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コーポレートガバナンス・コードと投資家と企業の対話ガイドラインの改訂の概要

2021年4月6日に、「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(以下「フォローアップ会議」)が、「コーポレートガバナンス・コードと投資家と企業の対話ガイドラインの改訂について」と題する提言(以下、「本提言」という。) を公表しました。

 

本提言を受け、コーポレートガバナンス・コードの改訂案及び投資家と企業の対話ガイドラインの改訂案について、それぞれパブリックコメント手続が行われ、2021年6月11日にコーポレートガバナンス・コードの改訂版 (以下、「改訂版コード」という。) と「投資家と企業の対話ガイドライン」の改訂版(以下、「改訂版ガイドライン」という。) が、公表されました。

 

1.改訂の概要

 

(1)コーポレートガバナンス改革を巡る課題

 

本改訂は、本提言において示されたコーポレートガバナンス改革を巡る3つの課題に対応したものとなっています。

 

①取締役会の機能発揮

 

②企業の中核人材における多様性(ダイバーシティ)の確保

 

③サステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)を巡る課題への取組み

 

(2)上記以外の課題

 

上記以外の主な課題として、プライム市場に上場する「子会社」における独立社外取締役の過半数選任又は利益相反管理のための委員会の設置や、監査に対する信頼性の確保及び内部統制・リスク管理、プライム市場上場会社における議決権電子行使プラットフォーム利用と英文開示の促進等の内容等についても、対応する改訂が行われています。

 

(3)プライム市場以外の市場の上場会社

 

改訂版コードには、プライム市場上埸会社向けの原則・補充原則が含まれています。

本提言においても示されているように、その他の市場の上場会社においても、プライム市場上場会社向けのガバナンス項目を参照しつつ、ガバナンスの向上に向けた取組みを進めることが望まれています。

 

2.取締役会の機能発揮

 

(1)取締役会における独立社外取締役比率

 

①取締役会の役割

 

取締役会には、事業環境の不連続性を踏まえた上で、経営者の迅速・果断なリスクテイクを支え重要な意思決定を行うとともに、実効性の高い監督を行うことが求められています。

 

②独立社外取締役の比率

 

改訂版コードにおいては、原則4-8 を改訂し、特に「我が国を代表する投資対象として優良な企業が集まる市場」であるプライム市場の上場会社においては、独立社外取締役を3分の1以上選任するよう求めています。

 

また、それぞれの経営環境や事業特性等を勘案して過半数の独立社外取締役の選任が必要と考える場合には、十分な人数の独立社外取締役を選任すべきであるとしています。

 

③独立社外取締役の人選

 

加えて、本提言では、独立社外取締役は、形式的な独立性にとどまらず、本来期待される役割を果たす人材が選任されるべきであり、本来期待される役割を認識しつつ、役割を発揮していくことが重要となるとの考え方が示されています。

 

(2)取締役会が備えるべきスキル等の組合せ

 

①適切な組み合わせの必要性

 

「フォローアップ会議」が公表した、「コーポレートガバナンス改革の更なる推進に向けた検討の方向性」と題する意見書(以下、「意見書」)では、取締役会が、経営者の迅速・果断なリスクテイクを支え重要な意思決定を行うとともに、実効性の高い監督を行うためには、取締役の知織・経験・能力、さらには就任年数などの適切な組合せの確保が必要不可欠であると指摘しています。

 

また、本提言では、中長期的な経営の方向性や事業戦略に照らして必要なスキルが取締役会全体として確保されることは、取締役会がその役割・責務を実効的に果たすための前提条件であるとの考え方が示されました。

 

②取締役のスキル等の開示

 

上記の指摘を踏まえ、改訂版コードにおいては、補充原則 4-11①を改訂し、取締役会が経営戦略に照らして自らが備えるべきスキル等を特定した上で、経営環境や事業特性等に応じた適切な形で取締役の有するスキル等の組合せを、取締役の選任に関する方針・手続と併せて開示すべきとしています。

また、その際、独立社外取締役には、他社での経営経験を有する者を含めるべきとしています。

 

(3)指名委員会・報酬委員会の設置

 

①フォローアップ会議の指摘

 

フォローアップ会議では、指名委員会・報酬委員会について、期待される機能発揮のためには独立性の確保が重要な要素の1つであるにもかかわらず、現状では十分ではないとの指摘がありました。

また、指名委員会・報酬委員会にいかなる役割や権限が付与され、どのような活動が行われているのかが開示されていない場合が多いとの指摘もありました。

 

②各委員会に関する開示

 

上記の指摘を踏まえ、改訂版コードにおいては、補充原則 4-10①を改訂し、プライム市場上場会社について、各委員会の構成員の過半数を独立社外取締役とすることを基本とし、その委員会構成の独立性に関する考え方・権限・役割等を開示すべきとしています。

 

「構成員の過半数を独立社外取締役とすることを基本とする」とは、構成員の過半数を独立社外取締役とすることだけではなく、各社において取締役会の機能発揮をより実効的なものとする観点から必要と考える独立性が確保されているかという点を適切に判断することとしています。

 

(4)筆頭独立社外取締役・取締役会評価・取締役会議長

 

フォローアップ会議においては、筆頭独立社外取締役の活用や、取締役会議長の独立性の確保、取締役会評価についても議論が行われました。

 

こうした議論や企業における取組状況等を踏まえ、改訂版ガイドラインにおいては、3-7、3-8を改訂するとともに、4 – 4 -1を新設しました。

筆頭独立社外取締役の活用や、取締役会議長の独立性の確保、委員会の評価や各取締役の個人評価を機関投資家と企業との対話において重点的に議論することが期待されるとしています。

 

3.企業の中核人材における多様性の確保

 

(1)フォローアップ会議の指摘

 

フォローアップ会議では、企業経営にとって多様性はイノベーションや新しい価値創造の源泉だとの指摘が多くされました。

取締役や経営陣における多様性を確保するためには、企業の中核人材たる管理職においてもその多様性が確保されていることが重要であるとの指摘もされました。

 

ジェンダーについて、例えば、女性の管理職比率の状況をみると、緩やかに上昇しつつあるものの、国際的に比較しても低い水準にあり、また、上級管理職となるにつれて比率が低くなる傾向があります。

職歴の多様性の1つとしての中途採用や、国際性の観点の例としての外国人の役員への登用に着目し、そうした観点からの多様性の確保も不十分であるとの指摘もされています。

 

(2)多様性の確保の開示

 

①多様性の確保の考え方と目標

 

女性・外国人・中途採用者は、「多様性」の要素の中でも、日本の上場企業において特に対応を進めるべき重要な課題と考えられると指摘されたことから、原則2-4の求める「多様性の確保」の対象にこれらの要素が含まれることが、補充原則2-4 ①において明確化されました。

 

補充原則2 -4①では、上場会社は、女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等、中核人材の登用等における多様性の確保についての考え方と自主的かつ測定可能な目標を示すとともに、その状況を開示すべきとしています。

 

②多様性確保の方針と実施状況

 

フォローアップ会議では、社内の多様性を確保するためには、多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針を整備することも重要だとの指摘がありました。

 

こうした指摘を受けて、補充原則2-4①後段においては、中長期的な企業価値の向上に向けた人材戦略の重要性に鑑み、多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針をその実施状況と併せて開示すべきとしています。

 

4.サステナビリティを巡る課題への取組み

 

(1)サステナビリティの要素と取締役会による取組み

 

①フォローアップ会議の指摘

 

フォローアップ会議では、投資家と企業の間のサステナビリティに関する建設的な対話を促進する観点から、サステナビリティに関する開示が行われることが重要であるとの指摘や、人的資本や知的財産への投資等の重要性についての指摘がありました。

 

サステナビリティに関しては、「持続可能な開発目標」(SDGs) が国連サミットで採択され、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同機関数が増加するなど、サステナビリティが重要な経営課題であるとの意識が高まっています。

 

また、新型コロナウイルスの感染拡大を経て、これまで注目されてきた気候変動をはじめとする「E (環境)」のみならず、従業員の健康・安全や人材への投資といった観点から「S (社会)」 の要素についても注目が高まっています。

 

②改訂版コード

 

(a) サステナビリティを巡る課題

 

取締役会は、サステナビリティを巡る課題への対応は、リスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であると認識し、中長期的な企業価値の向上の観点から、これらの課題に積極的・能動的に取り組むよう検討を深めるべきとし、補充原則2-3①を改訂しています。

 

また、補充原則 3-1③を新設し、上場会社は、経営戦略の開示に当たって、自社のサステナビリティについての取組みを適切に開示すべきとしています。

また、人的資本や知的財産への投資等についても、自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識しつつ、分かりやすく具体的に情報を開示・提供すべきとしています。

 

「サステナビリティを巡る課題への対応」として 「気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引先との公正・適正な取引、自然災害等への危機管理」といった要素を例示しています。

 

(b) 自社のサステナビリティを巡る取組み

 

補充原則4-2②前段において、取締役会の責務として、「中長期的な企業価値の向上の観点から、自社のサステナビリティを巡る取組みについて基本的な方針を策定すべき」としています。

 

(c) 人的資本への投資や知的財産の創出

 

人的資本への投資や知的財産の創出が企業価値に与える影響が大きいとの指摘等に鑑み、補充原則4 – 2②後段においては、人的資本・知的財産への投資等をはじめとする経営資源の配分や、事業ポートフォリオに関する戦略の実行が、企業の持続的な成長に資するよう、実効的に監督を行うことを求めています。

 

(d) 対話ガイドライン

 

フォローアップ会議においては、サステナビリティに関する委員会を設けるなど、社内の体制面を整えることでサステナビリティに関する取組みを一層進めることが重要であるとの指摘があったことから、対話ガイドライン1-3を新設しています。

 

(2)TCFD開示への取組み

 

①現 状

 

気候変動に関する開示については、現時点において、TCFD 提言が国際的に確立された開示の枠組みとなっており、日本企業においても、TCFD賛同機関数が増加するなど、開示に 対して積極的に取り組む動きがみられます。

 

主要国においても、TCFD提言を国内法制化する動きが加速化しています。

 

②改訂版コード

 

補充原則3-1③においては、プライム市場上場会社は、気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行い、国際的に確立された開示の枠組みであるTCFD又はそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めるべきとしています。

 

国際会計基準の設定主体であるIFRS財団において、TCFDの枠祖みにも拠りつつ、気候変動を含むサステナビリティに関する統一的な開示の枠組みを策定する動きが現在進められています。

今後、IFRS財団におけるサステナビリティ開示の統一的な枠組みがTCFDの枠組みにも拠りつつ策定された場合には、これがTCFD提言と「同等の枠組み」に該当するものとなることが期待されます。

 

5.監査に対する信頼性の確保及び実効的なリスク管理

 

(1)フォローアップ会議の議論・指摘

 

①内部監査部門

 

内部監査部門が一定の独立性を持って有効に機能するよう、取締役会や監査役会等に対して直接報告が行われる仕組みの確立を促すことの重要性を指摘しています。

 

こうした内部監査の問題をはじめ、監査に対する信頼性の確保に向けた取組みについて検討を進めることとされました。

 

②監査の信頼性の確保と実効的なリスク管理の在り方

 

企業活動のグローバル化にともなうグループマネジメントの重要性や、デジタル化などにともなう新たなリスクに対する多様な視点からのマネジメントを認識しておくことの重要性が指摘されました。

 

③デュアルレポーティングライン

 

内部監査部門の機能発揮のために、内部監査部門によるいわゆるデュアルレポーティングラインの重要性も指摘されました。

 

(2)改訂版コード

 

①内部監査部門

 

