正国際基準に準拠した連結財務諸表を作成する場合には、別紙 1 に記載されている企業会計基準委員会が採択した IASB により公表された会計基準等の規定に、別紙 2 に記載されている企業会計基準委員会による修正会計基準における「削除又は修正」を加えた規定に準拠しなければならないとしています。

 

企業会計基準委員会が採択したIASB により公表された会計基準等において「 International Financial Reporting Standards (IFRSs)」という用語が会計基準等の体系を指すものとして使用されている場合、「Japan’s Modified International Standards (JMIS): Accounting Standards Comprising IFRSs and the ASBJ Modifications」(「修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準によって構成される会計基準)」)と読み替えるものとしています。

 

企業会計基準委員会による修正会計基準は、以下の2つです。

 

(1)企業会計基準委員会による修正会計基準第 1 号「のれんの会計処理」 (2018 年 4 月 11 日改正)

 

(2)企業会計基準委員会による修正会計基準第 2 号「その他の包括利益の会計処理」(2018 年 4 月 11 日最終改正)

 

これにより、「削除又は修正」の対象となる会計基準等は、以下の6基準となっています。

①IFRS 第 3 号「企業結合」

②IAS 第 28 号「関連会社及び共同支配企業に対する 投資」

③ IFRS 第 7 号「金融商品:開示」

④ IFRS 第 9 号「金融商品」(2014 年)

⑤IAS 第 1 号「財務諸表の表示」

⑥ IAS 第 19 号「従業員給付」

 

4.エンドースメント手続きの概要

企業会計基準委員会は、企業会計審議会が公表した「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」(2013 年 6 月)の記載に基づいて、2013 年 7 月に「IFRS のエンドースメントに関する作業部会」を設置し、IASB により公表された会計基準等に関するエンドースメント手続を実施し、修正国際基準を公表しています。

 

(1)エンドースメント手続とは

エンドースメント手続は IASB により公表された会計基準等について、我が国で受入れ可能か否かを判断したうえで、必要に応じて、一部の会計基準等について「削除又は修正」し、金融庁において指定する仕組みです。

 

(2)エンドースメント手続きの実施の際の勘案事項

エンドースメント手続を実施するにあたり、 これまでのエンドースメント手続と同様に、修正国際基準が任意適用であることを前提としたうえで、IASB により公表された会計基準等をエンドースメントする際の判断基準として、公益及び投資者保護の観点から、次の点を勘案することとしています。

 

  • 会計基準に係る基本的な考え方

 

  • 実務上の困難さ(作成コストが便益に見合わない等)

 

  • 周辺制度との関連(各種業規制などに関連して適用が困難又は多大なコストを 要することがないか。)

 

(3)考慮事項

これまでのエンドースメント手続と同様に、IASB により公表された会計基準等のエンドースメント手続を実施するうえでは、「削除又は修正」を必要最小限とすること、すなわち、可能な限り受け入れることとしたうえで、十分な検討を尽くし、我が国における会計基準に係る基本的な考え方、実務上の困難さ及び周辺制度との関連の観点からなお受け入れ難いとの結論に達したもののみを「削除又は修正」することとしています。

 

(4)意見発信機能

当該エンドースメント手続により開発される修正国際基準は、実務的に適用可能な1組の会計基準として IFRS に対する我が国の考えを発信する役割も担っていて、これまで「削除又は修正」を行った項目については、企業会計基準委員会より積極的に意見発信を行っているところです。

 

中小企業の非上場株式を引き継ぐときに、納税が猶予・免除される制度~特例事業承継税制について

1.事業承継税制とは

事業承継税制は、後継者である受贈者・相続人等が、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(以下、「円滑化法」)の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合において、その非上場株式等に係る贈与税・相続税について、一定の要件のもと、その納税を猶予し、後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税・相続税の納付が免除される制度です。

 

2.非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等

非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等には、租税特別措置法第70条の7の6から第70条の7の8までの各規定による措置(特例措置)と同法第70条の7の2から第70条の7の4までの各規定による措置(一般措置)の2つの制度があり、特例措置については、平成30年1月1日から平成39年(2027年)12月31日までの10年間限定の制度とされています。

 

(1)特例措置

「円滑化法」による都道府県知事の認定を受ける非上場会社の後継者である相続人又は受遺者(以下、「特例経営承継相続人等」)が、

 

被相続人から非上場会社の株式又は出資(以下、「非上場株式等」)を相続又は遺贈(以下、「相続等」)により取得をし、その会社を経営していく場合には、

 

特例経営承継相続人等が納付すべき相続税のうち、非上場株式等に係る課税価格に対応する相続税の納税が猶予され(以下、猶予される相続税額を「特例株式等納税猶予税額」)、

 

特例経営承継相続人等が死亡した場合等には、その全部又は一部が免除されます。

 

そして、特例経営承継相続人等の死亡によって、特例経営承継相続人等から非上場株式等を相続等により取得した者についても、一定の要件を満たすことにより、「非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等」の適用を受けることができます。

 

ただし、免除されるまでに、特例対象非上場株式等を譲渡するなど一定の場合には、特例株式等納税猶予税額の全部又は一部について納税の猶予が打ち切られ、その税額と利子税を納付する必要があります。

 

(2)一般措置

円滑化法の認定を都道府県知事から受ける非上場会社の後継者である相続人又は受遺者(以下、「経営承継相続人等」)が、

被相続人から非上場株式等(一定の部分に限る。)を相続等により取得をし、その会社を経営していく場合には、

 

経営承継相続人等が納付すべき相続税のうち、非上場株式等に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予されます(猶予される相続税額を「株式等納税猶予税額」という)。

