投稿者「admin」のアーカイブ

予算管理~計画的に会社経営を行うために

予算管理がなぜ必要か

 

事業が小規模のうちは、おおざっぱな方針や目標だけで会社を運営できるかもしれません。しかし、組織がある程度大きくなり、多角化などで組織が分化すると、計画的に事業を運営する必要が出てきます。

 

目標を設定し、これを達成するためには、全社の目標(売上、利益など)だけでなく事業部等ごとに目標を定め、目標達成のための行動・活動の原資となる費用についても定めておく必要があります。

 

予算による管理

目標の階層化

多くの会社では、中期経営計画を立て、各年度の短期計画である利益計画と行動計画を策定します。

1年間の利益計画と行動計画を会計的な数値に置き換え、資金面の裏付けをつけたものが予算です。

全社予算だけでなく、事業の構成単位ごとに予算が策定されます。

 

社内組織の権限に応じて、業績管理指標が設定され、それに基づく目標設定、予算策定という順番になります。

 

 

予算形式

予算は、見積貸借対照表、見積損益計算書、見積キャッシュフロー計算書という見積財務諸表の形式で作成されます。

 

通常、年度予算は、月次予算にブレークダウンされます。

また、企業を構成する事業部や部門ごとの予算も作成されます。

予算による管理プロセス

予算管理の段階

予算管理は、予算の設定時、予算の実行時、予算終了時の3つの段階で行われます。

予算管理は、PDCAサイクルによって、年間を通して行われます。

 

予算設定時

予算を作成することで、構成員に対して1年間に行うべき行動を明示的に示すことができます。(計画機能)

予算を作成する過程で社内の各部門が調整を行うことがあります。(調整機能)

 

予算実行時

通常、1か月ごとの月次予算を作成し、予算と実績値の比較と差異分析を行います。そして、年間予算を達成できるように改善策を講じます。

 

予算期間終了後

年間予算期間が終了したら、予算と実績を比較し、差異分析を行います。(統制機能)

翌期の予算策定にも生かされます。

 

予算の作成方法

予算の作成方法は、3種類に大別されます。

 

トップダウン型

トップ・マネジメントの意向をくんだ予算を、各事業部等に目標値として伝達します。

業績評価に使われるので、従業員等が目標達成することへの動機づけとなりますが、半面、目標値が厳しくなる傾向があります。

 

ボトムアップ型

現場(事業部等)の意向をくみ上げて予算を作成します。

参加型予算と呼ばれ、構成員の目標達成への動機づけになりますが、目標値が甘くなる傾向があります。

 

折衷型

トップダウン型とボトムアップ型の中間的なものです。

トップ・マネジメントが定めた全社的な予算編成方針をもとに、事業部等が自分の組織の予算案を作成します。

予算編成部門が、それらを集約し、必要であれば調整して、全社の見積財務諸表を作成します。

トップダウン型とボトムアップ型の双方の長所を持っていますが、課題が完全に解決されているわけではありません。また、予算作成に時間がかかるという点もあります。

経営判断に役立つ「資本コスト、WACC、ROIC」の基礎知識

資本コストとは

 

企業経営を行う上で事業用資産や運転資金の調達、人材の調達などが必要になります。

これらに必要な資金を得るために、株主や金融機関等から資金を調達することになります。

その調達するためのコストが資本コストです。

 

WACCとは

 

資本コストは、有利子負債(負債)と株主資本の(株式)コストから構成されています。

有利子負債と株主資本の違いはどのようなものでしょうか。

有利子負債は、当初の契約によりリターンが決まっており、返済条件も決まっています。一方、株主資本は、配当や元本の返済では有利子負債より劣後しています。

 

ある会社の資本コストは、有利子負債と株主資本の調達割合により加重平均したものになります。

 

WACC(Weighted Average Cost of Capital) といわれているものです。

 

計算式は、以下のようになっています。

 

WACC=負債÷(負債+株式)✕負債コスト✕(1-実効税率)+株式÷(負債+株式)×株式コスト

 

負債と株式は、時価を用いることが推奨されています。

ただし、負債は、簿価でも問題ありません。

株式は、時価総額を用いることが、一般的です。

 

負債コストは、借入金利、CP利回り、社債利回りなどを負債の構成比で加重平均したものになります。

資本コストの計算には、CAPMと残余利益モデルがあります。

CAPMは、リスクフリーレートに市場リスクプレミアムを加えたものになります。

残余利益モデルは、期待利益÷株主資本=成長率+(資本コスト-成長率)×株価÷株主資本 の考えをもとに、資本コストと成長率を算出する方法です。

残余利益とは、期待利益から株主資本コストを控除したもので、資本コスト以上に稼いだ利益ということができます。

 

 

