» 事業ポートフォリオマネジメント~企業グループの企業価値向上に向けて
 » 事業ポートフォリオマネジメント~企業グループの企業価値向上に向けて

社外財務部長 原一浩の公式サイト

事業ポートフォリオマネジメント~企業グループの企業価値向上に向けて

事業ポートフォリオマネジメント~企業グループの企業価値向上に向けて

事業ポートフォリオマネジメントは、事業価値の向上に向けた積極的なビジネスのポートフォリオ経営のことです。

事業ポートフォリオマネジメントに取り組むに当たり重要なことは、今後のビジネスの向かうべき道筋を明確にして、事業ポートフォリオの積極的な改革や入れ替えを通じて、事業価値の向上のための最適なアクションに結びつけるということです。

 

1.事業ポートフォリオマネジメントの概要

 

効果的な事業ポートフォリオを構成するために、ビジネスユニットの積極的な買収や土台となるプラットフォーム事業に相乗効果のある事業の付け足しに加えて、積極的なカーブアウトやスピンアウトを実行していきます。

 

事業ポートフォリオの入れ替えの際は、必ずしも業績の良し悪しだけでポートフォリオをみるのではなく、その企業グループの将来のありたい姿を見据えてポートフォリオの入れ替えを行います。

 

事業ポートフォリオマネジメントは、その企業の目的と戦略に関わる事項であり、経営者が行うべき役割になります。

 

 

2.事業ポートフォリオマネジメントの方法

 

(1)事業の分類

 

「事業ポートフォリオの最適化」とは、「選択と集中」であり、作成した事業ポートフォリオをもとに事業ポートフォリオマネジメントを行い、どの事業に投資し、またどの事業から撤退するかなどを決めていく作業のことをいいます。

事業ポートフォリオマネジメントにおいて選択と集中を考える場合、事業を下記の4つに分類することが多いようです。

 

①現状維持

 

②追加投資

 

③オペレーションの改善

 

④撤退の検討及び実行

 

(2)事業ポートフォリオ最適化のポイント

 

企業グループ内の事業を上記の4つのうちのどの分類に置くかは、その事業業績の良し悪しだけで判断するわけではありません。

企業グループ全体での将来のあるべき姿の中での当該事業の位置付け、同業他社の状況、市場のオポチュニティ、ビジネス環境、リソース、といった点が考慮されます。

 

事業ポートフォリオは、事業単体の状態だけでなく、それぞれの事業の組み合わせによって発生するシナジーやリスク分散も考慮する必要があります。

 

事業ポートフォリオから導き出される事業の組み合わせがどのように会社の業績を向上させ、資本コストを減らしていくかを考えることが事業ポートフォリオの最適化における重要なポイントだといえます。

 

(3)事業ポートフォリオマネジメント成功のポイント

 

戦略的な事業ポートフォリオマネジメントを成功させるために、重要なことはマーケットインテリジェンス(市場のプレイヤーから集積される情報および分析結果)とタイミングになります。

 

撤退を検討する際にも同様にスピードとコミットメントが必須であり、最適な撤退のタイミングを計るためにはマーケットインテリジェンスのアンテナを常に立てておくことが必要不可欠です。

 

「業績が良く、業種テーマがマーケットパーセプションとして通常より『より』高い評価を得ており、撤退をするなら一番価値が高い時に」という積極的なExit戦略というものもあります。

 

「最善の売り時を見定め、スピード感を持って実行する」ということになります。

 

3.事業ポートフォリオの作成

 

事業ポートフォリオを作成する際は様々な視点を用いる必要がありますが、基本的には3つの視点が使われます。

3つの視点は、PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネージメント)、事業ドメイン、コア・コンピタンス になります。

 

(1)PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネージメント)

 

PPMとは「プロダクト・ポートフォリオ・マネージメント」と呼ばれるものであり、プロダクトに対する投資コストを適切に管理して、投資を行うためのものです。

各プロダクトのライフサイクルを把握し、成長期・売上期・撤退期などのフェーズを管理することで投資すべきプロダクトを明確にしていくというものです。

PPMは相対シェアと市場成長率の2点を軸に会社を分析し、それを「問題児」「花形製品」「金のなる木」「負け犬」という4つの項目に分類します。

 

①問題児

「問題児」は、製品ライフサイクルの導入期~成長期を示しており、市場成長率は高く、激化する競争を勝ち抜けば花形製品へと成長します。市場シェアを拡大する必要があるため、投資しても利益が上がらないという一面があります。

そのため「問題児」への投資は未来への投資ということになりますので、将来的な成長を見通して効率的に投資を行う必要があります。

シェアを確保できなければ、「負け犬」になってしまいます。

 

