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組織形態の分析について~「コーポレート・ガバナンス白書2019」より

「コーポレート・ガバナンス白書2019」(以下、本白書)が東京証券取引所から2019年5月に公表されました。本白書は、我が国企業を巡る近年のコーポレート・ガバナンス改革の進展も踏まえ、分析を行っています。本白書は、関係者が、変貌している我が国の上場会社のコーポレート・ガバナンスの取組状況を概観するための助けとなることを意図して作成されています。

 

組織形態に関する分析結果をみてみましょう

 

1.組織形態の概要

 

組織形態をみると、東証上場会社全体の73.3%(2,635社)が監査役会設置会社であり、続いて2015年の会社法改正で導入された監査等委員会設置会社が24.7%(888社)、指名委員会等設 置会社は2.0%(71社)となっています。

 

市場区分別にみても、各市場ともに監査役会設置会社の占める割合が一番高く、次に監査 等委員会設置会社、指名委員会等設置会社と続くことに変わりはありません。

 

なお、JPX日経400構成会社では指名委員会等設置会社の比率が比較的高く、8.8%を占めています。

 

また、市場第二部においては、監査等委員会設置会社が31.5%とやや高くなっています。

 

外国人株式所有比率でみると、比率が高くなるにつれて、指名委員会等設置会社の比率が 高くなっており、外国人株式所有比率が30%以上の会社では7.0%の会社が指名委員会等設置会社となっています。

 

2.現状のコーポレート・ガバナンス体制の概要

 

コーポレート・ガバナンス報告書の「現状のコーポレート・ガバナンス体制の概要」欄においては、業務執行、監査・監督の方法など、取締役会をはじめとするガバナンス機構に関する現状の体制について、その概要や、業務執行、監督機能等の充実に向けた追加的な施策の内容等を具体的に記載することとなっています。

 

(1)監査役会設置会社

 

監査役会設置会社(2,635社)においては、迅速な意思決定を行うための取締役会以外の体 制として、「経営会議」に言及する会社は48.1%(1,268社)、「常務会」に言及する会社は6.7%(176社)でした。

 

また、監督と執行の分離を進めていくために「執行役員制度」の導入に言及している会社は52.2%(1,375社)でした。

 

この他、「コンプライアンス」、「リスクマネジメント」等の内部統制関連の委員会の設置に言及している会社は19.5%(515社)でした。

 

(2)監査等委員会設置会社

 

監査等委員会設置会社(888社)においては、「経営会議」に言及している会社は46.6%(414社)、 「常務会」に言及している会社は6.0%(53社)、「執行役員制度」に言及している会社は47.4%(421社)でした。

 

また、「コンプライアンス」、「リスクマネジメント」等の内部統制関連の委員会を設置していることに言及している会社は、19.9%(177社)であり、監査役会設置会社と比率に大きな差異はみられませんでした。

 

(3)指名委員会等設置会社

 

指名委員会等設置会社(71社)においては、「経営会議」に言及している会社は43.7%(31社)であるのに対し、「常務会」に言及している会社は存在しませんでした。

 

指名委員会等設置会社においては法定の執行役制度がありますが、執行役のほか、「執行役員制度」に言及している会社は22.5%(16社)でした。

 

また、「コンプライアンス」、「リスクマネジメント」等の内部統制関連の委員会を設置していることに言及している会社は19.7%(14社)であり、監査役会設置会社や監査等委員会設置会社と比率に大きな差異はみられませんでした。

 

(4)監査役会設置会社の監査役による監査

 

監査役会設置会社の監査役による監査に関しては、「監査体制」に言及している会社は12.1% (319社)であり、社内と社外監査役、常勤監査役の人数などが記載されています。

 

また、「監査方針」に言及している会社は17.8%(469社)、「監査基準」に言及している会社は7.1%(186社)であり、監査役監査基準に準拠した監査を行っている旨の記載が多くありました。

 

この他、監査役会の開催状況や、各監査役の活動状況として、重要会議への出席、書類の閲覧、子会社への往査等について言及している会社もありました。

 

また、監査役業務の充実及び実効性の向上を図るため監査役室を設置しているという記載や、監査方針及び監査基準に基づき監査を実施しているという記載もみられました。

 

(5)監査等委員会設置会社における監査等委員会による監査

 

監査等委員会設置会社における監査等委員会による監査に関しては、「監査体制」に言及している会社は8.2%(73社)、「監査方針」に言及している会社は14.0%(124社)、また、「監査基準」に言及している会社は1.9%(17社)でした。

 

(6)指名委員会等設置会社における監査委員会による監査

 

指名委員会等設置会社における監査委員会による監査に関しては、「監査体制」に言及している会社は15.5%(11社)、「監査方針」に言及している会社は15.5%(11社)、また、「監査基準」に言及している会社は5.6%(4社)でした。

 

(7)監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社の監査体制

 

監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社の監査体制は、監査等委員会/監査委員会の社内と社外取締役の人数等の構成を記載するものが多く、各監査(等)委員は監査等委員会 /監査委員会で定めた監査方針、監査基準に基づき、取締役会をはじめとする重要な会議に出席するほか、取締役の業務の執行状況を監査するといった記載が多くみられました。

 

また、監査機能の強化のために監査等委員会事務局に専任のスタッフを配置するといった記載もみられました。

 

3.現状のコーポレート・ガバナンス体制を選択している理由

 

コーポレート・ガバナンス報告書は、組織形態が監査役会設置会社、監査等委員会設置会社又は指名委員会等設置会社のいずれであるか、監査役会設置会社については社外取締役を選任しているか否かに区分して、取締役会をはじめとするガバナンス機構の構成に関して、現状の体制を採用している理由について記載することを求めています。

 

⑴ 監査役会設置会社の場合

 

①概要

監査役会設置会社であって社外取締役を選任している会社(2,553社)は、各社の現状に照らして当該体制を採用している理由を記載すること及び各社における社外取締役の役割や機能を記載することを求められています。

 

社外取締役の役割や機能として、経営陣から独立した立場で、取締役の業務執行の監督、意思決定の適正性を確保するための助言を担っている等の趣旨の記載が多くみられました。

 

②社外取締役

監査役会設置会社であって社外取締役を選任していない会社にも、各社の現状に照らして当該体制を採用している理由を記載することを求めており、上場会社が会社法上の大会社である場合、社外取締役を置くことが相当でない理由を記載することとなっています。

 

監査役会設置会社であって社外取締役を選任していない会社は82社あり、これは監査役会設置会社形態をとっている上場会社の3.2%を占めています。

 

