監査報告書の改訂
監査上の主要な検討事項(Key Audit Matters:KAM)の記載
2018年7月5日に、企業会計審議会は、「監査基準の改訂に関する意見書」を公表しました。
主な改訂点は、次の2点です。
1.監査上の主要な検討事項(Key Audit Matters:KAM) の導入
2.KAM以外の監査報告書の記載内容の改訂
- 記載順序・記載区分
- 継続企業の前提に関する事項
監査基準の改訂により、「監査上の主要な検討事項」が監査報告書に記載されることになりました。
監査の信頼性を確保するための取組の一つとして、監査プロセスの透明性を向上させることを目的として、監査人が当年度の監査において特に重要であると判断した事項(監査の主要な検討事項)を監査報告書に記載する監査基準の改訂が国際的に行われてきています。
監査上の主要な検討事項を記載することにより、以下のような効果が期待されています。
・財務諸表利用者に対して監査のプロセスに関する情報が監査の品質を評価する検討材料として提供されることにより、監査の信頼性向上に資する
・財務諸表利用者の監査や財務諸表に対する理解が深まり、経営者との対話が促進される
・コーポレートガバナンスの強化や効果的な監査の実施につながる
これらの効果が発揮されるためには、監査人、監査役等、経営者といった各関係者が今回の改訂の趣旨をよく理解した上で、監査の内容に関する情報が適切に伝わるように運用を図ることが重要であるとされています。
「監査上の主要な検討事項」の決定
監査人は、監査の過程で監査役等と協議した事項の中から
・特別な検討を要するとするリスクが識別された事項または重要な虚偽表示のリスクが高いと評価された事項
・見積もりの不確実性が高いと識別された事項を含め、経営者の重要な判断を伴う事項に対する監査人の判断の程度
・当年度において発生した重要な事象または取引が監査に与える影響
等について、特に注意を払った事項を決定しさらに、職業的専門家として特に重要であると判断した事項に絞り込んで決定します。
KAMは、監査報告書の一貫性・比較可能性と、目的適合性・有益性のバランスを踏まえた上で、個々の会社の監査に特有の事項が記載されます。
① 会社間における記述の違い
類似項目であっても、それぞれの状況に即した各社特有の内容を記載します。同じ業種であっても、会社間で共通する項目もあれば、各社に特有の項目もあることになります。
② 時系列に見た場合の記述
同じ項目が毎年KAMとして選定される可能性もあります。