資本コストとROIC

資本コスト(WACC)よりも、ROIC(Return on Investment Capital) ≒税引き後事業資産営業利益率≒税引き後総資産営業利益率のほうが高いことが長期的な経営にあたっての必要条件となります。

これは、WACCの計算式からもわかるように、資本コスト支払の源泉が、ROICだからです。

 

ROIC

ROIC≒ROAとして、ROAを展開してみます。

 

ROA=営業利益÷総資産=(営業利益÷売上高)×(売上高÷総資産)となります。

 

売上高営業利益率と総資産回転率になり、特に、売上高営業利益率が重要とされています。

売上高営業利益率の向上には、事業の独自性、独創性、競争優位、参入障壁などが影響してくるとされています。

 

PBR

 

PBRは株価と簿価純資産の関係となります。ROICがWACCを下回っている場合には、PBRは1倍割れとなります。短期的にはPBRは変動しますので、中長期の視点で見たPBRの水準が問題となります。

投資家が期待している利益水準と実際の利益水準とのギャップということになります。

事業部の業績を知るために必要なセグメント会計の知識

セグメント会計とは

 

事業を多角化している場合、それぞれの事業の業績を知るために事業ごとの損益計算書を作成します。

これを「セグメント会計」といいます。

 

セグメントとは、組織区分で、事業部や社内カンパニーが代表例ですが、工場やブランドごとでも可能です。

セグメント会計では、損益計算書は作成しますが、貸借対照表やキャッシュフロー計算書は、通常作成されません。

 

セグメント会計の目的

セグメント会計は、事業ごとに業績を測定することで、どの事業に経営資源を集約するのか、どの事業から撤退すべきかなどの、事業ごとの管理を徹底するという目的があります。

セグメント会計は、組織内部の会計情報ですが、上場企業の場合には、セグメント情報として、一定の開示が行われています。

 

セグメント別損益計算書

セグメント会計では、事業部に直接に紐付け可能な売上と費用を集計し、事業部の利益(貢献利益)から本社費を一括して控除して、損益計算書を作成します。

 

費用の分類

費用の分類は、以下のように行います。

  1. 事業部の観点から、直接費と間接費(本社費)に分類します。
  2. 直接費を、変動費と固定費に分類します。
  3. 固定費を、管理可能固定費と管理不能固定費に分類します。

 

損益計算書は、以下の流れになります。

 

売上高(A)

事業部変動費(B)

限界利益(C)=(A)-(B)

管理可能固定費(D)

管理可能利益(E)=(C)-(D)

管理不能固定費(F)

事業部利益(貢献利益)(G)=(E)-(F)

本社費(H)

純利益(I)=(G)-(H)

 

限界利益と貢献利益

上の式で見たように、限界利益と貢献利益を違う意味で使っています。

限界利益とは、売上高に比例して増加する利益で、売上高と変動費との関係に注目しています。

貢献利益とは、事業部で稼得した利益で、固定費を回収して全社利益を創出するための利益、ということが出来ます。

 

本社費の配賦

事業部制組織では、事業部の他に本社部門があって、事業部に対してサービスを提供したり、全社的な方針を策定したりしています。

 

本社費の回収が必要な利益水準を事業部の目標にする場合には、本社費を配賦することになりますが、本社費を事業部に配賦すべきかは、いろいろな見解が有り、決着はついていません。

 

本社費を事業部に配賦する基準としては、売上、利益、資産、従業員数などがあります。また、本社費の内容によって配賦基準を変える場合もあります。いずれの基準をとるにせよある程度の恣意性が入ることは否めません。

 

原価、営業量、利益を分析するためのCVP分析

CVP分析とは

CVP分析は、原価(Cost)、営業量(Volume)、利益(Profit)の3つの関係を分析する方法です。

変動費率や固定費の変化が利益に与える影響、目標利益達成に必要な売上高、価格の変化が損益分岐点や利益に与える影響などを分析することが出来ます。

 

また、中期経営計画や年度予算の策定にも用いることができます。

 

CVP分析の考え方

CVP分析では、「収益-費用=利益」を前提として、売上、費用、利益の関係を分析します。

前提として、製造量と販売量は一致する、費用は固定費と変動費に分解可能、費用線は直線、製品は1種類などの前提を置くことにより、分析が容易になります。

精密な分析というよりは、大まかな趨勢分析となります。

 

例えば、次の式が成り立ちます。

 

収益-費用=売上高-(変動費+固定費)=利益

変動費=売上高✕変動費率=価格✕1個あたり変動費

 

利益がゼロとなる営業量を、特に、損益分岐点といっています。

 

営業量(操業度)の考え方

変動費と固定費に分解するための営業量(操業度)は、売上高か販売量を用います。

 

 

売上高を営業量としたときのCVP分析

損益分岐点売上高とは、利益がゼロになる売上高で、損益分岐点の売上高を算出する計算式は以下のようになります。

 