 

この株式等納税猶予税額は、経営承継相続人等が死亡した場合等に該当したときには、その全部又は一部が免除されます。

 

そして、経営承継相続人等の死亡によって、経営承継相続人等から非上場株式等を相続等により取得した者についても、一定の要件を満たすことにより、「非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等」の適用を受けることができます。

 

ただし、免除されるまでに、対象非上場株式等を譲渡するなど一定の場合には、株式等納税猶予税額の全部又は一部について納税の猶予が打ち切られ、その税額と利子税を納付しなければなりません。

 

3.特例措置と一般措置の主な違い

特例措置と一般措置の制度の主な違いは次の表のとおりです。

 

 

特例措置

一般措置

事前の

計画策定等

5年以内の特例承継計画の提出
【平成30年4月1日から平成35年(2023年)3月31日まで】

不要

適用期限 10年以内の相続等・贈与
【平成30年1月1日から平成39年(2027年)12月31日まで】

なし

対象株数 全株式

総株式数の最大3分の2まで

納税猶予割合 100%

相続等: 80%、贈与:100%、

承継パターン 複数の株主から最大3人の後継者

複数の株主から1人の後継者

雇用確保要件 弾力化

承継後5年間
平均8割の雇用維持が必要

事業の継続が困難な事由が生じた場合の免除 譲渡対価の額等に基づき再計算した猶予税額を納付し、従前の猶予税額との差額を免除

なし
(猶予税額を納付)

相続時精算課税の適用 60歳以上の贈与者から20歳以上の者への贈与
(租税特別措置法第70条の2の7等)

60歳以上の贈与者から20歳以上の推定相続人(直系卑属)・孫への贈与
(相続税法第21条の9・租税特別措置法第70条の2の6)

 

(注)

1 対象株数:議決権に制限のない株式等に限ります。

2 雇用要件:雇用確保要件を満たさなかった場合には、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則第20条第3項に基づき、要件を満たさなかった理由等を記載した報告書を都道府県知事に提出し、その確認を受ける必要があります。
なお、当該報告書及び確認書の写しは、継続届出書の添付書類とされています。

 

消費税における適格請求書等保存方式(インボイス方式)とは何でしょうか

1.適格請求書等保存方式

2023年10月1日から、複数税率に対応した消費税額の仕入税額控除の方式として、適格請求書等保存方式、いわゆる、「インボイス方式」が導入されます。

適格請求書等保存方式の下では、税務署長に申請して登録を受けた課税事業者である「適格請求書発行事業者」が交付する「適格請求書」等の保存が仕入税額控除の要件となります。

 

2.適格請求書

売手が買手に対し正確な適用税率や消費税額等を伝えるための手段であり、一定の事項が記載された請求書や納品書その他これらに類する書類をいいます。

 

3.適格請求書発行事業者登録制度

適格請求書発行事業者となるためには、税務署長に「適格請求書発行事業者の登録申請書」(以下「登録申請書」)を提出し、登録を受ける必要があります。
なお、課税事業者でなければ登録を受けることはできません。

また、登録申請書の提出を受けた税務署長は、登録申請書の審査を行った後、適格請求書発行事業者登録簿に法定事項を登載して登録を行います。

税務署長は、登録を受けた事業者に対して登録番号を通知します。

 

4.適格請求書発行事業者の義務等(売り手側の留意点)

適格請求書発行事業者には、適格請求書を交付することが困難な一定の場合を除いて、取引の相手方(課税事業者に限ります。)の求めに応じて、適格請求書を交付する義務及び交付した適格請求書の写しを保存する義務が課されます。

なお、適格請求書には、区分記載請求書等(注)に必要とされる記載事項に加え、次の事項の記載が必要となります。

 

  • 登録番号

 

  • 消費税額等及び適用税率

 

(注) 平成31年(2019年)10月1日から平成35年(2023年)9月30日までの間、仕入税額控除のために保存が必要な請求書等をいいます。

5.仕入れ税額控除の要件(買い手側の留意点)

適格請求書等保存方式の下では、適格請求書などの請求書等の交付を受けることが困難な一定の場合を除いて、一定の事項を記載した帳簿及び請求書等の保存が仕入税額控除の要件となります。

 

なお、適格請求書等保存方式導入後は、免税事業者や消費者など適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れに係る消費税額を控除することができなくなります。

 

ただし、一定の要件を満たす場合には、一定期間は、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額として控除できる経過措置が設けられています。

 

6.税額の計算方法

2023年10月1日以降の売上税額及び仕入税額の計算については、以下の(1)又は(2)を選択することができます。

 

(1) 適格請求書に記載のある消費税額等を積み上げて計算する「積上げ計算」

 

(2) 適用税率ごとの取引総額を割り戻して計算する「割戻し計算」

 

 

(1)積上げ計算方式

 

適格請求書等(インボイス)に記載された消費税額等を積上げて計算する方法です。ただし、適格簡易請求書で消費税額等の記載が省略される場合、帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められる場合(公共交通機関による旅客の運送、郵便切手、出張旅費等)があり、その場合は個々の課税仕入れごとに支払金額を割り戻して算出した消費税額等(1円未満の端数は、切捨てまたは四捨五入)を積上げの対象にすることが認められます。

 

(2)割戻し計算方式

課税期間における課税仕入れに係る支払対価の額を税率の異なるごとに区分した金額の合計額にそれぞれの税率を乗じた額を課税仕入れに係る消費税額とする方法 です。

 

 

(3)認められる組合せ

 