改訂版コードでは、補充原則4 -3 ④を改訂し、取締役会に対して、グループ全体を含めた内部統制と全社的リスク管理体制を適切に構築し、内部監査部門を活用しつつ、その運用状況を監督することを求めています。

 

②内部監査部門の報告

 

補充原則4 -13③では、内部監査部門と取締役・監査役との連携の確保の一環として、内部監査部門が取締役会及び監査役会に対して適切に直接報告を行う仕組みを構築することを例示しています。

 

③監査役の独立性

 

監査役の独立性の実質的な担保が必要である等の指摘を踏まえ、改訂版コードでは、原則4-4を改訂し、監査役が、その選解任や監査報酬に係る権限の行使などの役割・責務を果たすに当たって、独立した客観的な立埸において適切に判断を行うべきことを明示しています。

 

(3)対話ガイドライン

 

①監査役の選任手続き

 

対話ガイドライン3-10において、監査役が適切な手続を経て選任されているか否かが、機関投資家と企業との対話において重点的に議論することが期待される事頂とされました。

 

②適正な会計監査の確保

 

対話ガイドライン3-11では、監査役について、監査上の主要な検討事項の検討プロセスにおける外部会計監査人との協議を含め、適正な会計監査の確保に向けた実効的な対応を行っているかという点が追加されました。

 

③内部通報制度

 

内部統制やリスク管理体制の実効性確保のためには、内部通報制度が実効的に適用されていることが重要となります。

対話ガイドライン3-12では、内部通報制度の運用の実効性を確保するため、内部通報に係る体制・運用実績について開示・説明する際には、これが分かりやすいものとなっているかという点が示されました。

 

6.今後の予定

 

(1)コーポレートガバナンス報告書

 

本改訂にともない、上場会社は、遅くとも2021年12月までに、改訂版コードに沿ってコーポレートガバナンス報告書の提出を行うこととされています。

 

また、プライム市場上場会社のみに適用される原則等に関しては、2022年4月4日以降に開始される各社の株主総会の終了後、速やかにこれらの事項について記載したコーポレートガバナンス報告書を提出することとされています。

 

(2)プライム市場以外の市場の上場会社

 

このほか、本提言では、プライム市場以外の市場の上場会社においても、プライム市場上場会社向けのガバナンス項目を参照しつつ、ガバナンスの向上に向けた取組みを進めることが望ましいといった考え方が、併せて示されています。

「倫理規程における非保証業務に関連する規定の改訂」~国際国際会計士倫理基準審議会による公表

2021年4月28日に、国際会計士倫理基準審議会(International Ethics Standards Board for Accountants: IESBA)から、「倫理規程における非保証業務に関連する規定の改訂」が公表されました。

本規定の改訂は、非保証業務の提供に関する規定をグローバルで適用することを通じて強固で高品質なものとすることにより、監査事務所の独立性に対する信頼を向上させることを目的とするものです。

 

1.改訂の背景

 

本規定の改訂は、規制当局や公益監視委員会(PIOB)からの要請により、2018 年9月から具体的な検討が開始されました。

規制当局等からは、監査業務の依頼人に対して非保証業務を提供する際の監査人の独立性に関して、幅広い懸念が提起されました。

こうした懸念を受け、IESBAは、各国における独立性に関する規制の状況も踏まえ、規定の改訂について検討を進めてきました。

本規定は、このような経緯を経て改訂されたものです。

 

2.改訂規定の概要

 

監査業務の依頼人に対する非保証業務の提供により、独立性を阻害する自己レビュー等の阻害要因が生じ得ることから、改訂前の規定においても、禁止事項を含む様々なガイダンスが定められていました。

 

改訂規定では、自己レビューの阻害要因を生じさせる可能性のある非保証業務を大会社等である監査業務の依頼人に提供することの全面禁止や、非保証業務の提供に際しての統治責任者からの了承等、規定の強化が図られています。

 

具体的な改訂の内容は、以下のようになっています。

 

(1)自己レビューの阻害要因が生じる可能性のある非保証業務の提供禁止

 

①新要求事項

 

監査業務の依頼人が大会社等である場合、会計事務所等又はネットワーク・ファームは、自己レビューの阻害要因が生じる可能性のある非保証業務を提供してはならないとする要求事項が新設されています。

これによって、これまでは、重要性の判断や非保証業務に従事した者を監査業務に関与させないなどのセーフガードの適用により提供が認められていた業務が禁止されることとなります。

 

②提供の可否の判断

 

監査業務の依頼人に対する非保証業務の提供に先立って、会計事務所等又はネットワーク・ファームは、非保証業務を提供する際、自己レビューの阻害要因が生じる可能性があるかどうかについて、次の(a)及び(b)のリスクがあるかどうかを評価することにより判断しなければなりません。

 

(a)非保証業務の結果が、会計記録、財務報告に係る内部統制又は監査意見の対象となる財務諸表の一部を構成する、又はそれらに影響を及ぼす。

 

(b)監査意見の対象となる財務諸表を監査する過程において、 会計事務所等又はネットワーク・ファームが非保証業務を実施する過程で行った判断や作業を、監査業務チームが評価する、又はそれらに依拠する。

 

(2)重要性

 

独立性に関する利害関係者の懸念が高まっていることを踏まえ、非保証業務の提供が規定上明確に禁止されている場合には、重要性の程度にかかわらず、非保証業務の提供が禁止されることになります。

 

(3)統治責任者とのコミュニケーション(監査業務の依顆人が大会社等の場合)

 

①統治責任者への情報提供

 

会計事務所等又はネットワーク・ファームが監査業務の依頼人である大会社等、その親会社又はその子会社に提供する非保証業務を受嘱する前に、以下の情報を提供しなければならないとする要求事頂が新設されています。

 

(a)提供する業務が禁止されておらず、かつ、独立性に対する阻害要因を生じさせない、若しくは、識別された阻害要因が許容可能な水準である、又は、そうでない場合、阻害要因が除去又は許容可能な水準にまで軽減されると会計事務所等が判断していること

 

(b)提供される業務が会計事務所等の独立性に与える影響について、統治責任者が十分な情報を得た上で評価するために必要な情報

 

②コミュニケーション項目の例示

 

・提供する非保証業務の内容及び範囲

 

・提案した報酬の根拠と金額

 

・提案した業務の提供によって生じる可能性がある独立性に対する阻害要因を識別した場合に、阻害要因が許容可能な水準であるかとする会計事務所等の評価の根拠、又は、許容可能な水準にない場合には、阻害要因を除去又は許容可能な水準にまで軽減させるために会計事務所等又はネットワーク・ファームが講じる対応策

 

・複数の業務を提供することにより生じる複合的な影響が独立性の阻害要因を生じさせるか、又は、既に織別している阻害要因の水準を変更させるかどうか

 

③統治責任者による了承

 

阻害要因の評価の結果、会計事務所等が同時提供可能と判断した業務について、統治責任者が以下の事項に了承 (Concur)しない限り、会計事務所等又はネットワーク・ファームは、当該非保証業務を提供することができないとする要求事項が新設されています。

 

(a)提供する業務が独立性に対する阻害要因を生じさせない、若しくは、識別された阻害要因が許容可能な水準である、又は、そうでない場合は、阻害要因が除去又は許容可能な水準にまで軽減されるとする会針事務所等の結論

 

(b)当該業務を提供すること

 

④了承の方法

 

統治責任者による了承は、例えば、個別の契約ごとに行う方法や全般的な方針の下で行う方法等、会計事務所等が統治責任者との問で合意したプロセスによる場合があるとされており、樣々なガバナンス体制に対応できるよう、柔軟性が認められています。

 

⑤統治責任者による了承の例外

 

法令等により統治責任者への情報提供が禁止されている埸合、又は、機密情報の漏洩につながる場合には、以下の条件をもとに、会計事務所等は非保証業務を提供することが認められます。

 

(a)法令等に違反しない範囲で情報を提供すること

 

(b)業務の提供が独立性に対する阻害要因を生じさせない、若しくは、識別された阻害要因が許容可能な水準であること、又は、そうでない場合は、阻害要因を除去又は許容可能な水準にまで軽滅させることを統治責任者に伝えること

 

(c) (b)で下した会計事務所等の結論に、統治責任者が不同意を示さないこと

 

⑥非保証業務の辞退又は監査業務の終了

 

以下の(a)又は(b)のいずれかに該当する場合、会計事務所等又はネットワーク・ファームは、非保証業務の提供を辞退するか、監査業務を終了しなければなりません。

 

(a)会計事務所等又はネットワーク・ファームが、統治責任者へ悄報提供することを一切認められない場合

 

(b)業務の提供が独立性に対する阻害要因を生じさせない、若しくは、識別された阻害要因が許容可能な水準である、又は、そうでない埸合は、阻害要因が除去又は許容可能な水準にまで経減されると会計事務所等が下した結論に統治責任者が不同意を示した場合

 

(4)会計及び記帳業務

 

①提供禁止業務

 

以下に掲げる会計及び記帳業務は、その業務の結果が、会計記録又は監査意見の対象となる財務諸表に影響を及ぼす場合に、自己レビューの阻害要因が生じるとして、監査業務の依頼 人には提供が禁止されています。

 

(a)会計記録又は財務諸表の作成

 

(b)取引の紀録

 

(c)給与計算業務

 

(d)勘定の調整に関する問題の解決

 

(e)既存の財務諸表を1つの会計基準から他の会計基準へ移行する業務

 

ただし、監査業務の依頼人が大会社等ではない場合は、その業務が定型的又は機械的な内容であり、かつ、会計事務所等が阻害要因に対処している場合は提供可能です。

 

②例外

 

例外的に、会計事務所等又はネットワーク・ファームは、 経営者の責任を担わず、かつ、自己レビュー以外の阻害要因に対して概念的枠組みを適用することで、大会社等である監査業務の依頼人に対して、監査の過程で生じる事項に閲連して以下の助言や提言の提供を行うことが認められます。

 

(a)会計及び財務報告の基準又は方針及び財務諸表の開示に関する規則等の助言

 

(b)財務諸表及び関連する開示の計上額を決定するための財務又は会計統制及び方法の適切性に関する助言

 

(c)監査での発見事項に基づく修正仕訳の提案

 

(d)財務報告に係る内部統制及びプロセスに関する発見事項の協議及び改善事項の提案

 

(e)勘定の調整方法に関する協議

 

(f)グループの会計方針の遵守に関する助言

 

3.適用日

 

2022年12月15日以降に開始する事業年度の監査から適用されます。また、早期適用も認められます。

 

なお、移行措置として、2022年12月15日より前に締結し、既に着手した非保証業務については、当初の契約期間が完了するまでは、改訂前の規定に基づいて業務を継続することができるとされています。

 

4.日本への影響

 

(1)監査事務所への影響

 

①同時提供が可能となる非保証業務の縮小

 

監査業務の依頼人が大会社等である場合、自己レビューの阻害要因が生じる可能性のある非保証業務の提供が包括的に禁止されます。

 

また、監査業務の依頼人が大会社等以外である場合も、税務に関する助言及びタックス・プランニング業務やコーポレート・ファイナンスに関する助言業務が制限されています。

 

これまでは、重要性の判断やセーフガードの適用により同時提供していた非保証業務を提供できなくなる可能性があることから、会計事務所等及びネットワーク・ファームは影響を受けるものと考えられます。

特に、自己レビューの阻害要因が生じる可能性のある非保証業務の提供禁止については、影響があるものと考えられます。

 

②統治責任者(監査役等)による了承

 

監査業務の依頼人が大会社等の場合、非保証業務の提供が独立性に及ぼす影響について、統治責任者が十分な情報を得た上で意思決定を行うことができるように、会計事務所等が、非 保証業務の受嘱前に、非保証業務の内容や阻害要因の評価等に関する情報を提供し、統治責任者による了承を得るよう改訂されています。