売上高=固定費÷(1-変動費率)

 

限界利益とは、売上高に比例して増減する利益のことで、「1-変動費率」を「限界利益率」といいます。

 

固定費に、目標利益を加えて計算すると、目標利益を達成するために必要な売上高を算出できます。

 

固定費、変動費率を変えることにより、費用構造が変わった場合のシミュレーションを行うことが出来ます。

 

販売量を営業量としたときのCVP分析

販売量を営業量としたときの、損益分岐点の販売量は、以下の式で導くことが出来ます。

 

販売量=固定費÷(価格-1個あたり変動費)

 

価格から1個当たり変動費を引いたものを、「1個当たり限界利益」と呼んでいます。

 

損益分岐点の販売量は、固定費を1個当たりの限界利益で除して算出できます。

 

安全余裕度と安全余裕率

実際あるいは目標の売上高が損益分岐点売上高を超えている場合、その差額の売上高が減っても赤字にならないので、安全余裕度といっています。

これを比率にしたものが、安全余裕率です。

 

変動費と固定費

変動費とは、「操業度の変化に応じて比例的に増減する費用」です。

 

固定費は、「操業度が増減しても変化しない費用」です。

 

損益分岐点分析などの分析を行う場合、固定費の金額が与えられますが、固定費は、操業度が増減しても比例的に増減しないだけで、固定費の発生は管理することが可能です。

 

借地権の税務~借り手と貸し手の立場から

借地権が出てくる法律には、民法、借地借家法、法人税法、所得税法、相続税法があります。

借地借家法は、民法の特別法ですので、まず、借地借家法をみてみましょう。

借地借家法第2条

(定義)

第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一 借地権 建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう。

二 借地権者 借地権を有する者をいう。

三 借地権設定者 借地権者に対して借地権を設定している者をいう。

(以下省略)

 

なお、借地借家法は改正されており、平成4年8月1日以前の契約は旧借地借家法が適用されます。

 

次に、法人税法です。

「地上権または土地の賃借権」と規定し、土地の使用目的を制限していません。

 

所得税法ではどうでしょうか。

「建物もしくは構築物の所有を目的とする地上権もしくは賃借権」と規定しています。

 

相続税法ではどうでしょうか。

「建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権」としています。

 

 

法人税法上の借地権の範囲が最も広く、次が、所得税法上の範囲、借地借家法と相続税法上の借地権は、同じとなります。

 

借地権に関する税務の用語

借地権に関する税務用語について説明します。

1.借地権

これは、前述の通り、税法によって範囲が異なります。

 

2.権利金

土地を賃借する際に、借地人が、地主に対して支払う金額。通常、契約が終了しても賃借人に返還されません。

借地権設定の対価や地代の前払いの性格があるとされています。

権利金の授受の慣行がある地域で、権利金の授受が無かった場合には、課税関係が発生します。

 

3.土地の無償返還の届出書

土地の無償返還の届出書とは、土地の返還時に借地人が無償で土地を地主に返還することを約した書類です。賃借人と地主の連名で税務署に届け出ます。

この書類により、権利金の授受のなかった借地権についての課税関係を回避できます。

 

4.相当の地代

相当の地代とは、土地の更地価額(時価)の年8%(現在は、6%)相当額の地代をいいます。

地主が自己利用している場合と同様の収益があるなら借地権設定による損失は発生していないと考えます。

相当に地代を収受している場合には、権利金の授受のなかった借地権についての課税関係を回避できます。

 

5.相当の地代の改訂方法に関する届出書

地代の改訂方法について記載する届出書で、地代土地の時価に応じて見直す方法と地代を据え置く方法を選択できます。

 

6.通常の地代

借地権が設定されている場合の、一般的な地代をいいます。

課税上弊害がないかぎり、底地の相続税評価額の過去3年間の平均額の年6%の金額とすることが出来ます。

 

7.自然発生借地権

借地権設定時に相当の地代を設定し、その後の地代の改訂について据え置く方法を選択した場合、土地の値上がりにより借地人に帰属していく借地権を自然発生借地権といいます。

 

 

 

借地権に関する課税関係

 

個人と法人の借地権に関する課税関係をまとめてみます。

法人地主・個人借地人

個人地主・法人借地人

会社のたたみ方~廃業するときの解散と清算の手続き

会社のたたみ方

 

まず、言葉の問題ですが、資産超過(純資産がある状態)の状態で事業を滞りなくたたむ場合を「廃業」、債務超過などで事業をそのままでは円滑にたためない場合を「倒産」ということにします。

ここでは、「廃業」についてお話しします。

最近では、黒字企業が廃業するケースが増えています。

黒字企業は、競争力があり貴重な技術を持っていると考えられるため、日本経済や地域経済にとってマイナスになると考えられています。

しかし、経営者の方から考えてみると、いろいろな理由で事業をたたんでしまいたいと思っている経営者が多いということだと思います。

 

