内部統制システムと監査役監査について | 社外財務部長 原 一浩
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内部統制システムと監査役監査について~コーポレートガバナンスの観点から

内部統制システムと監査役監査について~コーポレートガバナンスの観点から

コーポレートガバナンスは、「企業統治」とも言われています。

企業統治とは、会社収益の向上やリスク管理体制等について、外部から強制されることなく、自社の業種・業態・規模・企業風土等を勘案して、自律的に会社経営にあたることです。

コーポレートガバナンスのうちのリスク管理について役職員の属人的能力や考え方に依拠するのではなく、組織として整備。運用することを意識したものが内部統制システムということになります。

 

内部統制システムの法定化

内部統制システムに関する世の中の関心が高まってきたこともあり、内部統制システムが法定化されています。

 

1.会社法・会社法施行規則の規定

会社法では、「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備」として定められました。

この法務省令とは、会社法施行規則のことであり、以下の内容が列挙されています。

 

1.取締役の職務執行に係る情報の保存・管理体制

 

2.会社の損失の危険管理に関する規程その他の体制

 

3.取締役の職務執行の効率確保体制

 

4.使用人の職務執行における法令・定款遵守体制

 

5.企業集団における業務の適正を確保する体制

 

会社法では、取締役会設置会社においては、内部統制システムの整備は各取締役に委任することはできずに、取締役会で決定しなければならないこととなっています。

 

取締役会で必ず内部統制システムを決定しなければならないのは、会社法上の大会社(資本金5億円以上又は負債総額200億円以上の会社)と監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社の委員会型の会社形態を採用する会社です。

内部統制システムを決定・決議したときには、その決定・決議の内容及び運用状況の概要が事業報告の記載事項となっています。

 

また、事業報告は、監査役の監査対象であり、その監査結果は監査役(会)監査報告に記載されます。

 

会社法上は、内部統制システムに係る事業報告の内容が相当でないと監査役が判断した場合にのみ、監査役(会)監査報告に記載すれば足りることになっています。

事業報告や監査役(会)監査報告は、株主に対して株主総会の前までに提出されますから、会社法上は、内部統制システムの整備状況について、最終的には株主にその評価が委ねられていることになります。

 

株主が当該会社の内部統制システムに問題があると考えれば、株主総会に出席して取締役や監査役に質問をすることができます。

 

2.金融商品取引法の規定

平成20年4月1日開始事業年度から、金融商品取引法(以下、金商法)では財務報告に係る内部統制システムが規定されました。

 

経営者が内部統制報告書に財務報告に係る内部統制システムの有効性を自己評価するとともに、内部統制報告書に対する外部監査人の監査証明が義務付けられました。

 

 

内部統制システムと監査役

1.内部統制システムの評価

監査役は取締役の職務執行を監査することがその職責であることから、取締役の善管注意義務違反の有無を判断しなければなりません。

 

取締役は、業務執行を行うとともに、他の取締役の職務執行を監督する役割があります。

内部統制システムが法定化されている今日においては、取締役の監視・監督義務には、内部統制システムが適正に構築され、かつ適切に運用されていることも善管注意義務の内容として含まれます。

 

このために、監査役は監査役(会)監査報告において、内部統制システムの基本方針及び運用状況の相当性を判断し、その結果を記載することになっています。

 

平成27年5月1日以降は、会社法施行規則の改正により、取締役会が決定した内部統制システムの基本方針に加え、内部統制システムの運用状況も事業報告の記載事項となりました。

 

この改正により、監査役の実務も変更されています。

内部統制システムとして、規程・マニュアルから会社組織・内部通報制度の設置等にいたるまでの整備状況の評価に加えて、監査役は内部統制システムの適切な運用状況の有無まで期中の監査を通じて監査しなければならなくなりました。

 

取締役会が決議した基本方針に基づいて内部統制システムが構築されており、会社経営の中で有効に機能しているかについて、業務監査を通じて評価する必要が生じていることになります。

 

2.内部統制システムに関する監査役監査のポイント

内部統制システムの整備・運用状況に関する監査役の業務監査におけるポイントとしては以下のことが挙げられます。

 

(1)執行部門からの報告・ヒアリング

監査役は、業務監査の一環として、執行部門に対して、定期的に業務報告のヒアリングを行います。

 

その際に、監査対象部門において、内部統制上問題となる事項が発生したか、あるいはその恐れがなかったかなどの事実の確認を行う必要があります。

 

何らかの事項が報告された際には、その事項が内部統制システムの問題なのかどうかを判断します。

 

内部統制上の問題であれば、規程やマニュアル等が整備されていない、あるいは、不十分なことが問題なのか、整備されていたが、適切に運用されていない運用上の問題だったのかを確認することが必要です。

 

問題があれば、改善事項の指摘を行い、その後、内部監査部門等とも協力して、その改善が着実に行われているかをフォローアップすることになります。

 

(2)損失危険管理体制

不祥事の発生又は発生の恐れが生じた場合には、その事実が遅滞なく報告されることが内部統制システムの観点からは重要です。

 

事件・事故を未然に防止したり、すでに発生している事件・事故の拡大を防いだりするためには、全社レベル(もしくはグループ全体)の対応が必要となってきます。必要に応じて、社内や第三者委員会による調査を行います。

 

このためには、情報の遅滞・隠蔽を回避し、必要な情報が適時適切に報告される体制となっていることを確認し、運用状況の確認も行うことが重要です。

 

 

(3)内部通報制度

内部通報制度は報告体制における有効なツールの一つです。通報件数や通報内容等を確認し、適切な対応がとられていることなどのフォローアップが適切に運用されていることを確かめる必要があります。

 

(4)使用人の法令・定款遵守体制

使用人の法令・定款遵守体制とは、具体的には使用人への教育・研修です。

 

使用人への教育・研修については、各社各様に、対象者・頻度・教育内容等を決定して実施しています。

 

内部統制システムの観点からは、担当者クラスのみならず基幹管理職クラスまでを対象者として、教育・研修の実施状況(内容、頻度等)を確認する必要があります。

 

特に、重要事項(法令改正事項や世間で問題となった事項等)については、全ての役職員に漏れなく実施しているかなどを確認することが重要です。

 

企業集団の内部統制システムの観点からは、自社のみならず子会社の教育体制についても、親会社としては注意を払わなければなりません。

 

親会社の教育・研修に子会社の役職員も参加しているのかどうか、子会社に教育・研修を任せるのであれば、親会社人事部門等の教育担当部門が子会社の教育・研修実施状況を把握しているかどうかについて確認する必要があります。

 

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