売上税額と仕入れ税額の計算において認められる組み合わせは、以下の通りです。

売上税額の計算について積上げ計算方式による場合は、仕入税額の計算についても積上げ計算方式によらなければなりません。

 

売上税額の計算:割戻し計算-仕入税額の計算:積上げ計算

売上税額の計算:積上げ計算-仕入税額の計算:積上げ計算

売上税額の計算:割戻し計算-仕入税額の計算:割戻し計算

 

7.免税事業者等からの仕入れ

免税事業者等(免税事業者、適格請求書発行事業者の登録を受けていない課税事業者および消費者)からの課税仕入れについては、免税事業者等からの仕入が急激に不利にならないようにする特例措置が期間を限定して設けられます。

 

包括利益とは何か?包括利益計算書とは?その目的と表示について

1.包括利益の定義

包括利益とは、ある企業の特定期間の財務諸表において認識された純資産の変動額のうち、当該企業の純資産に対する持分所有者との直接的な取引によらない部分をいいます。

つまり、純資産の変動のうち資本取引に該当しないものが包括利益に該当します。

 

包括利益のうち当期純利益及び少数株主損益に含まれない部分を、「その他の包括利益」といいます。

 

なお、当該企業の純資産に対する持分所有者として、以下のものが挙げられます。

  • 当該企業の株主
  • 当該企業の発行する新株予約権の所有者
  • 連結財務諸表においては、当該企業の子会社の少数株主

 

2. 包括利益表示の目的

包括利益を表示する目的は、期中に認識された取引及び経済事象(資本取引を除く)により生じた純資産の変動を報告することです。

 

また、以下のような効果も期待されています。

  • 財務諸表利用者が企業全体の事業活動を検討するのに役立つ
  • 財務諸表の理解可能性と比較可能性を高める
  • 国際的な会計基準とのコンバージェンス

 

つまり、包括利益の表示は、包括利益が企業活動に関する最も重要な指標として位置付けられたため行われるということではなく、その表示によって提供される情報を、当期純利益に関する情報と併せて利用することにより、企業活動の成果についての情報の全体的な有用性を高めるために行われるものです。

 

3. 包括利益の表示

包括利益の表示は、以下のように行われます。

 

個別財務諸表 当期純利益に「その他の包括利益」の内訳項目を加減
連結財務諸表 少数株主損益調整前当期純利益に「その他の包括利益」の内訳項目を加減

 

なお、包括利益会計基準は、当面の間、個別財務諸表には適用しないこととされています。

また、会社法において包括利益を表示する計算書の開示は求められていません。

 

4.包括利益計算書の作成

当期純利益に「その他の包括利益」の内訳項目を調整することによって、包括利益を表示します。

 

加減される「その他の包括利益」の内訳項目は、その他有価証券評価差額金、繰延ヘッジ損益、為替換算調整勘定、退職給付に係る調整額等で、その内容に基づき、区分します。

 

なお、持分法を適用する被投資会社の「その他の包括利益」に対する投資会社の持分相当額は、一括して区分表示することが求められます。

「その他の包括利益」の内訳項目の金額については、税効果を控除した後の金額で表示します。

 

5.包括利益計算書の様式

包括利益を表示するための当期純利益からの調整計算は、具体的には計算書の形式で行われますが、その計算書は、二つの形式のうちいずれかによることとされています。

 

2計算書方式 当期純利益を表示する損益計算書と、包括利益を表示する包括利益計算書からなる形式
1計算書方式 当期純利益の表示と包括利益の表示を一つの計算書(「損益及び包括利益計算書」)で行う形式

 

2計算書方式でも1計算書方式でも、包括利益の内訳として表示される内容は同じです。

 

6. 包括利益計算書と他の財務諸表との関係

包括利益とはある特定期間での純資産の変動額から求められます。

 

包括利益は少数株主損益調整前当期純利益と「その他の包括利益」から構成されますが、少数株主損益調整前当期純利益の累計が「利益剰余金」又は「少数株主持分」として表示されるのに対して、前期以前から獲得してきた「その他の包括利益」の累計は、貸借対照表及び株主資本等変動計算書において、「その他の包括利益累計額」として表示されます。

 

なお、内訳項目別に見た場合、包括利益計算書での「その他の包括利益」は、貸借対照表及び株主資本等変動計算書での「その他の包括利益累計額」の前期からの変動額と一致しないこともあります。これは包括利益計算書での「その他の包括利」益には、「その他の包括利益」に対する少数株主持分も含まれること、及び持分法適用会社の「その他の包括利益」については区分表示されることが、不一致の要因として考えられています。

 

決算日後に財務諸表に影響を与える事象が発生した場合の対応~後発事象とは何か

1.後発事象の意義

後発事象とは、決算日後に発生した会社の財政状態及び経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす会計事象です。

後発事象は、財務諸表を修正すべき後発事象(以下、修正後発事象)と財務諸表に注記すべき後発事象(以下、開示後発事象)の二つに分類されます。

いずれの事象に該当するかは、決算日後に発生した事象の背景や原因に着目して、その実質的な原因が決算日現在において存在しているかどうかを判断することになります。

 

2.修正後発事象

(1)意義

修正後発事象とは、決算日後に発生し、その実質的な原因が決算日現在において既に発生しており、財務諸表を修正する必要がある会計事象を言います。

決算日後に発生した会計事象ですが、その実質的な原因が決算日現在において既に存在しており、決算日現在の状況に関連する会計上の判断ないし見積りをする上で、追加的ないし、より客観的な証拠を提供するものとして考慮しなければならない会計事象です。

 