社外取締役を選任していない場合の記載内容としては、要件を満たす適任者の選定が困難、 会社規模からして現取締役会が効率的で意思決定も迅速、取締役相互の牽制が十分、コンプ ライアンス・リスクマネジメント委員会等の内部統制に関する委員会での強化といったものがみられました。

 

この他、業界に対する深い知識や経営に対する識見が十分でない社外取締役を選任した場合、実情に適さない意思決定で取締役会の機能を低下させ無用なコストを及ぼすというような理由もありました。

 

⑵ 監査等委員会設置会社の場合

 

監査等委員会設置会社が当該組織形態を採用した理由の具体的な記載内容として、記載要領では、意思決定の迅速化、経営の透明化、海外投資家の支持率の向上等について、監査役会設置会社形態の時と比較評価することや、これらの機能等を強化するために現在導入を検討している施策の概要、社外取締役の役割や機能を記載することを例示しています。

 

監査等委員会設置会社(888社)が同制度を選択している理由について、「社外」に言及している会社は66.4%(590社)であり、社外取締役による監督機能の強化への言及が多くみられました。

 

一方、意思決定の迅速化(「決定」に言及している会社は50.9%(452社))、権限委譲に伴う業務執行の迅速化(「権限」に言及している会社は11.1%(89社))、監督と執行の分離を明確化(「分離」に言及している会社は9.1%(81社))、執行機能の強化(「執行機能」に言及している会社は4.4%(39社))といった事項への言及は指名委員会等設置会社に比較すると少なくなっています。

 

⑶ 指名委員会等設置会社の場合

 

指名委員会等設置会社が当該組織形態を採用した理由の具体的な記載内容としても、監査 等委員会設置会社と同様、監査役会設置会社形態の時との比較評価等を記載要領において例示しています。

 

指名委員会等設置会社(71社)が同制度を選択している理由をみますと、監査等委員会等設置会社と比べて、監督と執行の分離に関する記載の比率が高くなっています。

 

意思決定の迅速化(「決定」に言及している会社は67.6%(48社))、社外取締役による監督機能の強化(「社外」に言及している会社は66.2%(47社))、監督と執行の分離を明確化(「分離」に言及している会社は64.8% (46社))、権限委譲に伴う業務執行の迅速化(「権限」に言及している会社は31.0%(22社))、執行機能の強化(「執行機能」に言及している会社は21.1%(15社))といったものが多くみられました。

 

4.取締役会の議長の属性

 

コーポレート・ガバナンス報告書においては、取締役会の議長について、設置の有無及び設置している場合はその属性について、⑴社長、⑵会長52、⑶会長・社長以外の代表取締役、⑷社外取締役、⑸その他の取締役、又は⑹なし、から選択することとなっています。

 

東京証券取引所上場会社全社が取締役会の議長を設置しており、その属性の傾向をみると、社長の比率が最も高く、83.1%を占めました。

 

また、会長の比率は15.0%であり、両者の合計は 98.1%と、ほぼすべての上場会社において、社長又は会長のいずれかが取締役会の議長を務めています。

 

なお、会長が取締役会の議長を務めている比率は、市場第一部では21.9%、JPX日経 400構成会社では、40.1%となっており、会社の規模が大きくなるほど、会長が務めている比率が多くなっているといえます。

 

取締役会における議論の活性化や監督と執行を分離し取締役会の監督機能を強化する観点 から、取締役会の議長を社外取締役とすることを求める投資家の声も増してきているものの、今回の調査では社外取締役が議長を務めている比率は0.8%にとどまっており、今後の課題の1 つといえます。

 

なお、JPX日経400構成会社においては、社外取締役が議長を務めている比率が4.0%と他の会社よりも多くなっています。

 

 

コーポレート・ガバナンスに関する分析について~「コーポレート・ガバナンス白書2019」より

1.コーポレート・ガバナンス・コードの概要

 

コーポレート・ガバナンス・コードは、実効的なコーポレート・ガバナンスの実現に資する原則を、東京証券取引所として取りまとめたものです。

 

基本原則:5原則、原則:31原則、補充原則:42原則の全78原則から構成されています。

 

市場第一部・第二部の上場会社は、上場規程において、全78原則の「コンプライ・オア・エクスプレイン」の状況をコーポレート・ガバナンス報告書において開示することが義務付けられています。

 

2018年6月には、コーポレート・ガバナンス改革をより実質的なものへと深化させていくため、コーポレート・ガバナンス・コードを改訂し、1原則・4補充原則が新設、5原則・4補充原則が改訂されています。

東京証券取引所では、上場会社の改訂後のコードを踏まえたコーポレート・ガバナンス報告書の提出が一巡した2018年12月31日時点で、市場第一部・第二部の2,621社の改訂後のコードへの対応状況を集計しました。

 

「コンプライ・オア・エクスプレイン」(原則を実施するか、実施しない場合には、その理由を説明するか)の手法を採用しており、コードの各原則(基本原則・原則・補充原則)の中に、各社の個別事情に照らして実施することが適切でないと考える原則があれば、それを「実施しない理由」を十分に説明することにより、一部の原則を実施しないことも想定しています。

 

 

2.コーポレート・ガバナンス・コードの取組状況の概要

 

(1)市場全体

 

市場第一部・第二部全体では、全78原則を実施しているとした会社は15.0%でした。

コード改訂前にあたる2017年7月時点で全73 原則を実施しているとした会社の比率が25.9%であったことを踏まえると、全原則を実施する会社の比率が大きく低下しています。

 

これは新設・改訂された一部の原則において、より高い水準の取組が求められる中で、会社が従来の「実施」から「説明」に対応を切り替えている事が背景にあると考えられます。

 

(2)市場区分別

 

市場区分別にみると、市場第一部(2,128社)のうち、全原則を実施している会社は18.1%、 90%以上実施している会社が67.3%でした。

 

一方、市場第二部(493社)では、全原則を実施している会社が1.2%、90%以上実施している会社が60.2%となっていて、市場第一部の方が市場第二部よりも実施している原則の数が多い傾向となっています。

 

JPX日経400構成会社においては、全原則を実施している会社の割合は市場第一部・第二部合計を大きく上回る43.9%となっています。

 

時価総額別の状況としては、おおむね、時価総額が大きい会社ほど実施している原則が多い傾向となっています。

 

(3)業種別

 

業種別にみると、全原則を実施している会社の比率が最も高かったのは銀行業(45.8%)で 、次に保険業(44.4%)、石油・石炭製品(33.3%)、医薬品(29.3%)と続いています。

