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会計上の見積りの開示に関する会計基準~基本方針、開示目的、開示項目、注記事項

企業会計基準委員会(以下、ASBJ)は、2020年3月31日に企業会計基準第31号「会計上の見積りの開示に関する会計基準」(以下、本会計基準)を公表しました。

 

1.開発にあたっての基本方針

 

ASBJは、本会計基準の開発に当たっての基本的な方針として、原則(開示目的)を示した上で、具体的な開示内容は企業が開示目的に照らして判断することとしています。

本会計基準の開発にあたっては、IAS第1号「財務諸表の表示」第125項の定めを参考としています。

 

2.会計上の見積りの開示目的

 

(1)開示目的

 

本会計基準では、当年度の財務諸表に計上した金額が会計上の見積もりによるもののうち、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目における会計上の見積りの内容について、財務諸表利用者の理解に資する情報を開示することを開示目的としています。

 

(2)開示目的の背景

 

財務諸表を作成する過程では、財務諸表に計上した項目の金額を算出するに当たり、会計上の見積りが必要となるものがあります。

会計上の見積りは、財務諸表作成時に入手可能な情報に基づいて合理的な金額を算出するものですが、見積もりの方法や見積もりの基礎となる情報は様々であり、財務諸表に計上した金額のみでは、当該金額が含まれる項目が翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性があるかどうかを財務諸表利用者が理解することは困難です。

 

当年度の財務諸表に計上した金額が会計上の見積もりによるもののうち、翌年度の財務委諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目における会計上の見積りの内容についての情報は、財務諸表利用者にとって有用な情報であると考えられます。

 

(3)本会計基準設定の目的

 

翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性が高い項目は企業によって異なることから、個々の会計基準を改正して会計上の見積りの開示の充実を図るのではなく、会計上の見積りの開示について包括的に定めた会計基準において原則(開示目的)を示し、開示する具体的な項目及びその記載内容については当該原則(開示目的)に照らして判断することを企業に求めることが適切であると考えています。

 

3.開示する項目の識別

 

会計上の見積もりの開示にあたり、当年度の財務諸表に計上した金額が会計上の見積りによるもののうち、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目を識別するとしています。

 

(1)項目の識別における判断

 

翌年度の財務諸表に及ぼす重要な影響を検討するにあたっては、影響の金額的な大きさ及びその発生可能性を総合的に勘案して企業が判断することとしています。

影響の金額的大きさやどの程度の影響が見込まれる場合に重要性があるとするかなどの項目の識別について、判断のための詳細な規準は示さないこととされました。

 

(2)識別する項目

 

① 対象

識別する項目は、通常、当年度の財務諸表に計上した資産及び負債であるとしています。

 

② 識別の考え方

・当年度の財務諸表に計上した金額に重要性があるものに着目して開示項目を識別するのではありません。

・当年度の財務諸表に計上した金額委が会計上の見積りによるもののうち、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性が高いものに着目して開示する項目を識別します。

 

③ 例示

固定資産について減損損失の認識は行わないとした場合でも、翌年度の財務諸表に及ぼす影響を検討した上で、当該固定資産を開示する項目として識別する可能性があるとしています。

 

④ その他

なお、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある場合には、当年度の財務諸表に計上した収益及び費用、並びに会計上の見積りの結果、当年度の財務諸表に計上しないこととした負債を識別することを妨げないとしています。

また、注記において開示する金額の算出に当たって見積りを行ったものについても、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある場合には、これらを識別することは妨げないとしています。

4.注記事項

 

(1)会計上の見積もりの開示の対象とした項目名の注記

 

開示する項目として識別した項目について、会計上の見積りの内容を表す項目名を記載することとしています。

当該注記は独立の注記とし、識別した項目が複数ある場合には、それらの項目名は単一の注記として記載することを求めています。

 

(2)項目名に加えて注記する事項

 

① 当年度の財務諸表に計上した金額

 

② 会計上の見積りの内容について財務諸表利用者の理解に資するその他の情報

 

具体的な内容や記載方法は、開示目的に照らして判断することとしています。

 

なお、財務諸表の他の個所の注記に含めて記載がある場合には、当該他の注記事項を参照することにより当該事項の注記の記載に変えることができるとしています。

 

(3)財務諸表利用者の理解に資するその他の情報の例示

 

① 当年度の財務諸表に計上した金額の算出方法

② 当年度の財務諸表に計上した金額の算出に用いた主要な仮定

③ 翌年度の財務諸表に与える影響

 

上記は例示であり、注記事項は開示目的に照らして判断するとしています。

 

5.連結財務諸表を作成している場合の個別財務諸表の取扱い

 

連結財務諸表を作成している場合に、個別財務諸表において本会計基準に基づく注記を行うときは、「会計上の見積もりの内容について財務諸表利用者の理解に資するその他の情報」の注記事項について、連結財務諸表における記載を参照することができるとしています。

 

6.適用時期及び経過措置

 

(1)適用時期

 

2021年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用します。

ただし、本会計基準の公表日以後終了する連結会計年度及び事業年度における年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することができます。

 

(2)適用初年度の取扱い

 

本会計基準の適用初年度において、本会計基準の適用は表示方法の変更として取り扱います。

ただし、適用初年度の連結財務諸表及び個別財務諸表に併せて表示される前連結会計年度における連結財務諸表に関する注記及び前事業年度における個別財務諸表に関する注記(比較情報)に記載しないことができるとしています。

グループ法人税制~連結納税制度の見直し(案) について

1.はじめに

 

連結納税制度について、制度の適用実態やグループ経営の実態を踏まえ、企業の事務負担の軽減等の観点から簡素化等の見直しを行い、損益通算の基本的な枠組みは維持しつつ、各法人が個別に法人税額等の計算及び申告を行うグループ通算制度に移行します。

 

2.連結納税制度からグループ通算制度への移行

 

(1)グループ通算制度

 