廃業を決意した場合、事業を単にたたんでしまうことだけが選択肢ではありません。

M&Aにより株式を譲渡する方法や事業の一部を譲渡するなどの方法も考えられます。

M&Aのお話は、別の機会にするとして、ここでは、廃業のタイミングについて考えてみましょう。

 

事業が順調であれば、廃業やM&Aのタイミングもそれほど気を遣わなくてもよいかもしれません。

事業の業績が思わしくなく、現在は、資産超過であるが、そのうち債務超過になる可能性がある場合には、タイミングは重要です。一言で言うと、「体力のあるうちに廃業する」ということです。

事業の将来性、従業員、取引先、金融機関などの状況をよく考えて、判断しましょう。

 

廃業の手順

 

廃業の手順についてお話しします。株式会社を前提として、主に、会社法の話になります。

 

廃業の決断、取締役会決議

法律上会社を消滅させ廃業するためには、解散と清算の手続きが必要になります。

廃業を決断したら、廃業に向けて事業を整理していきますが、法律的には、取締役会で会社解散決議を行い、株主総会を招集します。

 

株主総会

株主総会で解散の決議をします。特別決議が必要です。会社が解散したら、取締役会は、遅滞なく株主に知らせなければなりません。また、決議後2週間以内に解散と清算人の登記が必要となります。

通常、株主総会の日が、解散日となります。

 

清算中の会社

会社が解散した場合には、清算手続きに入り、原則として取締役が清算人となって会社をたたむための作業を行います。完全に会社の法人格が消滅するためには、清算手続きの結了が必要となります。会社は、換算手続き後も、清算の目的の範囲内で存続することになります。

 

債権者に対する公告及び催告

清算人就職の日から2ヶ月以内に、債権者に対して官報による公告及び催告を行います。官報で公告してから2ヶ月以上の債権申出期間が必要です。

 

解散日までの決算と確定申告

解散日から2ヶ月以内に、解散日までの確定申告が必要です。

なお、解散日の翌日から残余財産の確定まで、1年以上かかる場合には、1年ごとに確定申告が必要となります。

 

資産、負債の整理

解散時の財産目録と貸借対照表を清算人が作成し、臨時株主総会で承認を受けます。

 

残余財産の分配

資産と負債を整理して、資産が残った場合には、残った財産を株主に分配します。

資本金の額を超えて財産の分配がある場合には、「みなし配当」となり、税金の対象となります。

 

清算の決算承認と確定申告

残余財産が確定すると清算確定申告を行います。残余財産確定の日の翌日から1ヶ月以内に申告する必要があります。

 

清算結了登記

清算事務(残余財産の分配)が終了した場合、遅滞なく「決算報告」を作成し株主総会の承認を得ます。株主総会終了後、2週間以内に清算結了登記を行います。

 

融資を円滑に受けるための事業性評価とは~金融機関の審査のポイント

事業性評価とは何でしょうか?

 

「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律(以下、円滑化法)」終了後、政府は、中小企業の経営支援に向けた各種取組を行っていて、金融機関による「事業性評価」もその中の重点施策となっています。

 

1.定義

 

事業性評価とは、「金融機関の融資判断において、対象企業の現在から将来に渡る定性的情報を評価すること」とされています。広義には、定性的情報と定量的情報を組み合わせて融資・支援などに活用するところまで含まれます。

 

2.目的

 

金融機関が、企業の事業内容を「知り」、「整理し」、「評価する」ことによって、従来の財務分析や担保評価では難しかった融資可能性を見いだし、金融機関内で情報共有することにより、企業支援などにその評価を活用することが必要と考えられています。

企業側からも、金融機関の事業性評価により融資の蓋然性が増加する効果があります。

 

3.事業性評価の流れ

 

事業性評価は、「知り」、「整理し」、「評価し」、「活用する」の流れになります。

 

知る:決算書等の定量情報、定性的情報のヒアリング、市場・業界調査

 

整理:フレームワーク(3C分析、5フォース分析等)、ローカルベンチマーク

 

評価:事業内容・成長可能性(SWOT分析等)

 

活用:融資判断、経営課題解決、事業計画等

 

4.事業性評価(融資審査)のポイント

 

事業性評価のポイントを、経営に必要な「ヒト」、「モノ」、「カネ」の観点から見てみましょう。

 

(1)ヒト

信頼性、謙虚さ、決断力・責任感、計数観念

中小企業は、経営者がすべてであるといえます。

(2)モノ

製品・商品力、技術力、サービス、販路

決算書に表われない強みが必要です。

(3)カネ

売上高、利益、自己資本、借入金、貸付金・仮払金等

 