修正後発事象のうち、重要な後発事象については、当期の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼすものとして財務諸表の修正を行うことが必要となります。

(2)財務諸表における取り扱い

①会社法

計算書類が、会計監査人に提出されるまでに発生:計算書類を修正します。

提出後、会計監査人の監査報告書までに発生:計算書類を修正します。

 

②金融証券取引法

監査報告書日までに発生:財務諸表を修正します。

ただし、会社法監査の会計監査人監査報告書日後に修正後発事象が発生した場合には、開示後発事象に準じて取り扱います。

 

(3)監査報告書における取り扱い

修正後発事象が、財務諸表において修正されていない場合、監査意見の除外事項となります。

 

(4)修正後発事象の例示

  • 当該後発事象の発生により、未確定事項が確定する場合
    決算日後に、勝訴・敗訴・和解など訴訟事件に一定の結論が得られたことにより、決算日において既に債務が存在していたことが明確になった場合は、財務諸表を修正します。

 

  • 当該後発事象の発生により、会計上の見積に対して、より客観的な証拠が提供される場合
    決算日において得意先に対して売掛債権が存在し、決算日後に当該得意先が倒産した場合には、一般的に、期末日時点においてすでに得意先の財政状態の悪化という原因が存在すると考えられますので、当該得意先に対する貸倒引当金の見積額を積み増しして財務諸表を修正します。

 

3.開示後発事象

(1)意義

開示後発事象とは、決算日後に発生し、当該事業年度の財務諸表には影響しないが、翌事業年度以降の会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす会計事象です。

 

実質的な原因が決算日時点で存在せず、決算日後の事象の発生により、初めて明らかになった場合は、当期の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼすものではありませんが、翌期以降の会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する的確な判断に資するため財務諸表への注記が必要となります。

 

(2)決算日後に発生した事象における「発生」の時点

①会社の意思決定により進めることができる事象:当該意思決定のあったとき

②会社が他の会社との合意に基づいて進めることができる事象:当該合意の成立または事実の公表があったとき

③会社の意思に関係のない事象:当該事象の発生日または当該事象を知ったとき

 

(3)開示後発事象の事例

開示後発事象の例示として以下のような事象が考えられます。(監査・保証実務委員会報告76号「後発事象に関する監査上の取扱い」参照)

これらはあくまで例示のため、会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に与える影響等を考慮した上で開示の要否を検討する必要があります。

 

<開示後発事象の例示>からの抜粋

①会社が営む事業に関する事象

重要な事業の譲受、譲渡

重要な合併、会社分割

重要な事業からの撤退

 

②資本の増減等に関する事象

重要な新株の発行

重要な株式交換、株式移転

重要な自己株式の取得、処分、消却.

 

③資金の調達又は返済等に関する事象

多額な社債の発行、資金の借入

多額な社債の買入償還又は繰上償還

借換え又は借入条件の変更による多額な負担の増減

 

④会社の意思にかかわりなく蒙ることになった損失に関する事象

火災、震災、出水等による重大な損害の発生

不祥事等を起因とする信用失墜に伴う重大な損失の発生

 

4.継続企業の前提に関する事項を重要な後発事象として開示する場合

決算日後に、継続企業の前提に重要な疑義そ生じさせる事象または状況が発生し、

当該事象等を解消または改善するための対応をしても、なお、継続企業の前提に重要な不確実性が認められ、翌事業年度以降の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに重要な影響を及ぼすとき、財務諸表に注記が必要となります。

 

夫婦の間で居住用不動産の贈与を行った場合の取り扱い~配偶者控除の適用要件と手続き

1.特例の概要

 

婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できるというものです。

 

2.特例を受けるための適用要件

 

(1) 夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと

配偶者控除は同じ配偶者からの贈与については、一生に一度しか適用を受けることができません。

 

(2) 配偶者から贈与された財産が居住用不動産であること、または居住用不動産を取得するための金銭であること

 

(3) 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与を受けた配偶者が取得した居住用不動産に現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること

 

3.居住用家屋のみあるいは居住用家屋の敷地のみ贈与を受けた場合の配偶者控除の適用

この居住用家屋の敷地のみの贈与について配偶者控除を適用する場合には、次のいずれかに当てはまることが必要です。

 

(1) 夫又は妻が居住用家屋を所有していること。

 

(2) 贈与を受けた配偶者と同居する親族が居住用家屋を所有していること。
居住用家屋の敷地の一部の贈与であっても、配偶者控除を適用できます。

居住用家屋の敷地が借地権のときに金銭の贈与を受けて、地主から底地を購入した場合も、居住用不動産を取得したことになり、配偶者控除を適用できます。

 

4.適用を受けるための手続き

次の書類を添付して、贈与税の申告をすることが必要です。

 

(1) 財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍謄本又は抄本

(2) 財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍の附票の写し

(3) 居住用不動産の登記事項証明書その他の書類で贈与を受けた人がその居住用不動産を取得したことを証するもの

 

金銭ではなく居住用不動産の贈与を受けた場合は、上記の書類のほかに、その居住用不動産を評価するための書類(固定資産評価証明書など)が必要となります。

5.相続や贈与などにより取得した土地や家屋の評価方法~相続税・贈与税での評価

(1) 土地

 

土地は、原則として宅地、田、畑、山林などの地目ごとに評価します。
土地の評価方法には、路線価方式と倍率方式があります。

 

イ 路線価方式
路線価方式は、路線価が定められている地域の評価方法です。路線価とは、路線(道路)に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額のことで、千円単位で表示しています。
路線価方式における土地の価額は、路線価をその土地の形状等に応じた奥行価格補正率などの各種補正率で補正した後に、その土地の面積を乗じて計算します。