 

(4)新設・改訂された原則

 

今回のコード改訂により新設・改訂された原則の実施率を、コーポレート・ガバナンス・コード改訂前の2017年7月時点と比較しますと、補充原則4-1③(後継者計画)や補充原則4-10①(任意の指名委員会・報酬委員会)、原則4-11(取締役会の多様性等)等の原則で実施率が低下しています。

 

今回新設・改訂の対象となった原則は、従来から上場会社と投資家との間で、必要と考える取組の水準にギャップのあったものが中心であり、改訂に伴い、追加的な取組が求められる中で、対応の検討に時間がかかっている上場会社も一定程度あると推察しています。

 

例えば、補充原則4-10①については、従来は、任意の指名委員会・報酬委員会の設置を、独立社外取締役の適切な関与・助言を得るための1つの「例示」としており、指名委員会・報酬委員会を設置していない会社においても独立社外取締役の適切な関与・助言が得られていれば「実施」としている場合がありましたが、今回のコード改訂により、指名委員会・報酬委員会などの独立した諮問委員会の設置がない会社は「説明」が求められることとなりました。

 

原則4-11については、 取締役会の多様性において「ジェンダーや国際性」が明記されたことで取締役会に女性や国際経験のある人材がいない会社においては従来の「実施」から「説明」に変更している例が多くみられます。

 

なお、コーポレート・ガバナンス・コード策定の目的が、機関投資家との建設的な対話を通じて、上場会社の中長期的な 企業価値の向上、持続的な成長のための積極的な経営判断を後押しすることにあることを踏まえれば、形式的な「実施」よりも、上場会社各社の事情を踏まえた慎重な検討と質の高い「説明」が期待されます。

 

財務情報以外の開示情報について~記述情報の開示に関する原則

金融庁は、平成31年3月19日付で「記述情報の開示に関する原則」(以下、「本原則」)を公表しました。

本原則は、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告(平成30年6月28日公表)の提言を受け、ルールへの形式的な対応にとどまらない開示の充実に向けた企業の取り組みを促すため、開示の考え方、望ましい開示の内容や取り組み方をまとめたプリンシプルベースのガイダンスを策定すべしとの要請から取りまとめられたものです。

 

1.本原則の目的

財務情報以外の開示情報である、いわゆる「記述情報」について、開示の考え方、望ましい開示の内容や取り組み方をまとめたものです。

企業が開示する記述情報は、企業の業態や企業が置かれた経営環境等に応じ様々ですが、本原則は、記述情報の中でも、投資家による適切な投資判断を可能とし、投資家と企業との深度ある建設的な対話につながる項目である、経営方針・経営戦略等、経営成績等の分析、リスク情報を中心に、有価証券報告書における開示の考え方等を整理することを目的としています。

開示書類の作成・公表に関与する方は、本原則に従った開示が実現しているか、自主的な点検を継続することが期待されています。

また、本原則は、投資家が企業との対話を行う際に利用することも有用であるとしています。

 

2.総 論

本原則では、まず総論として、以下の原則を定めるとともに、それぞれの原則について、考え方及び望ましい開示に向けた取り組みが示されています。

 

(1)企業情報の開示における記述情報の役割

記述情報は、財務情報を補完し、投資家による適切な投資判断を可能とします。

また、記述情報が開示されることにより、投資家と企業との建設的な対話が促進され、企業の経営の質を高めることができます。
このため、記述情報の開示は、企業が持続的に企業価値を向上させる観点からも重要です。企業には、記述情報及びその開示のこのような機能を踏まえ、充実した開示をすることが期待されます。

 

(2)記述情報の開示に共通する事項

①取締役会や経営会議の議論の適切な反映

記述情報は、投資家が経営の目線で企業を理解することが可能となるように、取締役会や経営会議における議論を反映することが求められます。

 

②重要な情報の開示

記述情報の開示については、各企業において、重要性(マテリアリティ) という評価軸を持つことが求められます。

 

③セグメントごとの情報の開示

記述情報は、投資家に対して企業全体を経営者の目線で理解し得る情報を提供するために、適切な区分で開示することが求められます。

 

④分かりやすい開示

記述情報の開示に当たっては、その意味内容を容易に、より深く理解することができるよう、分かりやすく記載することが期待されます。

 

3.各 論

次に、各論として、以下の開示項目について、考え方及び望ましい開示に向けた取り組みが示されています。

 

(1)経営方針、経営環境及び対処すべき課題等

  1. 経営方針・経営戦略等
  2. 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
  3. 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 

(2)事業等のリスク

 

(3)経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

  1. MD&Aに共通する事項
  2. キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
  3. 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

取締役会の権限と取締役の義務について

会社の重要な機関である取締役会と取締役について、その権限と義務を解説します。

 

1.機関設計に関する会社法の規程

 

会社法では、次に掲げる株式会社は、取締役会を置かなければならないとしています。

 

(1)公開会社

(2)監査役会設置会社

(3)監査等委員会設置会社

(4)指名委員会等設置会社

 

また、監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く取締役会設置会社は、監査役を置かなければなりません。

 

2.取締役会の権限

 

会社法は、取締役会の権限についての基本的な定めを第362条で行い、指名委員会等設置会社及び監査等委員会設置会社に関しては別途規程を設けています。

 

(1)取締役会の構成

取締役会は、すべての取締役で組織します。

 

(2)取締役会の権限

 

取締役会には、以下の権限があります。

 

① 取締役会設置会社の業務執行の決定

② 取締役の職務の執行の監督

③ 代表取締役の選定及び解職

 

(3)取締役会は、次に掲げる事項を含む重要な業務執行の決定を取締役に委任することはできません。

 

① 重要な財産の処分及び譲受け

② 多額の借財

③ 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任

④ 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止

⑤ 社債に関する事項

⑥ 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制と株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備

⑦ 取締役等の責任の免除

 

なお、大会社である取締役会設置会社においては、取締役会は、⑥に掲げる事項を決定しなければなりません。

 

3.取締役の義務

(1)取締役と会社の関係

取締役と会社の関係は、「株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う」とされています。

 

民法では、「委任とは、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる」としていて、「受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う」としています。

いわゆる、善管注意義務です。

 

(2)会社法の忠実義務の規定

 

会社法は、「取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない」として、忠実義務を課しています。

 

忠実義務としては、「競業及び利益相反取引の制限」があり、「取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない」とされています。

次ぐに掲げるものがその対象です。

 