グループ通算制度は各法人が個別に法人税額等の計算及び申告を行う制度です。

企業グループ内の各法人を納税単位として、各法人が個別に法人税額の計算及び申告を行いつつ、損益通算等の調整を行う簡素な仕組みとされ、申告納付や修正・更正に係る事務負担の軽減が図られます。

 

また、連結納税制度の選択のハードルとなっている適用開始・グループ加入時の時価評価課税・欠損金の切捨て等について組織再編税制と整合性が取れた制度とすることで、その対象が縮小されます。

 

(2)現行の連結納税制度

 

現行の連結納税制度は、企業グループ全体を一つの納税単位とし、一体として計算した法人税額等を親法人が申告する制度です。

 

法人間の連絡・調整が煩雑で、申告のための事務負担や計算誤りがあった場合の修正・更正の事務負担が過重になっており、損益通算のメリットがあるにもかかわらず、制度を選択していない企業グループも多く存在していました。

 

 

3.所得金額及び法人税額の計算

 

 (1)損益通算

 

① グループ通算制度

各法人が納税主体となることから、各法人の所得金額又は欠損金額を計算した上で、欠損法人の欠損金額をグループ内の他の法人の所得金額と損益通算します。

所得法人の所得金額と通算されます。

 

研究開発税制及び外国税額控除については、企業経営の実態を踏まえ、現行制度と同様、通算グループ全体で税額控除額を計算します。

 

② 損益通算の方法

損益通算の方法はプロラタ方式で行われ、欠損法人の欠損金額の合計額(所得法人の所得の金額の合計額を限度)を所得法人の所得の金額の比で配分し、所得法人において損金算入されます。

 

この損金算入された金額の合計額は、欠損法人の欠損金額の比で配分し、欠損法人において益金算入されます。

 

(2)繰越欠損金の通算

 

① グループ通算制度における繰越欠損金の通算

通算グループ内の各法人の欠損金の繰越控除前の所得(損益通算後)の金額50%相当額(中小法人等、更生法人等及び新設法人については所得金額)の合計額が控除限度額とされます。

このため、通算グループ内の各法人の控除限度額の合計額は、連結納税制度におけるグループ全体の控除限度額と変わらないと考えられます。

 

グループ通算制度は、個別申告方式であるため、各法人の損益通算後の所得金額からそれぞれ繰越欠損金の控除が行われます。

そのため、損益通算後の自己の所得金額がゼロ又はマイナスである場合には欠損金の控除ができず、通算グループ内の他の所得法人において控除されることになります。

 

連結納税制度とグループ通算制度では、グループ全体での控除額は変わらないものの、各社での控除額は異なると考えられます。

 

② グループ通算制度の適用法人の当期の所得金額又は過年度の欠損金額について誤りがあった場合

通算グループ内の他の法人との間で授受した欠損金額を当初申告額に固定することで、その誤りがあった法人のみが欠損金の繰越控除額を再計算することとされます。

ただし、欠損金の繰越期間に対する制限を潜脱するため又は離脱法人に欠損金を持たせるためにあえて誤った当初申告を行うなど、法人税の負担を不当に減少させることとなると認められるときは、職権更正において再計算ができることとされます。

 

(3)税効果相当額の授受

 

通算グループ内の法人間で、グループ通算制度を適用することにより減少する法人税及び地方法人税の額に相当する金額( 「通算税効果額」という)を授受する場合には、その授受する金額は、益金の額及び損金の額に算入しないこととされます。

 

(4)親法人の適用開始前の繰越欠損金の取扱い

 

親法人も子法人と同様、グループ通算制度の適用開始前の繰越欠損金を自己の所得の範囲内でのみ控除できます。

 

4.開始・加入時の時価評価

 

(1)時価評価課税

 

 

グループ通算制度では、以下の取り扱いになります。

 

① 親法人

グループ通算制度では、親法人も子法人と同様に取り扱われ、時価評価法人の範囲に含まれます。

 

② 子法人

子法人は時価評価課税の対象となる範囲が縮小されます。

 

グループ通算制度では、相対取引での株式購入により完全子会社化された子法人についても、適格組織再編成と同等の要件を満たせば時価評価の対象外となります。

 

なお、連結納税制度では、租税回避防止の観点から、原則として、子法人が適用開始又は連結グループへの加入に際して保有する時価評価資産の時価評価課税が行われ、含み損益を清算してから連結納税が適用されます。

また、時価評価の対象となる子法人の開始・加入前に発生した繰越欠損金は全額が切り捨てられます。

 

5.欠損金の持込制限及び含み損等の利用制限

 

(1)欠損金の持込制限

 

① グループ通算制度では開始前欠損金のうち持込可能なものについては、自己の所得金額の範囲内でのみ繰越控除できる欠損金として「特定欠損金」とされます。

 

なお、連結納税制度では、親法人の開始前欠損金は制限なく 連結グループ内で繰越控除が可能です。

 

② なお、既存の連結納税制度適用グループの親法人の欠損金(非特定連結欠損金)は、グループ通算制度への移行後も特定欠損金に該当しないものとして、通算グループ内の他の法人の所得金額と通算できることとされます。

 

(2)含み損等の利用制限

 

① 組織再編税制との整合性の観点から、開始・加入前の支配関係が5年超継続していない親法人と子法人について、支配関係発生前の欠損金の持込み及び含み損の通算グループ内での損金算入を一定期間において制限する措置が講じられます。

 

 ② ただし、開始・加入前に親法人との間に支配関係が5年超継続していない子法人であっても、通算グループ内のいずれかの法人との間に共同事業性がある場合には、支配関係発生前の欠損金の持込み及び含み損の通算グループ内での損金算入について制限を受けないこととされます。

 

6.適用時期  

 

令和4年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。

減損会計~減損の定義、対象資産、手続き、会計単位、兆候、テスト、認識

1.減損の定義

 

「資産の帳簿価額が回収可能価額を超えないよう資産の帳簿価額を回収可能価額まで減少させる手続き」をいいます。

 

2.減損の対象となる資産

 

有形固定資産

無形資産

投資不動産(原価モデル)