このほか、現状分析が出来ているか、収支改善への取組と効果、早期に着手しているか などがポイントになります。

 

5.金融機関における事業性評価の活用

 

融資判断:事業性評価を融資判断につなげようとする仕組みを金融機関は取り入れようとしています。例えば、以下のような例があります。

 

事業性評価の点数化の仕組みづくり

信用格付けの定性面の調整根拠として事業性評価を利用

本部内に「事業性評価チーム」を立ち上げて各支店をサポート

 

本業支援策・課題解決策の提案:事業性評価によって得た情報をもとに、販路拡大の提案、ビジネスマッチングのほか、事業承継やM&Aの提案も行うことが考えられます。

 

6.企業側の対応

 

企業側としては、事業性評価を受動的に受けるだけではなく、事業性評価における自社の分析手法を用いて事業計画や中期計画を積極的に作成することは、金融機関からの信頼を勝ち取る一助になると思います。

 

 

 

【個人保証で困っている経営者のための知識】経営者保証ガイドラインとは?

経営者保証に関するガイドラインをご存じですか。

 

中小企業の経営者が金融機関に差し入れている個人保証(経営者保証)について、保証契約を締結する際や、金融機関等の債権者が保証履行を求める際の中小企業(債務者)、保証人、債権者の自主的なルールを定めたものです。

これにより、経営者保証の課題や弊害を解消し、中小企業金融の円滑化を通じて中小企業の活力を引き出し、日本経済の活性化に資することを目的としています。

 

個人保証なしに融資を受ける、事業承継の際に後継者が保証しないで融資を継続する、などの効果が期待されています。

 

個人保証なしに融資を受けるには

中小企業の経営者は、以下のような対応が求められます。

  1. 法人個人の一体性の解消(法人から経営者への資金流出防止等)
  2. 財務基盤の強化(業績堅調、十分なキャッシュフロー等)
  3. 適時適切な情報開示等(決算書、試算表、資金繰り表等の定期的な開示等)

 

上記の内容については、外部専門家の検証を受けることが望ましいとされています。

 

金融機関に対しては、以下の対応が求められています。

  1. 経営者保証の機能を代替する融資手法のメニューの充実
  2. 中小企業の経営状況、資金回収可能性等を総合的に判断する中で経営者保証を求めない可能性、代替的な融資手法の活用可能性を検討

 

事業承継時に後継者が個人保証をしないで融資を継続するには

中小企業の経営者は、以下のような対応が求められます。

後継者も、前述の対応が求められます。また、経営者の交代により経営方針や事業計画が変更になる場合には、金融機関等に誠実かつ丁寧に説明する必要があります。

 

金融機関に対しては、以下の対応が求められています。

金融機関も、前経営者が負担する保証債務を当然のこととして後継者に引き継がせず、前述の対応が求められます。

併せて、前経営者の保証契約の解除についても、前経営者の実質的な経営権・支配権の有無、既存債権の保全状況、法人の資産・収益力による回収可能性等を勘案して適切に判断することが求められています。

 

法人の債務整理手続きと経営者の保証債務

法人の債務整理手続きと同時に経営者の保証債務の整理を求めることができます。

対象となりえる保証人は、以下の方です。

・法人が法的債務整理手続きまたは準則的私的整理手続きの申立を同時に行う等

・金融機関において破産手続きよりも多くの回収が見込まれること

・保証人に破産法による免責的不許可事由が生じていないこと

 

安定した事業継続等のために一定の資産を手元に残すことを申し出ることができます。

 

金融機関は、保証人の手元に残す資産の範囲、保証債務の弁済計画、保証債務の免除などの検討を行います。

 

BEPS(税源浸食と利益移転)とは何でしょうか~OECDのレポートから

BEPSとはどのようなものでしょうか。

Base Erosion and Profit Shiftingの略で、「税源浸食と利益移転」を意味します。

多国籍企業が各国税制の隙間を突いて、経済活動が行われている国とは異なる低税率国に利益を移す行為や実際の経済活動国で課税できない状況下で、いずれの国からも課税されない状況(二重非課税)を生み出す様な行為から、課税逃れとの批判がなされています。

各国で財政状況が厳しくなる中、このような動きに歯止めをかけるため、G20(主要20カ国・地域)とOECD(経済協力開発機構)が共同でBEPSプロジェクトを始動しました。

2015年10月、OECDは15項目の行動指針で構成されるBEPSの最終レポートを公表しました。法的拘束力はないものの、新たな国際租税ルールに従うよう、各国に条約や国内法の改正・見直しを勧告しています。

BEPSの導入により、グローバル企業は海外子会社等グループ全体の税務状況をこれまで以上に把握しなければならなくなりますが、対応が遅れている企業も少なくありません。

 