 

会計事務所等においては、ネットワーク・ファームによって提供される非保証業務を含め、網羅的に情報を収集し、統治責任者に対し情報を提供するとともに、了承を得ることが求められます。

 

(2)企業への影響

 

①同時提供が可能となる非保証業務の縮小

 

同時提供が可能となる非保証業務が縮小すると、企業が監査人やそのネットワーク・ファームに依頼している非保証業務が、今後は依頼できなくなる可能性があります。

その場合には、監査人やそのネットワーク・ファーム以外に非保証業務を依頼しなければならなくなります。

 

② 統治責任者(監査役等)による了承

 

統治責任者は、会計事務所等から十分な情報を得た上で非保証業務の提供について了承することとなります。

そのため、大会社等である企業において、監査人やそのネットワーク・ファームから非保証業務の提供を受ける埸合には、統治責任者が了承するためのプロセスを構築する必要が生じるものと考えられます。

 

統治責任者においては、会計事務所等から得た情報をもとに、非保証業務に関する情報を検討し、了承することが求められるものと考えられます。

 

(3)今後の予定

 

既に、IESBAより改訂内容に関するウェビナーが開催され、 今秋には、適用ガイダンスが公表される予定です。

今後、日本公認会計士協会においても、これらの規定に関して、日本の倫理規則への導入の検討が行われる予定です。

 

非財務情報の充実と情報の結合性に関する考察~開示府令・記述原則・好事例集の分析等による説明

会計制度委員会研究資料第6号「非財務情報の充実と情報の結合性に関する実務を踏まえた考察」(以下、「研究資料」)が2021年 4 月15 日に日本公認会計士協会から公表されました。

 

その中から「規則やガイドライン等における結合性の説明」を見てみましょう。

 

1.ディスクロージャーワーキング・グループ報告による提言

 

2018年6月に金融審議会より公表された「ディスクロージャーワーキング・グループ報告~資本市場における好循環の実現に向けて~」(以下、「DWG」報告」)では、財務情報及び記述情報の開示は、投資家による適切な投資判断を可能とし、投資家と企業の建設的な対話を促進することにより、経営の質を高め、企業が持続的に企業価値を向上させる観点から重要であるとされ、その中でも記述情報の開示の充実に向けて多くの提言がなされました。

 

(1)DWG報告は、企業情報における「結合性」の点について、日本企業の経営戦略に関する開示には、以下の課題があると指摘しています。

 

①全体として見ると、企業の中長期的なビジョンに関する具体的な記載が乏しい

 

②MD&Aやリスク情報との関連付けがない

 

(2)このように、開示実務の課題の1つとして、情報間の「結合性」の欠如が示唆されており、経営戦略、ビジネスモデルの開示において、DWG報告では、以下のような提言がされています。

 

①企業の目的と経営戦略、ビジネスモデルについて、取締役・経営陣が積極的に自らコミットしてその見解を示すことが必要であり、投資家が適切に理解することができるよう経営戦略の実施状況や今後の課題を示しながら、MD&AやKPI、リスク情報とも関連付けて、より具体的で充実した説明がなされるべきである。

 

②ビジネスモデルについて、企業がどのように事業を行い、どのように中長期的な価値創造に取り組んでいるのかを明確にするとともに、企業の目的や経営戦略と関連付けて説明し、投資家による経営戦略の適切性や実現可能性の考察に資するものとすべきである。

 

2.開示府令における「結合性」に関する要求事項

 

DWG報告の提言を受けて、2019年1月に開示府令が改正されました。

 

有価証券報告書の非財務情報における以下の項目について、情報間の「結合性」に関連する改正が行われています。

 

①経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (開示府令第二号様式記載上の注意(30)b)

 

②事業等のリスク (開示府令第二号様式記載上の注意(31)a)

 

③経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (開示府令第二号様式 記載上の注意(32)e)

 

3.記述情報の開示に関する原則及び好事例集における結合性に関する内容

 

DWG報告を踏まえて、金融庁から記述原則及び好事例集が公表されています。

 

記述原則は、企業情報の開示の考え方、望ましい開示の内容や取組方法を示すものであり、開示書類の作成者が、この原則に沿った開示が実現しているか、自主的な点検を継続することを期待して、作成・公表されたものです。

 

さらに、開示に関するルールやプリンシプルベースのガイダンスの整備に加え、適切な開示の実務の積み上げを図る取組も必要と考えられることから、企業開示の好事例を全体に広げるための取組として、好事例集が公表され、継続的な更新が行われています。

 

(1)記述情報の開示に関する原則

 

①記述原則では、総論においては、記述情報全般に係る基本的な原則が説明されており、各論においては、記述情報のうち経営方針、リスク情報、MD&A等の記載項目ごとに基本的な考え方や望ましい開示の在り方、開示を改善するための取組について説明されています。

 

②結合性については、「「経営方針・経営戦略等」と「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」など、関連性のある記述情報については、例えば、一方の開示内容を他方の開示内容にも反映させるなど、記載を相互に関連付けることにより、全体としての企業の理解に資する記載とすることが望ましい。」といった記載があります。

 

(2)記述情報の開示の好事例集の分析

 

企業情報の開示の好事例を全体に広げることを目的として、2019年3月に金融庁から公表された好事例集は、2020年11月、2021年2月及び3月に事例の追加・公表が行われています。

各事例については、好事例として着目したポイントがコメントされており、どのような点を改善するべきなのか具体的に理解できるようになっています。

 

研究資料では、記述原則における開示方法の工夫と開示内容の充実という切り口から、好事例のコメントについて横断的に確認し、好事例においては、どのような情報が相互に結合されているのかという観点から分析が行われています。

 

①開示方法の工夫

 

開示方法の工夫に関連して、好事例とした理由のうち最も頻度が高かった上位5件は以下のようになっています。

 

順  位 好 事 例 と し た 理 由
1 具体的に説明している。
2 情報を関連付けて説明している。
3 経営者の視点で説明している。
4 図表を用いて分かりやすく説明している。
5 記載が簡潔である。

 

②情報の結合性

 

好事例として取り上げられたもののうち、情報の結合性の観点から評価されていた事例について確認しています。

相互に関連付けが行われている情報の組み合わせパターンのうち、最も頻度が高かった上位5件は以下のとおりです。

 

順  位 好 事 例 と し た 理 由
1 戦略・課題
2 経営環境・戦略
3 リスク・戦略
4 セグメント・リスク
5 経営環境・リスク

 

上位5件において、関連付けが行われている要素は、戦略、リスク、経営環境、課題、セグメントの5つであり、戦略とリスクの登場頻度が最も多く、この2つの要素が結合性を高める上での鍵になると考えられます。

 

4.情報の結合性に関する考察

 

研究資料では、企業情報開示において情報間の結合性がなぜ求められるのか、求められる結合性の側面を考察しています。

 

(1)情報開示における結合性の必要性

 

①企業の価値創造ストーリーの伝達

 

ⅰ)企業報告において、企業の価値創造ストーリーを伝達することの重要性の高まり

 

自社の強みや外部環境の変化の状況を踏まえ、将来に向けてどのような価値を創造し、どのように企業価値を高めていくか、リスクに対してどのように対処していくかといった未来志向の包括的な情報開示が求められています。

 

ⅱ)企業の価値創造ストーリーを効果的に伝達するためには、情報同士の結合性が重要

 

価値創造ストーリーの伝達においては、財務情報だけでなく、定性・定量的、多様な非財務情報の開示が必要と考えられます。非財務情報は、企業経営者による認識、意思、実績及び評価を表す情報から構成されます。

 

中長期的な視点で投資判断を行う投資家は、企業価値に影響する財務情報・非財務情報などの多様な要因を分析することによって、各種情報を一体的に活用しています。

言い換えれば、各情報は企業価値評価のためのインプット・ファクターであり、投資家にとって各情報の相互関係性の理解が重要となります。

 

②財務情報コンテクストの提供

 

ⅰ)財務情報と非財務情報

 

財務情報は、企業のビジネスモデルの構築、戦略の立案及び遂行、リスクへの対応といった一連の経営行動の帰結としてのある時点における結果を表すものであり、一方で、非財務情報は、財務情報のコンテクストを提供します。

 

利用者である投資家は、財務情報をそのまま利用するのではなく、ビジネスモデル、戦略、当年度に発生した事象や企業の経営行動や判断についての背景の理解に基づき、自らの企業価値評価モデルに活用します。

 

ⅱ)情報の相互一貫性

 

非財務情報のうち戦略やリスクといった将来志向の情報は、財務情報の先行情報としての性格を有しています。

企業が開示する財務情報の多くは過去の取引実績を基礎としますが、いわゆる会計上の見積りは、企業の将来業績に対する見通し及び不確実性に関する認識を反映しており、将来志向の情報としての性格も併せ持っています。

 

こうした将来見通しは、非財務情報として開示される経営環境認識、経営戦略及びリスク認識を基礎とするものであり、相互一貫性が求められます。

 

③KPIによる多角的実績の提示

 

ⅰ)財務・非財務指標、業績評価指標(KPI)の重要性の高まり

 

以前から、財務諸表とMD&Aの結合性は求められてきていますが、MD&Aにおいては財務だけでなく非財務業績も含めた分析、評価、考察に関する情報開示が求められるようになっています。

 

さらに、財務KPIやNon-GAAP指標の開示が広がる中、これらの数値情報の信頼性確保と一貫した開示を担保する観点から、監査済み財務諸表との整合性を確保するとともに相互関連性を説明することの重要性が増しています。

 

ⅱ)業績連動型報酬

 

経営者や取締役へのインセンティブの観点から、役員報酬がどのように設計されているかについて投資家からの関心が高まっていますが、業績連動型の報酬を採用している場合、特に財務・非財務に関する業績を表すKPIとどのように関連しているかが重要な情報となっています。

 

(2)結合性強化のための枠組み

 

こうした情報の結合性に対する要請を踏まえ、企業報告の側面から結合性を高めるための枠組みを整理しています。

 

①ビジネスモデルと経営戦略を軸とする結合性

 

企業の価値創造ストーリーを伝達する観点から、企業のビジネスモデルと経営戦略を軸とする情報の体系化が求められます。

価値創造の基盤となるものがビジネスモデルであり、当該ビジネスモデルの実現可能性を評価する観点から、特に、資源配分と資本調達に関する戦略が重視されます。

 

経営環境認識、リスク認識、業績等に関する情報は、こうしたビジネスモデル及び戦略の背景や結果情報として位置付けることができます。

 

経営研究調査会研究報告第59号「長期的視点に立った投資家行動に有用な企業報告〜非財務情報に焦点を当てた検討〜」では、長期的視点の投資家行動に有用な企業報告を実現する観点から、開示情報が企業価値の財務的評価につながる情報となっていることの重要性を指摘しています。

以下の4点を重要ポイントとして挙げています。

 

(ⅰ)生産性、成長性及びリスク評価に資する開示、

(ⅱ)企業の将来像(ビジョン、ビジネスモデル)と背景要因の提示、

(ⅲ)現在と将来をつなぐ「戦略」(資源配分の方針及び計画)の開示及び

(ⅳ)資本政策の説明

 

②情報の要素・項目間の結合性

 

多種多様な情報が開示されるようになっている開示実務においては、情報の要素・項目間での結合性が求められます。

 

(ⅰ)企業が目指すビジネスモデルやリスク認識は、企業の現在から将来にわたっての外部環境及びその変化に関する認識を基礎とするものでなければならなりません。

 