関連会社株式

など

 

3.減損手続きの流れ

 

以下の流れで行います。

 

(1)会計単位の決定

個別資産または資金生成単位

 

(2)減損の兆候の検討

 

(3)減損テスト

帳簿価額と回収可能価額の比較

 

(4)減損損失の認識

回収可能価額まで帳簿価額を減額

 

4.会計単位

 

個別資産のみでは独立したキャッシュ・インフローを生成しない場合は、概ね独立したキャッシュ・インフローを生成する最小の資産グループで減損の検討を行います。

 

5.減損の兆候

 

(1)外部の情報

市場価値の著しい下落

経営環境の著しい悪化

市場金利の上昇

PBR1倍割れ

など

 

(2)内部の情報

陳腐化

物的損害

遊休化

事業の廃止計画

営業損益の著しい悪化

など

 

(3)日本基準との比較

 

①日本基準

「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針11-17」により具体的な数値基準を用いています。

 

例:

営業活動から生じる損益又はキャッシュ・フローが継続してマイナス

市場価額が帳簿価額から50%程度以上下落

 

②IFRS

より広い意味合いを有する状況証拠であり、感応度が高いため、より早期に減損の兆候が把握される傾向にあります。

また、純資産の帳簿価額が、その企業の株式の時価総額を超過している場合も、 減損の兆候として認められる例の 1つとされています。

 

 

6.減損テスト

 

減損の兆候がある場合、減損テストを実施します。

 

(1)回収可能価額の算定

 

①処分コスト控除後の公正価値

資産の公正価値から資産の処分に直接起因するコストを控除したものになります。

 

②使用価値

将来キャッシュ・フローの見積額の割引現在価値になります。

 

③減損テストの頻度

減損の兆候がある資産は、減損テストを実施します。

 

耐用年数が確定できない無形資産やのれんが含まれる資金生成単位は、減損の兆候がなくても、年1回は減損テストを実施します。

 

(2)のれん

 

のれんは、企業結合のシナジーから便益を受けると見込まれる資金生成単位または資金生成単位グループに配分されます。

 

のれんを内部管理目的で監視している企業内の最小レベルで、かつ、事業セグメントより大きくない資金生成単位あるいは資金生成単位グループに配分されます。

 

(3)全社資産

 

①合理的で首尾一貫した基準により資金生成単位に配分できる場合

配分された全社資産を他の資産と同様に取り扱い減損手続きを行います。

 

②合理的で首尾一貫した基準により資金生成単位に配分できない場合

全社資産を含めずにそれぞれの資金生成単位について減損手続きを行います。

次に、減損後の資金生成単位グループに全社資産を加えて再度減損テストを行います。

 

7.減損損失の認識

 

(1)IFRS(IAS36.59)

 

減損の兆候が存在する場合には、回収可能価額を算定し、資産の帳簿価額がその回収可能価額を上回る場合に、その差額を減損損失として認識します。

 

回収可能価額は、処分費用控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い金額となります。

 

認識と測定を同時に行う「1段階アプローチ」と呼ばれています。

 

(2)日本基準

 

「固定資産の減損に係る会計基準(以下「基準」)二2,3」の定めにより、認識と測定を別個にこなう「2段階アプローチ」を行います。

 

減損の兆候が存在する場合には、 最初に減損の認識の判定(資産の帳簿価額を、使用及び最終的処分を通じて発生する割引前将来キャッシュ・フローの総額と比較する)を行います。

 

その結果、資産の帳簿価額が割引前キャッシュ・フローの総額よりも大きいため、回収不能と判断された場合、資産の帳簿価額を回収可能価額(正味売却価額と使用価値のいずれか高い金額)まで減額するように減損損失を認識します。

 

(3)のれんの減損

 

①IFRS(IAS36.10,11,80)

 

規則的な償却は行わないませんが、 減損の兆候が無くても毎期1回、減損の兆候がある場合には追加で、減損テストを行います。

 

②日本基準

 

のれんは、20年以内のその効果が及ぶ期間にわたって規則的に償却を行った上で、減損の兆候がある場合には、別途、減損テストを実施します。

 

8.減損損失の戻入れ

 

(1)IFRS(IAS36.110,117,124)

 

①のれんの減損損失の戻入れは禁止されています。

 

②他の資産については、 毎年、 戻入れの兆候について検討しなければなりません。

 

(例)

・外部の情報

市場価値の著しい増加

経営環境の著しい改善

市場金利の下落

 

・内部の情報

性能の改善または拡張

営業損益の著しい改善

 

③戻入れが必要な場合は、過年度に減損がなかったとした場合の(償却又は減価償却控除後の)帳簿価額を上限として、減損損失を戻し入れます。

 

(2)日本基準

 

あらゆる資産について禁止されています。

 

代表取締役との定期的会合~日本監査役協会・監査役監査実施要領より

監査役が代表取締役と定期的に会合を持つ場合の実施要領を日本監査役協会では定めています。

 

1 代表取締役と監査役が定期的に会合を持つことの意義

 

(1)    監査役の責務

監査役は、健全で持続的な成長と中長期的な企業価値の創出を実現し、社会的信頼に応える良質な企業統治体制を確立する責務を負っている。

 

(2)    定期的会合の目的

監査役が、その職責を果たすためには、 会社業務執行の最高責任者としての権限を有する代表取締役との間で十分な意思疎通を図り、相互認識と信頼関係を深めることが最も重要な基盤となる。

 

(3)    定期的会合の内容

監査役は、 代表取締役の経営方針を確かめるとともに、会社が対処すべき課題、会社を取り巻くリスクのほか、補助使用人の確保及び監査役への報告体制その他の監査役監査の環境整備の状況、 監査上の重要課題等について意見を交換する。

 

社長及び経営管理の中心となる取締役との会合は、次の①~③に掲げる有効性発揮のために、 毎期必ず行う行事としてルール化するよう努める。

 

① 監査役が企業集団のリスクを把握して監査の重点事項と監査の方法を選択する。

 