① 取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。

② 取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。

③ 株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。

 

(3)取締役の報告義務

取締役は、株式会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事実があることを発見したときは、直ちに、当該事実を株主(監査役設置会社にあっては「監査役」、監査役会設置会社にあっては「監査役会」)に報告する義務があります。

 

監査役・監査役会と会計監査人について

監査役・監査役会・会計監査人は、会社のガバナンスの担い手です。会計監査人の選解任や会計監査報告等について、監査役・監査役会との関連を含めて解説します。

 

1.会計監査人の選任

会計監査人は、株主総会の決議によって選任されます。

会計監査人は、公認会計士又は監査法人でなければなりません。

 

会計監査人の任期は、選任後一年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとし、定時株主総会において別段の決議がされなかったときは、当該定時株主総会において再任されたものとみなされます。

 

2.会計監査人の解任

会計監査人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができます。

解任された会計監査人は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができます。

 

3.監査役による会計監査人の解任

監査役会は、会計監査人が次のいずれかに該当するときは、その会計監査人を解任することができます。

 

(1)職務上の義務に違反し、又は職務を怠ったとき。

(2)会計監査人としてふさわしくない非行があったとき。

(3)心身の故障のため、職務の執行に支障があり、又はこれに堪えないとき。

 

解任は、監査役が二人以上ある場合には、監査役の全員の同意によって行わなければなりません。

 

会計監査人を解任したときは、監査役は、その旨及び解任の理由を解任後最初に招集される株主総会に報告しなければなりません。

 

4.監査役の選任に関する監査役の同意等

 

取締役は、監査役の選任に関する議案を株主総会に提出するには、監査役(監査役が二人以上ある場合にあっては、その過半数)の同意を得なければなりません。

また、監査役は、取締役に対し、監査役の選任を株主総会の目的とすること又は監査役の選任に関する議案を株主総会に提出することを請求することができます。

 

5.会計監査人の選任等に関する議案の内容の決定

 

監査役設置会社においては、株主総会に提出する会計監査人の選任及び解任並びに会計監査人を再任しないことに関する議案の内容は、監査役が決定します。

 

6.会計監査人の監査

 

会計監査人は、計算関係書類を受領したときは、次に掲げる事項を内容とする会計監査報告を作成しなければなりません。

 

(1)会計監査人の監査の方法及びその内容

 

(2)計算関係書類が当該株式会社の財産及び損益の状況を全ての重要な点において適正に表示しているかどうかについての意見があるときは、その意見

 

当該意見が次のイからハまでに掲げる意見である場合にあっては、それぞれ当該イからハまでに定める事項の記載

 

イ 無限定適正意見

監査の対象となった計算関係書類が一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に準拠して、当該計算関係書類に係る期間の財産及び損益の状況を全ての重要な点において適正に表示していると認められる旨

 

ロ 除外事項を付した限定付適正意見

監査の対象となった計算関係書類が除外事項を除き一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に準拠して、当該計算関係書類に係る期間の財産及び損益の状況を全ての重要な点において適正に表示していると認められる旨並びに除外事項

 

ハ 不適正意見

監査の対象となった計算関係書類が不適正である旨及びその理由

 

(3)前号の意見がないときは、その旨及びその理由

 

(4)追記情報

「追記情報」とは、次に掲げる事項その他の事項のうち、会計監査人の判断に関して説明を付す必要がある事項又は計算関係書類の内容のうち強調する必要がある事項としています。

 

① 継続企業の前提に関する注記に係る事項

② 会計方針の変更

③ 重要な偶発事象

④ 重要な後発事象

 

(5)会計監査報告を作成した日

 

7.会計監査人設置会社の監査役の監査報告の内容

 

会計監査人設置会社の監査役は、計算関係書類及び会計監査報告を受領したときは、次に掲げる事項(監査役会設置会社の監査役の監査報告にあっては、(1)から(5)までに掲げる事項)を内容とする監査報告を作成しなければなりません。

 

(1)監査役の監査の方法及びその内容

(2)会計監査人の監査の方法又は結果を相当でないと認めたときは、その旨及びその理由

(3)重要な後発事象

(4)会計監査人の職務の遂行が適正に実施されることを確保するための体制に関する事項

(5)監査のため必要な調査ができなかったときは、その旨及びその理由

(6)監査報告を作成した日

 

8.会計監査人設置会社の監査役会の監査報告の内容等

 

(1)会計監査人設置会社の監査役会は、監査役が作成した監査報告に基づいて、監査役会の監査報告を作成しなければなりません。

 

(2)監査役会監査報告は、次に掲げる事項を内容とするものでなければなりません。

この場合において、監査役は、当該事項に係る監査役会監査報告の内容が当該事項に係る監査役の監査役監査報告の内容と異なる場合には、当該事項に係る各監査役の監査役監査報告の内容を監査役会監査報告に付記することができます。

 

① 監査役及び監査役会の監査の方法及びその内容

② 前項(2)から(5)までに掲げる事項

③ 監査役会監査報告を作成した日

 

(3)会計監査人設置会社の監査役会が監査役会監査報告を作成する場合には、監査役会は、一回以上、会議を開催する方法又は情報の送受信により同時に意見の交換をすることができる方法により、監査役会監査報告の内容を審議しなければなりません。

 

9.会計監査人の職務の遂行に関する事項

 

会計監査人は、特定監査役に対する会計監査報告の内容の通知に際して、当該会計監査人についての次に掲げる事項を通知しなければなりません。

ただし、全ての監査役が既に当該事項を知っている場合は、この限りではありません。

 

(1)独立性に関する事項その他監査に関する法令及び規程の遵守に関する事項

(2)監査、監査に準ずる業務及びこれらに関する業務の契約の受任及び継続の方針に関する事項

(3)会計監査人の職務の遂行が適正に行われることを確保するための体制に関するその他の事項

 

社外取締役とは、何をする人か?その役割と責務

 

社外取締役に関連する規定は、会社法と東京証券取引所の上場規程に定められています。

また、コーポレートガバナンス・コードでは、社外取締役の役割と責務についての記載があります。

 

 

1.「会社法」における社外取締役の定義

 

社外取締役とは、株式会社の取締役であって、次に掲げる要件のいずれにも該当するものをいいます。

 

  • (1)当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役でなく、かつ、その就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。

 

  • (2)その就任の前十年内のいずれかの時において当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与又は監査役であったことがある者にあっては、当該取締役、会計参与又は監査役への就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。

 