 

ロ 倍率方式
倍率方式は、路線価が定められていない地域の評価方法です。倍率方式における土地の価額は、その土地の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて計算します。

 

 (2) 家屋

 

固定資産税評価額に1.0倍して評価します。

 

(3) その他

 

イ 賃貸されている土地や家屋については、権利関係に応じて評価額が調整されます。

 

ロ 相続した宅地等が事業の用や居住の用として使われている場合には、一定の限度面積までの部分についてその評価額の一定割合を減額する相続税の特例があります。

 

ハ 負担付贈与あるいは個人の間の対価を伴う取引により取得した土地や家屋等について贈与税を計算するときは、通常の取引価額によって評価します。

 

住宅取得のための資金を父母・祖父母からもらった時の税務~贈与税非課税の特例

1.制度の概要

平成27年1月1日から平成33年(2021年)12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得又は増改築等(以下「新築等」といいます。)の対価に充てるための金銭(以下「住宅取得等資金」といいます。)を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、次の非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税となります(以下、「非課税の特例」といいます。)。

 

2.非課税限度額

受贈者ごとの非課税限度額は、次のイ又はロの表のようになっています。

新築等をする住宅用の家屋が省エネ等住宅とそれ以外で、非課税限度額は異なります。また、受贈者が最初に非課税の特例の適用を受けようとする住宅用の家屋の新築等に係る契約の締結日によっても非課税限度額は異なります。

 

平成31年(2019年)4月1日以後に住宅用の家屋の新築等に係る契約を締結して非課税の特例の適用を受ける場合の受贈者ごとの非課税限度額は、下記イ及びロの表の金額のうちいずれか多い金額となります。

既に非課税の特例の適用を受けて贈与税が非課税となった金額がある場合には、その金額を控除した残額が非課税限度額となります。

ただし、ロの表における非課税限度額は、平成31年(2019年)3月31日までに住宅用の家屋の新築等に係る契約を締結し、既に非課税の特例の適用を受けて贈与税が非課税となった金額がある場合でも、その金額を控除する必要はありません。

 

(国税庁ホームページより)

 

「省エネ等住宅」とは、省エネ等の基準に適合する住宅用の家屋であることについて、一定の書類により証明されたものをいいます。

 

3.贈与を受けた方の条件

贈与を受けた方が次の要件の全てを満たす場合、非課税の特例の対象となります。

(1) 贈与を受けた時に贈与者の直系卑属(贈与者は受贈者の直系尊属)であること。

(2) 贈与を受けた年の1月1日において、20歳以上であること。

(3) 贈与を受けた年の年分の所得税に係る合計所得金額が2,000万円以下であること。

(4) 平成21年分から平成26年分までの贈与税の申告で「住宅取得等資金の非課税」の適用を受けたことがないこと。

(5) 自己の配偶者、親族などの一定の特別の関係がある人から住宅用の家屋の取得をしたものではないこと、又はこれらの方との請負契約等により新築若しくは増改築等をしたものではないこと。

(6) 贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を充てて住宅用の家屋の新築等をすること。

受贈者が「住宅用の家屋」を所有することが、この特例の適用要件です。共有持分を有する場合も含まれます。

(7) 贈与を受けた時に日本国内に住所を有していること。
なお、贈与を受けた時に日本国内に住所を有しない人であっても、一定の場合には、この特例の適用を受けることができます。

(8) 贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住すること又は同日後遅滞なくその家屋に居住することが確実であると見込まれること。

 

4.居住用の家屋の新築、取得または増改築等の要件

「住宅用の家屋の新築」には、その新築とともにするその敷地の用に供される土地等又は住宅の新築に先行してするその敷地の用に供されることとなる土地等の取得を含みます。

「住宅用の家屋の取得又は増改築等」には、その住宅の取得又は増改築等とともにするその敷地の用に供される土地等の取得を含みます。

対象となる住宅用の家屋は日本国内にあるものに限られます。

 

(1) 新築又は取得の場合の要件

イ 新築又は取得した住宅用の家屋の登記簿上の床面積(マンションなどの区分所有建物の場合はその専有部分の床面積)が50㎡以上240㎡以下で、かつ、その家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が受贈者の居住の用に供されるものであること。

ロ 取得した住宅が次のいずれかに該当すること。

  • 建築後使用されたことのない住宅用の家屋

② 建築後使用されたことのある住宅用の家屋で、その取得の日以前20年以内(耐火建築物の場合は25年以内)に建築されたもの

③ 建築後使用されたことのある住宅用の家屋で、地震に対する安全性に係る基準に適合するものであることにつき、一定の書類により証明されたもの

④ 上記②及び③のいずれにも該当しない建築後使用されたことのある住宅用の家屋で、その住宅用の家屋の取得の日までに同日以後その住宅用の家屋の耐震改修を行うことにつき、一定の申請書等に基づいて都道府県知事などに申請をし、かつ、贈与を受けた翌年3月15日までにその耐震改修によりその住宅用の家屋が耐震基準に適合することとなったことにつき一定の証明書等により証明がされたもの

 

(2) 増改築等の場合の要件

イ 増改築等後の住宅用の家屋の登記簿上の床面積(マンションなどの区分所有建物の場合はその専有部分の床面積)が50㎡以上240㎡以下で、かつ、その家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が受贈者の居住の用に供されるものであること。

ロ 増改築等に係る工事が、自己が所有し、かつ居住している家屋に対して行われたもので、一定の工事に該当することについて、「確認済証の写し」、「検査済証の写し」又は「増改築等工事証明書」などの書類により証明されたものであること。