② 経営トップに監査役の役割や会社に対する監査役監査の有用性の理解を得ることにより、 有効な監査を円滑に遂行する環境を整備する。

 

③ 経営トップの交代や監査役の交代に際しての監査環境・意思疎通のレベルダウンを防ぐ。

 

 

2 会合のメンバー

 

(1)監査役側の出席者

非常勤監査役を含め全員が望ましいが、常勤監査役のみとすることもある。

 

(2)取締役側の出席者

社長1人のみ、あるいは社長のほかに経営管理の中心となる数名の取締役との共同会合 (自由な議論がなされるためには監査役を含めても出席者は少数が良い) 等、 目的、 議題等に応じて社長と意見交換して決定する。

 

 

3 開催時期と主要議題

 

(1) 株主総会終了後の会合における主要議題

 

①  監査方針、 監査計画の説明及び円滑な監査活動の保障の要請

監査役会の監査計画等の概要を説明し、 円滑に監査活動を遂行できるよう、社長に対し監査役監査の環境整備を要請する。

 

②  経営方針の確認

 

③  社長をはじめ経営トップは、社会的通念に即した行動をとり、ダブルスタンダードを黙認しない、聖域を容認しないことの確認

 

④  経営トップに「不正をしてでも」という心理的圧力要因、動機、画策がないことの確認 (面と向かって確認しなくても、 話し合いの中で心証を得ることでもよい)

 

⑤  会社が対処すべき課題、 リスク等についての意見交換

 

⑥  代表取締役社長をはじめ経営トップが自らの職責として内部統制システムの整備に努めることの要請並びに内部統制システムに係る取締役会決議の内容及び決議に基づく内部統制システムの構築・運用状況についての意見交換

 

②~⑥については、 取締役の職務執行、 善管注意義務及び取締役会の監督義務の状況を監視するため必須のものとして把握する。

 

⑦  取締役からの監査役(会)への報告事項についての協議

取締役又は取締役会が会社の業務の適正を確保するために整備する体制の中に、取締役及び使用人が監査役(監査役会設置会社においては監査役会又は監査役)に報告をするための体制その他監査役の報告に関する体制が含まれる。

 

(2) 期中の会合における主要議題

 

①  社長から経営課題その他監査役(会)への報告事項の報告

 

②  役員人事の方針・考え方

 

③  監査役監査実施状況とその結果についての社長への報告

 

④  社長に対する助言・勧告(必要あると認めたときの)

 

⑤  内部統制システムの整備状況についての意見交換

 

⑥  監査職務の円滑な遂行、監査の実効性確保のための監査体制(監査役の員数、構成員の専門性、監査役スタッフの体制等)についての意見交換、及び監査役の候補者、 監査役選任議案を決定する手続、 補欠監査役の予選の要否等についての協議(株主総会議案の原案策定前の適時に)

 

⑦  監査役監査の環境整備事項に関する社長への要請及び意見交換 (必要に応じ)

 

(3)期末決算準備時の会合における主要議題

 

①  年度決算見通しの確認

 

②  年間監査役監査実施状況についての取締役への説明

 

③  内部統制システムの構築・運用の年間推進状況についての意見交換、基本方針見直しの要否に関する業務執行部門の検討状況確認

 

④  次期経営課題の確認

 

(4)期末監査以降、監査役会監査報告作成時から株主総会前の会合における主要議題

 

①  社長から監査役選任に関する提案受領

 

②  監査役監査の環境整備事項に関する取締役への要請及び意見交換

 

③  会社が対処すべき課題についての取締役の見解聴取

 

④  会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事実や後発事象の有無等について、 取締役から報告受領

 

⑤  監査役及び監査役会監査報告の内容と留意点についての監査役からの報告

 

⑥  株主総会における対応についての留意点等の意見交換

 

海外M&Aを経営に活用する9つの行動

経済産業省は、「我が国企業による海外M&A研究会」等における議論の成果として、(1)日本企業が今後、海外M&Aを有効に活用していく上で留意すべきポイントと参考事例をまとめた報告書及び(2)特に経営者目線で重要なポイントを事例とともにまとめた「海外M&Aを経営に活用する9つの行動」をとりまとめ、2018年3月に公表しました。

 

1.「報告書」と「9つの行動」

 

日本企業が今後、海外M&Aを有効に活用していく上で留意すべきポイントと参考事例をまとめた(1)「我が国企業による海外M&A研究会報告書」をとりまとめています。


さらに、研究会等において、海外M&Aに取り組む上では経営者の果たすべき役割やコミットメントが重要であるとの指摘が多くなされたことを踏まえ、今後の海外M&Aの取組に役立つよう、特に経営者目線からみて特に重要なポイントについて事例とともに、(2)「海外M&Aを経営に活用する9つの行動」として、簡潔で読みやすい形でとりまとめています。

 

海外M&Aの裾野が一層拡大している中、今後、「報告書」や「9つの行動」の浸透を目指すこととしています。

 

2.「9つの行動」のポイント

 

海外M&Aにおいては、経営トップが果たすべき役割が極めて大きくなっています。

海外M&Aを自社の成長に活用している企業の多くは、経営トップ自らが海外M&Aの本質を理解し、統合後の経営イメージを明確に持ちつつゴールから逆算した先手を打ったリーダーシップを発揮するとともに、自ら相当なリソースを投入し、前面に出て関与しています。

特に、買収の実行局面のみならず、その「前」(戦略立案と周到な準備)と「後」(買収を契機としたグローバル成長の実現)に重要性を認識し、統合後の経営まで中長期にわたりコミットしています。

そこで、報告書の内容から、特に経営トップ等が留意すべき点を抽出し事例とともに以下の9つの行動にとりまとめています。

 

 

「海外M&Aを経営に活用する9つの行動」より

 

(1)はじめに具体的・明確な「成長戦略・ストーリー」はあるか。

 

