2020年8月21日に日本公認会計士協会「企業情報開示・ガバナンス検討特別委員会」は、「企業情報開示に関する有用性と信頼性の向上に向けた論点の検討~開示とガバナンスの連動による持続的価値創造サイクルの実現に向けて~(中間報告)」を公表しました。
「論点3 企業情報開示とコーポレート・ガバナンスの連動 3-1 企業情報開示に対する取締役会の役割」では、以下のように述べています。
1.現状と課題
(1)日本企業のガバナンスに大きな変化
①取締役会の役割
・企業の方向付け、リスクテイク環境の整備、経営陣の監督といった取締役会の役割が重視されるようになってきている。
・経営と監督の分離が意識されるようになってきている。
②社外取締役
・人数が増加している。
・経営監督における社外取締役の位置付けが高まっている。
③形式から実質へ
・コーポレート・ガバナンス、特に、取締役会による企業の方向付けと監督の実効性が問われている。
(2)年次報告書
・企業の方向性やリスク認識、業績についての見解を示す文書としての位置づけが高まっている。
・取締役会が主体となる企業報告が求められるようになっている。
・企業情報開示は、コーポレート・ガバナンスの確立において極めて重要な役割を果たしている。
(3)我が国の有価証券報告書と取締役会
①経営者・取締役の主体的関与
・有価証券報告書を取締役会の決議事項としている会社は、上場企業の約6割となっている。
・制度開示書類に取締役会の見解を反映すべきとの認識が経営者や取締役との間で十分に共有されていない。
・企業情報開示において、取締役会が果たすべき基本的役割が明確になっていない。
・取締役会の役割を担保するための社内体制やプロセスが確立していない。
②企業情報開示に関する取締役会の関与についての制度上の要請
ア)会社法
事業報告及び計算書類:取締役会の承認
イ)金融商品取引法
有価証券報告書:作成主体は、代表取締役及び財務責任者
③社内体制・プロセス
・経営者に加えて取締役会の見解を有価証券報告書に反映することの重要性が高まっている。
・取締役会が主体的に関与する枠組みをどのように担保するかが課題である。
2.方向性(提言)
(1)情報開示が適切なものになるように体制・プロセスを取締役会が監督することが重要である。
・「OECDコーポレート・ガバナンス原則」では、報告体制の廉潔性を確保する最終的な責任は、取締役会が負うべきとしている。
(2)企業の価値創造の方向性や業績及びリスクに対する認識に取締役会の見解が十分に反映されることが重要との認識も強まっている。
・「記述情報原則」では、経営者の見解だけでなく取締役会における議論が有価証券報告書の記述情報に適切に反映されることを求めている。
・「国際コーポレート・ガバナンス・ネットワーク:グローバルガバナンス原則」は、取締役会による企業情報開示の監督において重視すべき観点を示している。
(3)企業情報開示における取締役会の監督機能
・毎期の年次報告における重要な事項が取締役会において議論され、その内容が年次報告書に反映されることが重要となる。
・取締役会の見解が反映されえることを体制担保するための情報開示に関する体制、プロセス及び取締役会による監督の在り方を明確化していく必要性が高まっている。
(4)監査役会との連携
・監督機能を担う監査役会との連携も重要となる。
・監査役会設置会社では、非業務執行取締役と監査役との対話及び連携を通じて取締役会における見解が実質的に企業情報開示に反映されるための体制及びプロセスを整備することが期待される。