ハ 増改築等に係る工事に要した費用の額が100万円以上であること。
また、増改築等の工事に要した費用の額の2分の1以上が、自己の居住の用に供される部分の工事に要したものであること。

 

5.非課税の特例を受けるための手続き

非課税の特例の適用を受けるためには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、非課税の特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書に戸籍の謄本、登記事項証明書、新築や取得の契約書の写しなど一定の書類を添付して、納税地の所轄税務署に提出する必要があります。

 

土地建物等を売却した時に税金が安くなる制度~譲渡所得の特別控除について

1.制度の概要

土地建物を売ったときの譲渡所得の金額の計算において、特例として譲渡所得から特別控除が受けられる場合があります。

譲渡の種類とその特別控除額は、次のとおりです。

(1) 公共事業などのために土地建物を売った場合の5,000万円の特別控除の特例

(2) マイホーム(居住用財産)を売った場合の3,000万円の特別控除の特例

(3) 特定土地区画整理事業などのために土地を売った場合の2,000万円の特別控除の特例

(4) 特定住宅地造成事業などのために土地を売った場合の1,500万円の特別控除の特例

(5) 平成21年及び平成22年に取得した国内にある土地を譲渡した場合の1,000万円の特別控除の特例

(6) 農地保有の合理化などのために土地を売った場合の800万円の特別控除の特例

 

2.注意事項

 

(1) それぞれの特別控除額は、特例ごとの譲渡益が限度となります。

(2) 特別控除額は、その年の譲渡益の全体を通じて、合計5,000万円が限度となります。

(3) 5,000万円に達するまでの特別控除額の控除は、上記1の(1)から(6)の特例の順に行います。

 

マイホーム(居住用財産)を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例を利用することが一番多いのではないでしょうか

1.3,000万円の特別控除の特例制度の概要

マイホーム(居住用財産)を売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例です。

 

2.特例を受けるための適用要件

(1) 自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること。

なお、以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。

住んでいた家屋又は住まなくなった家屋を取り壊した場合は、次の2つの要件全てに当てはまることが必要です。

イ その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること。

ロ 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などに使っていないこと。

 

(2) 売った年の前年及び前々年にこの特例又はマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと。

 

(3) 売った年、その前年及び前々年にマイホームの買換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていないこと。

 

(4) 売った家屋や敷地について、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。

 

(5) 災害によって滅失した家屋の場合は、その敷地を住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。

 

(6) 売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと。
特別な関係には、このほか生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。

 

3.注意事項

住宅借入金等特別控除については、入居した年、その前年又は前々年に、このマイホームを売ったときの特例の適用を受けた場合には、その適用を受けることはできません。
また、入居した年の翌年又は翌々年中に、住宅借入金等特別控除の対象となる資産以外の資産を譲渡し、この特例の適用を受ける場合にも、住宅借入金等特別控除の適用を受けることはできません。

 

4.適用除外 

このマイホームを売ったときの特例は、次のような家屋には適用されません。

(1) この特例を受けることだけを目的として入居したと認められる家屋

(2) 居住用家屋を新築する期間中だけ仮住まいとして使った家屋、その他一時的な目的で入居したと認められる家屋

(3) 別荘などのように主として趣味、娯楽又は保養のために所有する家屋

 

5.適用を受けるための手続き

この特例を受けるためには、確定申告をすることが必要です。
確定申告書には、所定の書類を添えて提出します。

棚卸資産の評価はどうするのか?低価法とは?~棚卸資産会計基準より~

棚卸資産会計基準は、他の会計基準との整合性や棚卸資産の評価基準として低価法を原則とする国際的な会計基準とのコンバージェンスの観点から、それまでの原価法と低価法の選択適用を見直し、収益性の低下による簿価引き下げという考え方に基づいた評価基準や開示方法に関して整備したものです。

 

本会計基準は、棚卸資産を「通常の販売目的で保有する棚卸資産」と「トレーディング目的で保有する棚卸資産」に区分して、前者については、収益性の低下によって帳簿価額を切り下げること、後者については、市場価格に基づいて評価することを定めています。

 

1. 通常の販売目的で保有する棚卸資産の取扱い

(1) 通常の販売目的で保有する棚卸資産の評価

通常の販売目的で保有する棚卸資産は、取得原価をもって貸借対照表価額とし、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額とします。

 

この場合において、取得原価と当該正味売却価額との差額は当期の費用として処理します。

 

棚卸資産の収益性の低下による簿価切下げ額は、売上原価として処理しますが、棚卸資産の製造に関連し不可避的に発生すると認められるときには製造原価として処理します。

 

また、収益性の低下に基づく簿価切り下げ額が臨時の事象に起因し、かつ、多額であるときには特別損失に計上します。

 

この場合の具体的な例としては重要な事業部門の廃止、災害損失の発生などが挙げられます。

 

収益性の低下による簿価切り下げ額(前期に計上した簿価切り下げ額を戻し入れる場合には、当該戻入額相殺後の額)は、注記による方法または売上原価等の内訳項目として独立掲記する方法により開示する必要があります。

 

 (2) 正味売却価額とは

正味売却価額は以下のように算定されます。

正味売却価額=売価-(見積追加製造原価+見積販売直接経費)

見積販売直接経費は、一般的には、販売手数料、物流関連費など販売の都度、把握できる費用が考えられ企業の実態に合わせて判断することになります。

 