  • (3)当該株式会社の親会社等又は親会社等の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人でないこと。

 

  • (4)当該株式会社の親会社等の子会社等の業務執行取締役等でないこと。

 

  • (5)当該株式会社の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の重要な使用人又は親会社等の配偶者又は二親等内の親族でないこと。

 

 

2.「有価証券上場規程」における独立役員の定義

 

(1)独立役員の確保

 

上場会社は、独立役員を1名以上確保することが求められています。

 

上場規程における独立役員とは、会社法に規定する社外取締役または社外監査役のうち社外役員に該当するものを指しています。

 

(2)取締役である独立役員の確保

 

上場規程では、取締役である独立役員を1名以上確保するように努力する規定が定められてます。

 

(3)独立役員が機能するための環境整備

 

上場規程第では、独立役員が期待される役割を果たすための環境を整備する努力規定が定められています。

 

3.「コーポレートガバナンス・コード」における役割・責任

 

コーポレートガバナンス・コードでは、原則及び補充原則において、独立社外取締役の役割と責務について記載しています。

 

期待される役割は、以下の4点を挙げています。

 

  • (1)経営方針や経営改善への助言

 

  • (2)経営の監督

 

  • (3)利益相反の監督

 

  • (4)少数株主をはじめとするステークホルダーの意見の反映

 

また、社外取締役の有効活用のために、独立社外取締役を2名以上選任すべきとし、必要な場合には、独立社外取締役を取締役の3分の1以上選任すべきとしています。

 

4.コーポレートガバナンス・コードと会社法・上場規程の関係

 

コーポレートガバナンス・コードは、会社法と上場規程の定めを踏まえて、社外取締役制度を有効活用するために必要な基本な考え方、心構えを定めるとともに、会社法や上場規程の定めよりもより厳しい形式基準も要求しています。

コーポレートガバナンス・コードの求めるところは、会社法・上場規程の上位にあるということができます。

 

監査役及び監査役会の役割・責務について~会社法とコーポレートガバナンス・コード

 

監査役及び監査役会の役割と責務については、会社法の定めとコーポレートガバナンス・コードにおける記載があります。

 

1.会社法の定め

(1)監査役の資格

監査役の資格については、「監査役は、株式会社若しくはその子会社の取締役若しくは支配人その他の使用人又は当該子会社の会計参与若しくは執行役を兼ねることができない」としています。

 

また、「監査役会設置会社においては、監査役は、三人以上で、そのうち半数以上は、社外監査役でなければならない」としています。

 

社外監査役とは、以下のすべての要件を満たすものです。

 

 

① その就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与若しくは執行役又は支配人その他の使用人であったことがないこと。

 

② その就任の前十年内のいずれかの時において当該株式会社又はその子会社の監査役であったことがある者にあっては、当該監査役への就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与若しくは執行役又は支配人その他の使用人であったことがないこと。

 

③ 当該株式会社の親会社等(自然人であるものに限る。)又は親会社等の取締役、監査役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人でないこと。

 

④ 当該株式会社の親会社等の子会社等(当該株式会社及びその子会社を除く。)の業務執行取締役等でないこと。

 

⑤ 当該株式会社の取締役若しくは支配人その他の重要な使用人又は親会社等(自然人であるものに限る。)の配偶者又は二親等内の親族でないこと。

 

 

(2)監査役の権限

監査役は、取締役の職務の執行を監査します。そのために必要な権限が与えられています。

 

① 監査役は、いつでも、取締役及び会計参与並びに支配人その他の使用人に対して事業の報告を求め、又は監査役設置会社の業務及び財産の状況の調査をすることができます。

 

② 監査役は、その職務を行うため必要があるときは、監査役設置会社の子会社に対して事業の報告を求め、又はその子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができます。

 

③ 監査役は、取締役が監査役設置会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって当該監査役設置会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求することができます。

 

④ このほか、会計監査人の選解任や報酬についての権限があります。

 

 

(3)監査役の義務

監査役は監査報告書を作成しなければなりません。このほか、以下の義務が課されています。

 

① 監査役は、取締役が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又は法令若しくは定款に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を取締役(取締役会設置会社にあっては、取締役会)に報告しなければなりません。

 

 

② 監査役は、取締役会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければなりません。

 

 

③ 監査役は、取締役が株主総会に提出しようとする議案、書類その他法務省令で定めるものを調査しなければなりません。この場合において、法令若しくは定款に違反し、又は著しく不当な事項があると認めるときは、その調査の結果を株主総会に報告しなければなりません。

 

 

④ 監査役設置会社と取締役との間の訴えにおける会社の代表等も行います。

 

2.コーポレートガバナンス・コードの記載

 

コーポレートガバナンス・コードでは、原則と補充原則に、監査役及び監査役会の役割として以下の記載があります。

 

① 株主に対する受託者責任を踏まえ、独立した客観的な立場において適切な判断

 

② 能動的・積極的に権限を行使し、取締役会においてあるいは経営陣に対して適切な意見

 

また、常勤監査役の情報収集力と社外監査役の強固な独立性を有機的に組み合わせて実効性を高めることや社外取締役との連携が求められています。

 

3.会社法とコーポレートガバナンス・コードの関係

 

コーポレートガバナンス・コードは、会社法の規程を踏まえて、監査役及び監査役会の活動の実効性をより高めるために必要な基本的な事項や心構えについて記載しているということができます。
会社法で仕組みを形作り、コーポレートガバナンス・コードでその実効性を要求しているということができます。

 

「長期的視点に立った投資家行動に有用な企業報告~非財務情報に焦点を当てた検討~」より

日本公認会計士協会(経営研究調査会)は、平成 29 年5月 15 日付で経営研究調査会研究報告第 59 号「長期的視点に立った投資家行動に有用な企業報告~非財務情報に焦点を当てた検討~」(以下、「本研究報告」)を公表しました。

 

本研究報告は、長期志向の機関投資家を念頭に、投資意思決定及び対話のための情報ニーズや、投資家による企業価値評価と投資家対話に有効な情報開示(非財務情報を含む。)の在り方について検討し、取りまとめたものです。

 

 

1.企業報告をめぐる近年の動向と課題

 

資本市場全体において、長期的に最適な資源配分を通じて持続可能な価値創造が実現されるためには、投資家が企業の開示情報を基に長期的視点から企業価値を評価し、投資家行動につなげることができることを前提として、さらに、投資家と企業は対話を通じて相互理解を深めることも求められています。対話の基礎となる情報を提供するという意味でも、企業報告は重要な役割を担っています。