(ⅱ)MD&Aとして開示される業績評価のための情報は、財務・非財務に関する業績を説明するものであるため、KPIとの結合性はもとより、報告対象期間における外部環境や戦略の進埗に関する認識と評価を踏まえたものである必要があります。

 

③財務情報と非財務情報の結合性

 

企業の価値創造ストーリーを伝達する観点から、ビジネスモデル、戦略、リスクに関して、財務情報と非財務情報を組み合わせて効果的に説明することが求められます。

 

経営環境の見通し、将来のビジネスモデル、中長期戦略、リスク認識に関する情報は、将来の財務的な価値につながる財務先行情報としての性格を有しています。

 

財務報告における会計上の見積りは、こうした将来志向の情報を基礎とするものであり、情報の時間軸を考慮しつつ、財務・非財務情報の結合性を高めていくことが重要となります。

 

あわせて、財務情報のコンテクストを表すという非財務情報の性格から、現在の外部環境、戦略(進行中の中期計画など)、MD&A、非財務KPIについては、財務実績と整合的かつ適切に関連付けされた開示が求められます。

 

④定量KPI (評価)と定性記述の結合性

 

戦略の進埗状況や業績を表すKPIについては、実績数値だけでなく、当該実績及びその背景にある要因に関しての経営者による分析、評価を提示することによって、情報利用者が戦略の進涉や業績に対する深い理解を獲得し、自らの評価に反映する際の手助けとなります。

 

(ⅰ)企業情報開示においてMD&Aとして説明が求められてきた内容ですが、財務業績だけでなく、非財務面の実績を表すKPIについても、分析の対象を拡張することが必要となります。

 

(ⅱ)戦略等に関する定性的な記述においても、過去の実績情報や定量的なデータを基礎とすることで、その説得力を高めることにもつながります。

 

(ⅲ)近年、取締役等に対するインセンティブとしての有効性を説明する観点から、こうした業績と役員報酬がどのように関連付けられているかの説明が重要となっています。

役員報酬におけるKPI実績との連動性について制度設計の背景にある考え方と当年度実績の説明が求められます。

 

産業競争力強化法における事業適応と政策税制~DX投資促進税制に係る令和3年度税制改正の概要

Ⅰ.DX投資促進税制の創設

 

1.令和3年度(2021年度)税制改正及び産業競争力強化法等の改正

 

令和3年度(2021年度)税制改正法は令和3年3月26日に参議院で可決され成立しました。特段の定めのあるものを除いて令和3年4月1日から施行されています。

産業競争力強化法等の改正は、令和3年6月9日に参議院で可決され成立しました。

 

(1) 産業競争力強化法等の改正

 

産業競争力強化法等の改正は、「新たな日常」に向けた取組を先取りし、長期視点に立った企業の変革を後押しするため、ポストコロナにおける成長の源泉となる以下の措置を講じる必要がある、との認識の下で内容の見直しが行われたものです。

 

①「グリーン社会」への転換

②「デジタル化」への対応

③「新たな日常」に向けた事業再構築

④中小企業の足腰強化

⑤「新たな日常」に向けた事業環境の整備等

 

(2) 産業競争力強化法等の改正に係る税制措置

 

産業競争力強化法等の改正に係る税制措置として、以下の項目が令和3年度税制改正に盛り込まれました。

 

①DX (デジタルトランスフォーメーション)投資促進税制の創設

②カーボンニュートラル投資促進税制の創設

③繰越欠損金の控除上限の特例の創設

④中小企業の経営資源の集約化に資する税制の創設

⑤事前認定不要の株式対価M&Aの株式譲渡益の課税繰延制度の創設(現行の産業競争力強化法に規定する「事業再編計画」による特例の廃止)等

 

2.産業競争力強化法改正における「事業適応」と税制措置

 

(1) 産業競争力強化法の目的と「事業適応」の定義

 

産業競争力強化法の目的は、産業競争力の強化の基本理念を定め、規制改革の推進と産業活動における新陳代謝の活性化の促進等をその目的としています。

今般の改正にあたり、新たに「事業適応の円滑化」が「産業活動における新陳代謝」に追加され、「事業適応」の定義が設けられました。

 

【定義】

事業者が、産業構造又は国際的な競争条件の変化その他の経済社会情勢の変化に対応して、その事業の生産性を相当程度向上させること又はその生産し、若しくは販売する商品若しくは提供する役務に係る新たな需要を相当程度開拓することを目指して行うその事業の全部又は一部の変更。

 

(2) 事業適応計画認定制度の創設

 

「事業適応」の内容により、以下の3つに区別され、それぞれについて事業適応の実施に関する指針と事業適応計画の認定が規定されています。

 

①成長発展事業適応

②情報技術事業適応

③エネルギー利用環境負荷事業適応

 

(3)「事業適応」による「産業活動における新陳代謝」

 

「事業適応」による「産業活動における新陳代謝」は、産業競争力強化法等の改正の理由の一つである、「新型コロナウイルス感染症の影響、急激な人口の減少等の短期及び中長期の経済社会情勢の変化に適切に対応して、我が国産業の持続的な発展を図るため、情報技術の進展、エネルギーの利用による環境への負荷の低減等に対応する事業変更を行おうとする者についての計画認定制度の創設」に対応するものです。

 

(4)事業適応の課税の特例

 

それぞれの事業適応の課税の特例として、①DX投資促進税制、②カーボンニュートラル投資促進税制、③繰越欠損金の控除上限の特例が、改正租税特別措置法において措置されました。

事業適応計画と課税の特例の関係は、以下のようになっています。

 

 

3. 「事業適応計画」の作成と認定

 

事業適応の課税の特例を受けるには、「事業適応計画」を経済産業大臣に提出してその認定を受ける必要があります。

 

(1)記載内容

 

事業適応計画には、①事業適応の目標、②事業適応の内容及び実施時期、③事業適応に係る経営の方針の決議又は決定の過程、を記載します。

より具体的な記載内容は、政省令にて明らかにされる予定です。

 

(2)認定事業適応事業者

 

申請された「事業適応計画」が、以下の要件をすべて満たす場合には認定が行われ、認定事業適応事業者 (経済産業大臣により「事業適応計画」の認定を受けた事業者)の認定に係る事業適応計画の内容が公表されます。

 

①実施指針に照らし適切なものであること。

②当該事業適応計画に係る事業適応が円滑かつ確実に実施されると見込まれるものであること。

③当該事業適応計画に係る事業適応による生産性の向上又は需要の開拓が、当該事業分野における市場構造に照らして、持続的なものと見込まれるものであること。

 

Ⅱ.各税制の解説

 

1.デジタルトランスフォーメーシヨン(DX)投資促進税制の創設:令和5年(2023年)3月31日までの時限措置

 

デジタル技術を活用した企業変革を進める観点から、クラウド型システム導入等による「つながる」デジタル環境の構築に向けた投資について、税額控除(5%・3%)又は特別償却(30%)ができる措置が創設されます。

 

(1) 事業適応計画

 

事業適応計画の認定要件を満たした上、次の要件について 主務大臣から確認を受ける必要があります。

 

①デジタル(D)要件(データ連携・共有、レガシー回避、サイバーセキュリティ)

 

・他の法人等が有するデータ又は事業者がセンサー等を利用して新たに取得するデータと既存内部データとを合わせて連携すること

・クラウド技術を活用すること

・情報処理推進機構が審査を行う認定(DX認定)を取得すること

 

②企業変革(X)要件(ビジネスモデルの変革、アウトプット、全社戦略)

 

・商品の製造原価が8.8%以上削減されること等

・生産性向上や売上高の上昇の目標を定めること

・計画期間内で、ROAが2014年〜2018年平均を基準値として1.5%ポイント向上すること

・計画期間内で、売上高伸び率≧過去5年度の業種売上高伸び率+5%ポイントであること

・投資総額が売上高比0.1%以上であること

 

(2) 課税の特例の内容

 

認定された事業適応計画に基づいて行う設備投資について、設備投資総額の上限を300億円として、以下の措置を講じています。

 

対象設備:

ソフトウェア

繰延資産

機械装置

器具備品

 

税額控除:3%、他社とのデータ連携に係るもの5% 又は 特別償却30%

 

(注1)繰延資産:クラウド技術を活用したシステムへの移行に係る初期費用になります。

(注2)機械装置及び器具備品:ソフトウェア又は繰延資産と連携して使用するものに限ります。

(注3)税額控除の控除上限は、カーボンニュートラルに向けた投資促進税制と合わせて当期の法人税額の20%を上限としています。

 

2.カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の創設:令和6年(2024年)3月31日までの時限措置

 

2050年カーボンニュートラルに向け、化合物パワー半導体等の生産設備への投資、生産プロセスの脱炭素化を進める投資など脱炭素化効果の高い先進的な投資について、税額控除(10%・5%)又は特別償却(50%)ができる措置が創設されます。

 

1) 事業適応計画の経済産業大臣の認定

 

①脱炭素化を加速する製品を生産する設備(需要開拓商品生産設備)

(ⅰ)需要開拓商品(*)の生産を行うために不可欠な機械装置であること

(ⅱ)専ら需要開拓商品の生産に使用されること

(*)燃料電池・化合物パワー半導体等のうち、特に優れた性能を有するもの

 

②生産プロセスを大幅に省エネ化・脱炭素化するための最新の設備(生産工程効率化等設備)

事業所等の単位で炭素排出量1単位当たりの付加価値額(炭素生産性)の目標が、「3年以内に7 %又は10%以上向上」を満たす計画であること

 

(2) 課税の特例の内容

 

認定された事業適応計画に基づく脱炭素化効果の大きい設備投資について、設備投資総額の上限を500億円として、以下の措置が講じられます。

税額控除の控除上限は、デジタルトランスフォーメーシヨン投資促進税制と合わせて当期の法人税額の20%を上限としています。

 

①需要開拓商品生産設備

 

対象設備:機械装置

 

税額控除:10% 又は 特別償却:50%

 

②生産工程効率化等設備

 

対象設備:導入される設備が事業所の炭素生産性を1%向上させることを満たす必要があります。

機械装置

器具備品

建物附属設備

構築物

 

税額控除:5% 目標が10%以上向上の場合10% 又は 特別償却:50%

 

3.繰越欠損金の控除上限の特例の創設

 

コロナ禍の厳しい経営環境の中、赤字であってもカーボンニュートラル、DX、事業再構築・再編等へ果敢に前向きな投資を行う企業に対し、コロナ禍の影響を受けた2年間に生じた欠損金額について、その投資額の範囲内で、最大5年間、繰越欠損金の控除限度額を最大100%とする特例が創設されます。

 

(1) 事業適応計画

 

事業適応計画の認定要件を満たした上で、次の要件を満たす必要があります。

主務大臣が計画を認定するとともに投資実績を毎年確認します。

 

①将来の成長に向けた投資内容を記載した計画を提出すること

②計画期間内に達成を見込む業績目標(ROAが計画認定時の直近事業年度比5%ポイント向上など)を定めること

③投資計画が企業の成長に資する内容であること(単純な維持・更新投資は対象外)

 

(2) 課税の特例の概要

 

認定された事業適応計画に基づく果敢な投資を行う企業の繰越欠損金について以下の措置を講じます。

この特例における欠損金の控除限度額の引上げは、対象欠損事業年度において生じた欠損金額のうち事業適応計画に従って行った投資の額に達するまでの金額を上限とします。

 

対象欠損事業年度:令和2年2月1日から令和3年4月1日までの期間内の日を含む事業年度の2年間

 

欠損金の控除限度額:最大5年間 100%控除可能

 

 

4.中小企業の経営資源の集約化に資する税制の創設

 

(1) 中小企業事業再編投資損失準備金

 