(3) 収益性が低下していないことが明らかである場合

①実務上の事務負担を配慮して収益性が低下していないことが明らかであり、事務負担をかけて収益性の低下の判断を行うまでもない場合には、正味売却価額を見積もる必要はないとされています。

 

ただし、これに該当するケースは、過去からの販売が好調で将来も安定的に十分な粗利率が高い棚卸資産の品目に限定されるものと考えられます。

 

②収益性が低下していることが明らかかどうかは、棚卸資産を管理する製造部門または営業部門の損益の状況や、品目別の損益管理を行っている場合における当該損益の発生状況などにより判断することになります。

 

そのため、自社で収益性が低下している事実を確認するために、どのような資料が利用できるかを把握しておく必要があります。

 

(4) 正味売却価額が観察できない場合

売却市場において市場価格が観察できないときには、合理的に算定された価額を売価とします。

 

これには、期末前後での販売実績に基づく価額を用いる場合や、契約により取り決められた一定の売価を用いる場合を含みます。

 

(5) 正味売却価額に代わる方法

営業循環過程から外れた滞留資産または処分見込等の棚卸資産について、合理的に算定された価額によることが困難な場合には、正味売却価額まで切り下げる方法に代えて、その状況に応じ以下のような方法により収益性の低下の事実を適切に反映するように処理します。

 

  • 帳簿価額を処分見込価額(ゼロまたは備忘価額を含む)まで切り下げる方法

 

  • 一定の回転期間を超える場合、規則的に帳簿価額を切り下げる方法

 

(6) 再調達原価の適用

製造業における原材料等のように再調達原価の方が把握しやすく正味売却価額が当該再調達原価に連動して動くと想定される場合には、継続して適用することを条件として再調達原価や最終仕入原価を正味売却価額の代わりとすることができます。

 

(7) 売価還元法を採用している場合の留意点

スーパー、百貨店などの小売業では、棚卸資産の評価について売価還元法を採用しているケースが多いと考えられます。

 

棚卸資産会計基準においては、売価還元法を採用している場合においても正味売却価額が帳簿価額よりも下落しているときには、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額とすることが必要であるとされています。

 

他方、値下げ額および値下げ取り消し額を除外した売価還元低価法を採用している企業は、売価還元低価法の算式により算出した帳簿価額をもって収益性の低下に基づく簿価引き下げ額を反映したものと見なすことができるとしています。

 

上場企業等では、連続意見書第四で示されている売価還元平均原価法と売価還元低価法の2つが多く採用されています。

 

売価還元低価法では値下げ額を考慮しない値入ベースの売価により原価率が算定されるため、売価還元平均原価法と比較すると原価率が低く計算されることになります。

 

売価還元平均原価法も売価還元低価法も、ともに受入金額に基づき原価率を算定するため、棚卸減耗が発生した際に、全額当期の売上原価として取り扱われます。

 

2. 収益性低下の判断および簿価切り下げの単位

(1) 原則的な方法

棚卸資産会計基準では、収益性の低下の有無に係る判断および簿価引き下げは、原則として個別品目ごとに行います。

 

棚卸資産に関する投資の成果は、通常、個別品目ごとに確定するので、収益性の低下を判断し簿価切り下げを行う単位も個別品目単位であることが原則と考えられます。

 

企業の状況によっては、収益性の低下の有無に係る判断および簿価の切り下げを、グルーピングした単位で行うことが認められています。

 

つまり、複数の棚卸資産をグルーピングした単位で行う方が投資の成果を適切に示すことができると判断されるときにはグルーピングを行った単位で収益性の低下を認識することができます。

 

(2) 複数の棚卸資産をグルーピングした単位で行う方法

この収益性の低下を認識する棚卸資産の単位は個々の企業の状況によって異なるため、十分な検討が必要です。

 

棚卸資産会計基準では、以下に示すようなものは、複数の棚卸資産をグルーピングした単位で行う方が投資の成果を適切に示すことができると判断されるため、これらを1グループとして取り扱うことが適切とされています。

 

①補完的な関係にある複数商品の売買を行っている企業においていずれか一方の売買だけでは正常な水準を超えるような収益は見込めないが双方の売買で正常な水準を超える収益が見込めるような場合

 

②同じ製品に使われる材料、仕掛品および製品を1グループとして取り扱う場合

 

3. 洗替え法と切放し法の選択適用

棚卸資産会計基準においては、継続適用を原則として、棚卸資産の種類ごとに簿価の切り下げの要因ごとに前期の簿価切り下げ額の戻し入れを行う方法(洗替え法)と行わない方法(切放し法)が選択適用できます。

 

簿価切り下げの要因としては、物理的な劣化、経済的な劣化、市場の需給変化に起因する売価の低下などが挙げられています。

 

キャッシュとは何か?キャッシュ・フロー計算書でのキャッシュの定義と区分、作成方法について

1.キャッシュ・フロー計算書とは

キャッシュ・フロー計算書とは、一会計期間の企業活動により、資金がどのように生み出され、何に使われたか、どのような資金調達がなされ、どのような投資がなされたのかということを示す財務諸表です。

 

貸借対照表、損益計算書とともに、財務諸表を構成していて、2000年3月期から金融商品取引法で開示が義務付けられています。

 

2.キャッシュ・フロー計算書の必要性

キャッシュ・フロー計算書が貸借対照表、損益計算書に続く第3の財務諸表として必要とされるのは、利益の金額が必ずしも資金の増加とイコールではないからです。

 

キャッシュ・フロー計算書では、資金の増加としてのキャッシュ・イン・フローと資金の減少としてのキャッシュ・アウト・フローが表示され、過去の一定期間の資金収支の状況が明らかになります。