 

我が国では、統合報告書を発行する企業が年々増加しており、中長期的な企業価値の説明を通じて、長期志向の投資家に対する魅力を高めていくことを目指している企業が増えています。

しかしながら、非財務情報を効果的に用いて中長期的な企業価値を伝達する企業報告の実務について、企業側も投資家側も課題があると認識しており、本研究報告では、投資家による長期的視点に立った投資意思決定行動に影響を及ぼすことのできる企業報告実務のポイントを検討しています。

 

 2.投資家行動と情報ニーズ

 

本研究報告では、長期的視点に立った投資家行動に有用な企業報告の在り方を検討対象として、ファンダメンタルズ(財務状況や企業業績等の株式の本源的価値を決定付ける基礎的要因)を重視して投資行動を行う機関投資家を企業報告の想定利用者として位置付けて、その情報ニーズを分析しています。

 

企業分析や評価の手法は様々ですが、その最終的な目的は、投資によって得られる財務リターンとリスクの評価に役立てることにあると考えられます。

長期志向の機関投資家の情報ニーズと、当該ニーズを満たす開示の特徴は、以下のとおり整理されるとしています。

 

長期志向の機関投資家の情報ニーズ

・企業価値の財務的価値につながる情報

・統治の質を表す情報

 

長期志向の機関投資家のニーズを満たす開示の特徴

・ 企業固有の状況を的確に表す開示

・ 経営者によるコミットメントを示すとともに、その進捗や成果についての評価ができる開示

・ 投資家の信頼を高める包括的かつ論理的な開示

・ 長期的視点に立った評価を可能とする開示 ・ 効率的な情報利用を可能とする開示

 

3.長期的視点に立った投資家行動における有用性を高める企業報告

 

(1)長期志向の機関投資家が重視すると考えられる情報

1-1 企業価値の財務的評価につながる開示

企業報告においては、投資家による企業価値評価のプロセスを理解することが重要で、その財務的評価を可能にする非財務情報のポイントを押さえる必要があります。そのポイントは下記のとおり整理されます。

 

① 生産性、成長性及びリスク評価に資する開示

② 企業の将来像(ビジョン、ビジネスモデル)と背景要因の提示

③ 現在と将来をつなぐ「戦略」(資源配分の方針及び計画)の開示

④ 資本政策の説明

 

1-2 統治の質を表す情報

長期志向の機関投資家は、企業との対話や株主行動の前提として、投資先企業の経営及び統治の質に関する情報を重視します。投資家は「企業の統治の質が担保されていることについての確信を得たい。」と考えていて、そのような観点から、以下のポイントを改善に向けた方向性として挙げています。

 

① 長期価値創造を実現する観点からの体系的な説明

② ビジネスモデルや戦略との整合性確保

③ 運用状況の報告

 

(2)情報の有用性を高める開示の特徴

2-1 企業固有の状況を的確に表す開示

企業の財務的価値は企業のビジネスモデルや戦略に依存します。

 

本研究報告では、企業固有の状況を的確に表す開示を実現するためのポイントとして、以下の各点を挙げています。

 

① 企業のコンテクストとの結合性

② 重要性の判断と開示

③ 比較可能性との関係

 

2-2 経営者のコミットメントが示され、その進捗と成果が評価できる開示

中長期的な企業価値を判断するための情報として、戦略に関する情報が必要です。戦略との関係における KPI の意義、効果的な KPI の開示の在り方及び課題について、以下の各点が改善に向けたポイントとなります。

 

① 企業の業績及び戦略の主要な要素を反映したKPIの開示

② 財務的指標と非財務的指標との効果的な組合せ

③ 客観的かつ継続的に測定可能であること

④ 経営者からの背景の説明や分析及び評価結果の開示

 

2-3 投資家の信頼を高める包括的かつ論理的な開示

投資家は、論理的に構成された報告書、企業の全体像を表す開示を求めており、現状の企業報告について論理性や包括性について課題があるとの認識を持っています。

開示の論理性、包括性を高めることによって投資家の信頼を高めることが重要となりますが、その上で、以下の各ポイントが鍵となるとしています。

 

① 企業活動の全体像を映し出す包括的な開示

② 数字による裏付け

 

 

2-4 長期的視点に立った評価を可能とする開示

長期的視点に立って企業価値を評価する上で、企業から開示される情報の時間軸も 大事な要素であり、投資家の投資判断に長期的な課題を織り込めるようにする必要があります。 投資家が中長期的な評価をする上で有用な開示情報は、以下に示すような、目標や行動計画策定に当たっての前提や策定プロセスなど、経営の基本方針や意思決定に関わる情報です。

 

① 企業ビジョン及び戦略方針の開示

② 時間軸の明確化

 

2-5 効率的な情報利用を可能とする開示

幅広い投資家に共通的なニーズを考えれば、企業は主たる報告書を決定し、その中に重要情報を網羅し、特定の利用者が求める詳細情報や特定課題に関する情報については、ウェブサイト等の媒体を活用して伝達する方法が望ましいとしています。

 

① 報告媒体の体系化

② 主たる報告書の要素と構成

③ 論理性と簡潔性

 

4.効果的な企業報告を実現できる環境整備

 

指摘された課題と効果的な企業報告を実現するための環境整備に向けた取組を提起しています。

 

(1)企業報告制度:統合的な開示システムの必要性

我が国において開示媒体(開示書類)が多すぎ、情報が分散していて、限られた時間の中で、多種多様の開示媒体から必要な情報を探し出し、拾い出していくことについての実務的な限界を指摘する声が多く、一元化された年次報告書及びこれに付随する詳細な報告書に集約・体系化すべきという指摘もあるとしています。

また、経営方針や戦略の報告を企業報告の中核として捉える考え方は、コーポレートガバナンス・コードの原則主義の企業報告の枠組みと整合的であり、制度開示書類において企業が 重要な非財務情報を開示しやすい環境を整備していくことが重要で、現行制度について、より柔軟な開示が可能な仕組みを検討していく必要があるとしています。

 

(2)投資家行動の変化

今後、企業報告が投資家にとっての有用性を高めていくには、企業が投資家の情報ニーズを理解して報告書を作成できるようにしていく必要があり、あわせて、投資家側からも、自ら必要とする情報や開示の在り方を提示し、問題となる開示行動について改善を促す等の積極的な行動が期待されるとしています。

 

