1.「事業等のリスク」に関する改正開示府令の内容
(1)金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ報告」での指摘
① リスク情報の開示について、全体としてみると、一般的なリスクの羅列になっている記載が多い
② 外部環境の変化にかかわらず数年間記載に変化がない開示例が多い
③ 経営戦略やMD&Aとリスクの関係が明確でなく、投資判断に影響を与えるリスクが読み取りにくいなど
(2)「事業等のリスク」に関する開示府令の改正
① 経営者が経営成績等の状況に重要な影響を与えると認識している主要なリスク
・当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期
・当該リスクが顕在化した場合に経営成績等の状況に与える影響の内容
・当該リスクへの対応策
・上記について具体的に記載することが求められました。
② 分かりやすい記載
記載に当たっては、リスクの重要性や経営方針・経営戦略等との関連性の程度を考慮することが求められています。
2. 「事業等のリスク」に関する「記述情報の開示に関する原則」の内容
(1)考え方
事業等のリスクは、翌期以降の事業運営に影響を及ぼし得るリスクのうち、経営者の視点から重要と考えるものをその重要度に応じて説明するものです。
(2)望ましい開示に向けた取組み
① 事業等のリスクの開示においては、一般的なリスクの羅列ではなく、具体的に記載することが求められます。
・財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の異常な変動
・特定の取引先・製品・技術等への依存
・特有の法的規制・取引慣行・経営方針
・重要な訴訟事件等の発生
・役員・大株主・関係会社等に関する重要事項
・その他、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項
② リスクの重要性(マテリアリティ)
取締役会や経営会議において、そのリスクが企業の将来の経営成績等に与える影響の程度や発生の蓋然性に応じて、それぞれのリスクの重要性(マテリアリティ)をどのように判断しているかについて、投資家が理解できるような説明をすることが期待されます。
③ リスクの記載の順序
時々の経営環境に応じ、経営方針・経営戦略等との関連性の程度等を踏まえ、取締役会や経営会議における重要度の判断を反映することが望まれます。
④ リスクの区分
リスク管理上用いている区分に応じた記載をすることも考えられます。
例えば、市場リスク、品質リスク、コンプライアンスリスクなどになります。