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「DX推進における取締役会の実効性評価項目」について

「DX推進における取締役会の実効性評価項目」について

1. 策定の経緯

 

あらゆる企業がデジタル化への対応を求められる中、経営の監督を担うべき取締役ないし取締役会が果たすべき役割も極めて重要になっています。

 

「DX推進指標」の内容を踏まえつつ、取締役会での議論の活性化に資する観点から、取締役会の実効性評価にも活用できるものとして、「DX推進における取締役会の実効性評価項目」が策定されました。

 

「コーポレートガバナンス・コード」においても、取締役会の実効性評価について以下のように記載されています。

 

【原則4-11  取締役会 ・ 監査役会の実効性確保のための前提条件】

(略)~取締役会は、 取締役会全体としての実効性に関する分析・評価を行うことなどにより、その機能の向上を図るべきである。

 

(補充原則)

4-11③ 

取締役会は、毎年、各取締役の自己評価なども参考にしつつ、取締役会全体の実効性について分析・評価を行い、その結果の概要を開示すべきである。

 

2.DX推進における取締役会の実効性評価項目

 

(1)DXの定義

 

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネス・モデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」としています。

 

(2)評価項目

 

① 取締役の選任

 

取締役会は、以下の資質を持つ取締役を(少なくとも一名)選任しているか。

 

  ・データとデジタル技術を活用したビジネス・モデルの変革に関する十分な知見や問題意識を有する

 

② ビジョン

 

ア)  ビジョンの共有

取締役会では、以下の点について十分な議論が尽くされ明確な合意が形成されているか。

 

  ・データとデジタル技術を使って、変化に迅速に対応しつつ、顧客視点でどのような価値を創出するのかといったビジョン

 

イ) 危機感とビジョン実現の必要性の共有

取締役会では、以下について、十分な議論が尽くされ明確な合意が形成されているか。

 

  ・将来におけるIT技術の発展に伴う非連続的イノベーション(ディスラプション)がもたらす経営環境の変化と、自社の事業への影響

 

③ 経営トップのコミットメント

 

取締役会は、ビジョンの実現に向けた経営陣の取組として以下の項目などを適切に監督しているか。

 

  ・ビジネス・モデル

  ・業務プロセス、

  ・企業文化を変革するために必要となる組織整備

  ・人材・予算の配分、

  ・プロジェク ト管理

  ・人事評価の見直し

 

④ 仕組み

 

ア)  DXに求められるマインドセット、企業文化

取締役会は、挑戦を促し失敗から学ぶプロセスをスピーディーに実行し、継続できる仕組みが構築されているかどうか適切に監督しているか。

 

  ・体制

  ・KPI

  ・プロジェクト評価

  ・人事評価  など

 

イ)  投資意思決定、予算配分

取締役会は、データやデジタル技術の活用への取組を推進するための投資について、以下を総合的に勘案して判断しているか。

 

   a) コストのみでなくビジネスに与えるプラスのインパクトを勘案しているか

   b) 他方、定量的なリターンやその確度を求めすぎて挑戦を阻害していないか

   c) 投資をせず、DXが実現できないことにより、デジタル化するマーケットから排除されるリスクを勘案しているか

 

ウ)  推進・サポート体制

  a)取締役会は、以下の点を適切に監督しているか。

 

   ・DX推進がミッションとなっている部署や人員と、その役割が明確になっているか

   ・必要な権限は与えられているかどうか

 

  b)監督の際に、以下の観点を含んでいるか。

 

   ・該当部署に人員の適切な配置

   ・部署・人員の役割の明確化

   ・必要な権限の付与

   ・経営・事業部門・IT部門の連携の確保

   ・外部との連携の推進

 

エ)  人材育成・確保

取締役会は、DX推進に必要な人材の育成・確保に向けた取組が行われているかどうか適切に監督しているか。

 

⑤ 事業への落とし込み(戦略とロードマップ)

 

取締役会では、DXを通じた価値創出に向け、以下の項目について、十分な議論が尽くされ明確な合意が形成されているか。

 

  ・ビジネス・モデルや業務プロセス、働き方などをどのように変革するか

  ・戦略とロードマップ

  ・すぐに成果が出ないことや既存業務の売上を奪うリスクなどをどう克服するか

 

⑥ ビジョン実現の基盤としてのITシステムの構築

 

ア)  ITシステムに求められる要素

取締役会は、以下のようなDXの推進に求められる要素を実現できるITシステムとなっているかどうか適切に監督しているか。

 

   a) データをリアルタイム等使いたい形で使えるか

   b) 環境変化に対応し、迅速に新規サービスを提供できるか

   c) 部門を超えてデータを活用できるなど、全社最適を踏まえたものとなっているか

 

イ)  ITシステムの技術的負債

取締役会は、既存のITシステムが技術的負債になってしまっていないかどうか適切に監督しているか、あるいは客観的な評価を行っているか。

 

 技術的負債: 既存のITシステムが老朽化、複雑化、ブラックボックス化して、維持、保守コストが高騰した状態

 

ウ)  IT資産の仕分けとロードマップ

取締役会では、以下のようなIT資産の仕分けに基づくITシステムの刷新に向けたロードマップについて、十分な議論が尽くされ明確な合意が形成されているか。

 

   a) 価値創出への貢献の少ないものの廃棄

   b) 他社と差別化する必要がない領域(非競争領域)について、カスタ マイズをやめて標準化したシステムに業務を合わせるなどの標準化・共通化

   c) 他社と差別化すべき領域(競争領域)について、変化に迅速に対応できるシステム環境の構築

 

⑦ ITシステム構築におけるガバナンス・体制

 

ア)  ガバナンス・体制

取締役会は、DXの推進に向けて、新規に投資すべきもの、削減すべきものなどについて、適切に監督しているか。

 

  ・全社最適の視点

  ・部門を超えて横断的に判断・決定できる体制の整備

  ・価値の創出につながる領域へ資金・人材の重点配分

  ・顧客視点となっているか

  ・サイロ化していないか

 

イ)  IT投資の評価

取締役会は、IT投資について、ITシステムができたかどうかではなく、ビジネスがうまくいったかどうかで評価する仕組みとなっているかどうか適切に監督しているか。

 

⑧ 経営陣の評価

 

取締役会(または指名・報酬委員会)は、経営陣の評価や役員報酬の決定、経営陣の指名にあたり、DXへの取組を重要な評価項目として考慮しているか。

 

⑨ ステークホルダーへの情報開示

 

取締役会は、DXへの取組について、株主等のステークホルダーへの情報開示のあり方についての議論を行っているか。

 

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