(3)企業報告のフレームワーク・基準整備

投資家ニーズを反映した企業報告のフレームワーク、基準が整備される必要があるとしています。

また、多くのフレームワークや基準があるので、企業が、これらの各基準やガイドラインを全て完全な形で準拠することは難しい状況にあり、包括的な連携・調整に向けた取組が期待されるとしています。

 

有価証券報告書等の情報提供項目・内容が改正されました

平成31年1月31日に、内閣府令第3号「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(以下「本改正」という。)が公布されました。

平成30年6月に公表された金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告において、

 

「財務情報及び記述情報の充実」

 

「建設的な対話の促進に向けた情報の提供」

 

「情報の信頼性・適時性の確保に向けた取組」

 

に向けて、適切な制度整備を行うべきとの提言がなされました。当該提言を踏まえて、有価証券報告書等の記載事項の改正が行われました。

1.財務情報及び記述情報の充実

(1)経営方針・経営戦略等について、市場の状況、競争優位性、主要製品・サービス、顧客基盤等に関する経営者の認識の説明を含めた記載を行うことになります。

 

記載上の注意(30)より抜粋

経営方針、経営環境及び対処すべき課題等

a 最近日現在における連結会社の経営方針・経営戦略等の内容を記載すること。

記載に当たっては、連結会社の経営環境(例えば、企業構造、事業を行う市場の状況、競合他社との競争優位性、主要製品・サービスの内容、顧客基盤、販売網等)についての経営者の認識の説明を含め、(27)aの規定により記載した事業の内容と関連付けて記載すること。

また、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等がある場合には、その内容を記載すること。

 

b 最近日現在における連結会社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について、その内容、対処方針等を経営方針・経営戦略等と関連付けて具体的に記載すること。

 

(2)事業等のリスクについて、顕在化する可能性の程度や時期、リスクの事業へ与える影響の内容、リスクへの対応策の説明を行うことになります。

 

記載上の注意(31)より抜粋

事業等のリスク

a 届出書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下a及び(32)において「経営成績等」という。)の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスク(連結会社の経営成績等の状況の異常な変動、特定の取引先・製品・技術等への依存、特有の法的規制・取引慣行・経営方針、重要な訴訟事件等の発生、役員・大株主・関係会社等に関する重要事項等、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項をいう。)について、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に連結会社の経営成績等の状況に与える影響の内容、当該リスクへの対応策を記載するなど、具体的に記載すること。

記載に当たっては、リスクの重要性や経営方針・経営戦略等との関連性の程度を考慮して、分かりやすく記載すること。

 

(3)会計上の見積りや見積りに用いた仮定について、不確実性の内容やその変動により経営成績に生じる影響等に関する経営者の認識の記載を行うことになります。

 

記載上の注意(32)(g)より抜粋

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについて、当該見積り及び当該仮定の不確実性の内容やその変動により経営成績等に生じる影響など、「第5 経理の状況」に記載した会計方針を補足する情報を記載すること。

ただし、記載すべき事項の全部又は一部を「第5 経理の状況」の注記において記載した場合には、その旨を記載することによって、当該注記において記載した事項の記載を省略することができる。

 

2.建設的な対話の促進に向けた情報の提供

(1)役員の報酬について、報酬プログラムの説明(業績連動報酬に関する情報や役職ごとの方針等)、プログラムに基づく報酬実績等の記載を行うことになります。

 

記載上の注意(57)より抜粋

役員の報酬等

提出会社が上場会社等である場合には、提出会社の役員(取締役、監査役及び執行役をいい、最近事業年度の末日までに退任した者を含む。以下(57)において同じ。)の報酬等(報酬、賞与その他その職務執行の対価としてその会社から受ける財産上の利益であって、最近事業年度に係るもの及び最近事業年度において受け、又は受ける見込みの額が明らかとなったもの(最近事業年度前のいずれかの事業年度に係る有価証券報告書に記載したものを除く。)をいう。)について、次のとおり記載すること。

 

a 届出書提出日現在における提出会社の役員の報酬等の額又はその算定方法の決定に関する方針の内容 及び決定方法を記載すること。

なお、当該方針を定めていない場合には、その旨を記載すること。

提出会社の役員の報酬等に、利益の状況を示す指標、株式の市場価格の状況を示す指標その他の提出会社又は当該提出会社の関係会社の業績を示す指標を基礎として算定される報酬等において (「業績連動報酬」という。)が含まれる場合において、業績連動報酬と業績連動報酬以外の報酬等の支給割合の決定に関する方針を定めているときは、当該方針の内容を記載すること。

また、当該業績連動報酬に係る指標、当該指標を選択した理由及び当該業績連動報酬の額の決定方法を記載すること。

提出会社の役員の報酬等の額又はその算定方法の決定に関する役職ごとの方針を定めている場合には、当該方針の内容を記載すること。 (以下、略)

 

b 取締役(監査等委員及び社外取締役を除く。)、監査等委員(社外取締役を除く。)、監査役(社外 監査役を除く。)、執行役及び社外役員の区分(以下「役員区分」という。)ごとに、報酬等の総額、報酬等の種類別(例えば、固定報酬、業績連動報酬及び退職慰労金等の区分をいう。)の総額及び対象となる役員の員数を記載すること。

提出会社の役員ごとに、氏名、役員区分、提出会社の役員としての報酬等(主要な連結子会社の役員としての報酬等がある場合には、当該報酬等を含む。以下「連結報酬等」という。)の総額 及び連結報酬等の種類別の額について、提出会社と各主要な連結子会社に区分して記載すること(ただし、連結報酬等の総額が1億円以上である者に限ることができる。)。(以下略)

 

c 提出会社の役員の報酬等の額又はその算定方法の決定に関する方針の決定権限を有する者の氏名又は名称、その権限の内容及び裁量の範囲を記載すること。

提出会社の役員の報酬等の額又はその算定方法の決定に関する方針の決定に関与する委員会(提出会社が任意に設置する委員会その他これに類するものをいう。以下「委員会等」という。)が存在する場合には、その手続の概要を記載すること。

また、最近事業年度の提出会社の役員の報酬等の額の決定過程における、提出会社の取締役会(指名委員会等設置会社にあっては報酬委員会)及び委員会等の活動内容を記載すること。

 

(2)政策保有株式について、保有の合理性の検証方法等について開示を求めるとともに、個別開示の対象となる銘柄数を現状の30銘柄から60銘柄に拡大されました。

 

記載上の注意(58)より抜粋

株式の保有状況

提出会社が上場会社等である場合には、提出会社の株式の保有状況について、次のとおり記載すること。

 

a 提出会社の最近事業年度に係る貸借対照表に計上されている投資有価証券に該当する株式のうち保有目的が純投資目的である投資株式と純投資目的以外の目的である投資株式の区分の基準や考え方を記載すること。