②花形製品

「花形製品」は、市場シェアが大きいために売り上げが大きくなりますが、市場シェアが大きい分、成長を続けなければならないため利益が上がりにくくなります。

そのため「花形製品」は市場シェアを維持して「金のなる木」へと育てていく必要があります。

 

③金のなる木

「金のなる木」は、製品ライフサイクルの成熟期~衰退期を示しており、市場シェアでNo.1を取っている状態です。

「金のなる木」になれば、多額の投資が必要でなくなるため利益が最大化されます。

もちろん、投資は継続しますが、それも利益の最大化を維持するためだけに行う程度に留めることになります。

衰退期にはいることを見越して、「問題児」や「花形製品」に投資しておくことが重要になります。

 

④負け犬

「負け犬」は、「問題児」が成長期に入れなかったり、製品ライフサイクルの成熟期~衰退期に入ったりした場合の収益を生み出さないプロダクトを言います。

負け犬は設備投資や販売促進を徹底すれば利益が上がる可能性はありますが、市場が縮小傾向にあるなら潔く撤退した方がいいでしょう。

 

 

(2)事業ドメイン

 

事業ドメインとは会社の事業領域や主力となる事業を指します。

事業ドメインは顧客・技術・機能の3つで分析するCTMフレームワーク分析を用いてその会社にとって最適な事業領域を設定することによって決められます。

 

事業ドメインの設定にあたっては、自社の企業の現状や役割を適切に認識し、様々な知識や情報を用いて行います。

事業ドメインは現在行っている事業にただこだわるだけでなく、時には異業種や新しい分野に渡って設定することによって会社の成長につながることがあります。

 

(3)コア・コンピタンス

 

コア・コンピタンスは事業ドメインの設定においても用いられるものであり、その会社の中核となる特徴を意味しています。

コア・コンピタンスは「顧客に利益をもたらす」「競合している他の会社に真似されにくい」「複数の商品や市場に推進できる」という3つの条件を含んでいます。

 

また、コア・コンピタンスを見極めるためには、その会社の事業を「模倣可能性」、「移動可能性」、「代替可能性」、「希少性」、「耐久性」という5つの特徴から評価し、さらにSWOT分析などを用いて見出していきます。

 

 

4.事業ポートフォリオの評価と分析

 

作成した事業ポートフォリオは入念に分析し、適切な評価をおこなう必要があります。

評価の際に重視するポイントとして代表的なものとして、「成長性」「収益性」「リスク」「シナジー」「リスク分散」があります。

作成した事業ポートフォリオから読み取れるこれらのファクターを細かく分析することで、より効率的な経営資源の投入をどうやって行うかを決定し、最終的には会社の企業価値の向上を目指していきます。

 

この一連の作業は、「事業ポートフォリオマネジメント」と呼ばれています。

 

限られた経営資源を効率的に分散し、資本コストを低減していくうえにおいて事業ポートフォリオをどのような組み合わせで行うかは経営者がその都度考慮しておく必要があります。

さらに事業ポートフォリオマネジメントを徹底的に行うことにより、クロスボーダーM&Aやベンチャー企業への投資など、新たな経営戦略を行う際にも、その影響を統計的に評価できるようになります。

 

 

5.事業ポートフォリオマネジメントにおける留意事項

 

事業ポートフォリオマネジメントにおいて意識しておきたい留意事項がいくつかあります。

 

(1)優先的投資

 

事業ポートフォリオマネジメントを行うことは、ただ効率的な経営資源の投入方法を意識するばかりではなく、「対象の会社のどの事業に対して優先的に投資を行っていくか」について考慮しておく必要があります。

資本コストを重視して経営資源の投入をより効率化し、無駄なコストの発生を抑えることは重要ですが、PPMで分類する項目にあったように、事業の製品ライフサイクルがどの段階にいるかによっては、積極的な投資が必要となる場面があります。

そのため、投資すべき事業にどれだけ投資を行えるかも同時に考えておく必要があります。

 

(2)ガバナンス、経営管理システム

 

事業ポートフォリオマネジメントの際にはトップマネジメントへのガバナンスやインセンティブ、さらに経営管理システムの設計も重要になります。

事業ポートフォリオマネジメントを通じて投資や多角化の戦略を考え、実際にリスクを覚悟したうえで実行するには、トップマネジメントの手腕が問われることになります。

トップマネジメントが重要な経営戦略の場面で円滑な意思決定ができるように、ガバナンスやインセンティブといった制度を整えておく必要があります。

関連記事

無料相談

おススメの記事