海外M&Aありきではなく、まず、中長期の時間軸の中で「目指すべき姿」を明確化する。

そこから逆算して「成長戦略・ストーリー」を策定し、これに沿って海外M&Aを有機的に関連付けて展開する。

 

(2)「成長戦略・ストーリー」を、経営トップが自ら語り、」社内に浸透させているか。

 

「ストーリー」実現に向け、海外M&Aの目的を具体化。

プロジェクト・オーナーの責任と権限を明確化し、実行部隊が自分事として一貫して実施していく体制を構築。

 

(3)ディールに着手する前から、買収企業を「誰が」「どう」経営するか、統合後まで見据えた入念な準備はできているか。

 

平時から目的に合致する案件を能動的に探索し検討を行う。

統合後の経営まで、時間軸も含めた具体的なイメージをもって、常に先手を打った周到な準備を行う。

 

(4)買収プロセスの重要ポイントやリスク、その対処方策について、担当者やアドバイザー任せではなく、自ら掌握できているか。

 

初期の海外M&Aの目的を見失わず、撤退条件を明確化。

「スケジュールありき」や「ディール成立の自己目的化」を回避する。

 

(5)「ディールの成立」を「M&Aの成功」と混同していないか。

 

統合により双方の強みを生かす成長を実現して初めて成功。

経営トップの役割はむしろディール成立後に増大。

統合プロセスは、初動が重要。

契約書名で安堵せず、その後の統合に向け、先手を打った行動に直ちに着手。

 

(6)買収先の経営実態や異変をしっかり把握できているか。

 

買収先の経営を放任しては、十分な統合効果を実現できず、危機への対処も後手に回る。

買収先の経営の自主性を尊重しつつも、何が起きているのか常にモニタリングし、フォローできる体制を確保。

 

(7)自社の強み・経営哲学は買収先に共有・浸透できているか。

 

言語・文化の異なる相手に伝わるように、シンプル・明快なメッセージにまとめ、互いにリスペクトできる関係を構築。

「買う」「買われる」から同じ方向を向いた“We”へ「主語の転換」を図り、双方の強みを生かした成長を実現。

 

(8)自社の経営・システム・人材は、グローバルに通用するか。

 

海外M&Aを契機に、グローバルに通用する経営に向け人材育成・社内ルールの見直し等、自己変革に取り組む。

グローバルな視点から自社の強み・弱みを把握し、買収した海外企業の優れたシステムや人材を積極的に取り入れる。

 

(9)過去の経験・苦労を次に生かす仕組みができているか。

 

失敗も含め過去の経験・苦労は最良の教科書。

組織として率直に振り返り、教訓・ノウハウを経営トップ以下で共有する。

自社なりの「型」を確立し、平時からの備えをもって次なる海外M&Aにつなげていく。

 

「海外M&Aを経営に活用する9つの行動」~我が国企業による海外M&A研究会報告書~

 

経済産業省は、「我が国企業による海外M&A研究会」等における議論の成果として、(1)日本企業が今後、海外M&Aを有効に活用していく上で留意すべきポイントと参考事例をまとめた報告書及び(2)特に経営者目線で重要なポイントを事例とともにまとめた「海外M&Aを経営に活用する9つの行動」をとりまとめ、2018年3月に公表しました。

 

1.海外M&A研究会開催の背景

 

近年、大型案件を含め日本企業が海外企業を買収するIN―OUT型のM&Aの動きが活発化していること。

 

比較的規模の小さい企業や国内を主たる事業基盤としていた企業も含め海外M&A活用の裾野が拡大していること。

 

海外M&A業務の遂行の上で参考となる事例・取組等を整理・提示し、活用を促進することで、海外M&A成功のための一助とする。

 

2.「報告書」のポイント

 

日本企業が今後、海外M&Aを有効に活用していく上で留意すべきポイントと参考事例をまとめた「我が国企業による海外M&A研究会報告書」をとりまとめました。

「報告書」の主なポイントは以下の通りです

海外M&Aを企業の成長に有効活用するためには、経営トップがプロセス全体に主体的にコミットして、リーダーシップを発揮した上で、個別案件の実行力のみならず、戦略ストーリーの構想力、基盤としてのグローバル経営力を併せ持つことが重要です。

 

(1)周到な事前準備と買収を契機としたグローバル成長の実現

 

買収の実行局面のみではなく、その「前」(戦略立案と周到な準備)と「後」(買収を契機とした自己変革と一層のグローバル成長実現)の取組がM&Aの成否に大きな影響を与えます。

 

(2)海外M&A成功に向けた3つの要素とトップのコミットメント

 

海外M&Aの有効活用のためには、個別案件の実行力に加え、戦略ストーリーの構想力、基盤としてのグローバル経営力を併せ持つことが重要です。

これら全体を通じて、経営トップが主体いぇきにコミットし、リーダーシップを発揮することが重要です。

 

(3)「M&A戦略ストーリーの構想力」

 

中長期の時間軸で自社の「目指すべき姿」をまずはっきりさせたうえで、そこから逆算して、明確かつ一貫した成長戦略・ストーリーに基づいて「なぜ海外M&Aがひつようなのかを」十分に検討し、経営者自らが社内外に発信することが重要です。

 

(4)「海外M&Aの実行力」

 

自社の成長戦略・ストーリーが明確であることを前提として、これを判断軸として平時から海外M&Aを検討・準備しておくことにより、各プロセスの実効性を高め成功につなげることが大切です。

 

(5)「グローバル経営力の強化」

 

海外M&Aの実行はグローバル経営のスタートです。

買収完了で立ち止まることなく、海外M&Aを契機として、買収先の優れた手法の導入や本社基盤の見直し等を通じて真のグローバルカンパニーとして成長が可能な体制へ変革していくことが重要です。

内部統制の3つのディフェンスライン全体でのCOSOの活用~基本前提、モデルの概要、経営者と取締役会の役割

1.はじめに

 

内部監査人協会は、2015年7月に「3つのディフェンスライン全体でのCOSOの活用」を公表しました

 

