経済産業省は、2020年7月31日に、「事業再編実務指針~事業ポートフォリオと組織の変革に向けて~」を策定しました。
その中の「3 取締役会・社外取締役における課題と対応の方向性」を見てみましょう。
Ⅰ.取締役会の役割
1.会社法上の位置付け
(1)機関設計にかかわらず、事業ポートフォリオに関する基本方針の決定及びその基本方針に基づき経営陣が行う職務の執行に対する監督
(2)取締役は、善管注意義務に基づき、上記決定及び監督に最善を尽くす
2.現状と課題
(1)事業ポートフォリオを年に1回以上定期的に検討している企業は、6割
(2)事業ポートフォリオを検討する機関を「取締役会」とした企業は、6割
(3)社外取締役の認識として、事業ポートフォリオに関する議論が「具体的な取り組みや成果につながっている」との回答は、半数以下
3.取締役会における事業ポートフォリオに関する基本方針の見直し
(1)少なくとも年に1回は定期的に事業ポートフォリオに関する基本方針の見直しを行う
(2)経営陣に対して、事業ポートフォリオマネジメントの実施状況等に関する監督を行う
(3)中長期的な企業価値の向上に向けて、全社レベルの視点から検討
(4)事業ポートフォリオマネジメントに関する実施体制・事業評価の仕組み・情報開示及び事業ポートフォリオの内容について具体的に確認
Ⅱ.社外取締役の役割
1.事業ポートフォリオに関する検討への積極的な関与
(1)経営陣には、「現状維持バイアス」がかかりやすい
(2)独立した立場から事業ポートフォリオに関する検討を働きかけ
(3)必要に応じて、事業の切出しに関する経営陣の判断を後押し
(4)事業評価の仕組みの構築や取締役会での議論を促す
2.社外取締役による投資家との対話
(1)自ら投資家との対話を積極的に行い、事業ポートフォリオに関する投資家の見方を学び、対話の内容を取締役会へのフィードバックも有意義
(2)投資家との対話の中で取締役会において事業ポートフォリオを十分議論していることの説明は投資家の理解と納得につながる
Ⅲ.取締役会の構成
(1)事業ポートフォリオに関する基本方針の見直し等を適切に行い、それを推進する経営陣を支えるためには、その構成の多様性と高度人材の確保が重要
(2)いずれの取締役も「部分最適」でなく「全体最適」の視点から議論することが重要
(3)そのため、事業部門横断的な機能を担う取締役(CEOやCFO等)と社外取締役から構成されることが望ましい
Ⅳ.CEOの指名や経営陣の報酬設計を通じた監督機能の発揮
(1)事業ポートフォリオの組替えや事業の切出しの決断・実行ができるCEOを選任
(2)業績評価や報酬設計を通じて適切なインセンティブを付与
Ⅴ.取締役会の実効性評価
(1)事業ポートフォリオに関して、取締役会・指名委員会・報酬委員会がその役割を適切に果たしているかを自構成表化の中で評価
(2)それにより必要な改善措置を講じることが重要