経済協力開発機構(OECD)は、2015年10月5日、税源浸食と利益移転(BEPS: Base Erosion and Profit Shifting)に対する行動計画における15の重点分野について、最終レポートを公表しました。

OECDは、プレスリリースで以下のように述べています。

BEPSによる税収の損失は、控えめに見積もっても年間1,000~2,400億米ドル、世界全体の法人税収の4~10%に達すると推計されています。開発途上国では税収のより多くの部分を法人税収に依存していることを考えると、BEPSが開発途上国に与える影響は特に大きいといえます。

「税源浸食と利益移転は、経済的な側面だけでなく、信頼の問題としても、全ての国に影響を及ぼします」とOECDのアンヘル・グリア事務総長は述べました。さらに、「BEPSは、成長の活性化や、世界的経済危機の影響への対処、全ての人々のためのより多くの質の高い機会創出などのための貴重な資源を各国から奪っています。しかし、それ以上に、BEPSは世界的に租税制度の公平性に対する市民の信頼を損なっています。OECDが本日提示する措置は、ここ1世紀ほどの間において、国際租税ルールに対する最も抜本的な変革です。これらの措置は、二重非課税に終止符を打ち、課税と経済活動及び価値創出との一致を促すものであり、それらが十分に実施されれば、BEPSを引き起こしているタックスプランニングの仕組みを無効化することになります」と述べました。

 

BEPSで示された行動指針は、大きく分けて3つの原則に分類されます。

(1)「一貫性」―国際税制を有害に又は不適切に利用することにより、本来得られない税制上のメリットを享受させないため、企業税務に一貫性を求める。

(2)「実質性」―利益が課税される場所と利益発生に貢献した者の所在地とのミスマッチを防ぐため、租税の実質性を重視する。

(3)「透明性」―税務当局による調査がより良く実施されるよう、また、税金の公正な負担が判断されるように、企業の情報提供に透明性を求める。

例えば、BEPSの行動8は知的財産など無形資産の移転価格の扱いを規定していますが、これは「実質性」に該当します。

 

BEPSの具体的な内容については、国税庁のホームページで公表されています。

税源浸食と利益移転(BEPS: Base Erosion and Profit Shifting)への取り組みについて -BEPSプロジェクト-

OECDでは、近年のグローバルなビジネスモデルの構造変化により生じた多国籍企業の活動実態と各国の税制や国際課税ルールとの間のずれを利用することで、多国籍企業がその課税所得を人為的に操作し、課税逃れを行っている問題(BEPS)に対処するため、2012年よりBEPSプロジェクトを立ち上げました。このBEPSプロジェクトでは、 G20(財務大臣・中央銀行総裁会議)の要請により策定された15項目の「BEPS行動計画」に沿って、国際的に協調してBEPSに有効に対処していくための対応策について議論が行われ、2015年9月に「最終報告書」がとりまとめられました。

行動計画1:電子経済の課税上の課題への対処

(原題:Action 1: Addressing the Tax Challenges of the Digital Economy)

電子商取引等の電子経済に対する直接税・間接税の課税上の課題への対応を検討

行動計画2:ハイブリッド・ミスマッチ取極めの効果の無効化

(原題:Action 2: Neutralising the Effects of Hybrid Mismatch Arrangements)

金融商品や事業体に関する複数国間における税務上の取扱いの差異(ハイブリッド・ミスマッチ)の効果を無効化するため、国内法上・租税条約上の措置を検討

行動計画3:外国子会社合算税制の強化

(原題:Action 3: Designing Effective Controlled Foreign Company Rules)

軽課税国等に設立された外国子会社を使ったBEPSを有効に防止するため、適切な外国子会社合算税制を設計

行動計画4:利子控除制限ルール

(原題:Action 4: Limiting Base Erosion Involving Interest Deductions and Other Financial Payments)

相対的に税負担の軽い国外関連会社に過大に支払われた利子について損金算入を制限するルールを検討

行動計画5:有害税制への対抗

(原題:Action 5: Countering Harmful Tax Practices More Effectively, Taking into Account Transparency and Substance)

各国優遇税制の有害性を経済活動の実質性から判定するための新基準及び制度の透明性を高めるための新基準を検討

行動計画6:租税条約の濫用防止

(原題:Action 6: Preventing the Granting of Treaty Benefits in Inappropriate Circumstances)

条約漁り(第三国の居住者が不当に条約の特典を得ようとする行為)をはじめとした租税条約の濫用を防止するため、OECDモデル租税条約の改定及び国内法の設計を検討

行動計画7:恒久的施設(PE)認定の人為的回避の防止

(原題:Action 7: Preventing the Artificial Avoidance of Permanent Establishment Status)