 

損益計算書に計上された利益に資金的な裏付けがない場合は、利益を計上していても資金が回らずに倒産することになります。いわゆる黒字倒産です。

 

資金がショートする兆候は、営業キャッシュ・フローがマイナスになることから知ることができます。

 

また、キャッシュ・フロー計算書における資金は、損益計算書を作成する際に選択した会計処理の方法による影響を受けないことも特徴です。

 

3. キャッシュ・フロー計算書の区分

キャッシュ・フロー計算書は、キャッシュ・フローを企業活動の性格によって、営業活動、投資活動、財務活動の三つに分けて作成します。

 

①   営業活動によるキャッシュ・フロー

「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分には、商品の販売による収入や商品の仕入による支出など営業損益計算の対象となった取引のほか、投資活動および財務活動以外の取引によるキャッシュ・フローを記載します。

 

売上に関する収入

仕入に関する支出

製造活動・販売活動に係る支出

などが営業活動の例になります。

 

② 投資活動によるキャッシュ・フロー

「投資活動によるキャッシュ・フロー」の区分には、固定資産の取得および売却、現金同等物に含まれない有価証券の取得および売却等によるキャッシュ・フローを記載します。

 

有形固定資産の取得による支出・売却による収入

有価証券(現金同等物を除く)の取得による支出・売却による収入

貸付けによる支出

などが投資活動の例になります。

 

③ 財務活動によるキャッシュ・フロー

「財務活動によるキャッシュ・フロー」には、資金の調達および返済によるキャッシュ・フローを記載します。

 

株式の発行による収入

自己株式の取得による支出

配当金の支払

社債の発行および借り入れによる収入

社債の償還および借入金の返済による支出

などが財務活動の例になります。

 

4. 作成時期と作成方法

キャッシュ・フロー計算書は、原則として連結ベースで作成しますが、連結財務諸表を作成・開示していない会社は、個別ベースのキャッシュ・フロー計算書を作成します。

 

営業活動によるキャッシュ・フローの表示方法には、主要取引ごとに総額表示する直接法と、税金等調整前当期純利益をベースに非資金損益項目その他を調整する間接法の2通りがあります。

 

① 直接法

営業収入、原材料または商品の仕入支出、人件費支出、その他の営業支出という主要な取引ごとに総額で表示します。主要な取引ごとに資金の入りと出を表示しますのでキャッシュ・フローの状況が分かりやすいという長所がある反面、この方法は作成するのに大変手間がかかるという難点があります。

 

② 間接法

連結損益計算書の税金等調整前当期純利益をベースに減価償却費など非資金損益項目や営業活動に直接結びつく売掛金、買掛金などの資産、負債の増減額のほか、その他の調整をして営業活動によるキャッシュ・フローを作成します。

 

間接法は連結損益計算書の税金等調整前当期純利益をベースに非資金損益項目や連結貸借対照表の資産、負債の増減額などをプラス・マイナスして資金の流れを間接的に表示するため、直接法のように資金の実際の流れに即しておらず、分かりづらいという難点があります。一方、連結損益計算書と連結貸借対照表から容易に作成できるという大きな長所があります。

 

そのほか利益とキャッシュ・フローの結び付きを明らかにできるという直接法にない利点があります。

 

ほとんどの上場企業が間接法により開示しており、直接法は少数派です。

 

間接法が主流を占めている理由には、間接法の方が、連結損益計算書および連結貸借対照表との関連が明確となることと、財務諸表項目からの作成が容易であることなどが考えられます。

 

5. キャッシュ・フロー計算書の資金の範囲について

キャッシュ・フロー計算書では、対象とする資金の範囲を現金(手許現金および要求払い預金)および現金同等物としています。

 

資金の範囲は、毎期継続して適用し、みだりに変更してはなりません。資金の範囲を変更した場合には、会計処理の原則および手続きの変更に当たり、その旨、その理由および影響額を記載しなければなりません。

 

現金同等物

現金同等物とは、a)容易に換金可能であり、かつ、b)価値の変動について僅少(きんしょう)なリスクしか負わない短期投資をいいます。

 

現金同等物には、例えば、取得日から満期日または償還日までの期間が3カ月以内の短期投資である定期預金、譲渡性預金、コマーシャル・ペーパーなどが含まれます。

 

現金同等物は、上記のa)およびb)の両条件を満たす必要があり、市場性のある株式のようにa)換金が容易であっても、b)価値変動リスクが僅少、とはいえないものについては、現金同等物には含まれません。

 

また、担保に提供されている定期預金や、引き出しが制限されているような預金などは、取得日から満期日または償還日までの期間が3カ月以内であっても、実質的にa)換金が容易と考えられず、現金同等物には含められません。

 

6.注記事項

キャッシュ・フロー計算書の注記事項は、以下のとおりです。

 

  • 資金の範囲に含めた現金および現金同等物の内容ならびにその期末残高の連結貸借対照表科目別の内訳

 

  • 資金の範囲を変更した場合には、その旨、その理由および影響額

 

  • 株式の取得または売却により新たに連結子会社となった会社の資産・負債または連結子会社でなくなった会社の資産・負債に重要性がある場合には、当該資産・負債の主な内訳

 

  • 営業の譲受または譲渡により増減した資産・負債に重要性がある場合には、当該資産・負債の主な内訳

 

  • 重要な非資金取引

 

以下は、重要な非資金取引の例示です。

 

  1. 転換社債の転換
  2. ファイナンス・リースによる資産の取得
  3. 株式の発行による資産の取得または合併
  4. 現物出資による株式の取得または資産の交換