会社補償契約及びD&O保険契約と監査役監査 | 社外財務部長 原 一浩
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会社補償契約及びD&O保険契約と監査役監査

会社補償契約及びD&O保険契約と監査役監査

令和元年12月4日に「会社法の一部を改正する法律」(以下、改正法)が成立し、同月11日に公布されています。

令和元年会社法改正により、会社補償契約制度と役員等賠償責任保険(Directors and Officers Liability Insurance、以下、D&O保険)制度が新設されました。

 

1.会社補償及び役員等のために締結される保険契約

 

(1)会社補償

 

①会社補償とは

 

役員等の責任を追及する訴えが提起された場合等に、株式会社が費用や賠償金を補償することです。

 

・役員等が

・その職の執行に関し

・法令の規定に違反したことが疑われ又は責任の追及に係る請求を受けたこと

・それに対処するために支出する費用や

・第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合における損失の全部または一部を

・株式会社が当該役員等に対して

・補償すること

 

②改正点

 

株式会社が会社補償を締結するために必要な手続規定や会社補償をすることができる費用等の範囲に関する規定が新たに設けられました。

 

(2)役員等のために締結される保険契約

 

①D&O保険とは

 

株式会社が役員等を被保険者とする会社役員賠償責任保険です。

 

②改正点

 

株式会社がD&O保険に加入するために必要な手続規定等が新たに設けられました。

 

2.監査役としての対応

 

(1)制度の理解

 

監査役・監査(等)委員(以下、監査役等)は、役員の一員ですので、自らが契約の当事者の立場から制度趣旨や内容を理解する必要があります。

 

(2)利益相反

 

両制度とも、役員の損害賠償責任との関連で、損害額や関連費用を会社が支払うものです。そのため、会社と役員との間において、利益相反的な一面を持っています。

 

監査役は、取締役の職務執行を監査することから、取締役の損害賠償の支払義務との関係で、両制度の手続きや具体的な事案で、その適用の是非を判断する場面がでてきます。

 

3.監査役監査における留意点

 

(1)契約当事者としての留意点

 

①内容の検討

 

監査役は役員であることから、補償契約及びD&O保険の直接の当事者となりますので、会社が導入しようとしている制度設計について、事前に関連部署から説明を受け、会社法で認められることになった防御費用や第三者への損害賠償の支払いによる損失関連の補償の対象となる具体的項目を検討しておくことが重要となります。

なお、補償契約制度やD&O保険契約制度は、令和元年改正会社法の施行日以降の契約締結でなければ有効ではありません。

 

②補償契約

 

補償契約はD&O保険と異なり、保険料として会社の外部への支出がある訳ではありませんので、職務を遂行する上で防御費用や損失への塡補として支出し得る項目を洗い出すことが重要です。この場合、D&O保険内容でカバーできる項目は補償の範囲から除外しても差し支えありません。

なお、補償契約の防御費用については、会社から支払いを受けるタイミングも契約内容に織り込んでおくべきです。

弁護士費用のように、それ相当の額の着手金を必要とする場合、自らが立て替えなくても、合理的な費用であれば会社が前払いできるようにしておくと利便性は高まることになります。

 

③D&O保険

 

D&O保険の場合は、会社法での規定を踏まえて保険が支払われる対象や要件、保険金が支払われる上限額、保険料等の詳細が会社と保険会社との間の交渉で決められます。

D&O保険の内容も取締役会の決議事項ですので、監査役としても、保険内容について内容を理解し、必要があれば取締役会において意見表明をすることになります。

 

(2)監査役監査における留意点

 

①取締役会等における手続き

 

監査役としては、補償契約とD&O保険が、株主総会または取締役会においてその内容が承認・決議されることなっていることを確認します。

取締役会設置会社の場合は、補償契約については、補償を受けた取締役は、補償についての重要な事実を取締役会に遅滞なく報告する必要があります。

補償契約に基づいた具体的な適用があった場合には、報告という手続上の瑕疵がないか監査役として監視し、取締役が失念している場合はその旨を指摘しなければなりません。

 

なお、この事後報告は、補償契約にのみ適用があり、D&O保険の場合には報告義務はありません。

 

②契約内容の確認

 

ア) D&O保険

 

D&O保険の場合は、保険金による塡補の範囲や金額は、あらかじめ締結された契約に基づいて支払われることになりますので、塡補される金額の多寡が恣意的に決定されることは基本的には考えられません。

 

利益相反の観点からも、会社が支払う保険料と保険金の支払いとの点において、保険料の金額の方が実際に支払われる保険金の額に比べて、相対的に低額であるため、利益相反の程度は大きくないといえます。

 

イ) 補償契約

 

補償契約の場合は、会社が取締役に補償として支出する金額は、そのまま取締役の経済的利益となりますので、利益相反の程度が強いといえます。

 

会社補償契約に基づき、実際に支払うことになったときには、防御費用であれば支払い金額が妥当であるか、第三者への支払いであれば、善意かつ無重過失の要件に合致しているかなどを、十分に監視・検証する必要があります。

 

また、監査役としては、補償契約を実際に適用する際の補償金額が大きい場合には、重要な業務執行の決定に該当するとして、取締役会付議事項とされているかを確認することが考えられます。

 

③開示

公開会社の場合、補償契約及びD&O保険は、ともに一定事項が事業報告の記載となりますので、監査役は事業報告の監査の観点からも、適正な記載となっているかを監査することになります。

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