M&A実施後に発生する中小企業の特有のリスク(簿外債務、偶発債務等)に備える観点から、M&Aに関する経営力向上計画の認定を受けた中小企業者が、株式譲渡によってM&Aを実施する場合(取得価額が10億円以下の場合に限る。) において、株式等の取得価額の70%以下の金額を中小企業事業再編投資損失準備金として積み立てたときは、その積立金額を損金算入できることとなります。

 

経営力向上計画の認定期限は、令和6年(2024年)3月31日となっています。

 

この準備金は、据置期間終了後、原則として、5年間で均等額を取り崩して益金算入することとなります。

 

(2) 経営力向上計画

 

また、当該認定計画の中で、中小企業経営強化税制の新たな類型の適用ができることとするとともに、所得拡大促進税制の上乗せ要件に必要な計画の認定が不要とされます。

 

 

5.株式対価M & Aを促進するための措置の創設

 

企業の機動的な事業再構築を促し、競争力の維持・強化を図る観点から、自社株式を対価として、対象会社株主から対象会社株式を取得するM&Aについて、対象会社株主の譲渡損益に対する課税を繰り延べる措置が講じられます。

 

自社株式にあわせて金銭等を交付するいわゆる混合対価については、金銭等が20%以下であるものに限ります。

 

 

 

事業セグメントごとの貸借対照表の作成方法と資本コストの算定方法

2020年7月31日に事業再編研究会は、公表した「事業再編ガイドライン」の「2.2.4事業評価の仕組みの構築と運用」を踏まえ、事業セグメントごとの貸借対照表(以下、「BS」)の作成方法及び資本コストの算定方法について、本ガイドラインの趣旨との整合性や実務的な利便性を考慮して、一般に採用しやすいと思われる方法を、別紙としてその概要を説明しています。

 

なお、企業の状況や抱える課題に応じて最適な方法は異なりうるため、各社において最適な方法を検討する必要があるとしています。

 

1.事業セグメントごとの貸借対照表(BSの作成方法

 

(1)事業セグメントごとのBSの作成方法

 

事業セグメントごとのBSの作成に関して、負債と株主資本の割合を推計する方法については様々な方法が存在しますが、主な3つの方法について紹介します。

本ガイドラインに沿って事業セグメントごとの資本コスト(WACC)を把握するためには有利子負債と株主資本の割合が必要となるため、負債と株主資本の割付けを行った後、別途、負債の内訳として有利子負債を特定する必要があります。

 

① 資産レバレッジ方法

 

「各資産に一定の掛け目をかけて負債と株主資本の割合を決定する方法」です。

 

この方法は、事業セグメントごとに事業が持つ資産が割り付けられていることを前提に、資産ごとの現金化の容易性等を勘案し、各資産に一定の掛け目をかけて負債と株主資本の割合を推計する考え方です。

 

具体的な掛け目については、明確に決まった一律の数字は存在しないため、専門家のアドバイスを得る等して具体的な掛け目の数値を決める必要があります。

 

具体的な計算例では、A部門の保有する資産の内訳が以下のような資産の割合となっている場合、A部門の負債と株主資本の割合は1:1となります。

 

 

② ベンチマーク方法

 

「同業他社や競合企業と類似の資本構成をとることで負債と株主資本の割合を決定する方法」です。

 

この方法は、同業他社や競合企業は同程度の財務リスクを抱えているとみなして、その数値を参考にして負債と株主資本の割合を推計する考え方です。

 

具体的には、ある企業のA部門と競合関係にある同業のa~f社の株主資本と負債の割合が以下のような場合には、A部門の負債と株主資本の割合は1:1と推計することになります。

 

 

③ 実績配賦方法

 

「事業セグメントごとの損益計算書(以下、「PL」)を基に過去の一定期間における純利益額の合計値を算出し、その割合に応じて株主資本を割り付ける方法」です。

 

この方法 は、PL上の「純利益」の一部がBS上の「純資産」の形成に寄与したと考え、各部門が生み出した「純利益」の割合に応じて「純資産」を割り当てる考え方です。

 

具体的には、ある企業にA部門、B部門、C部門の3部門が存在し、過去10年間における各部門の純利益額の合計がA部門:20億円、B部門:70億円、C部門:10億円であった場合、当該企業の保有する純資産を2:7:1の割合で各部門に割り当てることになります。

 

(2)上記の各方法に関する考察

 

本ガイドラインの趣旨との整合性等の観点から、上記(1)で紹介した3つの方法について、考察してみます。

 

①資産レバレッジ方法及び②ベンチマーク方法については、資産の掛け目やベンチマークとする対象企業の設定次第では恣意的な結果を招くおそれがありますが、事業の実態に即した資本構成に近づけることが可能となります。

 

本ガイドラインに記載のとおり、事業セグメントごとの資本コストを適切に把握し、事業ポートフォリオの機動的な組換えを通じた収益性の向上や成長事業に対する投資を促進するためには、成熟・衰退事業に対して株主資本が厚く配分され、新規•成長事業に対して負債が厚く配分される可能性の高い③実績配賦方法は必ずしも望ましい方法とはいえません。

 

ただし、事業セグメントごとのBSの作成には、社内の膨大な調整を伴うため、現場の納得感が得られやすい③実績配賦方法を補充的に利用することは考えられます。

 

 

(3)会社全体のBSとの整合性

 

①、②の方法で事業セグメントごとのBSを作成した場合、事業セグメントごとのBSの合計値が会社全体のBSの数値と不一致を起こす場合があります。

 

このような場合の処理としては、一般的には「本社部門」という事業セグメントを設けて、遊休資産等を吸収する方法が考えられます。

 

これにより、事業セグメントごとのBSを修正する必要がなくなるとともに、どの事業セグメントにも紐づかないで活用されていない資産を把握するという点でも有意義です。

 

ただし、事業セグメントごとのBSの合計値と会社全体のBSの数値との乖離が大きい場合には、事業セグメントごとのBSが会社全体の財務状況と大きく乖離している可能性があるため、差分について当該科目の加重平均割合に応じてそれぞれの事業セグメントへ配分することも考えられます。

 

(4)事業セグメントごとのBSを作成する際のポイント

 

事業セグメントごとのBSの作成は、会社が保有する経営資源の配分を伴うため、本社の管理部門と事業セグメント部門との調整には相当の時間とマンパワーが発生することが想定されます。

事業ポートフォリオ管理を適切に行うために、トップ主導の下、必要に応じて外部リソースを活用しながら、短期間で集中して行うことが望ましいと考えられます。

 

① 管理会計のため「ざっくり」と作成することを心掛ける

 

事業セグメントごとのBSの作成は、あくまで事業ポートフォリオ管理を適切に行うことが目的であるため、制度会計のような精緻さは求められておらず、まずは短期間で集中的に「ざっくり」と作成することが効果的です。

 

② 必要に応じて外部リソース(コンサルタント等)を活用する

 

事業セグメントごとのBSの作成は、社内リソースだけで行うことが難しい場合も想定されるため、社内での検討が行き詰った場合には、コンサルタント等の外部リソースを必要に応じて活用することも効果的です。

 

③ 各事業セグメントとの調整はトップ主導で理解を求める

 

事業セグメントごとのBSの作成は、本社主導の下、トップダウンで行うことが不可欠です。

 

BSの作成は単なる数字作成作業ではなく、会社が保有する経営資源の配分決定であり、社内から様々な反論や批判がでることも覚悟した上で、最終的には経営トップが自ら判断する覚悟を持って行うべきです。

 

2.資本コスト(WACCの算定方法

 

(1)事業セグメントごとの資本コスト

 

事業セグメントごとの資本コスト(WACC)を算定するためには、BSを作成し、株主資本コストを算定する必要があります。

 

株主資本コストの算定方法で一般的とされるCAPM理論に基づいて株主資本コストの算定を行う場合、上場企業の場合であれば株価の動きからβ値を直接推測することができますが、企業の一部である事業セグメントごとのβ値については市場情報から直接算定することは困難です。

 

このため、事業セグメントごとのβ値については、当該事業セグメントと同様の事業を主要事業とする他の上場企業(以下「類似企業」という。)のβ値を基に推計する必要があります。

 

(2)アンレバードβ

 

類似企業のβ値を基に対象事業セグメントのβ値を推計する場合に問題となるのは、通常、β値には株主から見たあらゆる評価が反映されるため、市場価格に基づいて作成されたβ値には事業リスクのみならず、財務リスクに対する評価が含まれているという点です。

 

例えば、株主は負債割合が高いほど、倒産時に自らの手元に戻ってくる金額が少なくなる可能性が高くなるというリスクを背負っているため、資本構成によるリスクがβ値に反映されています。

 

このため、類似企業のβ値を基に対象事業セグメントのβ値を推計するためには、類似企業の市場データに基づくβ値から、当該企業の負債が0であると仮定して財務リスクを取り除き、事業リスクのみを抽出した「アンレバードβ」を求めた上で、対象企業の財務リスクを加味して当該事業セグメントのβ値を算出する必要があります。

 

(3)事業セグメントごとのβ値の算定手順

 

事業セグメントごとのβ値については、以下の手順で算定を行うこととなります。

 

① 類似企業を特定する(複数選択することを想定)

 

② 市場データを用いて類似企業のβ値を算定する

 

③ ②で算定したβ値をアンレバードβ値へ変換する

 

④ ③で算定したβ値を基に、対象となる事業セグメントのアンレバードβ値を推計する

 

⑤ 対象となる事業セグメントのBSに基づく負債資本構成を踏まえ、④で算出したアンレバードβ値を通常のβ値へ変換する

コングロマリット・ディスカウント~コングロマリット型企業の特徴、メリット・デメリット

コングロマリットとは「巨大な複合企業」のことです。

コングロマリット型企業の特長とメリット・デメリットについて考えてみましょう。

また、株式市場では、コングロマリット・ディスカウントが取りざたされることがあります。コングロマリット・ディスカウントについても考察します。

 

1.コングロマリット型企業とは

 

(1)コングロマリット企業の経緯

 

コングロマリットは、日本語で「複合企業」とも呼ばれ、相互に関連性の薄い異業種を多数兼営する企業形態をいいます。

 

元々は、歴史の浅い無名の小企業が、大規模であるのに経営内容が悪いため、株価が低くて含み資産の大きい企業の株式を市場で買い占め、経営権を取得するといった行動を次々に行い、異業種の複合企業を形成したことが「コングロマリット」の始まりとされています。

 

その後、1970年代にGEのような巨大企業の一部もこの戦略を採用し、コングロマリット型M&Aに資本を投入するようになりました。GMやAT&T、エクソン、IBMなども多業種への展開を追随し、「多角化企業」というカテゴリーができました。

 

そして、時代が進み、規制緩和や独占禁止法適用除外などが認められるようになると、「通信メディアコングロマリット」や「金融コングロマリット」などの新業態ができる一方で、多角化から選択・集中へと業態を変える企業も増え、今日では、コングロマリットの業態も変化しています。

 

(2)経営のスピード

 

コングロマリット型経営は、M&Aや資本提携などを行うことにより事業をゼロの状態で立ち上げるよりもスピーディーで効率良く事業を進めることができます。

このような拡大戦略を実行するためには、ヒト・モノ・カネ・情報などの豊富な経営資源が必要となります。

 

2.コングロマリット型企業経営のメリット

 

コングロマリット型企業経営は、以下の点がメリットとして挙げられます。

 

・相乗効果(シナジー効果)

・事業再編やM&A

・リスクの分散

 

(1)相乗効果(シナジー効果)

 

コングロマリット型企業経営は迅速に多業種の事業を獲得できるため、早期の企業価値の向上や事業間の相乗効果(シナジー効果)を目指す企業に有効な手段とされています。

 

