会社のたたみ方
まず、言葉の問題ですが、資産超過(純資産がある状態)の状態で事業を滞りなくたたむ場合を「廃業」、債務超過などで事業をそのままでは円滑にたためない場合を「倒産」ということにします。
ここでは、「廃業」についてお話しします。
最近では、黒字企業が廃業するケースが増えています。
黒字企業は、競争力があり貴重な技術を持っていると考えられるため、日本経済や地域経済にとってマイナスになると考えられています。
しかし、経営者の方から考えてみると、いろいろな理由で事業をたたんでしまいたいと思っている経営者が多いということだと思います。
廃業を決意した場合、事業を単にたたんでしまうことだけが選択肢ではありません。
M&Aにより株式を譲渡する方法や事業の一部を譲渡するなどの方法も考えられます。
M&Aのお話は、別の機会にするとして、ここでは、廃業のタイミングについて考えてみましょう。
事業が順調であれば、廃業やM&Aのタイミングもそれほど気を遣わなくてもよいかもしれません。
事業の業績が思わしくなく、現在は、資産超過であるが、そのうち債務超過になる可能性がある場合には、タイミングは重要です。一言で言うと、「体力のあるうちに廃業する」ということです。
事業の将来性、従業員、取引先、金融機関などの状況をよく考えて、判断しましょう。
廃業の手順
廃業の手順についてお話しします。株式会社を前提として、主に、会社法の話になります。
廃業の決断、取締役会決議
法律上会社を消滅させ廃業するためには、解散と清算の手続きが必要になります。
廃業を決断したら、廃業に向けて事業を整理していきますが、法律的には、取締役会で会社解散決議を行い、株主総会を招集します。
株主総会
株主総会で解散の決議をします。特別決議が必要です。会社が解散したら、取締役会は、遅滞なく株主に知らせなければなりません。また、決議後2週間以内に解散と清算人の登記が必要となります。
通常、株主総会の日が、解散日となります。
清算中の会社
会社が解散した場合には、清算手続きに入り、原則として取締役が清算人となって会社をたたむための作業を行います。完全に会社の法人格が消滅するためには、清算手続きの結了が必要となります。会社は、換算手続き後も、清算の目的の範囲内で存続することになります。
債権者に対する公告及び催告
清算人就職の日から2ヶ月以内に、債権者に対して官報による公告及び催告を行います。官報で公告してから2ヶ月以上の債権申出期間が必要です。
解散日までの決算と確定申告
解散日から2ヶ月以内に、解散日までの確定申告が必要です。
なお、解散日の翌日から残余財産の確定まで、1年以上かかる場合には、1年ごとに確定申告が必要となります。
資産、負債の整理
解散時の財産目録と貸借対照表を清算人が作成し、臨時株主総会で承認を受けます。
残余財産の分配
資産と負債を整理して、資産が残った場合には、残った財産を株主に分配します。
資本金の額を超えて財産の分配がある場合には、「みなし配当」となり、税金の対象となります。
清算の決算承認と確定申告
残余財産が確定すると清算確定申告を行います。残余財産確定の日の翌日から1ヶ月以内に申告する必要があります。
清算結了登記
清算事務(残余財産の分配)が終了した場合、遅滞なく「決算報告」を作成し株主総会の承認を得ます。株主総会終了後、2週間以内に清算結了登記を行います。