COSOの「内部統制の統合的フレームワーク」(以下、フレームワーク)は、組織が内部統制の運用を通じてリスクを有効に管理するために必要な構成要素、原則、要素を概説しています。

しかし、フレームワークは、概説している具体的な職務の責任をだれが負うかについてはほとんど述べていません。

 

「3つのディフェンスラインモデル」(以下、モデル)は、組織の規模や複雑性を問わず、リスクとコントロールに関する具体的な職務を組織内で割当て連携する方法を検討しています。

 

①取締役と経営者は、職務の役割と責任の決定的な違いを理解すべきである

②組織目的の達成可能性を高めるために役割と責任を最適に割り当てる方法を理解すべきである

 

2.3つのディフェンスラインモデル

 

(1)基本的前提

リスクとコントロールの有効な管理のためには上級経営者と取締役会の監督と指揮のもとで3つの別々のグループが必要だという考え方です。

 

①事業部門の責任者

 

②経営者が整備するリスク、コントロール、コンプライアンス機能

 

③内部監査

 

 

 

(2)3つのディフェンスラインの概要

 

①第1のディフェンスライン

 

 事業部門は、組織の目的を促進または抑制しうるリスクを生み出したり管理したりします。

第1のディフェンスラインはリスクを所有し、それらのリスクに対応するために管理するための組織を設計し遂行します。

 

②第2のディフェンスライン

 

 コントロールが有効に管理されていることを確実にするために、経営者を支援するために整備されます。

第2のディフェンスラインの機能は第1のディフェンスラインから分離されていますが、上級経営者の監督・指揮下にあります。

基本的には、リスク管理の多くの側面を担う経営や監督の機能です。

 

③第3のディフェンスライン

 

 上級経営者と取締役会に対して、第1と第2のディフェンスラインが行った業務に関するアシュアランスを提供するものです。

自らの客観性と組織上の独立性を守るために、経営機能を担うことは許されていません。

 

 

3.3つのディフェンスラインモデルにおける上級経営者と取締役会の役割

 

上級経営者と取締役会は、3つのディフェンスラインの一部ではありませんが、両者は、組織目的の設定、それらの目的達成のためのハイレベルな戦略の決定、リスクを最善に管理するためのガバナンス体制の構築に共同で責任を負っています。

 

「図3」で示されているように、上級経営者と取締役会は組織のトップの気風を確立する5つの原則によって支えられる組織の統制環境に一義的な責任を負っています。

 

 

(1)第1のディフェンスライン

リスクとコントロールを日常的に所有し管理する現業部門と間接部門の管理者が主として担当します。

 

 

(2)第2のディフェンスライン

第2のディフェンスラインは経営機能であり、通常、コントロールとリスクの継続的モニタリングの責任を負っています。

代表的な、第2のディフェンスラインの機能として、

情報セキュリティ、財務管理、品質、衛生・安全、検査、コンプライアンス、法務、環境などが挙げられます。

 

(3)第3のディフェンスライン

第3のディフェンスラインは内部監査です。

内部監査の役割は、特に、ガバナンス、リスクマネジメント、内部統制の有効性と効率性のアシュアランスを提供することにあります。

内部監査の他の2つのディフェンスラインとの違いは、高度の組織上の独立性と客観性になります。

 

 

4.3つのディフェンスラインの構築と連携

 

3つのディフェンスラインモデルは、意図的に柔軟に設計されています。各組織は、自らの業界、規模、業務体制、リスクマネジメントの対するアプローチに合った方法でこのモデルを整備することが求められています。

 

3つのディフェンスラインは、リスクを有効に管理して組織の目的達成を支援するという目的を持っています。

3つのディフェンスラインの目的は共通でも各ディフェンスラインは固有の役割と責任を負っています。

しかし、3つのディフェンスラインは縦割りで業務を行うべきではなく、リスク、コントロール、ガバナンスについて情報を共有し業務の連携を行うべきです。

情報の旧友と業務の連携は業務の全般的有効性に役立つものであり、各ディフェンスラインの主要機能を損なうものではありません。

 

(注)図は、「3つのディフェンスライン全体でのCOSOの活用」からの引用です。

 

投資判断に用いるROIC(投下資本利益率)~計算式、その他の指標との関係

1.ROICとは

 

ROIC (Return on Invested Capital)は、投下資本利益率です。

 

企業は、事業を行うための資本を有利子負債と株主資本から調達しており、この調達した資本を効率的に運用しているかを測る指標がROICです。

 

ROICは、以下の算式で計算します。

 

RIOC=税引き後営業利益÷投下資本(有利子負債+株主資本)

 

ROICは、事業活動の成否を見るための指標なので、営業利益が使用されます。

株主への分配や借入金の返済は、税引き後のキャッシュからなされるので、税引き後営業利益が使用されます。

この場合、税金の額は、便宜的に損益計算書上の税金の額を使う場合や実効税率を用いる場合があります。

 

2.営業利益と減損損失

 

減損損失は、投下した資本が回収できなくなる見込みの時に、回収できなくなる金額を損失計上する会計処理です。

 

日本の会計基準では、減損損失は、特別損失に計上される場合が多くなっています。

 

減損損失は、まさに、事業活動の失敗によるものといえます。

ROICは、事業活動の成否を見るための指標ですので、減損損失を、営業利益に全く影響させなくてよいのかという議論が生じます。

 

減損損失を営業利益に負担させることが考えられますが、減損損失を計上した期のみに負担させると、本来の収益力がわからなくなるという懸念があります。

 

この場合には、減損損失を営業利益に負担させた後の営業利益の3年から5年の平均値を用いることが考えられます。

 

3.ROIC、ROE、ROA

 

ROICについては、前述しました。

ROEは、株主資本利益率です。当期純利益を株主資本で割ったものになります。

ROAは総資本利益率です。当期純利益を総資産で割ったものになります。

 

ROEは調達資本の構成によって左右されるため、比較的操作がしやすいと言われています。

ROAは、総資産なので、操作はされにくくなっています。ただし、資金調達面では投下資本に加えて、事業負債も考慮しなければなりませんが、このあたりの事情を反映できないと言われています。