常に激しい動きを見せるグローバル経済下では、新市場開拓や新規参入において、事業同士の相乗効果が生まれ企業価値の向上につなげることができるコングロマリット型M&Aは、非常に有効な手段となりえます。

 

コングロマリット型企業では、異なる商品・サービス事業の取得により、新しい技術やノウハウを得ることが期待でき、その新技術の知識やノウハウなどを、グループ企業内で共有することができます。

顧客の各事業間の回遊がある場合は、事業間で相乗効果が生まれて企業価値も向上することになります。

 

(2)事業再編やM&A

 

コングロマリット型企業経営では多業種に事業展開しているため、持株会社(経営管理会社)を設立してグループ経営を行う手法が一般的です。

これにより経営環境が変化した場合でも、迅速な事業再編やM&Aが実施しやすくなります。

 

ほかにも、コングロマリット型企業経営により、間接部門の統合などがしやすくなるというメリットもあります。

 

(3)リスクの分散

 

経営のリスクを分散できることも、コングロマリット型企業経営のメリットです。

 

企業経営においては、途中で外部環境が変化することがあります。

外部環境が変化していっても、社内での経営リソースが多いコングロマリット型企業は迅速にM&Aや事業再編を実施して、経営成績や財政の悪化を防ぐことが可能です。

特定の事業に頼るよりも、複数の事業を展開していった方がリスクは分散できます。

 

3.コングロマリット型企業経営のデメリット

 

コングロマリット型企業経営にはメリットがある一方、デメリットも存在します。

 

・企業価値の低下の

・コーポレートガバナンスの低下

・企業内でのコミュニケーションの不具合

 

(1)企業価値の低下(コングロマリット・ディスカウント)

 

コングロマリット型企業経営では多業種事業が主となりますが、それにより投資家からの評価を受けづらいといったデメリットが生じます。

 

投資家からの低い企業価値評価は株価にマイナスの影響をおよぼします。

株式時価総額が低下することにより、企業の信頼性が低下し、資金調達に悪影響をおよぼす場合もあります。

 

コングロマリット・ディスカウントについては、後述します。

 

(2)コーポレートガバナンスの低下

 

コングロマリット型企業経営では複数の事業が存在することになります。

コングロマリット型企業経営におけるM&Aは、専門性の高い技術や経験を軸とした事業の取得が目的となっている場合が多く、それぞれの事業は独立性が高いといえます。

事業それぞれの独立性が高い場合、当該事業について専門知識を持たない企業が異業種の企業を買収してしまうと、適切に経営を監視できないケースが出てきます。

 

その結果として懸念される点がコーポレートガバナンスの低下です。

コーポレートガバナンスが低下しますと、子会社や関連会社に対してグループとしての経営戦略を徹底することができずグループ経営戦略に齟齬をきたす恐れや、不正会計・不祥事といった事態を招きやすくなる恐れがあります。

 

(3)企業内でのコミュニケーションの課題

 

事業それぞれの独立性が高い場合、専門外である他事業会社との連携や接触の機会をなかなか持てず、「相乗効果に必要な事業内部の情報が伝わらない」「コミュニケーションが取れない」という環境になってしまう危険性もはらんでいます。

 

特にM&A直後は、それぞれの企業風土の違いや評価制度の統合などによって従業員の不満、不安が高まりやすくなっています。

M&Aを行う場合には、適切なPMI( Post Merger Integration:新しい組織体制の構築を目指したプロセス)の実行が求められます。

 

4.コングロマリット・ディスカウント~サム・オブ・ザ・パーツ分析

 

(1)コングロマリット・ディスカウントとは

 

コングロマリット・ディスカウントとは、M&A などを通じて事業を多角化している企業において、単体でそれぞれの事業を営む場合と比較したとき、市場からの評価が低下し、株価が下落している状況をいいます。

 

一般にコングロマリット・ディスカウントが起こる要因として、投資家側の視点からみますと以下の点が挙げられます。

 

①企業側では、事業の多角化が業績の安定化などの利点があると説明しますが、事業の全体像や相乗効果が見えにくいこと

 

②経営資源が分散して経営効率が落ちると想定されること

 

③複合企業の価値を精緻に評価することが難しいこと

 

④投資家は、リスク分散に際して、コングロマリット型企業に投資するよりも複数の有望企業に分散して投資することを好むこと

 

(2)サム・オブ・ザ・パーツ(Sum-of-the-Parts:SOTP)分析とは

 

サム・オブ・ザ・パーツ(Sum-of-the-Parts:SOTP)分析とは、複数の事業や資産を有する企業体の企業価値評価を行う手法です。

各事業や資産毎に事業価値評価額を算出し、それらを積み上げて全体の企業価値評価を行います。

 

①評価例

 

以下のようなAからDまでの4つの事業や資産がある企業があるとします。このとき、各事業を次のように個別評価し、積み上げて企業価値を算出します。

 

A事業:同事業の業界マルチプルベースでの評価

B事業:同事業の業界マルチプルベースでの評価

C上場子会社:所有株式の時価又はマルチプルベースでの評価

D不動産:不動産鑑定評価額、売却可能金額など

 

②株式価値は、企業価値からネットデットを控除することで算出できます。

 

(3)上記で算定された株式価値と市場における株式時価総額との差額が、コングロマリット・ディスカウントとなります。

 

 

 

(4)コングロマリット・ディスカウントの解消策

 

経営者と投資家では、それぞれの立場が異なるため、コングロマリット・ディスカウントを解消することは容易ではありません。

 

事業の多角化によって経営が中長期的に安定するという説明は、投資家には響きません。

経営に対するスパンの考え方が異なることもその一因です。

長期投資を行う投資家もいますが、一般的には3年以内の短期投資を行う投資家が多いと思います。この場合、事業の選択と集中により、より短い期間での株価上昇を期待します。

一方、会社は、場合によっては、10年から30年先の長期にわたるコアコンピタンスを設定して活動します。企業経営の長期的な安定と持続的成長を目指す場合が多いと思います。

 

投資家との対話を行い、コングロマリット経営を行うことが長期にわたるコアコンピタンスを実現するための最善の方策であることを理解してもらう努力が必要になります。

持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書~人材版伊藤レポート

「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書~人材版伊藤レポート~」(以下、本報告書)が2020年9月30日に公表されました。

 

1.背景問題意識

 

(1) 議論の対象

 

本報告書は、企業の競争力の源泉は人材であるとして、人材の「材」は「財」であるという認識の下、持続的な企業価値の向上と「人的資本(Human Capital)」について議論したものです。

 

(2) 持続的な企業価値向上の課題

 

持続的な企業価値の向上を実現するためには、ビジネスモデル、経営戦略と人材戦略が連動していることが不可欠であるとしています。

 

企業や個人を取り巻く変革のスピードが増す中で、目指すべきビジネスモデルや経営戦略と、足下の人材及び人材戦略のギャップが大きくなってきています。

このギャップをどのような時間軸でいかに適合させていくかが、大きな経営課題となっています。

 

新型コロナウイルス感染症の感染拡大及びこの対応により、こうした課題が一層、明確になってきています。

 

(3) 企業の人材戦略

 

企業の人材戦略は、経営戦略とのギャップを適合させ、新たなビジネスモデルや経営戦略の展開による持続的な企業価値の向上につなげていくことが求められます。

 

このためには、経営陣、特にCHRO (最高人事責任者:Chief Human Resource Officer)のイニシアティブで人材戦略を策定し、経営陣のコアメンバーが連携して戦略を実行することが必要になります。

 

経営陣のコアメンバーとは、下記の経営陣になります。

 

① CEO (最高経営責任者:Chief Executive Officer)

② CSO (最高経営戦略責任者:Chief Strategy Officer)

③ CHRO (最高人事責任者:Chief Human Resource Officer)

④ CFO (最高財務責任者:Chief Financial Officer)

⑤ CDO (最高デジタル責任者:Chief Digital Officer)

 

加えて、CHROは人材戦略を従業員や投資家に積極的に発信・対話する役割が重要となります。

また、こうした経営陣の取組を監督・モニタリングする取締役会の役割や経営陣と経営戦略や人材戦略について対話する投資家の役割も重要となります。

 

(4) 3P・5Fモデル

 

人材戦略は、産業や企業により異なりますが、俯瞰してみますと、共通する視点や要素を抽出することができます。

 

本報告書では、企業を越えて人材戦略に求められる3つの視点(Perspectives)と5つの共通要素 (Common Factors)を3P・5Fモデルとして整理しています。

 

(5) 報告書の使用目的

 

本報告書は、人材戦略を策定し実行する経営陣及び経営陣を監督・モニタリングする取締役会にとっての羅針盤になるとともに、機関投資家のエンゲージメント活動の際にも参照されることが期待されます。

 

2.持続的な企業価値の向上と人的資本

 

足下の新型コロナウイルス感染症も含め、企業・個人を取り巻く環境が大きな変化に直面していることを踏まえ、今後のアクションの羅針盤となる変革の方向性を提示しています。

 

(1) 問題意識

 

① 新型コロナウイルス感染症への対応の中、働き方を含めた人材戦略の在り方が改めて問われています。

これは、第4次産業革命等による産業構造の急激な変化、少子高齢化、人生100年時代の到来等による個人のキャリア観の変化などの企業や個人を取り巻く環境への対応と本質的には同じ方向性です。

 

② こうした変化の中で、企業は様々な経営上の課題に直面しています。これらの課題は、人材面での課題と表裏一体であり、スピーディーな対応が不可欠とされています。

 

③ このため、各社がそれぞれ企業理念や存在意義 (パーパス)にまで立ち戻り、持続的な企業価値の向上に向け、人材戦略を変革させる必要があります。

 

(2) 変革の方向性

 

① 国内外の機関投資家も、持続的な企業価値向上のためにはESG要因を重視する流れとなっています。

その中でも、S (ソ-シャル)の重要性が再認識されています。

 

② 変化が激しい時代には、これまでの成功体験に囚われることなく、企業も個人も、変化に柔軟に対応し、想定外のショックへの強靱性(レジリエンス)を高めていく変革力が求められます。

 

「持続的な企業価値向上と人的資本に関する研究会 報告書~人材版伊藤レポート~」より抜粋

 

3.経営陣、取締役会、投資家が果たすべき役割

 

変革をリードする経営陣、経営陣を監督・モニタリングする取締役会や経営陣と対話を行う投資家について、それぞれが果たすことが期待される役割やアクションを整理しています。

 

(1) 経営陣が果たすべき役割・アクション

 

① 人材戦略の変革にあたっては、経営陣によるイニシアティブ、取締役会によるガバナンス、企業と投資家との対話の強化が重要です。

 

経営陣においては、企業理念や存在意義(パーパス)、経営戦略を明確化した上で、経営戦略と連動した人材戦略を策定・実行すべきです。

 

② 人材戦略の実行にあたっては、CHROの役割が重要であると同時に、経営トップ5C (CEO、CSO、CHRO、CFO、CDO)の連携が重要となります。

 

また、従業員・投資家に対し、人材戦略を積極的に発信し、対話することが求められます。

 

(2) 取締役会が果たすべき役割・アクション

 

① 取締役会においては、経営戦略の実現可能性という観点から経営戦略と連動した人材及び人材戦略が重要であること等を踏まえ、人材に関する議論を行うことが求められます。

 

② 取締役会においては、自社の人材戦略の方向性が経営戦略の方向性と連動しているかについて監督・モニタリングを行い、適切な方向に導くことが求められます。

 

(3) 投資家が果たすべき役割・アクション

 

投資家においては、中長期的な企業価値の向上につながる人材戦略について、企業からの発信・見える化を踏まえた対話や投資先の選定を行うことが求められます。

 

