» コーポレート・ガバナンスに関する分析について~「コーポレート・ガバナンス白書2019」より
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コーポレート・ガバナンスに関する分析について~「コーポレート・ガバナンス白書2019」より

コーポレート・ガバナンスに関する分析について~「コーポレート・ガバナンス白書2019」より

1.コーポレート・ガバナンス・コードの概要

 

コーポレート・ガバナンス・コードは、実効的なコーポレート・ガバナンスの実現に資する原則を、東京証券取引所として取りまとめたものです。

 

基本原則:5原則、原則:31原則、補充原則:42原則の全78原則から構成されています。

 

市場第一部・第二部の上場会社は、上場規程において、全78原則の「コンプライ・オア・エクスプレイン」の状況をコーポレート・ガバナンス報告書において開示することが義務付けられています。

 

2018年6月には、コーポレート・ガバナンス改革をより実質的なものへと深化させていくため、コーポレート・ガバナンス・コードを改訂し、1原則・4補充原則が新設、5原則・4補充原則が改訂されています。

東京証券取引所では、上場会社の改訂後のコードを踏まえたコーポレート・ガバナンス報告書の提出が一巡した2018年12月31日時点で、市場第一部・第二部の2,621社の改訂後のコードへの対応状況を集計しました。

 

「コンプライ・オア・エクスプレイン」(原則を実施するか、実施しない場合には、その理由を説明するか)の手法を採用しており、コードの各原則(基本原則・原則・補充原則)の中に、各社の個別事情に照らして実施することが適切でないと考える原則があれば、それを「実施しない理由」を十分に説明することにより、一部の原則を実施しないことも想定しています。

 

 

2.コーポレート・ガバナンス・コードの取組状況の概要

 

(1)市場全体

 

市場第一部・第二部全体では、全78原則を実施しているとした会社は15.0%でした。

コード改訂前にあたる2017年7月時点で全73 原則を実施しているとした会社の比率が25.9%であったことを踏まえると、全原則を実施する会社の比率が大きく低下しています。

 

これは新設・改訂された一部の原則において、より高い水準の取組が求められる中で、会社が従来の「実施」から「説明」に対応を切り替えている事が背景にあると考えられます。

 

(2)市場区分別

 

市場区分別にみると、市場第一部(2,128社)のうち、全原則を実施している会社は18.1%、 90%以上実施している会社が67.3%でした。

 

一方、市場第二部(493社)では、全原則を実施している会社が1.2%、90%以上実施している会社が60.2%となっていて、市場第一部の方が市場第二部よりも実施している原則の数が多い傾向となっています。

 

JPX日経400構成会社においては、全原則を実施している会社の割合は市場第一部・第二部合計を大きく上回る43.9%となっています。

 

時価総額別の状況としては、おおむね、時価総額が大きい会社ほど実施している原則が多い傾向となっています。

 

(3)業種別

 

業種別にみると、全原則を実施している会社の比率が最も高かったのは銀行業(45.8%)で 、次に保険業(44.4%)、石油・石炭製品(33.3%)、医薬品(29.3%)と続いています。

 

(4)新設・改訂された原則

 

今回のコード改訂により新設・改訂された原則の実施率を、コーポレート・ガバナンス・コード改訂前の2017年7月時点と比較しますと、補充原則4-1③(後継者計画)や補充原則4-10①(任意の指名委員会・報酬委員会)、原則4-11(取締役会の多様性等)等の原則で実施率が低下しています。

 

今回新設・改訂の対象となった原則は、従来から上場会社と投資家との間で、必要と考える取組の水準にギャップのあったものが中心であり、改訂に伴い、追加的な取組が求められる中で、対応の検討に時間がかかっている上場会社も一定程度あると推察しています。

 

例えば、補充原則4-10①については、従来は、任意の指名委員会・報酬委員会の設置を、独立社外取締役の適切な関与・助言を得るための1つの「例示」としており、指名委員会・報酬委員会を設置していない会社においても独立社外取締役の適切な関与・助言が得られていれば「実施」としている場合がありましたが、今回のコード改訂により、指名委員会・報酬委員会などの独立した諮問委員会の設置がない会社は「説明」が求められることとなりました。

 

原則4-11については、 取締役会の多様性において「ジェンダーや国際性」が明記されたことで取締役会に女性や国際経験のある人材がいない会社においては従来の「実施」から「説明」に変更している例が多くみられます。

 

なお、コーポレート・ガバナンス・コード策定の目的が、機関投資家との建設的な対話を通じて、上場会社の中長期的な 企業価値の向上、持続的な成長のための積極的な経営判断を後押しすることにあることを踏まえれば、形式的な「実施」よりも、上場会社各社の事情を踏まえた慎重な検討と質の高い「説明」が期待されます。

 

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