 

ROICは、「営業利益÷投下資本」 ですので、資本構成の影響を受けません。

また、事業負債を除いた投下資本を用いているので、資本提供者から見た適切なリターンとなっています。

ROICは、ROEとROAの欠点を解決したものとなります。

 

 

4.ROICとWACC

 

WACCは、加重平均資本コストで、有利子負債のコストと株主資本のコストを加重平均したものです。

 

資本の調達コスト(WACC)以上に、資本を使って利益を得ることができれば、すなわち、ROICがWACCを上回っていれば、企業に利益が残ることになります。

 

企業の利益指標としてROICがWACCを超えているかを判断する場合、簿価ベースの株主資本と時価ベースの株主資本では様子が違ってきます。

 

上場している企業の場合、株主は現在の株価水準に対してのリターンを求めます。

つまり時価総額は、純資産×PBRとなり、株主が要求するリターンの水準が異なってきます。

 

必要なリターンは、以下のようになります。

必要なリターン=(有利子負債+純資産×PBR)×WACC 

 

この場合の必要なROICは、以下のようになります。

必要なROIC=必要なリターン÷(有利子負債+株主資本)

 

これを単純化すると、以下のようになります。

修正ROIC=税引き後営業利益÷(有利子負債+時価総額)

 

この修正ROICとWACCを比較して資本効率を判断することになります。

株式交換の税務の概要と課税関係

. 株式交換等の課税の概要

 

(1)株式交換等により完全子法人の株主が完全子法人株式の移転をしたときは、原則として当該株主が時価により当該株式を譲渡したものとして取扱われます。

 

但し、当該株式交換等が完全親法人等の株式以外の資産が交付されないものに該当する場合には、当該株式の株式交換等にかかる譲渡損益が繰延べられます。

また、合併・分割税制との整合性を図るため、適格・非適格の概念を株式交換等にも取込み、非適格株式交換等の場合には、完全子法人の有する資産等について法人間の資産の移動はないものの、時価評価をした上でその評価損益を計上することとされています。

 

(2)株式交換とは、株式会社がその発行済株式の全部を他の株式会社等に取得させる取引をいい、株式移転とは、1又は2以上の株式会社がその発行済株式の全部を新たに設立する株式会社に取得させる取引をいいます。

 

株式交換

 

 

 

株式移転

 

(EY新日本有限責任監査法人HPより)

 

2. 完全子法人の課税関係

 

(1)原則的取扱い(非適格株式交換等)

 

非適格株式交換等が行われた場合には、当該完全子法人の当該株式交換等直前に有する時価評価資産の評価益又は評価損が当該株式交換等の日の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入されます。
時価評価については、全ての資産について評価替えを要求されておらず、法令で定める時価評価資産(固定資産、土地、有価証券、金銭債権、繰延資産で一定のものを除く)に限られています。

 

(2)特例的取扱い(適格株式交換等)

 

適格株式交換等が行われた場合には、当該完全子法人において時価評価資産の時価評価課税は行われません。

 

3. 完全子法人の株主の課税関係

 

(1)完全親法人株式等のみが交付される場合(株式の譲渡損益の繰り延べ)

 

株式交換等による完全子法人の株主は、株式交換等により交付される対価として完全親法人株式等のみが交付される場合、完全子法人株式を株式交換等の直前の帳簿価額(譲渡対価=譲渡原価)により譲渡したものとして、完全子法人株式の譲渡損益を繰り延べることとなります。

 

(2)上記(1)以外の場合(株式の譲渡損益の認識)

 

完全子法人の株主が株式交換等により完全子法人の株式の移転をしたときは、その移転をした完全子法人株式の移転の時の価額による譲渡をしたものとして、完全子法人の株主の各事業年度の所得の金額を計算します。

 

4. 完全親法人の受入処理

 

(1)完全子法人株式の取得価額

 

①完全支配関係法人間で行われた株式交換等で株式のみ交付される場合(子法人株主数に応じた受入)

適格株式交換等又は非適格株式交換等のうち株式交換等直前に完全支配関係がある法人間で行われた株式交換等で株式以外の資産が交付されないものにより、完全親法人が取得する完全子法人株式の取得価額は、株式交換等直前の完全子法人の株主数に応じた金額により受け入れることとなります。

 

②上記①以外の場合(時価による受入)

非適格株式交換等により、完全親法人が取得する完全子法人株式の取得価額は、その取得の時における取得のために通常要する価額(時価)で受け入れることとなります。

 

(2)完全親法人の純資産の部の取扱い

 

完全親法人の完全子法人株式の取得価額から一定の交付金銭等の金額を減算した金額が資本金等の額として計上されることとなります。

 

5. 税制適格要件

 

株式交換等の税制適格要件は、パターンごとにそれぞれ下表の「〇」の要件を全て充足する必要があります。

 

 

(1)対価要件
株式交換等の対価として株式交換等完全親法人株式等以外の資産が交付されないこと(株式交換完全親法人が株式交換完全子法人の発行済株式の総数の3分の2以上に相当する数の株式を有する場合において、株主に交付される金銭等を除く)

 

(2)完全支配関係継続要件(共同事業)
株式交換等後に株式交換等完全親法人と株式交換等完全子法人との間に株式交換等完全親法人による完全支配関係が継続することが見込まれているものであること

 

(3)事業関連性要件
株式交換等完全子法人の事業と株式交換完全親法人(株式移転においては他の株式移転完全子法人)の事業とが相互に関連するものであること

 

(4)事業規模要件
株式交換等完全子法人の事業と当該事業に関連する株式交換完全親法人(株式移転においては他の株式移転完全子法人)の事業のそれぞれの売上金額、従業者の数もしくはこれらに準ずるものの規模の割合がおおむね5倍を超えないこと

 

(5)経営参画要件
株式交換等前の株式交換等完全子法人(株式移転においては他の株式移転完全子法人を含む)の特定役員の全てが株式交換等に伴って退任するものでないこと