「持続的な企業価値向上と人的資本に関する研究会 報告書~人材版伊藤レポート~」より抜粋

 

 

(4)(参考)経営陣、取締役会、投資家の役割・アクション

 

経営陣が果たすべき役割アクション

 

<企業理念、企業の存在意義(パーパス)や経営戦略の明確化>

01.企業理念、企業の存在意義(パーパス)や経営戦略の明確化

02.経営戦略における達成すべき目標の明確化

<経営戦略と連動した人材戦略の策定•実行>

03.経営戦略上重要な人材アジェンダの特定

04.目指すべき将来の姿(To be)に関する定量的なKPIの設定

05.現在の姿(As is)の把握、”As is – To beギャップ”の定量化

06.ギャップを埋め、企業価値の向上につながる人材戦略の策定•実行

< CHROの設置•選任、経営トップ5Cの密接な連携>

07.CEOとともに主導するCHROの設置・選任

08.経営トップ5Cの密接な連携

<従業員•投資家への積極的な発信•対話>

09.従業員への積極的な発信・対話

10.投資家への積極的な発信・対話

 

取締役会が果たすべき役割・アクション

 

<人材戦略に関する取締役会の役割の明確化

01.人材戦略に関する取締役会の役割の明確化

<人材戦略に関する監督•モニタリング>

02.経営陣が策定した人材戦略の承認、適切な実行の監督・モニタリング

  1. CxOサクセッション、経営戦略に不可欠な人材パイプラインの監督・モニタリング

04.人材戦略の実行プロセスで醸成される企業文化の監督・モニタリング

 

投資家が果たすべき役割・アクション

 

01.中長期視点からの建設的対話

02.企業価値向上につながる人材戦略の「見える化」を踏まえた対話、投資先の選定

 

 

4.人材戦略に求められるつの視点とつの共通要素

 

経営陣が主導して策定・実行する人材戦略について、3つの視点(Perspectives)及び5つの共通要素(Common Factors)を、3P・5Fモデルとして整理しています。

 

(1) 3つの視点

 

人材戦略は経営戦略やビジネスモデルに応じて個社性がある一方で、下記の3つの視点から俯瞰することが可能です。

 

① 経営戦略と人材戦略の連動

② As is-To beギヤップの定量把握

③ 人材戦略の実行プロセスを通じた企業文化への定着

 

(2) 5つの共通要素

 

また、人材戦略については、下記の5つの共通要素も存在します。

 

① 動的な人材ポートフォリオ、個人・組織の活性化

② 知・経験のダイバーシティ&インクルージョン

③ リスキル・学び直し

④ 従業員エンゲージメント

⑤ 時間や場所にとらわれない働き方

 

企業においては、こうした共通の要素に加え、自社の経営戦略上重要な人材アジェンダについて、経営戦略とのつながりを意識しながら、具体的な戦略・アクション・KPIを考えることが有効です。

 

「持続的な企業価値向上と人的資本に関する研究会 報告書~人材版伊藤レポート~」より抜粋

 

サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実現における課題と解決の方向性

経済産業省では、2019年11月に「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会」(以下「本検討会」という。)を設置し、2020年8月28日に中間とりまとめを公表しました。

 

1.本検討会の目的

 

「伊藤レポート」公表以降の5年間の一連の取組の成果を振り返り、対話を巡る現状を概観した上で、企業や投資家が様々な環境変化に直面する中で対話を通じて価値を協創していくに当たっての課題や対応策を検討しています。

 

(1) 企業側が価値創造に取り組む際に具体的に投資家とどのような対話を行っているか、課題があるか。

 

(2) 投資家側が企業との中長期の価値実現のためにどのような対話を行っているか、課題があるか。

 

(1)、(2) について、具体的な実例を交えながら対話形式で課題を浮き彫りにしています。

 

さらには、アナリストや評価機関などの具体的な取組や事例も交えながら、資本市場やそれを支える環境整備についての課題についても整理を行っています。

 

2.「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会」において抽出された課題

 

(1)対話の「中身」における課題

 

① 投資家の理解を得にくい、以下のテーマに関して、どのように対話をすべきか

 

・多角化経営、事業ポ-トフォリオ・マネジメント

 

・新規事業創出・イノベーションに向けた種植え

 

・社会的価値(ESG)と経済的価値(稼ぐ力・競争優位性)の両立

 

② 前提となる経営環境の変化

 

コロナ危機、第4次産業革命・DX、気候変動やグローバルサプライチェーンの寸断など「不確実性」が高まっていること

 

③ 解決の方向性

 

・対話における長期の時間軸の必要性

 

・サステナビリティ・トランスフォーメーシヨン(SX)の実現=企業のサステナビリティ(稼ぐ力)と社会のサステナビリティ(社会課題、将来マーケット)の同期化

 

(2)対話の「手法」における課題

 

① 日本企業が対話に関して三層化しており、大部分の企業が投資家と有効な対話の手法を模索中

 

・質の高い対話の実現に資する対話の手法等が共有されていない

 

・企業の状況に応じて、段階ごとに対話において中心的に取り組むべき事項の整理への要望

 

② 解決の方向性

 

「実質的な対話の要素」を以下の4つの観点から整理しています。

 

ⅰ:対話の原則

ⅱ:対話の内容

ⅲ:対話の手法

ⅳ:対話後のアクション

 

3.対話の「中身」における課題への対応

 

(1)多角化経営、事業のポートフォリオ・マネジメント

 

「統合的なビジネスモデル」として把握し、語ることが重要です。

 

① 中長期的な環境変化の不確実性が高まっており、特定の事業に経営資源を集中することのリスクが高いことを理由とするだけでは、投資家から多角化経営に対して肯定的な評価を得ることには不十分です。

 

② ビジネスモデルについては、自社の競争優位の源泉・参入障壁・「強み」といったいわゆる「コアコンピタンス」が重要な要素となります。

 

③ 多角化経営においても、「コアコンピタンス」について企業が投資家に対し、具体的かつ積極的に説明していくことが必要です。

 

④ 複数事業の関連性やシナジーが生じる仕組みが分かりづらい多角化経営の場合、中長期という時間軸での企業の稼ぐ力、競争優位性が持続・強化され、中長期的な企業価値向上につながるという一つのビジネスモデルであることの説明が必要となります。

 

「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会 中間とりまとめ」より抜粋

 

(2)イノベーション等に向けた種植え

 

種植えの仕組み等について、企業と投資家が、これまで以上に踏み込んだ対話を行うことの必要性が認識されています。

種植えの見通し、生み出す企業の仕組みやガバナンス、新規事業を「塊」として語ることが必要です。

 

① 種植えの仕組み等について、企業から投資家に対し、具体的に、どの時点で、どの程度の経営資源を投入して種植えを行うのか、そして将来的に、どの程度の確度で、どの時点で芽を出し、どの程度の市場に成長し、どの程度のリターンがあると想定しているのかを投資家の疑問点も踏まえながら丁寧に説明することが必要です。

 

② 数々の失敗の中から成功が生まれるというイノベーションの特質を踏まえて、個々の取組それ自体は未実現の利益であって評価できないとしても、それらを束ねた新規事業群の「塊」として捉え、その「塊」を評価することの必要性も指摘されています。

 

(3)ESG/SDGsなどの社会的価値と企業の稼ぐ力•競争優位性に基づく経済的価値の両立

 

ESG/SDGsにおける中長期のリスクとオポチユニティの両面を把握し、具体的なアクションに反映させることが必要です。

 

① 現在のESG投資は、ネガティブ・スクリ—ンとして、社会のサステナビリティに対応できていない企業を投資対象から外す方向で考慮している例が多くなっています。

これだけでは、中長期的な新市場創出・獲得につながるオポチュニティを十分に捉えることができません。

 

② 時間軸を長期にした上で、リスクの側面のみならず新市場創出・獲得による企業の成長性の側面との両面を捉えることで社会的価値を経済的価値と同期化させ、それを経営や具体的なアクションに落とし込むことで、社会的価値を経済的価値と同期化させ、企業価値向上に繋げでいくことが重要となります。

 

4.問題解決の方向性~サステナビリティ・トランスフォーメーシヨン(SX)~

 

(1)対話の「中身」における課題

 

① 投資家の理解を得にくい、以下のテーマに関して、どのように対話をすべきか

 

ⅰ 多角化経営、事業ポートフォリオ・マネジメント

ⅱ 新規事業創出・イノベーションに向けた種植え

ⅲ 社会的価値(ESG)と経済的価値(稼ぐ力・競争優位性)の両立

 

② 前提となる経営環境の変化

 

コロナ危機、第4次産業革命・DX、気候変動やグローバルサプライチェーンの寸断など「不確実性」が高まっています。

 

③ 従来の経営・対話のイメージ

 

これまでの中期経営計画を中心とした時間軸においてリスク・成長機会を想定するだけでは、必ずしも長期の時間軸において企業価値を向上させることができなくなっています。

 

(2)解決の方向性:サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)とは

 

①対話における長期の時間軸の必要性

 

投資家の理解を得にくい3つのテーマは、いずれも、不確実性の高まりや社会のサステナビリティの要請の高まりを踏まえた、中長期的に企業価値を向上させていくための企業の取組です。

 

このような取組について、企業と投資家の認識のギャップを解消し、中長期的な企業価値向上に向けた質の高い対話を実現するためには、企業と投資家が、中期経営計画の想定する時間軸を超えて、意識的に5年、10年という長期の時間軸に引き延ばした上で、「企業のサステナビリティ」(企業の稼ぐ力の持続性)と「社会のサステナビリティ」(将来的な社会の姿や持続可能性)を同期化させる対話やエンゲージメントを行っていくことが必要です。

 

②サステナビリティ・トランスフォーメーション

 

こうした経営の在り方、対話の在り方を、「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)」と呼ぶこととしています。

 

サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)の必要性=企業のサステナビリティ(稼ぐ力)と社会のサステナビリティ(社会課題、将来マーケッ卜)の同期化

 

「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会 中間とりまとめ」より抜粋

社外取締役の5つの心得~社外取締役の在り方に関する実務指針(社外取締役ガイドライン)より

「社外取締役の在り方に関する実務指針(社外取締役ガイドライン) (以下、本ガイドライン)」が2020年7月31日に経済産業省から公表されました。

本ガイドラインから「社外取締役の5つの心得」を見てみましょう。

 

Ⅰ 本ガイドラインの位置づけ

 

本ガイドラインは、会社法及び東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~」(2015年6月1日適用開始、2018年6月1日改訂。以下、「コーポレートガバナンス・コード」)の趣旨を踏まえつつ、社外取締役の在り方(役割と具体的な取組等)について実務的な視点から整理するものです。

 

本ガイドラインは、基本的に、コーポレートガバナンス・コード及びCGSガイドラインにおける考え方を踏襲し、機関設計を問わず、監督機能の強化を図っていくことが重要であるという考え方に基づいて、社外取締役の在り方を整理しています。

 

Ⅱ 本ガイドラインの目的と主な対象

 

1.本ガイドラインの目的

 

以下の項目を目的としてあげています。

 

① 社外取締役に対して期待される基本的な役割を明確にすること

 

② そのような役割を果たすための取組について、社外取締役として経験豊富な方々の経験知に基づくベストプラクティスを紹介すること

 

③ 会社の持続的な成長に向けた実質的な機能の発揮を促すこと

 

2.主な対象者

 

我が国の上場企業の社外取締役を広く対象としています。

 

3.本ガイドラインの内容

 

① 社外取締役に求められる具体的な役割や重点は、会社の経営の実態、企業規模や機関設計、委員会の設置状況等のコーポレートガバナンスへの取組状況等により多様であることを踏まえています。

 