 

b 保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式について、提出会社の保有方針及び保有の合理性を検証する方法を記載すること。また、保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式について、個別銘柄の保有の適否に関する取締役会等における検証の内容を記載すること。

 

3.情報の信頼性・適時性の確保に向けた取組

監査役会等の活動状況、監査法人による継続監査期間、ネットワークファームに対する監査報酬等の開示を行うことになります。

 

記載上の注意(56)より抜粋

a 監査役監査の状況について、次のとおり記載すること。

監査役監査の組織、人員(財務及び会計に関する相当程度の知見を有する監査役、監査等委員又は監査委員が含まれる場合には、その内容を含む。)及び手続について、具体的に、かつ、分かりやすく記載すること。

最近事業年度における提出会社の監査役及び監査役会(監査等委員会設置会社にあっては提出会社の監査等委員会、指名委員会等設置会社にあっては提出会社の監査委員会をいう。)の活動状況(開催頻度、主な検討事項、個々の監査役の出席状況及び常勤の監査役の活動等) を記載すること。

 

d 会計監査の状況について、次のとおり記載すること。

(中略)

 

(f)監査報酬の内容等について、次のとおり記載すること。

(中略)

ⅱ 最近2連結会計年度において、提出会社及び提出会社の連結子会社がそれぞれ監査公認会計士等と同一のネットワーク(共通の名称を用いるなどして2以上の国においてその業務を行う公認会計士又は監査法人及び外国監査事務所等(外国の法令に準拠し、外国において、他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の監査又は証明をすることを業とする者をいう。)を含めて構成される組織をいう。)に属する者に対して支払った、又は支払うべき報酬について、監査証明業務に基づく報酬と非監査業務に基づく報酬に区分して記載すること。この場合において、非監査業務に基づく報酬を記載したときは、当該非監査業務の内容を記載すること。

 

4.公布日等

本改正に係る内閣府令は、平成31年1月31日付で公布・施行されます。

なお、改正後の規定は、以下のとおり適用されます。

(1)平成31年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等から適用(上記「建設的な対話の促進に向けた情報の提供」欄に記載の項目等)

(2)平成32年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等から適用(上記(1)以外)

※(2)については平成31年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等からの適用可。

 

会社が不祥事を起こした時の対応で、考えなければならないこと

『「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」の策定について』、が、2016年2月24日に日本取引所自主規制法人から公表されました。

その内容を抜粋してお届けします。

 

1.策定の背景

 

上場会社の不祥事(重大な法令違反その他の不正・ 不適切な行為等)は、その影響が多方面にわたり、当該上場会社の企業価値が毀損することはもちろんですが、場合によっては、資本市場全体の信頼性にも影響を及ぼします。

 

したがって、上場会社においては、パブリックカンパニーとしての自覚を持ち、自社(グループ会社を含む)に関わる不祥事又はその疑いを察知した場合は、速やかにその事実関係や原因を徹底して解明し、その結果に基づいて確かな再発防止を図る必要があります。また、自浄作用を発揮することで、ステークホルダーの信頼を回復するとともに、企業価値の再生を確かなものとすることが強く求められていると言えます。

 

しかし、上場会社における不祥事対応の一部には、原因究明や再発防止策が不十分であるケース、調査体制に十分な客観性や中立性が備わっていないケース、情報開示が迅速かつ的確に行われていないケースなども見受けられます。

 

日本取引所自主規制法人は、このような認識のもとに、不祥事に直面した上場会社に 強く期待される対応や行動に関する原則(プリンシプル)を策定しました。

 

このプリンシプルを用いることによって、問題に直面した上場会社の速やかな信頼回復と確かな企業価値の再生に資することを目的としています。

 

本来、不祥事への具体的な対応は各社の実情や不祥事の内容に即して行われるもので、すべての事案に関して一律の基準(ルール・ベース)によって規律することには馴染まないと言えますが、それらの対応策の根底にあるべき共通の行動原則があらかじめ明示されていることは、各上場会社がそれを個別の判断の拠り所とできるため、有益と考えられています。

 

2.上場会社における不祥事対応のプリンシプル

 

企業活動において自社(グループ会社を含む)に関わる不祥事又はその疑義が把握された場合には、当該企業は、必要十分な調査により事実関係や原因を解明し、その結果をもとに再発防止を図ることを通じて、自浄作用を発揮する必要があります。

 

その際、上場会社においては、速やかにステークホルダーからの信頼回復を図りつつ、確かな企業価値の再生に資するよう、本プリンシプルの考え方をもとに行動・対処することが期待されます。

 

(1)不祥事の根本的な原因の解明

不祥事の原因究明に当たっては、必要十分な調査範囲を設定の上、表面的な現象や因果関係の列挙にとどまることなく、その背景等を明らかにしつつ事実認定を確実に行い、根本的な原因を解明するよう努める必要があります。

 

そのために、必要十分な調査が尽くされるよう、最適な調査体制を構築するとともに、社内体制についても適切な調査環境の整備に努めなければなりません。その際、独立役員を含め適格な者が率先して自浄作用の発揮に努める必要があります。

 

(2)第三者委員会を設置する場合における独立性・中立性・専門性の確保

内部統制の有効性や経営陣の信頼性に相当の疑義が生じている場合、当該企業の企業価値の毀損度合いが大きい場合、複雑な事案あるいは社会的影響が重大な事案である場合などには、調査の客観性・中立性・専門性を確保するため、第三者委員会の設置が有力な選択肢となります。

 

そのような趣旨から、第三者委員会を設置する際には、委員の選定プロセスを含め、その独立性・中立性・専門性を確保するために、十分な配慮を行う必要があります。

 

(3)実効性の高い再発防止策の策定と迅速な実行

再発防止策は、根本的な原因に即した実効性の高い方策とし、迅速かつ着実に実行する必要があります。

 

この際、組織の変更や社内規則の改訂等にとどまらず、再発防止策の本旨が日々の業務運営等に具体的に反映されることが重要であり、その目的に沿って運用され、定着しているかを十分に検証しなければなりません。

 

(4)迅速かつ的確な情報開示

不祥事に関する情報開示は、その必要に即し、把握の段階から再発防止策実施の段階に至るまで迅速かつ的確に行う必要があります。

 

この際、経緯や事案の内容、会社の見解等を丁寧に説明するなど、透明性の確保に努めることが重要です。