 

(6)従業者継続要件
株式交換等完全子法人の株式交換等直前の従業者のうち、その総数のおおむね80%以上に相当する数の者が株式交換等完全子法人の業務に引き続き従事することが見込まれていること

 

(7)事業継続要件
株式交換等完全子法人の事業が株式交換等完全子法人において引き続き行われることが見込まれていること(共同事業を営むための株式移転においては、株式移転完全子法人の事業と当該事業と関連する他の株式移転完全子法人の事業とが引き続き行われることが見込まれていること)

 

(8)株式継続保有要件
株式交換等により交付される株式交換等完全親法人株式等のうち支配株主(株式交換等直前に株式交換等完全子法人(株式移転においては他の株式移転完全子法人を含む)との間に支配関係がある株主)に交付されるものの全部が支配株主により継続して保有されることが見込まれていること

 

. 株式交換等にかかる税務上の取扱いのまとめ

 

(1)株式交換等にかかる完全子法人及び完全子法人の株主の課税関係をまとめると下表のとおりとなります。

 

 

 

(2)株式交換等にかかる完全親法人の税務上の取扱いをまとめると下表のとおりとなります。

 

会社合併の税務の概要と課税関係

. 合併の課税の概要

 

法人が合併により資産及び負債の移転をしたときは、原則として被合併法人が時価により資産及び負債を合併法人に譲渡したものとして取扱われます。

当該合併が税制適格要件を充足する合併(以下、適格合併)に該当する場合には、特例として資産及び負債の移転にかかる譲渡損益が繰延べられます。

また、適格合併の場合、被合併法人で生じた未処理欠損金額は合併法人で生じた欠損金額とみなして、合併法人に引き継がれます(一定の制限があります)。

 

. 被合併法人の課税関係

 

(1)原則的取扱い(非適格合併)

法人が合併により合併法人にその有する資産及び負債の移転をしたときは、合併法人に移転をした資産及び負債の合併の時の価額による譲渡をしたものとして、被合併法人の各事業年度の所得の金額を計算します。

 

(2)特例的取扱い(適格合併)

法人が適格合併により合併法人にその有する資産及び負債の移転をしたときは、原則的取扱いにかかわらず、合併法人に移転をした資産及び負債の適格合併に係る最後事業年度終了の時の帳簿価額による引継ぎをしたものとして、被合併法人の各事業年度の所得の金額を計算します。

 

. 合併法人の課税関係

 

(1)原則的取扱い(非適格合併)

合併法人は、合併により移転を受けた資産及び負債を、合併の時の価額により受け入れます。
また、税務上の時価純資産と交付株式等の時価とに乖離があるなど一定の場合には、合併法人において資産(差額負債)調整勘定が認識されます。

 

(2)特例的取扱い(適格合併)

合併法人は、適格合併により移転を受けた資産及び負債を、適格合併に係る最後事業年度終了の時の帳簿価額により引継ぎます。

また、一定の要件を充足する場合には、適格合併に係る被合併法人の当該合併の日前9年以内に開始した各事業年度において生じた未処理欠損金額は、合併法人の当該合併前の各事業年度において生じた欠損金額とみなされます。

 

なお、一定の要件を充足しない場合には、合併法人及び被合併法人の欠損金額並びに含み損資産につき損金算入制限を受ける可能性があります。

 

. 被合併法人の株主の課税関係

 

(1)みなし配当及び株式の譲渡損益

被合併法人の株主においては、合併対価のうち利益積立金額から成る部分をみなし配当として認識し、合併対価のうち資本金等の額から成る部分(合併対価からみなし配当の額を除いた残りの部分)と被合併法人株式の帳簿価額との差額を株式の譲渡損益として認識することとなります。

なお、適格合併の場合には、みなし配当は発生しません。

 

みなし配当の金額=合併対価-被合併法人の資本金等の額×株主の株式保有割合

譲渡損益=譲渡対価(合併対価-みなし配当)-譲渡原価(被合併法人株式の帳簿価額)

 

(2)株式の譲渡損益の繰り延べ(合併法人株式等のみが交付される場合)

被合併法人の株主においては、合併の対価として合併法人株式等のみが交付される場合、被合併法人株式を帳簿価額により譲渡したものとして、被合併法人株式の譲渡損益を繰り延べることとなります。

 

. 税制適格要件

 

合併の税制適格要件は、パターンごとにそれぞれ下表の「〇」の要件を全て充足する必要があります。

 

 

(1)合併対価要件

被合併法人の株主に合併法人株式等以外の資産が交付されないこと(合併の直前において合併法人が被合併法人の発行済株式の総数の3分の2以上に相当する数の株式を有する場合において、株主に交付される金銭等を除く)

 

(2)事業関連要件

被合併法人の被合併事業と合併法人の合併事業とが相互に関連するものであること

 

(3)事業規模要件

被合併法人の被合併事業と合併法人の合併事業のそれぞれの売上金額、従業者の数、被合併法人と合併法人の資本金の額若しくはこれらに準ずるものの規模の割合がおおむね5倍を超えないこと

 

(4)経営参画要件

合併前の被合併法人の特定役員のいずれかと合併法人の特定役員のいずれかが合併後に合併法人の特定役員となることが見込まれていること

 

(5)従業者引継要件

被合併法人の合併直前の従業者のうち、その総数のおおむね80%以上に相当する数の者が合併後に合併法人の業務に従事することが見込まれていること

 

(6)移転事業継続要件

被合併法人の合併前に行う主要な事業が合併後に合併法人において引き続き行われることが見込まれていること

 

(7)株式継続保有要件(共同事業)

合併により交付される合併法人株式等のうち支配株主(合併の直前に被合併法人と他の者との間に当該他の者による支配関係がある場合における当該他の者及び当該他の者による支配関係があるもの)に交付されるものの全部が支配株主により継続して保有されることが見込まれていること

 

. 合併の課税関係のまとめ

 

合併の課税関係をまとめると下表のようになります。