予算管理がなぜ必要か
事業が小規模のうちは、おおざっぱな方針や目標だけで会社を運営できるかもしれません。しかし、組織がある程度大きくなり、多角化などで組織が分化すると、計画的に事業を運営する必要が出てきます。
目標を設定し、これを達成するためには、全社の目標(売上、利益など)だけでなく事業部等ごとに目標を定め、目標達成のための行動・活動の原資となる費用についても定めておく必要があります。
予算による管理
目標の階層化
多くの会社では、中期経営計画を立て、各年度の短期計画である利益計画と行動計画を策定します。
1年間の利益計画と行動計画を会計的な数値に置き換え、資金面の裏付けをつけたものが予算です。
全社予算だけでなく、事業の構成単位ごとに予算が策定されます。
社内組織の権限に応じて、業績管理指標が設定され、それに基づく目標設定、予算策定という順番になります。
予算形式
予算は、見積貸借対照表、見積損益計算書、見積キャッシュフロー計算書という見積財務諸表の形式で作成されます。
通常、年度予算は、月次予算にブレークダウンされます。
また、企業を構成する事業部や部門ごとの予算も作成されます。
予算による管理プロセス
予算管理の段階
予算管理は、予算の設定時、予算の実行時、予算終了時の3つの段階で行われます。
予算管理は、PDCAサイクルによって、年間を通して行われます。
予算設定時
予算を作成することで、構成員に対して1年間に行うべき行動を明示的に示すことができます。(計画機能)
予算を作成する過程で社内の各部門が調整を行うことがあります。(調整機能)
予算実行時
通常、1か月ごとの月次予算を作成し、予算と実績値の比較と差異分析を行います。そして、年間予算を達成できるように改善策を講じます。
予算期間終了後
年間予算期間が終了したら、予算と実績を比較し、差異分析を行います。(統制機能)
翌期の予算策定にも生かされます。
予算の作成方法
予算の作成方法は、3種類に大別されます。
トップダウン型
トップ・マネジメントの意向をくんだ予算を、各事業部等に目標値として伝達します。
業績評価に使われるので、従業員等が目標達成することへの動機づけとなりますが、半面、目標値が厳しくなる傾向があります。
ボトムアップ型
現場(事業部等)の意向をくみ上げて予算を作成します。
参加型予算と呼ばれ、構成員の目標達成への動機づけになりますが、目標値が甘くなる傾向があります。
折衷型
トップダウン型とボトムアップ型の中間的なものです。
トップ・マネジメントが定めた全社的な予算編成方針をもとに、事業部等が自分の組織の予算案を作成します。
予算編成部門が、それらを集約し、必要であれば調整して、全社の見積財務諸表を作成します。
トップダウン型とボトムアップ型の双方の長所を持っていますが、課題が完全に解決されているわけではありません。また、予算作成に時間がかかるという点もあります。