② 本ガイドラインは、基本的な事項も含めて各社に共通すると考えられるものを中心に一般的な提言をまとめたものです。

 

③ 各社が置かれている状況に応じて、適宜参照されることを想定しています。

 

④ 上場企業の中でも、「市場や資金調達の面でグローバル化を図り、グローバル競争の中で持続的な成長を目指す企業」においては、グローバル水準のガバナンス体制を構築する必要性が高いと考えられることから、特に、こうした企業の社外取締役においては、本ガイドラインの提言を踏まえ、更なるガバナンス強化を目指し、より積極的な取組を行うことが期待されています。

 

Ⅲ 取締役の5つの心得

 

1. 心得1

 

(1)基本的考え方

 

① 取締役の役割

 

取締役の最も重要な役割は、株主の付託を受けて、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図る観点から経営を監督することです。

 

その中核は、経営を担う経営陣(特に社長・CEO)に対する評価と、それに基づく指名・再任や報酬の決定を行うことです。

 

必要な場合には、社長・CEOの交代を主導することも含まれます。

 

② 社外取締役の役割

 

会社の経営を一義的に担っているのは経営陣であり、日々の業務執行は自律的になされるべきものです。

 

社外取締役の役割は、こうした経営陣による会社の経営について、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上の観点から適切に行われているか評価・確認し、必要に応じて軌道修正を促すことです。

 

(2)基本的任務

 

① 資本コストを踏まえた会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上の実現という観点から、経営陣の評価が適切に反映されるような報酬制度の設計を行います。

 

② 少なくとも年に1回、こうした評価に基づいて現在の経営者に引き続き経営を委ねるべきか否かの判断を行い、必要な場合には、適時適切に社長・CEOの交代を促します。

 

(3)平時における経営陣の評価

 

① 平時における経営陣の評価については、取締役会や指名委員会・報酬委員会において、中期経営計画等に掲げた経営目標・KPIやインセンティブ報酬におけるKPI 等を踏まえた業績評価を行います。

 

② 取締役会等における経営戦略に関する議論を通じて、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上の観点から、経営陣の立案能力や方向性の判断、実行状況やスピード感について評価します。

 

2. 心得2

 

(1)基本的考え方

 

① 会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上をさせるために会社の経営戦略を検討し、決定することは取締役会の主要な役割・責務の一つです。

 

② 社外取締役は、社内のしがらみにとらわれない立場で、中長期的で幅広い多様な視点から、市場や産業構造の変化を踏まえた会社の将来を見据え、会社の持続的成長に向けた経営戦略を考えることを心掛けるべきです。

 

(2)基本的任務

 

① 会社の経営戦略を決定する際に、社外取締役は、経営陣の説明をよく聴く必要があります。

 

② その上で、社内のしがらみにとらわれない立場から、市場や産業構造の変化を踏まえた会社の将来を見据え、中長期的で幅広い多様な視点を提供することが重要です。

 

③ 上記の点は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るという役割を果たす上で極めて重要です。

 

④ 会社の経営戦略を検討し決定する取締役会のメンバーとして、事業に精通した経営陣と社外の幅広い視点を提供する社外取締役が協働することで、よりよい経営戦略の策定につながると考えられます。

 

3. 心得3

 

(1)基本的考え方

 

① 社外取締役は、業務執行から独立した立場から、経営陣(特に社長・CEO)に対して遠慮せずに発言・行動することを心掛けるべきです。

 

② 経営陣を監督するという役割を果たし、必要な場合には社長・CEOの交代を主導することも期待されるため、社外取締役には、会社及び経営陣からの独立性が求められます。

精神的な独立性のためには、会社に対して経済的に過度に依存しすぎないことが重要となります。

 

4. 心得4

 

社外取締役は、経営を監督するという役割を果たすため、経営陣と適度な緊張感・距離感を保つことが求められます。

 

実効的な監督を行うためには、率直な意思疎通により社内の状況をよく知ることが重要であり、そのためには、経営陣との間でそれぞれの役割について相互に尊重し合う信頼関係を構築することが不可欠です。

 

5. 心得5

 

(1)基本的考え方

 

会社と経営陣・支配株主等との利益相反が生じ得る場面においては、利害関係者がその判断に関与することは適切ではないため、独立的な立場から社外取締役が積極的に関与し、その妥当性を判断することが期待されます。

 

(2)利益相反の例

 

会社と経営陣や支配株主等との利益相反が生じ得る場面の例として、以下のような場面が考えられます。

 

①MBO (マネジメント・バイアウト)や支配株主による従属会社の買収への対応

②支配株主等との取引

③敵対的買収への対応(買収防衛策の導入や実行等)

④第三者割当増資

 

上記のうち、「MBO (マネジメント・バイアウト)や支配株主による従属会社の買収への対応」については、取締役や支配株主の利益と一般株主の利益との間の利益相反リスクが特に深刻となり得る場面です。

企業価値の向上と一般株主の利益の確保を図るという社外取締役の役割を果たすため、平時よりも踏み込んだ対応が求められます。

 

また、「敵対的買収への対応」や「第三者割当増資」等の場面においても、MBO等に近い利益相反リスクが存在し得るため、これに準じた対応が求められると考えられます。

 

(3)支配株主等が存在する企業

 

支配株主等が存在する企業においては、支配株主等とそれ以外の一般株主との間に利益相反リスクが存在するため、上記のような取引においては、社外取締役は、すべての株主に対して中立的な立場ということではなく、支配株主等以外の一般株主の利益を確保する観点から判断・行動することが求められます。

デジタルトランスフォーメーション政策の方向性と今後の方向性の検討

2020年12月28日に、経済産業省「デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会」が「DXレポート2 中間取りまとめ」を公表しました。

企業のDXを加速するための課題やその対応策を中心に議論されています。「政府の政策の方向性」と「今後の方向性の検討」についてみてみましょう。

 

Ⅰ 政府の政策の方向性

 

1.共通理解の形成のためのポイント集の策定

 

DX推進に向けた関係者間の共通理解の形成に向け、関係者間での対話の中身をとりまとめた「ポイント集」を整理しています。

 

(1) 必要性

 

① DXの推進に向けては、経営層、事業部門、IT部門が対話を通じて同じ視点を共有し、協働してビジネス変革に向けたコンセプトを描いていく必要があります。

そのために、まずは経営者が、将来のビジネスを見据えた上で取組の方向性となるビジョンについて、関係者間の対話を通じて示すことが重要です。

 

② DXとは何か、会社のビジネスにどう役に立つのか、という基本的な事項についての共通理解が企業内で形成されておらず、DXという言葉を用いた場合に思い描くビジョン、コンセプトが様々な状況にあるため、具体的なアクションにつながらないという問題が見られます。

 

(2) 対応策

 

関係者間での対話の中身の勘所を示すにあたり、企業が抱える課題(Why、What、How)それぞれの「分からない」を「分かる」にするための意識向上施策として、経営層向けに対話の中身をとりまとめた「ポイント集」を整理していきます。

 

2.CIO/CDXOの役割再定義

 

DX推進を経営レベルで推進できるようにするためには、CDOやCIOの役割を明確にする必要があります。

 

CxOが担うべき役割や、ガバナンスの対象事項について再定義を行っています。

 

(1) 必要性

 

① 国内においてCIOとCDXOの役割に関する共通の認識が確立されていません。

企業によってはCIOがDXを推進するCDXOを兼務している例もあります。

DX推進を経営レベルで推進できるようにするためには、CDOやCIOの役割を明確にする必要があります。

 

② 経営層にDXをけん引する役員がいない企業においては、経営層における対話の不足はもとより、DXの推進が阻害されていることを経営層が認識できていない可能性があります。

 

(2) 対応策

 

DXをけん引する経営層の機能として、こうしたCxOが担うべき役割や、ガバナンスの対象事項について再定義を行います。

 

3.DX成功パターンの策定

 

経営者は経営とITが表裏一休であるとの認識をもち、DXに向けた戦略を立案する必要があります。

その際にDXの取組領域や具体的なアクションを検討する際の手がかりとなる「DX成功パターン」を策定します。

 

「DXレポート2 中間取りまとめ」より抜粋。

 

(1) DX成功パターンの策定:DXに向けた戦略の立案・展開

 

DX成功パターンには、DXに向けた戦略の立案・展開にあたって前提となる、「組織戦略」、「事業戦略」、「推進戦略」が含まれます。

 

 

「DXレポート2 中間取りまとめ」より抜粋。

 

(2) DX成功パターンの策定:DXの構造

 

企業がDXの具体的なアクションを設計できるように、DXを3つの異なる段階に分解します。

これらは必ずしも下から順に実施を検討するものではありません。

「DXレポート2 中間取りまとめ」より抜粋。

 

(3) DX成功パターンの策定:DXフレー厶ワーク

 

DXフレームワークは、以下のようになっています。

「DXレポート2 中間取りまとめ」より抜粋。

 

4.デジタルプラットフォームの形成

 

(1) 共通プラットフォーム推進

 

① 企業が経営資源を競争領域に集中するためには、個社が別々にITシステ厶を開発するのではなく業界内の他社と協調領域を台意形成して共通プラットフォームを構築し、協調領域に対するリソースの投入を最小限にすべきです。

 

② 幅広い業界へ共通プラットフォー厶の横展開が可能となるように、共通プラットフォー厶の形成を阻害している要因の除去や、一層の加速のための施策について検討します。

 

(2) デジタルアーキテクチャ推進

 

① デジタル社会の実現を見据えて、個社のみでは対応しきれない顧客や社会の課題を迅速に解決するために、デジタル企業同士が横連携してエコシステムを形成できるデジタルプラットフォー厶を形成することが重要です。

 

② 情報処理推進機構のデジタルアーキテクチャ•デザインセンターにおいて、産学官の連携の下、全体の見取り図である「アーキテクチャ」を設計するとともに、その設計を主導できる専門家の育成を進めます。

 

5.ユーザー企業とベンダー企業の共創の推進

 

① 企業がラン・ザ・ビジネスからバリューアップへ軸足を移し、アジャイル型の開発等によって事業環境の変化への即応を追求することで、ユーザー企業・ベンダー企業の垣根はなくなっていくと考えられます。

 

② ベンダー企業は、受託開発型のビジネスとは決別し、ユーザー企業のDXを支援・伴走してけん引するようなパートナーに転換していきます。

 

③ レガシー企業文化から脱却して変化に迅速に適応できる「優れた」ベンダー企業が有する機能・能力を明確にし、ベンダー企業の競争力を定量的または定性的に計測できる指標を策定します。

 

6. DX人材の確保

 

(1) 各企業において社内のDX活動をけん引するDX人材の存在が不可欠

 

自社のビジネスを深く理解した上で、データとデジタル技術を活用してそれをどう改革していくかについての構想力を持ち、実現に向けた明確なビジョンを描くことができる人材が必要になります。

 

(2) 個々人が変化に対して自ら学べるように、社会全体として学び直し(リカレント教育) の仕組みを整備していくことが重要

 

継続的かつ頻繁にスキルをアップデート(リスキリング)する場をいかに提供していくかが重要です。

 

(3) 企業における人材の活用が能力の成長につながり、優れた専門性が市場において評価され、能力開発が推進される環境が重要

 

① デジタル人材市場の課題と人材確保の在り方を再検討します。

 

② デジタル時代の人材評価•育成の在り方を再検討します。

 

③ 人材の流動性をどう高めていけるかも論点となっています。

 

(4) デジタル人材市場における必要な人材の確保に向け、人材のスキルを見える化しマッチ ングを可能とする仕組みについての検討

 

Ⅱ 今後の検討の方向性

 

今後の検討の進め方を以下のように取りまとめています。

「DXレポート2 中間取りまとめ」より抜粋。