PE認定の人為的な回避に対処するためOECDモデル租税条約のPEの定義について修正を検討

行動計画8‐10:移転価格税制と価値創造の一致

(原題:Actions 8-10: Aligning Transfer Pricing Outcomes with Value Creation)

○ 以下の対応策を講じるため、OECD移転価格ガイドラインの改訂等を検討

行動8:適正な移転価格の算定が困難である無形資産を用いたBEPSへの対応策
行動9:グループ内企業に対するリスクの移転、過度な資本の配分等によって生じるBEPSの防止策
行動10:その他移転価格算定手法の明確化やBEPSへの対応策

行動計画11:BEPSの規模・経済的効果の分析方法の策定

(原題:Action 11: Measuring and Monitoring BEPS)

BEPSによる法人税収の逸失規模について、データの評価・指標の抽出・分析方法の策定を実施

行動計画12:義務的開示制度

(原題:Action 12: Mandatory Disclosure Rules)

プロモーター及び利用者が租税回避スキームを税務当局に報告する制度(義務的開示制度)を検討

行動計画13:多国籍企業の企業情報の文書化

(原題:Action 13: Guidance on Transfer Pricing Documentation and Country-by-Country Reporting)

共通様式に基づいた多国籍企業情報の報告制度を検討

行動計画14:相互協議の効果的実施

(原題:Action 14: Making Dispute Resolution Mechanisms More Effective)

租税条約に関連する紛争を解決するためのより実効的な相互協議手続を検討

行動計画15:多数国間協定の策定

(原題:Action 15: Developing a Multilateral Instrument to Modify Bilateral Tax Treaties)

世界で約3,000本以上ある二国間租税条約にBEPS対抗措置を効率的に反映させるための多数国間協定を検討

 

2018年9月26日に、日本は「税源浸食および利益移転を防止するための租税条約関連措置を実施するための多数国間条約(BEPS防止措置実施条約、以下「MLI」)を寄託しました。

これにより、日本においてMLIは2019年1月1日に発行することとなります。

 

 

【自分の会社の中味をしっかりと把握するための方法】セグメント情報とは?

セグメント情報とは、どのようなものか?

 

経営者の視点で企業を理解できる情報を財務諸表に開示することによって財務諸表利用者により有用な情報を提供することができると判断したことから、わが国のセグメント情報開示にマネジメント・アプローチが導入されています。

 

マネジメント・アプローチに基づくセグメント情報の長所と短所

長 所

①財務諸表利用者が経営者の視点で企業を見ることにより、経営者の行動を予測し、その予測を企業のキャッシュ・フローの評価に反映することが可能になる。

②当該セグメント情報の基礎となる財務情報は、経営者が利用するためにすでに作成されており、企業が必要とする追加的費用が比較的少ない。

③実際の企業の組織構造に基づく区分を行うため、その区分に際して恣意(しい)性が入り込みにくい。

 

短 所

①企業の組織構造に基づく情報であるため、企業間の比較を困難にし、また、同一企業の年度間の比較が困難となる。

②内部的に利用されている財務情報を基礎とした情報の開示を要求することは、企業の事業活動の障害となる可能性がある。

 

1.マネジメント・アプローチ

マネジメント・アプローチとは、経営上の意思決定および業績評価のために経営者が企業を事業の構成単位に分別した方法を基礎としてセグメント情報の開示を行う方法です。

セグメント情報等の開示は、セグメント情報の開示に当たって基本原則が定められており、財務諸表利用者が企業の過去の業績を理解し将来のキャッシュ・フローの予測を適切に評価できるように企業が行うさまざまな事業活動の内容およびこれを行う経営環境に関して適切な情報を提供するものであることを求めています。(セグメント会計基準4項)。

セグメント会計基準で採用されたマネジメント・アプローチは、国際財務報告基準や米国基準で採用されている方法と同様の方法で次のような特徴があります(セグメント会計基準45項)。

 

①最高経営意思決定機関が経営上の意思決定を行い、また、企業の業績を評価するために使用する事業部、部門、子会社または他の内部単位に対応する企業の構成単位に関する情報を提供します。

②最高経営意思決定機関が業績を評価するために使用する報告において、特定の金額を配分している場合にのみ、当該金額を構成単位に配分します。

③セグメント情報を作成するために採用する会計方針は、最高経営意思決定機関が資源を配分し、業績を評価するための報告の中で使用するものと同一にします。

 

※最高経営意思決定機関とは、企業の事業セグメントに資源を配分しその業績を評価する機能を有する主体のことをいいます。具体的には、取締役会、執行役員会議といった組織上の会議体である場合や、最高経営責任者(CEO)あるいは最高執行責任者(COO)といった特定の個人である場合などが考えられています。

 

2.セグメント会計基準で開示する内容

マネジメント・アプローチでは、セグメントの区分方法あるいは測定方法が特定の方法に限定されておらず、経営者の意思決定や業績評価に使用されているありのままの情報を開示することを求めています。

セグメント情報として報告される利益は、経営者が実際に意思決定で利用している利益であり、必ずしも従来の会計基準で開示している営業利益、経常利益とは限りません。

 

3.事業セグメントの識別

(1) マネジメント・アプローチの考え方

マネジメント・アプローチでは、経営者が経営上の意思決定を行い、また、業績を評価するために、企業の事業活動を区分した方法に基づいて、単一の区分方法によるセグメント情報を連結財務諸表または個別財務諸表に開示することにしています。

セグメント会計基準では、当該目的で経営者の設定する企業の構成単位を「事業セグメント」といいます(セグメント会計基準6項、61項)。「事業セグメント」は、企業の構成単位で、次の要件のすべてに該当するものをいいます

(セグメント会計基準6項)。

 

①収益を稼得し、費用が発生する事業活動にかかわるもの(同一企業内の他の構成単位との取引に関連する収益および費用を含む)

②企業の最高経営意思決定機関が、当該構成単位に配分すべき資源に関する意思決定を行い、また、その業績を評価するために、その経営成績を定期的に検討するもの

③分離された財務情報を入手できるもの

 

事業セグメントの要件を満たすセグメントの区分方法が複数ある場合の取り扱いとして、企業は各構成単位の事業活動の特徴、それらについて責任を有する管理者の存在および取締役会等に提出される情報などの要素に基づいて企業の事業セグメントの区分方法を決定するものとします(セグメント会計基準9項)。

また、連結財務諸表上、持分法を適用している関連会社(および非連結子会社)であっても企業の事業セグメントを構成することがあります。この場合にセグメント情報として開示する額は、当該企業の中で最高経営意思決定機関に報告されている金額の取り扱いに従って、連結損益計算書に計上されている持分法投資利益(または損失)の金額、持分法適用会社の財務情報の金額または当該財務情報の金額に持分割合を乗じた金額により行うことになります(セグメント適用指針4項)。

 

(2) 固定資産のグルーピングとの関係

事業セグメントを識別した結果、当該セグメントの範囲が固定資産のグルーピング単位に影響を及ぼす可能性があることに留意が必要です。

 

① 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針第73項との関係

「連結財務諸表における資産グループは、どんなに大きくても、事業の種類別セグメント情報における開示対象セグメントの基礎となる事業区分よりも大きくなることはないと考えられる」としています。資産グループは、管理会計上の区分や投資に意思決定単位で行うことができると考えられていますが、大小関係に留意すべきです。

 

② 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針第74項との関係

セグメントに当該資産グルーピングについては、事実関係の変化した場合を除き、翌期以降の会計期間においても同様に行うとされており(減損会計適用指針 7項、74項)、事実関係が変化した場合の例示として、セグメンテーションの方法等の変更などが挙げられています。

 

4.集約基準

複数の事業セグメントが次の要件を満たす場合、企業は当該事業セグメントを一つの事業セグメントに集約することができます(セグメント会計基準11項)。

(1) 基本原則(セグメント会計基準4項)と整合していること

 

(2) 経済的特徴がおおむね類似していること

 

(3) 次のすべての要素がおおむね類似していること

①製品およびサービスの内容

②製品の製造方法または製造過程、サービスの提供方法

③製品およびサービスを販売する市場または顧客の種類

④製品およびサービスの販売方法

⑤銀行、保険、公益事業等のような業種に特有の規制環境

 

5.量的基準

会計基準では、報告セグメントを決定する際に考慮すべき一定の基準値を定めています。企業は、次の量的基準のいずれかを満たす事業セグメントを報告セグメントとして開示しなければならないとされています(セグメント会計基準12項)。

(1)事業セグメント間の内部売上高または振替高を含む売上高がすべての事業セグメントの売上高の合計額の10%以上

 

(2)利益または損失の絶対値が、①利益の生じているすべての事業セグメントの利益の合計額、または②損失の生じているすべての事業セグメントの損失の合計額の絶対値のいずれか大きい額の10%以上

 

(3)資産がすべての事業セグメントの資産の合計額の10%以上

 

6.「その他」の区分について

報告セグメントの外部顧客への売上高の合計額が連結損益計算書または個別損益計算書(以下、損益計算書)の売上高の75%未満である場合には、損益計算書の売上高の75%以上が報告セグメントに含まれるまで、報告セグメントとする事業セグメントを追加して識別しなければなりません。従来のセグメント情報の開示では、「その他」として一括されたセグメントを除く開示の対象になった売上高合計額が連結損益計算書の50%以下である場合には、その理由を明らかにするとともに「その他」として一括されたセグメントについて一定の事項を開示していましたが、この扱いと比較しますと開示されるセグメントの対象範囲が広がったといえると考えます。